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第6学年東組
道徳の時間学習指導案
指導者
1
主題名
広い心をもって
2
資料名
ブランコ乗りとピエロ
3
主題設定の理由
(1)
進
藤
博
子
2-(4) 謙虚・広い心
(
「私たちの道徳」文部科学省)
ねらいにかかわる子どもの姿
男子8名、女子4名の明るく素直な子どもたちである。男女の割合がアンバランスで
あるが、お互い協力し合って活動している。4月から最上級生となり、登校班や委員会
活動、としまっ子活動など、全校のリーダーとして責任をもって行動することを頑張っ
ている。
しかし、学級全体やグループ活動などで話し合いをする際に、自分に都合のよい意見
を主張したり、自分の意見を正しいものとして押し通してしまったりというような、相
手の立場や気持ちを考えることのできない言動が見られることがある。自分と異なる意
見が出されると、一方的に反対意見を述べるだけで、相手の意見を共感的に受け止める
ことができない場面も見受けられる。また、休み時間など、みんなの意見や行動に協調
できないことで仲良く遊ぶことができず、孤立しがちな子どももいる。
そこで、自分と異なった見方や考え方を認め、相手の立場に立って考える態度を育て
ると共に、相手の意見や過ちなどに対しても、広い心で受け止め、対処できるように導
いていきたい。
(2)
ねらいとする価値について
本時で取り上げる内容項目は、2-(4)「謙虚な心をもち、広い心で自分と異なる
意見や立場を大切にする。」である。高学年になってくると、お互いのものの見方、考
え方の違いをこれまで以上に意識するようになる。また、社会生活において、自分の考
えをはっきりともって強く主張することは大切なことである。しかし、同時に相手の立
場や気持ちを考え、異なった意見に対しても広い心をもって対処しようとする姿勢がな
ければならない。自分も失敗や過ちを犯すことがあり、相手も自分と同様なのだという
ことに気付くことが重要である。自分の考えをしっかりもち、お互いに主張し合うこと
も大切であるが、対立した考えであっても相手の立場に立って考え、よいところは謙虚
に認め、広い心で受け入れていくことの大切さに気付くようにしていきたい。
(3)
資料について
本資料は、サーカスの舞台裏に生じた、サーカス団のリーダーであるピエロと、入団
したばかりのブランコ乗りの二人の対立に焦点を当て、自分を大切にしながらも相手を
尊重していくためには、どのような見方や考え方をすることが大切なのかを考えること
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のできるように構成されたものである。特に後半部分では、相手の立場を尊重し、ブラ
ンコ乗りの努力を認めようと心を開いたピエロの広い寛容と謙虚な心の素晴らしさに気
付かせたい。
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学びを支えるために
(1)
視点を明確にし、焦点化した話し合いの仕方の工夫
本時の中心発問に迫るために、ブランコ乗りサムの行動について、ピエロの立場か
ら考え、「許せる?」「許せない?」という視点を与えて、話し合いを進めていくよう
にする。また、発問を焦点化するようにし、十分に時間をかけて話し合いをすること
ができるように配慮する。
(2)
思考を助ける資料提示や板書の工夫
本資料の中心となるピエロとブランコ乗りサムの絵を掲示することで、二人に焦点
を当てて話し合う雰囲気作りをする。また、出された意見を分かりやすく黒板にまと
め、視覚的に学習内容が理解できるような工夫をする。
(3)
アンケートの活用
自分はどんな出来事なら許せるのか、また、許せないのかについてあらかじめアン
ケートを取っておき、学習後の心情の変容にも活用していくようにする。
5
本時の実際(本時
(1)
1/1)
ねらい
ピエロの心の変容を読み取ることを通して、自分と異なる意見や立場を広い心で受け
止め、大切にしていこうとする心情を育てる。
(2)
学習の展開
(場所
6年東組教室)
過
程
主な学習活動
教師のかかわり
★評価【評価方法】
(時間)
つかむ (5分)
1
資料「ブランコ乗りとピエロ」を読
み、話し合う。
・ピエロとブランコ乗りサムの絵を掲示し、
○登場人物やあらすじなどについて確
認する。
二人の立場を簡単に説明してから、資料の
前半部分を黙読するようにする。
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学
○ブランコ乗りサムの態度は許せるか ・自分の立場を明らかにしてから意見を述べ
び
許せないかについて話し合う。
るように促す。
合
・ネームプレートを使用し、誰がどのような
う (
意見を行ったのかを視覚的にとらえること
ができるようにする。
分)
20
○ピエロの心の中から、サムを憎む気 ・ピエロとサムの双方の心情の歩み寄りに気
ひ ろ げ る
2
持ちが消えたのはどうしてなのかに
付くことができるように、補助発問を工夫
ついて話し合う。
する。
相手を広い心で受け入れるためには ・なかなか意見が出ない場合は、自分の経験
どのようなことが必要か考える。
から考えたり、「私たちの道徳」に書かれ
ている3つの視点を活用したりする。
(
アンケート結果を見て感じたことを ・学習後、「許せる」という内容が増えるこ
分)
12 3
出し合う。
とで、広い心をもって寛容に行動していこ
うとする心情を高めていく。
振 り 返 る (8分)
