1 動 力 伝 達 に つ い て モータやエンジンなどの原動機から力が伝わって動いている機器は、何らかの 方法で動力伝達をしています。歯車や減速機をダイレクトに接続している機種 もありますが、ベルトやチェーンを使っている機種もあります。ベルトとチェ ーンでは使われている部品やメンテナンスの方法も違って来ます。 ベルトによる動力伝達 ベルト駆動の長所 ・チェーンに比べ伝動効率は悪いが安価。 ・潤滑の必要がないので維持管理がしやすい。 ・騒音が少ない。 ・機器のレイアウトの自由度がある。 ・衝撃や過負荷がかかった場合にはスリップして機械を保護する。 ベルト駆動の短所 ・摩擦力で動力を伝達しているので、強い力は伝達しにくい。 ・耐久性に限界がある。 ・切れることを想定内にする。 ・高温には適さない。 ベルトの種類 工業的には様々なタイプがあります。大別すると「平ベルト」と「Vベルト」 に別けられます。焙煎機などには「Vベルト」が多く採用されています。 Vベルト 断面形状が台形(V字)をしたベルトのことです。 引っ掛ける滑車(プーリー)にV字形の溝があり、負荷を掛けるとベルトが クサビのように喰い込んで比較的高いトルクを伝達できます。 Vベルトの規格 日本工業規格(JIS)に規定があり、細かく分類されています。 最も汎用性がある一般用Vベルトには「M」「A」~「D」までの約5種類 があって、使用条件によって使い別けがされています。 「M」から順番に断面 形状が大きく(太く)なって高いトルクが伝達できるようになっています。 Vベルトの寿命 経時変化で、ゴムが硬化して弾力性が無くなり、最悪の場合、破断します。 2 点検の目安 点検は毎年、定期的に実施します。破断する前に早めに交換をして下さい。 マイスター10(初期ダンパー仕様) V プーリー (滑 車) V ベルト 亀裂箇所 亀裂が入ったり破断する前兆として、弾力性の低下、硬化などが見られます。 3 ベルトの交換 Vベルトの背面に書かれている品番を確認します。 Vベルト「A」形の断面寸法 Vベルト「B」形の断面寸法 A(形)・・・ ベルトの形状 (スタンダード品) 40 ・・・・呼び番号 (円周の長さをインチで表しています) 25.4mm(1インチ)× 40(呼び番号) = 1016mm(円周) 焙煎機などに使われているタイプは、最も普及している「A」形が多い。 ホームセンターに行けば普通に売っているベルトです。約700円前後。 4 呼び番号(円周の長さ)が小プーリーと大プーリーの芯間を決めています。 購入の際は背番号をよく確認して下さい。1番違っても芯間が合いません。 日々のメンテナンスで亀裂などを発見したら、早めの交換をして下さい。 単価的に安価なので、常に予備品をストックして置けば安心です。 代表的なVベルトメーカー ・三ッ星ベルト株式会社(WEBサイトあり) ・バンドー化学株式会社(WEBサイトあり) チェーンによる動力伝達 チェーン駆動の長所 ・伝動に滑りが無く、確実に動力の伝達が出来る。 ・汎用性があり部品の調達、取替えが容易で経済的。 ・ベルトに比べ、同一トルクでスプロケット径を小さく出来る。 ・ギヤに比べ、高い衝撃吸収能力を持つ。 チェーン駆動の短所 ・メンテナンスの状況で機械効率や寿命に差が出る。 ・経年で「伸び」が出るのでテークアップ装置を設ける必要がある。 ・磨耗や潤滑油が切れると異音が出る。 チェーンの種類 工業的には細かい分類があります。伝動用チェーンと、自動車やオートバイ のチェーンとは、基本的な構造は同じですが、工業的には別の規格です。 一般的な伝動用チェーンは「標準形ローラチェーン」と呼ばれています。 ローラチェーン 駆動するには、 「スプロケット」というホイールに掛けて動力伝達をします。 スプロケットの事を、ギヤとか歯車と呼ぶ人もいますが、工業的には明確に 区別されるものです。「チェーンホイール」と呼ぶ場合もあります。 ローラチェーンの規格 日本工業規格(JIS)に規格があり(JIS B 1801)用途別に分類 されます。 ローラチェーンは、サイズ別に呼び番号があり、小さい方から25、35、 40、50、60、80~、それ以上は20番飛びに番号が大きくなって、 200番辺りまでが汎用性(実用)がある。最大400番ぐらいまで。 