貫通を考慮した RC 版の衝撃強度評価への解析モデル検討実験検証

貫通を考慮した RC 版の衝撃強度評価への解析モデル検討実験検証
A study of FE simulation models with perforation for evaluating the strength
of RC plates by impact load
○ 門口 徹(株式会社テラバイト)
丹羽 一邦 (同)
Toru Kadoguchi, Kazukuni Niwa,
TERRABYTE Co., Ltd. 3‐10‐7, Yushima, Bunkyo‐ku, Tokyo, 113‐0034, Japan
Key Words
: RC, Impact strength, Crack, Perforation, FE simulation
1. 緒言
近 年 ,原 子 力 発 電 所 等 の重 要 建 造 物 への航 空 機 防 護 に
対 する関 心 が高 く,新 たに設 計 される原 子 力 発 電 所 の格 納
施設では,コンクリート版に生じる破壊を含めた強度評価が必
須 要 件 となっている.これまで,RC版 の裏 面 剥 離 や貫 通 口 の
破壊を要素消去によりモデル化する方法を提案 (1) してきた.
本 論 文 では,RC版 の貫 通 を含 めたより精 度 の高 い解 析 モ
デルを構 築 するための手法 を検討 する.なお,解 析 には汎 用
構 造 解 析 コ ー ド LS-DYNA (2) を 使 用 し , Sugano (3) ら の 実 験
結果 (3) を基に提案モデルの妥当性を検討する.
2. RC 版への飛翔体衝突実験結果と解析モデル
Suganoらの実験結果のうち,実規模サイズの 7000mm×
7000mmの正方形版,鉄筋比 0.8%の板厚 900mmのRC版
( 以 下 L1 と 称 す ) , 同 1150mm の RC 版 ( 以 下 L2 ) , 同
1350mmのRC版(以下L3), 同 1600mmのRC版(以下L4)
に対してGE-J79 エンジンを 215m/s(L1 は 205m/s)で衝突
させた時の結 果を基準に,解析モデルの妥当性を検討 する.
L1 からL4 までの実験結果をTable.1 に,RC版裏面の破壊
状 況 をFig.1 に示 す.裏 面 破 壊 状 況 は,すべてのケースにお
いてひび割れが全面に広がっており, L1 では貫通が発生して
いる.表面破壊状況はここでは示していないが,各ケースにお
いてクレータの形成と放射状のひび割れが発生する.
解 析 ではRC版 にはソリッド要 素 を使 用 し,形 状 対 称 性 を考
慮した 1/4 モデルとし,鉄筋はビーム要素でモデル化する.GE
-J79 エンジンによる衝突荷重は,荷重関数として定義し,RC
版表面に均等に分布させる.コンクリート材料モデルは,
Ottosen (4) による材料構成則を使用する.このモデルは,破壊
条件が圧力と偏差主応力の 2 次不変量で定義され,Fig.2 の
ように主応力空間では Morh-Coulomb タイプの破壊曲面と
なる.この破壊曲面は 4 つのパラメータから決定されるが,1 軸
圧縮強さと 1 軸引張強さおよび,2 軸圧縮および 3 軸圧縮試
験結果を使用している.また,非弾性状態では圧力依存のミ
ーゼス降伏条件に従うものとしている.
引張破壊発生後の破壊面に垂直な応力成分は,指定した
クラック生成エネルギに達するまで徐々にゼロまで低減し,こ
のとき解析結果の表示としてクラック面を表示する.また,圧
縮破壊発生時にもクラック面を形成し破壊が発生する.
コンクリートのひずみ速度依存性については,ひずみ速度
に応じてヤング率および破壊強度を増加させている.
コンクリートの貫 通 や剥 離 およびスポール破 壊 を模 擬 する
ために,有 限 要 素 の削 除 を行 う.要 素 削 除 を行 うには,要 素
分割が十 分細 かい事が前提 となるが,要素 サイズと実 験 挙動
を考 慮 した要 素 削 除 の判 定 条 件 が必 要 である.ここでは,表
面破壊に対しせん断ひずみを,剥離に対しては主ひずみを,
また裏 面 のスポールによる剥 離 を負 の圧 力 によって判 定 する
こととする.
