血管迷走神経反応の予防の試み

血管迷走神経反応の予防の試み−ハイリスクドナーに休憩と水分摂取を勧めるパンフレットを渡したことの効果
⑯
29:439
【原著】
血管迷走神経反応の予防の試み
−ハイリスクドナーに休憩と、水分摂取を勧める
パンフレットを渡したことの効果
埼玉県赤十字血液センター
加質草子.貫闘多恵子,荒川町子
柴崎利明,山崎健一,溝口秀昭
Trialpreventionofvasovagalreaction
Jmee鮎ctofhandingpamphletstohighriskdonors
instructingthemtotakerestanddrinkwater
∫αfJαJ乃α尺edCJ℃∫∫βわ♂dCg〝Jer
YukikoKaga,′ⅠもekoNukita,MachikoArakawa,
ToshiakiShibasaki,KenichiYamazakiandHideakiMizoguchi
抄 録
血管迷走神経反応(ⅤVR)は献血者の副作用として一番多く,献血者の約1%
に起こる。ⅤVRを起こしやすい献血者のグループ(ハイリスクグループ)があ
ることが知られている。
我々はmの頻度を減らす目的でノ、イリスクグループのうち①全血献血
の初回の若年(10歳代と20歳代)の男女,②成分献血の中高年(50歳代と60歳
代)の女性に対し,①休憩を30分以上取ること,②水分摂取をすることを勧め
るパンフレットを手渡した。
その結果,パンフレットを渡すようになった2004年度と2005年度ではそれ
以前の2002年度と2003年度に比し月ごとのmの頻度は低下した。2003年度
と2004年度を比較すると軽症のⅤVRは男女とも低下した。重症のmは男性
では低下しないが,女性では全体でも有意に低下し,血菜献血と400mlj献血
で有意に低下した。この方策は.mの減少に有効な方法と考えるが,若年
男性の重症に対しては他の方策を考える必要がある。
Abstract
Amongadverseeventsrelatedtoblooddonation,VaSOVagalreactionⅣVR)
OCCurSmOSth叩uentJyanditsincidencecomprisesaroundl%ofdonors.ItisweⅡ
knownthattherearehighriskpopulationswhoaresuscep6bletoVVR _
In ordertodecrease theincidenceofVVR,Weprepared pamphletsthat
instnJCtdonorstotakerestforatleast30minutesandtodrinkwaterafter
b]00ddonadon,uldhuldedthesepamprdetsto2highriskgroupdonors:丘rsH血e
i文受付日:200鞠月19El
沌正決定日:2006年10月4日
29:440
血液事業第29巻第3号2咲裕.11
youngwholeblood donorsandmiddle aged apheresisLtmaledonors.Asa
result,theincidenceofVVRdecreasedafterhandingthepamphletstohigh
riskdonors・CompanngtheincidenceofVVRbeforeandafterhandingthe
pamphletstodonors,mndVVRdec托aSedinbothmaleand鮎maledonors.Asfar
astheincidenceofsevereVVRiscbncerned,theincidenceofVVRamong
male donors did not change,thoughtheincidence QfVVRamong ftmale
400mLwi10leblooddonorsandplasmaapheresisdonorsdecreasedsipiBcandy.
Thepamph)etsthatwepreparedeffectivelydecreasedtheincidenceofVVR
butwe mustconsiderothermethodsofdecreasingtheincidenceofsevere
VVRamong youngmaledonors.
Keywords:blooddonation,VaSOVagalreac也on,reSt,Waterintake
はじめに
献血後の副作用は献血者の約1%に起こること
が知られている1)。その主なものは血管迷走神経
までの1年間に埼玉血液センターに来訪した献血
者243,182人(男性149,271人.女性93,911人.全血
献血159,186人,成分献血83,996人)であった(表
反応(vasovagalreaction,Vm),神経損傷と皮下
出血である。ⅤVRは全副作用のうち約75%を占め
る。ⅤVRは転倒の原因となり,重篤な副作用に繋
がる可能性がある。ⅤVRによる転倒は全国で,年
間100ー150人の献血者に起こり,大きな問題と考
える2卜4)。 転倒事故を少なくするためにはⅤVRの
発生率を下げる努力と転倒の直接的な予防策を立
・て争率要やミあ卑。
全血献血でⅤVRを起こしやすい人々は,(∋初回.
