独立行政法人地域医療機能推進機構神戸中央病院

医学フォーラム
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<病 院 だ よ り>
独立行政法人地域医療機能推進機構 神戸中央病院
院長
は
じ
め
大 友
に
本院は戦後間もない 1948年に健康保険神戸
中央病院として神戸市中央区(当時は生田区)
に開設されました.1971年には社会保険神戸
中央病院と名称変更されました.その後,地域
からの強い要望を受け 1986年に神戸市北区南
部地域の基幹病院となるべく新築移転致しまし
た.神戸市北区はその広さは大阪市全体よりや
や広いほどの地域を占めています.その上,人
口は約 23万人と一般的な地方都市よりも多く,
六甲山系の大地の高台にあり隣接他区への移動
は特に高齢の患者さんにとってやや困難な状況
にあります.また公的病院は区内には当院含め
二つしかなく総合病院である当院への住民の皆
さんの期待は高いものがあります.1995年の
阪神・淡路大震災も皆様方の支援を受け,お陰
さまで乗り越えることができ大きく発展して参
りました.
病院の構成は許可病床 423床,この中には緩
和ケア病床 22床,I
CU6床,検診センターの宿
〒6511145兵庫県神戸市北区惣山町 2丁目11
敏 行
泊ドック 18床を含みますが,他は全て急性期病
床です.附属施設として病院と同敷地内に健康
管理センター,訪問看護ステーション,老人健
康福祉施設,地域包括支援センター,居宅介護
支援センター,看護専門学校など多様な関連施
設・機能を有しており,さらに神戸市中央区
ハーバーランド地区に附属の検診センターを開
設しています.
再 ス タ ー ト
昨年 4月から本院は厚生労働省所管の独立
行政法人地域医療機能推進機構が直接運営す
る公設・公営の病院として新しく再スタートし
ました.それまでの社会保険病院,厚生年金
病院と船員保険病院が一つのグループを形成
する形になりました.
漢字表記ではあまりに長
いの で 英 語 表 記 J
a
pa
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mmuni
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Or
g
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a
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o
nの頭文字 J
CHOをジェイコーと発
音して J
CHO神戸中央病院と呼んで頂くことに
なりました.この新機構は全国 57の傘下病院
をあげて地域医療に貢献することを最大のミッ
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医学フォーラム
ションとしています.具体的には国の医療計画
における 5疾病 5事業,リハビリテーションそ
の他地域において必要とされる医療及び介護を
提供する機能の確保を図ることを目的としてい
ます.また,急務となっている総合診療医の養
成に積極的に関与していく方針です.これまで
の専門分野の治療に加え,多数の併存する疾患
に対し,幅広い知識と的確な判断にて,専門医
との連携のもと,患者さんの立場に立った医療
の提供を目指しています.今後,益々増加を辿
る高齢者の方々にとって,併発する疾患をトー
タルに管理出来る環境でもあるともいえます.
J
CHO本部から NHKテレビでもドクター Gと
してお馴染みの,徳田安春先生に来院いただい
て総合内科の回診や症例検討会を毎月実施する
など,研修医を始め若手医師の教育にも繋がっ
ています.
また地域完結型医療・地域包括ケア構想に
「要」となる医療人育成にも力を入れていくこと
が求められています.我が国ではこれからの超
高齢化社会の到来に向け,持続可能な社会保障
制度の確立が急務となっていることがその根本
にあります.そこで地域包括ケアシステムを構
築することを通じ,地域における医療及び介護
の総合的な確保を推進するため,昨年 6月医療
介護総合確保推進法が制定されました.そして
秋から病床機能報告制度がスタートし,厚労省
は地域医療構想(ビジョン)策定に向けたガイ
ドラインを策定したところです.このガイドラ
インに沿ったビジョン(地域の医療提供体制の
将来のあるべき姿)は 2015年度中に示される予
定で,これをもとに都道府県は,二次医療圏ご
との医療機能(超急性期・急性期・回復期・慢
性期)を加味した医療必要量をもとに次の医療
計画を作成することになります.つまりこれま
でと違って,持続可能な社会保障制度を維持す
るためには,個々勝手に病院運営はできない時
代になりつつあるということでしょう.そのビ
ジョン実現のための具体的な方法論については
都道府県知事の権限が有効に使われるであろう
ことが明記されています.本院は公的病院の立
場をメリットとしてこの施策に沿った貢献がで
きるはずと考えています.当面は現在病院附属
の訪問看護ステーションと老人介護施設をそれ
ぞれパワーアップさせて強化型のステーション
あるいは在宅復帰支援機能の強化された老人保
健施設への転換を目指すところです.当然,両
附属施設とも看取り機能も充実する方向を出さ
ねばならず,そのためには病院からの支援策を
どのようにするかなどが今後の検討課題となっ
ています.