3. 要素消去による破壊を考慮しない解析検証
はじめに,貫通の生じない RC 版 L2,L3 および L4 の
実験結果について,使用する解析モデルと構成則の妥当
性について検討するために検証解析を実施する.ここで
は要素消 去は 考慮しない. ただし, クラ ックによ るひ び
割れは考慮する.
RC 版裏面中央部の変形量時刻歴,裏面中央部鉄筋ひず
み時刻歴,RC 版が受ける反力時刻歴について実験と解析
を比較し,Fig.3 から Fig.5 に示す.クラックの破壊エネ
ルギは 0.2N/mm (5) とした.RC 版裏面の変形時刻歴は,
L3,L4 ともに戻り挙動を含め,実験結果との高い整合
性を確認した.裏面中央部鉄筋ひずみ時刻歴は,最大変
位以降は実験値よりも若干小さくなる傾向がみられたが,
衝突時から最大変形時であるおよそ 20msec までの間は
実 験 と ほ ぼ 同 様 の 挙 動 を す る こ と を 確 認 し た . ま た ,R
版が受ける反力時刻歴では,すべてのケースにおいて,
実験との高い整合性が確認でき,最大変形時に反力が一
時的に減少する挙動についても同様の結果がえられた.
要素消去による破壊を考慮しない解析では,すべての
ケ ー ス で 実 験 と の 高 い 整 合 性 が 確 認 で き ,ま た 板 厚 が 大
きいほど,RC 版の変形量が小さく,RC 版が受ける反力は
高くなる傾向が見られた.
さらに,Fig.6 に L4 の最大変位時の RC 版裏面と中央
断 面 の 破 壊 の 状 況 を 示 す . 裏 面 は ,ひび割れが全 面 に広
がっており,断面はせん断によるクラック破壊が見られ,実験
結果との整合もとれていることを確認した.
4.コンクリートの破壊パラメータによる検討
次 に 貫 通 と 剥 離 を 模 擬 す る た め に ,要 素 消 去 を 考 慮 し
た解析モデルの検討を行う.要素消去による破壊の表現
で は ,消 去 条 件 を 満 た す 要 素 の み を 解 析 の モ デ ル か ら 消
去し,そこに不連続面(空間)が形成される.解析対象
として RC 版 L1 を使用する.L1 の実験結果は「just
perforation(以下 JP)」であるため,RC 版に貫通口が生
じ,かつ飛翔体の残留速度が 0m/s となる場合を「JP」と
する.要素消去パラメータは,主ひずみとせん断ひずみに
つ い て 検 証 し ,裏 面 剥 離 は,引 張 側 の 圧 力 に よ る 消 去 判 定
を用いる.主ひずみ,およびせん断ひずみが 0.08, 引張側
Case
Damage
Deformation
Rebar
Reaction
[mm]
strain[‐ ]
Force[MN]
L1(900mm)
JP
―
―
25.0
L2(1150mm)
S
―
0.0325
30.0
L3(1350mm)
JS
130.0
0.0200
34.0
L4(1600mm)
C
25.0
0.0045
38.0
JP: just perforation
S: scabbing
JS: just scabbing
Rebar Strain[μ]
A n a ly s is re s u lt
10000
5000
0
1 0 .0
Fig4
2 0 .0
3 0 .0
T im e [ m s e c ]
4 0 .0
5 0 .0
Rebar strain time history
Reaction
Force[MN]
50
25
T e s t re s u lt
A n a ly s is re s u lt
L2
0
-25
-50
0 .0
1 0 .0
2 0 .0
3 0 .0
T im e [ m s e c ]
4 0 .0
5 0 .0
Reaction
50
Force[MN]
結言
本研究で以下の点を明らかにした.
