動力伝達について

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動 力 伝 達 に つ い て
モータやエンジンなどの原動機から力が伝わって動いている機器は、何らかの
方法で動力伝達をしています。歯車や減速機をダイレクトに接続している機種
もありますが、ベルトやチェーンを使っている機種もあります。ベルトとチェ
ーンでは使われている部品やメンテナンスの方法も違って来ます。
ベルトによる動力伝達
ベルト駆動の長所
・チェーンに比べ伝動効率は悪いが安価。
・潤滑の必要がないので維持管理がしやすい。
・騒音が少ない。
・機器のレイアウトの自由度がある。
・衝撃や過負荷がかかった場合にはスリップして機械を保護する。
ベルト駆動の短所
・摩擦力で動力を伝達しているので、強い力は伝達しにくい。
・耐久性に限界がある。
・切れることを想定内にする。
・高温には適さない。
ベルトの種類
工業的には様々なタイプがあります。大別すると「平ベルト」と「Vベルト」
に別けられます。焙煎機などには「Vベルト」が多く採用されています。
Vベルト
断面形状が台形(V字)をしたベルトのことです。
引っ掛ける滑車(プーリー)にV字形の溝があり、負荷を掛けるとベルトが
クサビのように喰い込んで比較的高いトルクを伝達できます。
Vベルトの規格
日本工業規格(JIS)に規定があり、細かく分類されています。
最も汎用性がある一般用Vベルトには「M」「A」~「D」までの約5種類
があって、使用条件によって使い別けがされています。
「M」から順番に断面
形状が大きく(太く)なって高いトルクが伝達できるようになっています。
Vベルトの寿命
経時変化で、ゴムが硬化して弾力性が無くなり、最悪の場合、破断します。
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点検の目安
点検は毎年、定期的に実施します。破断する前に早めに交換をして下さい。
マイスター10(初期ダンパー仕様)
V プーリー
(滑 車)
V ベルト
亀裂箇所
亀裂が入ったり破断する前兆として、弾力性の低下、硬化などが見られます。
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ベルトの交換
Vベルトの背面に書かれている品番を確認します。
Vベルト「A」形の断面寸法
Vベルト「B」形の断面寸法
A(形)・・・ ベルトの形状 (スタンダード品)
40 ・・・・呼び番号 (円周の長さをインチで表しています)
25.4mm(1インチ)× 40(呼び番号) = 1016mm(円周)
焙煎機などに使われているタイプは、最も普及している「A」形が多い。
ホームセンターに行けば普通に売っているベルトです。約700円前後。
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呼び番号(円周の長さ)が小プーリーと大プーリーの芯間を決めています。
購入の際は背番号をよく確認して下さい。1番違っても芯間が合いません。
日々のメンテナンスで亀裂などを発見したら、早めの交換をして下さい。
単価的に安価なので、常に予備品をストックして置けば安心です。
代表的なVベルトメーカー
・三ッ星ベルト株式会社(WEBサイトあり)
・バンドー化学株式会社(WEBサイトあり)
チェーンによる動力伝達
チェーン駆動の長所
・伝動に滑りが無く、確実に動力の伝達が出来る。
・汎用性があり部品の調達、取替えが容易で経済的。
・ベルトに比べ、同一トルクでスプロケット径を小さく出来る。
・ギヤに比べ、高い衝撃吸収能力を持つ。
チェーン駆動の短所
・メンテナンスの状況で機械効率や寿命に差が出る。
・経年で「伸び」が出るのでテークアップ装置を設ける必要がある。
・磨耗や潤滑油が切れると異音が出る。
チェーンの種類
工業的には細かい分類があります。伝動用チェーンと、自動車やオートバイ
のチェーンとは、基本的な構造は同じですが、工業的には別の規格です。
一般的な伝動用チェーンは「標準形ローラチェーン」と呼ばれています。
ローラチェーン
駆動するには、
「スプロケット」というホイールに掛けて動力伝達をします。
スプロケットの事を、ギヤとか歯車と呼ぶ人もいますが、工業的には明確に
区別されるものです。「チェーンホイール」と呼ぶ場合もあります。
ローラチェーンの規格
日本工業規格(JIS)に規格があり(JIS B 1801)用途別に分類
されます。
ローラチェーンは、サイズ別に呼び番号があり、小さい方から25、35、
40、50、60、80~、それ以上は20番飛びに番号が大きくなって、
200番辺りまでが汎用性(実用)がある。最大400番ぐらいまで。
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ローラチェーンの寿命