②低体重,③若年,④白人,⑤若年初回の献血者
では女性と報告されている5卜乃。一方,成分献血
では①循環血液量の少ない人,②中高年の女性,
図1 WRのハイリスクの献血者に渡す
パンフレット
(ヨサイクル数の多い人等が挙げられる8)。埼玉県
の予備的な調査でも同様の傾向がみられ,中高牛
の女性の成分献血ではⅤVRが1時間以上持続する
看護師からのお願い
例が多い。
今回,ⅤVRの発生率を低下させる目的で,ⅤVR
のリスクの高い献血者に対し.図1に示すような
献血後に①30分以上の休憩することと,②水分摂
取を勧めるパンフレットを渡し.そのⅤVR発生に
対する効果を検討した。また同時に口答でもその
内容を献血者に話すようにした。
方法と対象
対象とした鱒血者は2004年5月から2005年4月
・採血終了後、少なくとも15分休息してください。
・水分を補給してください。
・内出血の予防のため、15分間は
止血バンドをしてください。
●針痕をもんだり\こすったりしないで
ください。
図2 WRのローリスクの献血者に漉す
′†ンフレット
)
ー 7巨
血管迷走神経反応の予防の試み−ハイIjスクドナーに休憩と水分摂取を勤めるパンフレットを渡したことの効果
1)。それらの献血者のうち,ⅤVRのリスクが高
29:441
なお,比較の対照とした2003年度の献血者は総
いとされる初回の若年(10歳代と20歳代)の男女で
献血者数246,056人(男性149,898人,女性S吼1鍵人,
全血献血をした人と再来の中高年(50歳代と60歳
全血献血161,757人.成分献血84,299人)であった
代)の女性で成分献血をした人に2004年5月から
(表2)。
図1に示すようなパンフレットを渡した。その内
ⅤVRの重症と軽症の分類は表3に示すように,
容は献血後に(∋少なくとも30分以上は休憩するこ
日本赤十字社標準作業手順書に準拠した9)。つま
とと,②水分摂取をすることを勧める内容である。
り,軽症では気分不良,顔面琴白,あくび,冷汗,
それ以外の献血者に対しては図2に示すようなパ
悪心.嘔吐,5秒以内の意識喪失であり,重症に
ンフレットを渡した。その内容の主なものは(D少
なると,これらの症状に加え,5秒以上の意識喪
なくとも15分以上休憩すること,(∋水分摂取を勧
失,けいれん,尿失禁,脱糞などが起こる。身体所
める内容である。
見としては血圧の低下と徐脈,呼吸数の低下など
パンフレットを渡し始めたのが,2004年5月で
がみられ,この重症例の一部に転倒例が含まれる。
あるので,年度の区切りを5月から次年度の4月
までとした。つまり,2004年5月から2005年4月
を2(氾4年度とし.その月ごとのmの発生頻度と
結 果
図1あるいは図2のパンフレットを渡すように
それ以前の2002年度およぴ2003年度の月ごとの
なった2004年度(パンフレットを渡すようになっ
ⅤVRの発生頻度と比較した。2(拍5年度の月ごとの
た2004年5月から2005年4月までとする)の各月
ⅤVR発生頻度も調べ比較した。
のⅤVRの頻度は2002年度あるいは2003年度の各月
さらに,2003年度と2004年度のⅤVRの発生頻度
のⅤVRの頻度に比し低い値を示した(図3)。つ
についてその効果を男女別,献血の種頸別,ⅤVR
まり.2002年度と2003年度の各月のⅤVRの発生頻
の重症度別に比較検討した。
度はほとんどの月で1%を超えていたが,パンフ
表1 埼玉県赤十字血液センターにおける
表2 埼玉県赤十字血液センターにおける
2004年度の献血者数
2003年度の献血者数
全血献血
成分献血
全血献血
成分献血
200mL 4∝hmL PC+PPP PPP
200mL 400mL PC+PPP PPP
男性.13,595 85,369 21,000 29,298
男性 14,328 85,420 19,併6 30,474
女性 36,910 23,312 8243 25,崩6
女性 37,138 24,871 7,946 26,203
小計
甜,222
33,槌9
小計
62,(X滑
34,149
稔計
159,186
83,鱒6
総計
161,757
84,2鍋
 ̄ ̄ ̄岬 ̄−−−一一一一−−一一一−−−一−−−【−一−一一−−一一−−−−−
149β71
−−−一一一−−一−−一一一一一−−−−−=−−−−−{−一−−−−−−−−一
149,898
小計
駆,9朗
測,307
小計
99,748
恥1知
200mL:200mLの全血献血
400mL:400mLの全血献血
PC+PPP:血小板献血,PPP:血祭献血
246,056
200mL:2恥IILの全血献血
400mL:4∝hnLの全血献血
陀+PPP:血小板献血、PPP:血祭献血
義3 VVRの重症度分類9)
症 状
血圧(max,mmHg)
脈拍数(/分)
採血前→測定最低値 採血前→測定最低値
