トランジット 法による低温度星まわりの地球型惑星探

低温度星のまわりの
生命居住可能惑星を探そう!
成田憲保(国立天文台)
目次
• 自己紹介
• 太陽系外惑星の研究の現状
• 低温度星と生命居住可能惑星
• 将来の研究の展望
自己紹介
1981年2月生まれ
1993年4月~ 千葉・東邦大学付属東邦中学・高校
1999年4月~ 東大理科一類(2001年物理学科へ)
2003年4月~ 東大大学院・宇宙理論研究室進学
2008年3月
東大博士課程修了
2008年4月~ 国立天文台・研究員
研究テーマは太陽系外惑星の観測
太陽系外惑星がどうやってできたのか?
太陽系外惑星はどんな環境なのか?
太陽系外惑星とは?
• 太陽以外の恒星(夜空の星)のまわりにある惑星
• 1995年に初めて発見され、今では500個以上が知ら
れている
• どうやって探すのか?
太陽系外惑星は直接見るのが難しい
暗いもののそばに明るいものがあると
何も見えなくなってしまう
すばる望遠鏡では恒星を隠す装置を作って
2009年に惑星を発見した
恒星のスピード測定
恒星を惑星が公転していると、恒星も少しだけ動く
恒星
惑星
ドップラー効果を使って
この速度を望遠鏡の装置で測定する
(野球のボールのスピード測定と一緒)
・太陽は木星のせいで 約10m/s でふらついている
・現在の望遠鏡の装置は 約1m/s まで測定可
・将来はもっと小さな動きまで測れる
→小さな惑星まで発見できるようになる
惑星が恒星の前を通るのを見る
太陽系でのトランジット
太陽系外でも
2006年11月9日 「ひので」撮影
水星のトランジット
ちょっとだけ暗くなる
惑星が恒星の前を通る食(トランジット)を探す!
Kepler(ケプラー)計画
 2009年3月6日打ち上げ
 NASAを中心とした欧米の共
同研究チーム
 1m望遠鏡でトランジット探し
 地球以下(水星)の大きさの惑
星まで発見可能
 ~50個の地球サイズの惑星が
発見できるという見積り
(NASAより)
Keplerが打ちあがる前に知られていた惑星
HAT-P-11
(Kepler-3)
HAT-P-7
(Kepler-2)
TrES-2
(Kepler-1)
Keplerが最初の4か月で発見した惑星候補
地球サイズ
<1.25 RE
スーパーアース
海王星サイズ
木星サイズ
1235個の惑星候補の発見
どんな系外惑星が見つかったのか?
1995年まで私たちが知っていたのは太陽系の惑星だけだった
最初(1995年)に見つかった惑星
• 公転周期 ~ 4日! (水星でも88日)
• 恒星(太陽)からの距離
= 地球と太陽の距離の20分の1
• 表面の温度 ~ 1000度
• 惑星の大きさ → 太陽系の木星サイズ
灼熱の巨大ガス惑星
→ ホットジュピター
HD80606bという惑星の軌道
近いところは恒星のすぐそば
遠いところは地球あたり
軌道が細長いだ円の惑星
→ エキセントリックプラネット
恒星の自転と逆向きに公転する惑星
→ 逆行惑星
2009年11月5日のニュース
有名なスーパーアース
GJ1214bのイメージ図
地球と海王星の中間の大きさの惑星
→ スーパーアース
これまでにわかったこと
太陽系にはないさまざまな惑星がある
・ホットジュピター
・エキセントリックプラネット
・逆行惑星
・スーパーアース
まだ生命の痕跡が確認された惑星は見つかってない
それを探すのがこれからの天文学者の仕事!
目次
• 自己紹介
• 太陽系外惑星の研究の現状
• 低温度星と生命居住可能惑星
• 将来の研究の展望
低温度星とは
• 宇宙で最も多く存在する恒星
– 太陽系近傍にも数多く存在している
• 主星の質量が太陽の0.1-0.5倍程度で、
温度は2000-3800K (太陽は約5800K)
• 可視光では暗く、近赤外で明るい
• 世界中で低温度星まわりの生命居住
可能惑星の探索が始まっている
生命居住可能領域(ハビタブルゾーン)
主星からの距離がちょうど良く、惑星表面に液体の水を保持できる領域
1.0
主星の質量(太陽質量)
地球
木星
0.5
低質量星
↓
低温度星
0.1
0.01
0.1
1.0
軌道長半径 (AU)
10.0
低温度星の生命居住可能惑星の特徴
• 主星の温度が低いので生命居住可能領域が主星に近い
– 軌道長半径が0.01~0.1天文単位(太陽と地球の距離の10-100分の1)
– 公転周期が数日~数十日
• 可視光が弱く、近赤外の光の方が強い
• 「潮汐固定」によって惑星が常に同じ面を主星に向けている
– 月が常に地球に同じ面を向けているのと同じ現象
同じ生命居住可能惑星でも地球とは大きく異なった環境
太陽系近傍の低温度星が注目されているか?