使用頻度によってローラを支えているピン(軸)が摩耗して、強度が極端に
落ちる場合があります。定期的な給油、メンテナンス管理は必須です。
ローラチェーンの構造
ローラチェーンの寸法
単列40番(例)
W : リンク内幅 7.95mm
H : リンク高さ 12.0mm
P : チェーンピッチ 12.70mm
φD : ローラ径 7.92mm
JIS引張強さ : 13.9kN(約1418kgf)
(寸法参照:株式会社 椿本チエイン RS 40-1)
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チェーンの駆動装置
ローラチェーン
スプロケット
注)ギヤ、歯車と
は呼びません。
この写真は、チェーンの呼び番号、40番(JIS)の「ローラチェーン」
と「スプロケット」を組み合わせたチェーン駆動装置です。
ローラチェーンへの給油は写真で示すように、プレート側(両端)の位置。
真ん中(ローラの上)にしてもローラとピン(軸)との間まで潤滑油が浸透
しないので給油の意味がありません。飛散しやすいので裏にウエス(布切れ)
などを当てて、給油します。(給油は機械を止めて安全を確認して下さい)
代表的なローラチェーンメーカー
・株式会社 椿本チエイン(WEBサイトあり)
・日立機材株式会社(WEBサイトあり)
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歯車による動力伝達
歯車駆動の長所
・比較的伝達効率を落さずに確実に動力を伝達できる。
歯車駆動の短所
・騒音が大きくなる。
・潤滑油の補給や、組立て精度が難しくなる。
歯車の種類
使われる用途によって詳細な分類と種類があります。大別して「平歯車」
「かさ歯車」
「ウオーム」
「ラック」などに分類されます。ここでは、汎用性
の高い一般的な平歯車を基準に記述します。
歯車の規格
歯車は英語で「gear」と書きます。紛らわしい言い方も存在していますが、
日本工業規格(JIS)では「ギヤ」と表記されます。噛み合う歯によって、
転がり接触を行いながら回転動力を伝えます。
歯車の「歯の大きさ」はメートル式のモジュール(m)mmで表されます。
モジュール(m)とは
歯車のピッチ円直径(d)mm を、歯数(Z)で割った値
m = d/Z
出展:小原歯車工業株式会社 WEBサイト
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この値に比例して、歯の大きさ、歯車の大きさが決まってくるので、伝える
動力の強さでその都度計算しなければなりません。
当然、一対になる歯車は、歯の大きさが同じでなければ、歯車として機能し
ません。モジュールは、歯の基準になる最も基本的な値です。計算式が示す
通り、モジュールの値が大きい方が、歯の大きさが大きくなります。
バックラッシ
歯車を噛み合わせた時の、歯と歯のすき間、「遊び」のことをいいます。
出展:小原歯車工業株式会社 WEBサイト
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一般的に、歯車は食い込み過ぎる状態になると動き難くなります。バックラ
ッシが少ないと摩擦が大きくなり、破損を起こしやすくなります。それを見
込んで組む時に「遊び」を設けます。(現場での呼称は、バックラッシュ)
しかし、遊びが大き過ぎても、歯の噛み合いが悪くなり、騒音も大きくなり
ます。精密な機械には「ノンバックラッシ」を施すものもあります。
歯車の寿命
使用頻度の程度で歯が磨耗でやせたり、潤滑が悪い場合は「かじり」という
キズが入ったり、長い間では噛み合せが悪くなってしまいます。最悪の場合、
疲労損傷を起こしてしまう事があります。長期的には歯車も消耗品です。
マイスター5(歯車によるダイレクト駆動)
釜の軸側歯車
歯数:50
モータ側歯車
歯数:30
平歯車の組合せで、モジュールは「2.5」です。
どちらも鋼製の平歯車なので、同じロットで作り、バックラッシも同じよう
に調整しても音が違います。
材質は炭素鋼(S45C)です。歯の熱処理は高周波焼入れをしているタイプ
を選定しています。潤滑油も使用頻度により常に補給する必要があります。
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平歯車の組合せ(例)
炭素鋼 + 炭素鋼
炭素鋼 + MCナイロン
負荷トルクより計算して、歯車の持つ「歯の曲げ強さ」や「歯面強さ」の方
が大きければ、MCナイロン製の歯車と組み合わせる事も可能です。
騒音が小さくなり、自己潤滑があるので無給油に近い状態で使用できます。
歯車の代表的なメーカー
・小原歯車工業株式会社(WEBサイトあり)
記)大和鉄工所
岡
崎