急性期病院として
当院は今後も急性期病院として貢献すること
を第一義に上げています.そのための基本は地
域住民のニーズに応えることと,地域の医療機
関の信頼を得ることに尽きます.このことを念
頭に年 3回,地域の 500人収容のホールを貸し
切って市民医療セミナーを開催しています.新
しく J
CHO病院になってからスタートしました
ので現在のところまだ 4回開催したところです
が,当院の診療部長が毎回持ち回りで当番世話
人となりその科のアピールしたい内容を伝える
ことにしています.また,同時にブースを設けて
無料で頚動脈エコーなどのサービスも行って,
検査を実体験していただいています.この場を
通じて病院の真摯な取り組みと熱意が伝わるよ
うに毎回院長によるご挨拶をさせていただいて
います.さらに今年度からは病院主催の地域の
開業医向けのセミナーも,年 3回実施する計画
を立てています.もちろん勉強会だけでなく近
隣医療機関へのサービス体制を充実させるべく,
開業医からの平日の当日 FAX予約診療も時間
の許す限り受け入れ,場合により診療所まで病
院車での患者お迎えサービスも昨年から実施し
て好評を得ています.
地元行政との連携も大切です.昨年度から地
域の若手救急隊員との症例検討会や懇談会も年
2回定期開催を決めました.当院は神戸市の 2
次救急輪番制のもと救急応需をしていますが,輪
番日以外にも積極受け入れを宣言し,救急車の
受け入れ実績も右肩上がりで増加し,月間では
250台を超えることが多くなり今後は年間 3000
台を目標にお役に立ちたいと思っています.
医学フォーラム
検
診
事
業
当院は古くから検診事業にも力を入れており
現在は本院だけでなくハーバーランドに附属の
検診センターを持ち,さらに検診バスで兵庫県
の日本海側まで廻っています.年々事業は拡大
しており今では年間 5万人を超える勢いです.
特にハーバーランドは地の利もよく好評を得て
います.それぞれ労基検診,一般検診から泊ま
りドックまで対応しています.この運営には病
院経営とは違った視点が必要で,営業活動の重
要性はもちろんですが,接客態度の質の高さが
求められます.最近の傾向としては特に乳がん
検診や婦人科検診などでは女性医師による検診
を望まれる声が高く,医師確保には苦労してい
ます.また検診者番号と病院カルテ番号を統一
した総合電子カルテ化や,インターネットを利
用した予約制度の導入も課題に上がっています.
研
修
医
研修医の募集定員は,管理型の病院自身の研
修医数が 4名,これに京都府立医大と神戸大学
から各 3名のたすき掛け研修医が加わり最大 1
学年 10名です.研修プログラム内容は厚労省
の指導ガイドラインに即したものですが,当院
の特徴はできる限り研修医個々の希望が叶うよ
うに計らって選択の幅を広げています.また,
伝統的にこの規模の病院にしては珍しく各診療
科の垣根が低く研修医でなくても,他部門の医
師同士が気軽に相談したりできる環境にありま
す.地域の中核病院としてさまざまな疾患に初
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診時から関わり,何が Co
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s
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a
s
eかを臨
床経験の中で習得出来る環境にあります.現場
主義,実践主義の観点より救急外来では最初に
研修医が診察,診断を行い治療方針を組立てる
よう指導しています.目の前の事態に瞬時に考
え対応する事で臨床能力が飛躍的に向上し,ま
た幅広い症例経験を積む中で,自らの臨床医像
が見えてくることを期待しています.さらに,
できるだけ早い時期から臨床の手技に参加させ
て,緊張感を持ちつつ能力を高めて行けるよう
な方向性を打ち出しています.常勤医師数も指
導体制も年々充実していると自負しています
が,さらに中堅医師の育成に注力したいと考え
ています.
お
わ
り
に
最後になりましたが,これから迎える超高齢
化時代に対応するため本年 4月から病院周辺の
巡回バスを運行することとなりました.病院は
やや高台に立地しその周辺も含めアップダウン
の多い地形です.公共交通機関の電車やバスだ
けでは通院困難な患者さんの増加を見込んでの
対応です.これからも急性期病院としてお役に
立ちたいと考えているため,長期安定した慢性
期疾患の外来患者さんはむしろ削減し,救急や
紹介患者さんのために頼られる存在で有り続け
たいと願っています.病院の外向きの抱負を
数々並べましたが,私の一番の願いは職員一人
ひとりが幸福感を持って仕事に当たってくれる
ことです.まだまだ十分達成されているとは言
えませんがこれからも努力してまいります.