• 低温度星ではハビタブルゾーンが主星に近く、生命居住可能
惑星がトランジットする確率が高い
• 公転周期が短いので発見や追観測にかかる時間が短い
• トランジット惑星では惑星の大気を調べることができるので、
発見された後で生命の痕跡を探すことができる
• そのため低温度星の(ハビタブルな)トランジット惑星探しとそ
のフォローアップ観測は、今後系外惑星研究のひとつの主流
になると期待されている
現在の課題
• そもそも、まず惑星を見つけないと研究できない
– 観測で探す研究が必要
• 見つけた後で何を生命の証拠として探せばいいの?
– 生物学的な理論研究が必要
• その証拠を探すための装置を作らないといけない
– 装置開発の研究が必要
さまざまな研究分野の人間(特に若手)が協力する必要がある
若手研究者による分野間連携研究プロジェクト
低温度星まわりの生命居住可能惑星における
植物特性の考察とその観測に向けて
国立天文台・太陽系外惑星探査プロジェクト室
成田憲保
どのように生命の兆候を探すか?
私たちが注目したのは「植物」(光合成生物)
– 主星の光を利用する「光合成」を行う一次生産者
– 地球の歴史上、もっとも大きく地球大気環境を変えた生物
• 低温度星の生命居住可能惑星の植物はどんな特性を持つ
だろうか?(理論研究の必要性)
• どこを探せばよいだろうか?(観測研究の必要性)
• どうやって探せばよいだろうか?(装置開発の必要性)
若手研究者の分野間連携を確立し、この課題に取り組みたい
自然科学研究機構の研究プロジェクトとして採択
グループメンバー
氏名
所属機関・職
専門分野
役割
成田憲保
国立天文台PD
天文学
観測
滝澤謙二
基礎生物学研究所PD
生物学
理論
皆川純
基礎生物学研究所教授
生物学
理論
松尾太郎
国立天文台PD
天文学・工学
装置
田村元秀
国立天文台准教授
天文学
観測
生駒大洋
東京工業大学助教
地球惑星科学
理論
村上尚史
北海道大学助教
天文学・工学
装置
小谷隆行
宇宙科学研究所PD
天文学・工学
装置
Eric Gaidos
ハワイ大学教授
地球惑星科学
観測
3つの研究テーマ
• テーマA: 地球とは異なる惑星環境での植物特性の考察
– 滝澤謙二(基生研)、皆川純(基生研)、生駒大洋(東工大)
• テーマB: 実際の観測による生命居住可能惑星の探索
– 成田憲保(国立天文台)、田村元秀(国立天文台)、Eric Gaidos(ハワイ大)
• テーマC: 将来の30m級望遠鏡に向けた装置開発
– 松尾太郎(国立天文台)、小谷隆行(宇宙研)、村上尚史(北大)
目次
• 自己紹介
• 太陽系外惑星の研究の現状
• 低温度星と生命居住可能惑星
• 将来の研究の展望
今年から低温度星の惑星探しを開始
 トランジット法を用いた惑星探し
 今後観測するターゲットカタログの選定
 自動解析ソフトウェアの開発
岡山188cm望遠鏡
IRSF1.4m望遠鏡
miniTAO1m望遠鏡
すばる望遠鏡の新装置で追観測
• トランジットで発見された惑星の質量や軌道を決定(2014年~)
• ドップラー法でも新しい生命居住可能惑星を探索
将来の宇宙望遠鏡計画
ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡
(2018年以降)
スピカ
(2018年以降)
赤外線を使って水・二酸化炭素・オゾンなどを探す
将来の地上超大型望遠鏡計画
すばるの近くに建設が決まった30m望遠鏡
2018年以降
可視光で酸素などを探し、直接撮像にも挑む
まとめ
• 系外惑星は1995年から本格的に始まった新しい研究テーマ
• これから低温度星のまわりを公転する生命居住可能惑星の
探索が本格的に開始される
• 今後の10年、20年は宇宙に生命を育む系外惑星を探す研
究が面白い
• 特に今の子どもたちの世代の参加を待っています!