5 ローラチェーンの寿命 使用頻度によってローラを支えているピン(軸)が摩耗して、強度が極端に 落ちる場合があります。定期的な給油、メンテナンス管理は必須です。 ローラチェーンの構造 ローラチェーンの寸法 単列40番(例) W : リンク内幅 7.95mm H : リンク高さ 12.0mm P : チェーンピッチ 12.70mm φD : ローラ径 7.92mm JIS引張強さ : 13.9kN(約1418kgf) (寸法参照:株式会社 椿本チエイン RS 40-1) 6 チェーンの駆動装置 ローラチェーン スプロケット 注)ギヤ、歯車と は呼びません。 この写真は、チェーンの呼び番号、40番(JIS)の「ローラチェーン」 と「スプロケット」を組み合わせたチェーン駆動装置です。 ローラチェーンへの給油は写真で示すように、プレート側(両端)の位置。 真ん中(ローラの上)にしてもローラとピン(軸)との間まで潤滑油が浸透 しないので給油の意味がありません。飛散しやすいので裏にウエス(布切れ) などを当てて、給油します。(給油は機械を止めて安全を確認して下さい) 代表的なローラチェーンメーカー ・株式会社 椿本チエイン(WEBサイトあり) ・日立機材株式会社(WEBサイトあり) 7 歯車による動力伝達 歯車駆動の長所 ・比較的伝達効率を落さずに確実に動力を伝達できる。 歯車駆動の短所 ・騒音が大きくなる。 ・潤滑油の補給や、組立て精度が難しくなる。 歯車の種類 使われる用途によって詳細な分類と種類があります。大別して「平歯車」 「かさ歯車」 「ウオーム」 「ラック」などに分類されます。ここでは、汎用性 の高い一般的な平歯車を基準に記述します。 歯車の規格 歯車は英語で「gear」と書きます。紛らわしい言い方も存在していますが、 日本工業規格(JIS)では「ギヤ」と表記されます。噛み合う歯によって、 転がり接触を行いながら回転動力を伝えます。 歯車の「歯の大きさ」はメートル式のモジュール(m)mmで表されます。 モジュール(m)とは 歯車のピッチ円直径(d)mm を、歯数(Z)で割った値 m = d/Z 出展:小原歯車工業株式会社 WEBサイト 8 この値に比例して、歯の大きさ、歯車の大きさが決まってくるので、伝える 動力の強さでその都度計算しなければなりません。 当然、一対になる歯車は、歯の大きさが同じでなければ、歯車として機能し ません。モジュールは、歯の基準になる最も基本的な値です。計算式が示す 通り、モジュールの値が大きい方が、歯の大きさが大きくなります。 バックラッシ 歯車を噛み合わせた時の、歯と歯のすき間、「遊び」のことをいいます。 出展:小原歯車工業株式会社 WEBサイト 9 一般的に、歯車は食い込み過ぎる状態になると動き難くなります。バックラ ッシが少ないと摩擦が大きくなり、破損を起こしやすくなります。それを見 込んで組む時に「遊び」を設けます。(現場での呼称は、バックラッシュ) しかし、遊びが大き過ぎても、歯の噛み合いが悪くなり、騒音も大きくなり ます。精密な機械には「ノンバックラッシ」を施すものもあります。 歯車の寿命 使用頻度の程度で歯が磨耗でやせたり、潤滑が悪い場合は「かじり」という キズが入ったり、長い間では噛み合せが悪くなってしまいます。最悪の場合、 疲労損傷を起こしてしまう事があります。長期的には歯車も消耗品です。 マイスター5(歯車によるダイレクト駆動) 釜の軸側歯車 歯数:50 モータ側歯車 歯数:30 平歯車の組合せで、モジュールは「2.5」です。 どちらも鋼製の平歯車なので、同じロットで作り、バックラッシも同じよう に調整しても音が違います。 材質は炭素鋼(S45C)です。歯の熱処理は高周波焼入れをしているタイプ を選定しています。潤滑油も使用頻度により常に補給する必要があります。 10 平歯車の組合せ(例) 炭素鋼 + 炭素鋼 炭素鋼 + MCナイロン 負荷トルクより計算して、歯車の持つ「歯の曲げ強さ」や「歯面強さ」の方 が大きければ、MCナイロン製の歯車と組み合わせる事も可能です。 騒音が小さくなり、自己潤滑があるので無給油に近い状態で使用できます。 歯車の代表的なメーカー ・小原歯車工業株式会社(WEBサイトあり) 記)大和鉄工所 岡 崎
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