軸ねじれ検証装置の解析

軸ねじれ検証装置の解析
E98033 岡崎
央
指導教員
Tm: 原動機のトルク
[N・m]
P:
電気的トルク
[N・m]
e
また
d θ
= ω ω:角速度(回転速度) [rad/s]
d t
P
Te = e P: 電気出力
[W]
e
ω
で表され,この式により軸ねじれ現象を解析する
ことができる。
この研究では励磁電圧 E x を制御することにより,
P e または Te を制御して軸ねじれ共振現象を抑制す
る励磁制御を行う。ここで電気的出力 P e は以下の
式で与えられる。
吾郎
Vt E x
sin δ
Xs
V:
端子電圧
t
Pe = 3
1.はじめに
1970,71 年にアメリカ,ネバタ州のモハベ発電
所で軸ねじれ共振現象による 2 度にわたる 790MW
タービンの軸切断現象が起きた。また,軸ねじれ
共振現象は,大型火力機・原子力機で観測される
現象である。この事故以来,軸ねじれに関する多
くの研究が行われている[1]。
直列コンデンサ適用系統での擾乱,系統事故や
それに引き続く高速再閉路などにより,線路電流
に LC 共振周波数成分が重畳する。この周波数成分
は,発電機の電気的トルク上では基本周波数との
差の周波数成分として現れる。定常時では、電気
的トルクは一定なので,上の式より角速度は一定
で,また軸ねじれトルクは発生しない。しかし,
電気的トルクの変化により,角速度は変化する。
これにより,発電機と原動機の角速度に差が生じ、
軸ねじれ振動が発生する。その結果、発電機の誘
導起電力にも影響を及ぼし,線路電流にもさらに
重畳する。以上のように電気系と機械系との間に
ループが形成され、軸ねじれ振動が共振・発散す
る。
発電機の機械系運動方程式は,
d 2θ
d θ
J
+ Dr
= Tm − Te
2
d t
d t
ただし
J:発電機の回転子の慣性定数
[N・m/s2 ]
D:
[N・m・s/rad]
r 発電機の回転制動係数
藤田
ただし
[V]
E:
励磁電圧
[V]
x
X:
s 同期リアクタンス [Ω]
δ:電力相差角
[rad]
2. 研究手順
図 1 にタンデム形タービン発電機の構成を示す。
発電機
低圧
中圧
図1
タービン発電機
高圧
右側から,高圧タービン,中圧タービン,低圧
タービン,発電機である。それらを結ぶ線は、軸
(shaft)を表している。
本研究では,小モデル化するためにタービンを
単相誘導電動機で模擬している。その構成は図 2
の実験モデルに示している。発電機と単相誘導電
動機との間の軸は,軸ねじれ現象を視覚的にとら
えやすくするためにバネを取り付けた。なおこの
実験モデルの製作は担当者を分け,分担している。
解析については,図2の小モデルを MATLAB の
SIMULINK で作成し,同期発電機,単相誘導電動
機などのパラメータを設定して,シミュレーショ
ンを行う。定常状態の運転を励磁電圧 2[V]とし,
回転速度を 2π×24.7[rad/s]とした。
同期
単相
単相
単相
発電機
誘導電動
誘導電動
誘導電動
図2
実験モデル
3. シミュレーションモデル
シミュレーションモデルを図 3 に示す。単相誘
導電動機 1 台を原動機として,同期発電機を回す
図 で あ る 。 同 期 発 電 機 (Synchronous motor
Subsystem)の入力は,左上から外部トルク,電気的
トルク,励磁入力で,出力は,右上から角速度[rad/s],
位相角[rad],出力電圧[V]である。単相誘導電動機
(Single phase induction motor Subsystem)入力は,左
側の外部トルク,出力は,右上からすべり,角速
度[rad/s],位相角[rad],電気的トルクである。右上
にある負荷システム(System Load)で,同期発電機か
ら供給する電力を計算している。入力は,角速度
と出力電圧であり,出力は,有効電力と無効電力
である。
生している。30 秒以降になると,同期発電機,単
相誘導電動機も回転速度は等しくなり,軸は,安
定した回転速度で,24.7[rps]で回転している。この
時の原動機トルクと電気的トルクが一定の値をと
っていると考えられる。
28
同期発電機
単相誘導電動機
27
26
1/(2*pi)
omega[Hz]
omega
Electrical output
Active Power
Voltage
delta
Reactive Power
Terminator
System Load
図5
1
omega
回転速度[rps]
25
Extemal Torque
シミュレーションモデル
24
23
22
Excitor input output Voltge
4.結果
synchronous motor Subsystem
21
Excitor input
Load Voltage[V]
20
40
-1
45
図5
spring constant
slip
Slip No.1
omega
1/(2*pi)
Extermal Torque
180/pi
delta
omega1[Hz]
Electric Torque
delta1[deg]
Single phase Induction motor1 Subsystem
図3
Electric Torque No.1
シミュレーションモデル
4. 解析例
27
同期発電機
単相誘導電動機
26.5
25.5
回転速度[rps]
55
60
65
70
誘導機の電源を遮断した場合
図 5 は,図 4 の定常運転に至った後,50 秒後に
単相誘導電動機の電源を1秒間,遮断したときの
回転速度の波形である。単相誘導電動機 (原動機)
の回転速度は,1秒後再起動したときも,回転速
度の変位(定常運転の回転速度 24.7[rps]を基準とす
る時)は小さい。それと比較して同期発電機の回転
速度の変位はかなり大きく,24.7[rps]にほぼ一定に
なるまでに 20 秒間も要する。また,単相誘導電動
機を再起動したときの瞬間が,発電機と単相誘導
電動機の回転速度の差がもっとも大きいことが分
かる。原動機トルクの変化が,電気的トルクにも
影響を与えたことにより,同期発電機の回転速度
の変化が大きくなったように考えられる。
5. まとめ
26
25
24.5
24
23.5
23
50
時間[s]
0.165
0
10
20
30
40
50
60
70
時間[s]
図4
定常運転の場合
図 4 は,図 3 のモデルにおいて,励磁電圧 2[V]
で定常運転した場合,単相誘導電動機,同期発電
機のそれぞれの回転速度[rps]の波形である。最初の
立ち上がりでは,同期発電機,単相誘導電動機も
回転速度が等しくならないで,軸ねじれ現象が発
図 5 より,原動機の回転速度が変位すると,発
電機の回転速度の変位は大きくなる。また軸ねじ
れ偏差も大きくなり,軸の疲労が大きいと考えら
れる。今後は,引き続き励磁制御モデルを構築し,
軸ねじれ現象の抑制方法について検証を進める予
定である。また今回は,原動機を単相誘導電動機 1
台としているが,原動機を単相誘導電動機 3 台と
したモデルに対しても検討する予定である。原動
機の電源を遮断して,回転速度を見てきたが,今
後は,系統の外乱を発生したときに近い状態のモ
デルを作成し,励磁制御を用いたときの軸トルク
抑制効果について検討していく予定である。
文献
[1] 小林直樹・原築志・田能村顕一・小柳薫・武井明「軸
ねじれ振動対策を考慮した直列コンデンサのオンオ
フ離散制御」電気学会電力・エネルギー部門誌
(B),vol.117-B,No.7,1997