(1)貫 通 が生 じない解 析 では,RC 版 の変 形 ,鉄 筋 ひずみ,
反力および,ひび割れ性 状 で実験 との高 い整合 性がえられ,
また,貫 通 が生 じる解 析 では,要 素 消 去 判 定 に主 ひずみ,ま
たはせん断ひずみ,裏 面 剥 離 には引 張 圧 力 を用 いると,実 験
とほぼ一致する結果がえられることを確認した.
(2)RC 版表 面に直 接 荷重 関 数を負 荷する方 法で貫 通 を模
擬するには,さらなる検討が必要である.
T e s t re s u lt
L4
15000
0 .0
25
T e s t r e s u lt
L3
A n a ly s is r e s u lt
0
-25
-50
0 .0
1 0 .0
50
Reaction
5.
20000
Force[MN]
の圧力は圧縮強度の 12.5%とすると, 「JP」の条件を満
たす結果が得られた.この時,L1 の RC 版が受ける反力
時刻歴を Fig.7 に,破壊状況を Fig.8 に示す.L1 の RC 版
が 受 け る 反 力 値 は 実 験 値 よ り 小 さ い が ,こ れ は 設 定 し た
反 力 測 定 領 域 が 要 素 消 去 に よ り 小 さ く な り ,全 体 と し て
反力が低下したためと考えられる.破壊モードを確認す
る と,裏 面 中 央 部 は 貫 通 し ,ひ び 割 れ が 全 面 に 広 が っ て お
り ,側 面 か ら 放 射 状 に ひ び 割 れ が 発 生 し て い る こ と が 確
認できる.しかし,貫通を模擬するにあたり, コンクリー
ト表面に直接荷重関数を定義する方法では,RC 版表面
の要素消去による破壊時に荷重を伝えることが難しく,
要素表面に圧力として荷重を定義する方法で貫通を表現
するには課題が残っている.
25
2 0 .0
3 0 .0
T im e [ m s e c ]
5 0 .0
T e s t r e s u lt
A n a ly s is r e s u lt
L4
0
4 0 .0
-25
-50
0 .0
1 0 .0
Fig5
C: penetration
Fig6
2 0 .0
3 0 .0
T im e [ m s e c ]
Time histories of
4 0 .0
5 0 .0
total reaction force
Damage of analysis
results of L4
Reaction
L1
Fig.1
L2
L3
L4
Damage of rear panel by experiments
σ1
Hydrostatic axis
T e s t r e s u lt
L1
25
A n a ly s is r e s u lt
0
-25
-50
0 .0
Fig7
1 0 .0
Time historiy
2 0 .0
3 0 .0
Tim e [ m se c ]
4 0 .0
of total reaction force of
5 0 .0
L1
σ3
σ2
Fig.2
Force[MN]
50
The principal appearance of the concrete failure
Displacement[mm]
surface
200
150
A n a ly s is r e s u lt
50
参考文献
0
0 .0
Displacement[mm]
T e s t r e s u lt
L3
100
1 0 .0
100
2 0 .0
3 0 .0
T im e [ s e c ]
5 0 .0
Damage of analysis
results of L1
(1)丹羽他,第 20 回計算力学講演会講演論文集,2007.11
Technology Corporation,(1970).
A n a ly s is re s u lt
50
(3)T. Sugano, et al.,Nuclear Engineering and Design, 140, 1993
25
(4) N.S.Ottosen , “Failure and Elasticity of Concrete.”RISOM
0
0 .0
Fig3
Fig8
(2)LS-DYNA User ’s Manual ver.971,Livermore Software
T e s t re s u lt
L4
75
4 0 .0
1 0 .0
2 0 .0
3 0 .0
T im e [ m s e c ]
4 0 .0
5 0 .0
Panel displacement time histories at the center
1801. 1975
(5) 藤田他,高強度コンクリートの破壊エネルギーに関する検討,2003