男性ホルモン・男性の生殖機能 担当 藤ノ木政勝 生理学(生体制御) 1 今日の概要 • 男性ホルモン • 勃起と射精 • 精子と精液 2 ステロイドホルモン合成 3 ステロイド分泌 4 テストステロンの分泌調節 SC:セルトリ細胞 LC:ライディッヒ細胞 DHT:5α-ジヒドロキシテストステロン 5 ステロイドホルモンの作用機序 6 男性ホルモンの作用効果 • 男性化を引き起こす。 男性ホルモンのほとんどが精巣・ライディッヒ細胞から、少 量が副腎皮質から分泌される。 一次性徴:精巣や陰茎などの内性器・外性器の男性化。 脳の男性化。 二次性徴:精子形成。体毛の増加と頭髪の抑制。変声。 皮膚の肥厚。皮脂腺と汗腺の活発化。 青年期急成長と骨格の発達。 骨の成熟と骨端軟骨板閉鎖の促進。 タンパク同化の促進と筋肉の発達。 視床下部の性中枢への作用と性衝動、性行動の発現 7 勃起と射精 • 精子を女性生殖器内へ入れる為に、生殖行 動と最終的に射精反射が必要である。 • 性行動から射精反射という一連の反応には 自律神経、体性運動神経系、中枢神経系が 関係している。 8 性行動 • 性行動は性欲によって引き起こされる。 • 性欲を起こす刺激 – 陰茎亀頭部および陰茎周囲への刺激 – 尿道、膀胱、前立腺、精嚢、精巣、精管の充満刺激 – テストステロンによる視床下部の性行動中枢への作 用 – 精神的影響 9 性反射 • 会陰部、陰茎、亀頭にある触覚-圧受容器か らのインパルスが陰部神経を介して仙髄、腰 髄へ伝達され、性反射が起こる。 • 性反射には以下の段階的現象がある。 ①陰茎勃起 ②粘液分泌 ③射出 ④射精 10 勃起 • 勃起は仙髄から勃起神経を介する副交感神経性イ ンパルスによって起こる。また、精神的刺激によって も起こる。 • 陰茎への副交感神経性インパルスは、アセチルコリ ンによりノルアドレナリンの放出低下とVIPにより陰 茎深動脈を拡張して陰茎、海綿体の海綿体洞への 血流を増大する。さらにNOによりcGMPの合成およ び血管拡張が促され勃起が起こり、かつ維持される。 • 交感神経性インパルスが陰茎に送られると血管収 縮が起こり、勃起が消失する。 11 射精 • 射出 刺激が更に続くと、副交感神経性インパルスに より内性器の平滑筋を収縮し、精液を後部尿道 へ推進させる。 • 射精 後部尿道が精液で充満されると、陰部神経から 仙髄へインパルスが送られ、交感神経を介して 勃起組織を包んでいる骨格筋(球海綿体筋)を収 縮させて、精液を尿道から放出する。 12 精子の発見 13 精子 14 精子 15 精子 16 精子 17 精子・鞭毛運動 18 精子・鞭毛運動 19 精子・鞭毛運動 20 受精能獲得 • 射出された精子、もしくは精巣上体尾部より 採取された精子は卵と受精することはできな いが、交尾後のメス内性器より採取した精子 は受精できる。(Austin 1951, Chang 1951) • 上記精子の(1950年頃の光学顕微鏡上で の)形態変化がない事から受精に対して質的 な違いがあると考え、この違いを受精能獲得 (capacitaion)と呼んだ。 21 受精能獲得 • 受精能獲得の具体的な現象とは? 具体的な現象に付けた名称ではないので研究の進展に 伴って変遷を繰り返してきた。 • 受精能獲得に関わる現象 – 先体反応(acrosome reaction) (Dan 1952) – 超活性化(hyperactivation) (Yanagimachi 1970) – 細胞膜の脂質構成の変化 →コレステロールの除去 (Langlais & Roberts 1985) – タンパク質のチロシンリン酸化 (Visconti et al. 1995) 22 不妊治療への応用 • 人工受精 (In vitro fertilization) – ハムスターでin vitro capacitaionの成功 (Yanagimachi & Chang 1964) – ヒト体外受精児ルイーズ・ブラウンの誕生 (Steptoe & Edwards 1978) • 卵細胞質内精子注入法 (IntraCytoplasmic Sperm Injection) – ウニでのICSIの成功 (Hiramoto 1962) – ハムスターでのICSIの成功 (Uehara & Yanagimachi 1976) – ヒトでのICSIの成功 (Palermo et al. 1992) 23 精子・受精能獲得 24 精子・受精能獲得(先体反応) • 先体反応とは? – 先体部分の細胞膜が除かれ先体内の内容物(プ ロテアーゼ等)が放出されるexocytosisであり、 また内膜表面に存在するプロテアーゼおよび卵 との結合・融合タンパク質が露出される反応。 – 受精に必須の精子で起こる反応。 25 精子・受精能獲得(先体反応) OAM 先体反応前 先体反応中 先体反応後 26 精子・受精能獲得(先体反応) Ligandの候補 ZP3、プロゲステロン 27 精子・受精能獲得(先体反応) 28 精子・受精能獲得(先体反応) 29 精子・受精能獲得(超活性化) • 超活性化とは? – 卵丘細胞層や透明帯を通過する際の推進力を出 す為の特別な鞭毛運動。 – 運動の表現型は動物種で異なる。 – ヒト、サル類、げっ歯類、家畜動物では確認され ているが、全ての動物で起こる訳ではない。 – 受精能獲得に伴って起こるが、受精に必須では ない。 30 精子・受精能獲得(超活性化) Hamster 31 精子・受精能獲得(超活性化) 32 精子・受精能獲得(超活性化) 33 精子・受精能獲得 • 受精能獲得(先体反応と超活性化)は女性ホ ルモンによって調節されている。 – プロゲステロン:受精能獲得を促進させる。 – エストロゲン:プロゲステロンの機能を抑制する。 ↓ Non-genomic regulationの代表例 34 精子・卵活性化 • 精子と卵が受精と他の精子はその卵とは受 精することができなくなる。 →多精拒否 • 未受精卵は減数分裂の途中(第二分裂の始 めの頃)で止まっているが、精子の侵入によ り再開するようになる。 →卵活性化 35 精子・ 卵活性化 36 精漿 精液=精子+精漿+精巣漿液+精巣上体漿液 他、タンパク質やホルモンなど 37 精漿 38 精漿 • 精液の役割 – 精子の環境形成 • 雄体内環境:精巣漿液および精巣上体漿液が形成し、 精子成熟などに関与。 • 射出前後の環境:精漿が形成し、代謝機能などが発 現しやすい状態にする。 – 精子機能の調節 • 運動の調節:精液の凝集と液化 • 受精能獲得の調節:decapacitation factor 39 精漿 • ヒト精液は、射出後、速やかに凝集する。そ の後数分経つと凝固体が液状化し始める。 • 凝集体の形成により精子は運動できず、液化 することで運動できるようになる。 • 精液の凝集と液化は2種類の精漿に含まれ るタンパク質(semenogelinとPSA)と亜鉛に より起こる。 • Semenogelinは精嚢腺から、PSAと亜鉛は 前立腺より分泌される。 40 精漿 精液 精嚢腺 semenogelin+亜鉛 (凝集) semenogelin 射出・射精 前立腺 亜鉛+PSA (非活性型) 分解 液化 PSA (活性型) 精子運動抑制 精子運動活性化 41
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