呼吸数
(/分)
軽症表票㌫?這霊芝盲警芸読;;;誓書二;3㌫王
重症
軽度の症状に加え,意識喪失(5秒以上)
けいれん,尿失禁.脱糞
120以上→79以下
00以上→39以下
119以下→69以下
労以下→為以下
9以下
血液事業第29巻第3号2006.11
29:442
レットを渡すようになった2αM年度の各月のⅤVR
は2003年度の発生率に比し,全体で有意に低下し
の発生頻度は1%未満となり.同様のⅤVRの低下
た(図5)。また,その献血わ種類による遠いを
傾向は2(拇5年度でも持続していた。
みると,血菜献血,400mIj献血,200m山献血で有
男性の軽症のⅤVRの頻度は2004年度の発生率の
意に頻度が低下した(図5)。しかし,血小板献
方が2003年度の発生率に比し,全休で有意に低下
血では有意の頻度の低下は認められなかった。
した(図4)。軽症が大部分を占めるので,献血
男性の重症例で調べると.その頻度は2003年度
者全体でも有意に低下した。ま−ずその献血の種類
も2004年度も0.03%と軽症例がそれぞれ0.7%と
による違いをみると,血葬献血,血小板献血,
0.5%であるのに比べて、.約1/10と少なかった。
400mLの全血献血,200mL全血献血のいずれでも
2004年度のⅤVRの発生率は2003年度の発生率と有
有意に低下した(図4)。
意の差を認めなかった(図6)。また,いずれの
女性の軽症のⅤVRの頻度は,2004年度の発生率
献血種別でも差を認めなかった。とくに,200mL
ⅤV
0
劇
朋
0
Rの発生率
朋
∬
0
0
4
5
6
7
8
9 10 1112 1 2
3 、
月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月
図3 WRの発生率−2002年度,2003年度,2004年度,2005年度の月ごとのWR発生率
総数
PPP
pC+PPP
4(X)mL
2(氾mL
0.0%
0,5% 1.0% 1.5%
2.0%
2.5%
3.0%
mの発生頻度
図4 埼玉赤十字血液センターにおける男性の軽症WRの発生頻度の年度別の比較
PPP:血祭献血,PC+PPP:血小板献血 400mL:400mLの全血献血 200mL:200mLの全血献血
’Tl
血管迷走神経反応の予防の試み−ハイリスクドナーに休憩と水分摂取を勧めるパンフレットを渡したことの効果
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総数
PPP
PC+PPP
400IllL
200mL
0.0%
0.5%
1.0%
1.5%
2.0% 2.5%
3.0%
VVRの発生頼度
図5 埼玉赤十字血液センターにおける女性の軽症WRの発生頻度の年度別の比綾
PPP:血菜献血,PC+PPP:血小板献血 400mL:400mLの全血献血 200mL:200mLの全血献血 NS:有意差なし
総数
PPP
PC+PPP
4(X)mL
200mL
0.00%
0.05%
0.10%
★:発生数ゼロ
VVRの発生頻度
図6 埼玉赤十字血液センターにおける男性の重症\ルRの発生頻度の年度別の比較
PPP:血祭献血,PC+PPP:血′ト板献血 40h−L:400mLの全血献血 200mL:200mLの全血献血 NS:有意差なし
総数
PPP
PC+PPP
400mL
200mL
0.00%
0.05%
0.10%
VVRの発生頻既
図7 埼玉赤十字血液センターにおける女性の重症WRの発生頻度の年度別の比較
PPP:血祭献血,PC+PPP:血小板献血 400mL:400mLの全血献血 200mL:200mLの全血献血 NS:有意差なし
29:444
血液事業第29巻第3号2α裕.11
献血は高校生献血を多く含むと考えられ.▼重症例
生の集団献血では重症のmの頻度を低下させ,
の発生は他の献血種別より高く,パンフレットを
さらにそれによる転倒事故を減らすためには他の
渡す効果はみられなかった。一方.女性の重症例
方帝を考える必要があると思われる。我々は10歳
では,2∝沌年度の発生率は2003年度より全体,血
代と20歳代の初回の男性を多く含む高校生献血あ
柴献血およぴ400mU献血いずれも有意に低下した
るいは男性の専門学校生の献血では.多くの場合
(図7)。しかし,20伽Ilj献血と血小板献血におけ
バスにおいて採申する。その場合に,接遇の部屋
る重症のⅤVRの発生頻度はパンフレットを渡して
をバスから離れたところに設営するのではなく‘
も有意の低下はみられなかった。
バスのすぐそばにテントで仮の接遇の場を造り,
そこに1台のバスあたり約5脚の椅子を置き,さ
考 察
らに専門のl織貝を1人配置し,椅子に座ることと
今回甲結果から,初回の若い全血献血の男女と
水分摂取を勧め∴約30分後に献血手帳を渡すよう
中高年の成分献血の女性に少なくとも30分の休憩
