日本における格付会社の将来に関する一考察 江川 由紀雄 (新生証券

日本における格付会社の将来に関する一考察
江川 由紀雄 (新生証券)
日本では、2010 年以降、金融商品取引法に基づく信用格付業者として、格付会社(外資
系にあっては、在日現地法人に限る)が登録制による規制業種化され、証券会社と同様に、
証券監督当局の監督下に置かれている。いっぽうで、登録を受けた信用格付業者7社全社
の年商は合計で 100 億円を上回る程度に過ぎず、日本における信用格付業界は、少数の中
小企業群であるという現実がある。また、日本では、現存する格付会社は各社とも設立以
来、一貫して、格付手数料を主な収益源とする「発行体支払モデル」を採用してきた。 か
つて1社のみ存在した発行体からは一切手数料を収受しない「投資家支払モデル」を採用
する格付会社は 2010 年末をもって廃業した。
日本において格付会社に規制が導入されるに至った背景に、米国の大手格付会社による
一部の住宅ローンの証券化商品や CDO などの格付けの失敗―不自然に甘い格付けの量産
と事後的な大幅格下げ―があった。こうした格付けの失敗の原因として、「発行体 支払モデ
ル」を背景とする利益相反問題が指摘され、米国では、これとは異なるビジネスモデルを
検討する動きも生じた。
バーゼル銀行監督委員会が 2014 年 12 月に公表した標準的手法の見直し案で、法人向け
与信や金融機関向け与信について、格付会社の格付けを参照してリスクウェイトを決定す
る方式を廃止することを提案している。こうした事例に見られるように、格付けの利用に
ついて見直される動きも生じている。
格付けの利用価値については、格付けの正確性、安定性、透明性(説明しやすさ)の3
点から評価が可能である。どの要素に重点を置くかによって、格付会社のビジネスモデル
および人件費などの運営コストが大きく異なってくることになる。
本報告では、格付けの利用価値の評価手法との関係において、日本において現状とは異
なるビジネスモデルの格付けが事業として成り立つのかについて考察を加える。 そのうえ
で、本報告では、日本で事業を行う格付会社の今後の展望を描くことを試みる。