4
本時の学習の振り返りを書く。
・実践化につなげていくことができるような
視点で振り返りを書くことができるように
シートの工夫をする。
★自分と異なる意見や立場を広い心で受け
止めていこうとすることができる。
5
教師の説話を聞く。
【ワークシート・発言】
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1
「広い心をもって」の実践を振り返って
(1)
進んで自分の思いを伝え合う話し合い活動にするために
①
話し合いの視点の明確化
話し合い活動を活発化するためにまず必要なことは、子どもたち一人一人が自分なり
の考えをもち、分かりやすく友達に伝
えることであると考える。そのために
話し合いの視点を焦点化し、明確に示
すようにした。本時ではまず始めに、
サーカス団のリーダーであるピエロの
言うことを聞かず、自分勝手な行動を
とったブランコ乗りサムの行動につい
て「許せるか」「許せないか」という
問いかけをし、全員が意見を言う時間
を確保した。ほとんどの子どもたちが
「自分勝手な行動が許せない」としてい
たが、サムの行動に共感できるという
意見も出され、活発な意見交換がなさ
れた。(写真1)
②
話型の利用
自分の考えを述べる際には、聞き手に分かりやすく伝えることが大切である。結論を
先に述べ、理由をその後で言うなど、どのような言い方をすると聞き手に分かりやすい
かについては、話型を利用するようにした。様々な話型が書かれているシートを常に机
上の見える所に置いておくとともに、教室の前面にも掲示しておき、いつでもこれらの
話型を利用できるようにしておいた。
③
板書の工夫
学習の流れがよく分かるように板書の
工夫をするのは当たり前のことであるが、
本時では、ピエロとサムという2人に焦
点を当てて考えていくということを視覚
的に印象付けていくため、授業の始めか
らその絵を掲示しておいた。
また、ネームプレートを使用し、だれ
がどんな意見を述べたのかが分かるよう
にしていくようにした。(写真2)
(2)
アンケートの活用
本時では、事前に子どもたちへ「様々な場面の
中で自分ならどのようなことなら許せるか」とい
う内容のアンケートを行った。ここでのアンケー
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ト項目は、早稲田実業学校初等部教頭の東風安生
先生の文献を参考にさせていただいた。
アンケートの結果はグラフに表して授業の後半
に活用した。特に今回は、早稲田実業学校初等部
で実施されたアンケート結果と、本校6年生の結
果を対比して表してみたことで、それぞれの価値
観の違いも視覚的に捉えることができ、大変興味
深いものとなった。(写真3)
(3)
導入や説話は身近な話題で
本時を実施した時期に大きな話題となっていたのが、フィギュアスケートグランプ
リシリーズで負傷した羽生結弦選手のことであった。何人もが、朝のスピーチにこの
ニュースを選び紹介するなど、関心の高さがうかがえた。そんなこともあり、本時の
価値に迫る説話では、自分が大きな怪我をし、歩くのもままならない状況だったにも
かかわらず、衝突した相手である中国の閻涵(エンカン)選手を探し出し、怪我の様
子を訊ねて詫びを入れていた行動がまさに「広い心」であると思い、紹介することに
した。子どもたちも真剣に聞き入っていた。
(4) 授業を終えて
今回取り上げた指導内容である謙虚や
寛容という価値は、小学生にとって理解
するのが難しいものの一つであると思わ
れる。でも、今回の授業を終えた後、機
会あるごとに子どもたちから「広い心で
許すことが大事だね。」という声が上がる
ようになった。授業内容が子どもたちの
心に響き、その後の実践化に結び付いた
と思われる。(写真4)
〔授業後の振り返りから〕
*自分のことや相手のことを考えてサムを許したところがすごいと思いました。少し
のことで許せないのではなく、相手の立場になって考えてみてから行動していこう
と思います。
*ピエロはサムの自分勝手な行動を許すことができたので、とても広い心の持ち主な
んだなあと思いました。自分も、何かをされてもわざとではないなら、ピエロと同
じように広い心で許すようにしていきたいです。
*サムが力いっぱいがんばっているからピエロの気持ちも変化したと思います。これ
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からは互いに認め合い、受け入れ合って生きていくことが大切だと思います。相手
の気持ちに寄り添ってこれから考えていきたいです。
2
成果と今後の課題
(1) 成果
○焦点化された発問をすることにより、子どもたち全員が意見を発表することができた。
また、ネームプレートを用い、誰がどのような意見を述べたかを板書し可視化したこ
とにより、意見交換を活発に行うことができた。
○事前にアンケートを取り、その結果をグラフに表して提示したことは、価値の一般化
を図るよい機会となった。今回は東京の小学生の結果と比較したことで、本校の子ど
もたちの考え方の特徴(価値観)も捉えることができた。
(2)
課題
○今回は対立する意見が出されたことで意見交換が活発化したのであるが、もし、意
見の対立がなかった場合の展開の仕方についてあらかじめ腹案をもっておく必要が
ある。
○教師主導ではなく、子ども同士で意見を交わし合うことができるように、さらに学
び合いの仕方について工夫していきたい。
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