にした。そのような工夫をすることによってⅤVR
と水分摂取を勧めるパンフ㌣ツトを渡すことは男
の発生頻度は大きく変わらないが、転倒者がいな
女ともⅤVRの発生頻度を低下させるのに有用と考
くなった。このように接遇の部屋を採血場所にで
える。医療機関における医療事故の防止には患者
きるだけ近くにすることは他の血液センターでも
の協力を得ることが大切とされる。今回のパンフ
推奨されている1q)。▼■今後,その効果を長期的にみ
レットを献血者に渡すことはⅤVR予防に献血者の
ていきたいと考えている。
協力を求めるのに役立ったのではなりかと考え
る。またそれだけではなく,採血を担当した看護
血およぴ400mIj献血で男性より高いが,それらの
師,接遇にあたる事務職員もそのパンフレットを
頻度がパンフレットを渡すことで著しく低下し
持つ献血者に特別な配慮をした可能性もあり,そ
た。この・ことは本研畢が目的とした成分献血のう
れがⅤVR予防に有効であった可能性がある。他の
ち血襲献血には大きな効果があったと考える。し
グループの献血者には少なくとも15分休むように
かし,▲血小板献血ではその頻度が減少しなかった
書いた紙を渡した。このこともⅤVRの全体の頻度
ことは,今後の問題と思われた。200mlj献血にお
を下げるの’に効果があった可能性もある。
ける重症例の頻度は男性より低くパンフレットを
男性で重症のmにつ、いてはこの方法では頻度
を低下させることはできなかった。とくに,初回
渡すようになっても有意の変化はなかった。女性
の若年の男性を多く含む高校生あるいは専門学校
集団献血は埼玉県では行っておらず,多くはルー
生の集団献血ではこの方法が有効でない可能性が
ムなどにおける個人の献血であると思われ為。し
高い。そう考える根拠は,2腑mU献血における重
たがって,そのケアも行き届いている可能性が考
症のⅤVRの頻度が他の献血より高く,この男性の
え・られる。そのことが200mU献血におぃて男性の
200mu献血はほとんどが高校生の集団献血で行わ
重症のⅤVRに比し,女性の重症のⅤVRの頻度が低
れているからセある。その頻度がパンフレットを
い結果に繋がった可能性がある。
渡すことで低下していないことは,これらの献血
女性の重症のⅤVRの頻度は血祭献血,血小板献
の場合は,男性で2∝)mU献血を主に行う高校生の
ⅤVRの減少効果がパンフレットを渡した献血者
者の重症のⅤVRの頻度をパンフレットを渡すこと
だけに限定しているか否かについて一部の献血者
では下げることができないと考えられる。現に,
で検討すると,データは示していないが,10歳代
10歳代の男性の初回の全血献血者に限って検索す
の男女とも200mU献血あるいは400mlj献血におい
ると,データは示していないが200mL献血も
て初回の献血者では2的3年度より2004年度の方が
400mL献血も軽症のⅤVRの頻度は2003年度より
ⅤVRの発生は有意に減少したが,再来の献血者で
2004年度の方が有意に低下したが,重症のⅤVRは
は有意の減少はみられていなかった。このことは
いずれの場合も有意の減少はみられなかった。し
この群ではパンラレットを渡したことがⅤVRの発
たがって,初回の男性の高校生あるいは専門学校
生を低下させたと考えられる。しかし,前述のよ
▼
血管迷走神経反応の予防の試み−ハイリスクドナーに休憩と水分摂取を軌めるパンフレットを渡したことの効果
うにこの群でも重症のⅤVRの発生には効果はなか
も他の群のⅤVRの減少に関係した可能性もあると
った。また,中高年の女性の成分献血では50歳代
考える。
の初回の呵梁献血をした献血者のⅤVRだけが2003
29:445
ⅤVRのハイリスクグループを選び,VVRに対す
年度より2004年度の方が有意に減少していたが,
る対策を指示するパンフレットを渡すことは,
50歳代の再来あるいは60歳代の初回と再来では有
ⅤVRの減少に一定の効果を認めた。この方法が他
意の減少は認められなかった。むしろ,若年の女
センターでも有効であるか否かを検証していただ
性の血祭献血でⅤVRの減少傾向がみられていた。
くことが必要ではないかと考える。さらに.全国
献血者を年齢別に分けるとその群に属する献血者
の血液センターにおける献血時の副作用を起こし
数やⅤVRを起こした献血者数が少なくなり,その
た例を集め,対策をたてることと、それぞれのセン
効果の判定が困難になった可能性もあるが,ⅤVR
ターで有効とされる対策を集めて,それらの対策
予防のためのバイプレットを渡すという行為が献
を全国のセンターで実施し,その有効性を検証す
血者全員と職員のⅤVRに対する意識を高めたこと
ることが必要であろう。
文
献
1)佐竹正博ほか:採血により献血者に起こる副作
pressure,andpulse.TransfusioIュ,39:316p320,1999.
