3 高コレステロール血症ウサギにおいて末梢動脈収縮

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英文原著論文紹介 ③高血圧
Subservient relationship of the peripheral second systolic pressure
peak to the central hemodynamic parameters is preserved,
irrespective of atherosclerosis progression in hypercholesterolemic
rabbits.
Katsuda S, Miyashita H, Shimada K, Miyawaki Y, Kojima I, Shiogai Y, Hazama A.
Hypertens Res 2014; 37: 19-25. PMID: 24048488
高コレステロール血症ウサギにおいて末梢動脈収縮期第 2 血圧の
中心血圧および循環動態パラメーターに対する追従性は
粥状硬化の進展にかかわらず保持される
勝田新一郎(福島県立医科大学医学部細胞統合生理学講座准教授)
宮下 洋/島田和幸/宮脇義徳/小嶋 巌/塩貝有里/挾間章博
背景
中心動脈圧脈波は末梢からの反射波を含んでいるため
12 および 24 カ月齢の KHC ウサギにおける大動脈全体
に、降圧薬の効果判定などに非常に有用である。中心動
の硬化病変面積率(%)は、それぞれ 35 .3 9 .9、61 .2
脈収縮期血圧(central systolic blood pressure;cSBP)は
22 .8(平均値 標準偏差)であり、加齢による有意な増加
ヒトでは直接計測することが困難で、末梢動脈圧脈波か
が認められた(p<0.01)。末梢動脈収縮期血圧
(peripheral
ら推定されている。高血圧患者では、末梢動脈収縮期第 2
systolic blood pressure;pSBP)
(各月齢とも p < 0 .001)
血圧(peripheral second systolic blood pressure;pSBP2)
および pSBP2(各月齢とも p < 0 .001)は cSBP と強い正相
は cSBP に近似することが示されており、通常の上腕動脈
関を示した。血管作動薬投与前には、cSBP、pSBP、pSBP2、
血 圧 測 定 で は 明 確 で な い 血 管 拡 張 性 降 圧 薬 の 効 果 は、
中心動脈 AI(cAI)および末梢動脈 AI(pAI)はそれぞれ 24
pSBP2 では認められることが ASCOT-CAFÉ や ABC-J 研究
カ月齢のほうが高い傾向を示したが、両月齢群間で有意
などの臨床試験で示されている。
差はみられなかった。中心動脈脈圧(cPP)と末梢動脈脈圧
目的
(pPP)
(図 1 A)
(各月齢とも p < 0 .01)、cPP と末梢動脈第
2 血圧の脈圧(pPP2)
(図 1 B)
(各月齢とも p < 0 .001)およ
12 お よ び 24 カ 月 齢 の 遺 伝 性 高 コ レ ス テ ロ ー ル 血 症
び各血管作動薬投与後と投与前における cPP の差( ∆ cPP)
(Kurosawa and Kusanagi-hypercholesterolemic;
と pPP2 の差(∆ pPP2)
(図 1 D)
(各月齢とも p < 0 .001)との
KHC)ウサギを用い、粥状硬化の進行に伴って pSBP2 の
関係には、各月齢群とも有意な正相関が認められたが、
cSBPに対する追従性および末梢動脈圧脈波augmentation
∆ cPP と各薬物投与後と投与前における pPP の差(∆ pPP)
index(AI)の中心動脈圧脈波の AI に対する追従性がどの
ように変化するかを実験的に検討した。
方法
(図 1 C)は、両月齢群とも有意な相関を示さなかった。末
梢動脈での脈圧増幅(pPP/cPP 100(%))は平均血圧が
低いときは大きく、平均血圧の上昇に伴い有意に低下した
(各月齢とも p < 0 .001)
(図 2 A)。Ang Ⅱによる昇圧およ
12 カ月齢(n = 10)および 24 カ月齢(n = 9)の KHC ウサ
び NTP による降圧に伴って、cAI および pAI は両齢群と
ギを用い、ペントバルビタール麻酔下(30 mg/kg,静脈内
もほぼ平行して変化し、両動脈部位での AI の回帰関係は
投与)で中心動脈(上行大動脈)および末梢動脈(右上腕動
保持されていた(図 2 B)。cAI と pAI の間には各月齢群と
脈)遠位部にそれぞれカテーテル先端型圧トランスデュー
も強い正相関がみられた(図 2 C)
(各月齢とも p < 0 .001)
。
サー(2 Fr)を挿入し、超音波血流計プローブを装着した。
各薬物投与後と投与前のcAIの差
(∆ cAI)
とpAIの差
(∆ pAI)
レギュラーペーシング下でアンジオテンシンⅡ(Ang Ⅱ)
は、いずれの月齢群においても有意な正相関を示した
(20 ∼ 40 ng/kg/ 分)および塩酸ニトロプルシッド(NTP)
(20 ∼ 30 µg/kg/ 分)
の静脈内投与に対する圧脈波と血流波
の変化を同時記録した。圧脈波に占める反射波成分の割
48
結果
(図 2 D)
(各月齢とも p < 0 .001)。
考察
合を表す指標である AI は、中心動脈、末梢動脈とも S2 /S1
高血圧のヒトと同様に、12 および 24 カ月齢の KHC ウ
として求めた。ただし、S1 は収縮期前方成分の高さ、S2
サギにおいても、薬物投与前と Ang Ⅱ投与後には pSBP2
は収縮期後方成分の高さである。なお、末梢動脈では S2
は cSBP に近似していた。pSBP2 は cSBP の推定や pAI の
は収縮期第 2 血圧の高さに相当する。
計測に重要な役割を演じている。Nichols らによれば、中
