国際規範と変動する東アジア――リベラル規範論の問題点 International

国際規範と変動する東アジア――リベラル規範論の問題点
International Norms and a Changing East Asia: The Problems of Liberal Normative Theories
今野茂充(東洋英和女学院大学)
台頭する中国は将来、既存の秩序を覆し、新しい規範を打ち立てながら、新秩序の樹立を目指
すようになるのか。それとも紆余曲折があったとしても、結局、中国は既存の(リベラルな)国際規範
を受け入れながら成長していくことを選択し、今後も基本的には現在の国際秩序が持続することに
なるのか。ロシアとのウクライナ問題の長期化や、「一帯一路」構想などに象徴される中国の存在感
の増大によって、「自由」や「民主主義」といったリベラルな理念の普遍性・優位性に対する欧米諸
国の自信が揺らぐなか、この大きな問題をめぐって各所で様々な論争が繰り広げられている。
本報告では、パワーシフトの過渡期(あるいはパワーシフトの行方が不透明な時期)における東
アジアの錯綜した国際規範の分布状況を解き明かすことを目的として、以下のような点について議
論をおこなう予定である。第一に、リベラルな理念の普遍性や優位を前提としている規範理論(リベ
ラリズムやコンストラクティヴィズムの諸理論)の東アジア地域への適用可能性について検討し、リベ
ラル規範論で何が説明できて、何が説明できないのかを明らかにする。第二に、こうしたリベラル規
範論の問題点を踏まえた上で、従来、理論研究の「縦割り」の弊害であまり考察されてこなかった、
パワーや利益との相互作用を考慮にいれた規範モデルについて検討する。第三に、冷戦終結以
降の日本と中国の規範状況(国際規範との関係)を概観した上で、日中両国の規範の受容・生成・
変化について図式化を試みる。
以上の議論を踏まえながら、最後に東アジア国際秩序の将来のシナリオや、東アジアにおける
規範共有の可能性についても考察してみたい。