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英文原著論文紹介③
図 1 ● 12 カ月齢および 24 カ月齢の KHC ウサギにおける cPP と pPP との関係(A)、cPP と pPP2 との関係(B)
、血
管作動薬投与後と投与前における cPP の差(∆cPP)と末梢動脈脈圧の差(∆pPP)との関係(C)および血管作動薬
投与後と投与前における cPP の差(∆cPP)と末梢動脈第 2 血圧脈圧の差(∆pPP2)との関係(D)
B (mmHg)
50
40
40
30
30
pPP2
pPP
A (mmHg)
50
20
10
0
0
C (mmHg)
25
10
0
10 20 30 40 50(mmHg)
0
cPP
D (mmHg)
25
10 20 30 40 50(mmHg)
cPP
5
0
−5
−15
C
12カ月齢:r=0.222, 有意差なし
24カ月齢:r=0.422, 有意差なし
5
0
−5
D
12カ月齢:r=0.769, p<0.001, y=1.114x−4.049
24カ月齢:r=0.949, p<0.001, y=1.710x−1.131
−15
−25
−25−15 −5 0 5
ΔcPP
A
12カ月齢:r=0.581, p<0.01, y=0.540x+15.576
24カ月齢:r=0.708, p<0.01, y = 0.646x+13.900
B
12カ月齢:r=0.854, p<0.001, y=1.224x−9.498
24カ月齢:r=0.969, p<0.001, y=1.548x−18.921
15
Δ pPP2
15
Δ pPP
12カ月齢
24カ月齢
20
−25
15 25(mmHg) −25−15 −5 0 5
ΔcPP
15 25(mmHg)
図 2 ● 12 カ月齢および 24 カ月齢の KHC ウサギにおける平均血圧と脈圧増幅(pPP/cPP × 100(%))との関係(A)
、
血管作動薬投与に伴う cAI と pAI の変化(B)、cAI と pAI との関係(C)および血管作動薬投与後と投与前における
と pAI の差
(∆ pAI)との関係(D)
cAI の差
(∆ cAI)
2.5
2.0
120
1.5
40
0
0
2.0
1.0
12カ月齢
24カ月齢
アンジオテンシンⅡ
投与前
12カ月齢cAI
** ***
a, b
24カ月齢cAI
ニトロプルシッド
***
a, b
* ***
a, b
0.0
40 80 120 140 200(mmHg) 0
平均血圧
D 1.0
0.8
12カ月齢
0.6
24カ月齢
1.5
0.4
0.2
0.0
−0.2
−0.4
−0.6
−0.8
−1.0
1.0
0.5
0.0
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
cAI
A
12カ月齢:r=−0.677, p<0.001,
y=−0.540x+178.540
24カ月齢:r=−0.836, p<0.001,
100 120 140 160(mmHg)
y=−0.518x+175.650
**
20 40 60 80
平均血圧
B
12カ月齢:平均血圧 vs. cAI, r=0.998,
y=0.012x+0.238
12カ月齢:平均血圧 vs. pAI, r=0.998,
y=0.010x−0.380
24カ月齢:平均血圧 vs. cAI, r=0.995,
y=0.014x+0.120
24カ月齢:平均血圧 vs. pAI, r=0.999,
y=0.011x−0.499
12カ月齢
24カ月齢
ΔcAI
平均値 ± 標準偏差,:p<0.05, :p<0.01,
:p<0.001,
a:投与前 vs. アンジオテンシンⅡ, b:投与前 vs. 塩酸ニトロプルシッド
*
**
12カ月齢pAI
24カ月齢pAI
a,***b
0.5
−
1
− .0
0.
− 8
0
− .6
−0.4
0.
0.2
0
0.
2
0.
4
0.
6
0.
8
1.
0
80
AI
160
C 2.5
pAI
B
Δ pAI
pPP/cPP×100
A (%)
200
***
心動脈圧波が augmentation peak を形成するのは主に低
周波成分からなる反射波成分であり、この成分が増幅も
p<0.001,
p<0.001,
p<0.001,
p<0.001,
C
12カ月齢:r=0.887, p<0.001, y=0.683x−0.392
24カ月齢:r=0.925, p<0.001, y=0.732x−0.481
D
12カ月齢:r=0.941, p<0.001, y=0.709x−0.003
24カ月齢:r=0.950, p<0.001, y=0.706x−0.091
結論
減衰もなく前肢の動脈を伝播して末梢動脈圧波の第 2 ピー
粥状硬化の進展とは関係なく、血管作動薬投与による
クを形成することが、pSBP2 が cSBP に近似する一つの根
pSBP と pPP の変化は cSBP と cPP の変化に追従しなかっ
拠とされている。pAI および ∆ pAI がそれぞれ cAI および
たが、pSBP2 と pPP2 の変化はそれぞれ cSBP と cPP の変
∆ cAI に追従するのは、cPP の変化が硬化病変の大きさや
化に追従した。cAI と pAI との関係は粥状硬化の進展にか
進展にかかわらず pPP2 の変化を反映するためであると考
かわらず保持されていた。本研究結果は、粥状硬化や高
えた。また、cAI と pAI との相関関係が各月齢とも保持さ
血圧患者において、pSBP2 は cSBP のみならず cAI の推定
れるのは、硬化病変は大動脈では加齢に伴って進展する
にも有用であることを示唆している。
のに対し、上腕部の動脈には病変が非常に少ないことも
一因であると考えた。
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