6)Newman B.H.:Vasovagall・eaCdonsinhighsch.001
用・合併症の解析【平成14年度の全国データから
Students;findingsreladvetorace,riskfactorsymer−
【・,平成15年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品
gism,female sex,and non−high schoolparticipants.
等医療技術リスク評価研究事業)分担研究報告書,
Transfusion,42:1557−1560.2002.
2咲減牛3月,40頁.
2)日本赤十字社:採血にかかる副作用報告(平成15
年度のまとめ)2004年9月.
3)日本赤十字血液事業本部:採血にかかる副作用報
告(平成16年度のまとめ)2005年9月.
4)日本赤十字血液事業本部:採血にかかる副作用報
告(平成17年度上半期のまとめ)2005年12月.
7)Newman B.H_,etaL_:Donorreactionsin high−
SChooldonors:theeffectsofsex,Weight,andcollec−
tionvolume.Transfusion,46:284壱88,2(X絡.
8)TomitaT.,e(aL.:Vasovagalreacdonsin:apheresis
donors.Transfusion,42:1561−1566,2(犯2.
9)日本赤十字社:標準作業手順書(採血)H.採血
副作用に関すること(作業手順)2005年9月.
5)TrouerTl−TrendJ.),,eta[.:AcaseLCOntrOued mu16− 10)森滑降ほか:移動採血における副作用(ⅤVR)の安
CenterStudyofvaovagalreactionsinblooddonors:
全対策.血液事業,25:9心95,2002(抄録).
irLAuenceofsex,age,donationstatus,Weight,blood
JapaneseJourTlaJofTransfusionarldCelJTherapy.Vol.52.No.6 52(6):684T692.2006
㊤
原 著
16,17歳(高校生)を対象とする400mJ全血と
成分採血導入の可否一介入試験による検討
竹中 道ヂ)神谷 忠2)杉浦さよ子2)池田 久賛3)
柴田 弘俊4)前田 義章5)村上 和子5)清水 勝6)
1)神奈川県予防医学協会
2〉愛知県赤十字血液センター
3)北海道赤十字血液センター
4)大阪府赤十字血液センター
5)福岡県赤十字血液センター
6)杏林大学医学部臨床検査医学
(平成18年4月4日受付)
(平成18年7月12日受理)
若年者(16,17歳)からの400mJ全血と成分献血についての意識調査を行った.高校生(集団献血
実施校,非実施枚),高校教諭,父母を対象に,両採血法に関する資料(情報)を提供し,その前後で
同一内容のアンケートを行った.=調査対象稔数は1,450人,回答数(率)は1,177人(81%)であった.
前調査では,400mJ全血,成分の各献血法を「可」とするのは,それぞれ67,61%,「分らない」は28,
35%であったが,この「分らない」の1/3∼1/2が資料提供により賛成に転じ 復調査では「可」がそ
れぞれ77,74%に増加した.「反対」は前後の調査とも数∼10%であった.
若年者での両採血の実施については,社会的な合意は大方得られており,適切な情報の提供のもと
に実施可能であると考える.
キーワード:若年献血者,400mL献血,成分献血,介入試験
はじめに
少子高齢化が進むことにより,血液の供給面で
策として,16,17歳を対象に400mJ全血採血と成
分採血の導入の是非を検討する必要があると考
は献血者層,特に若い世代の献血者数と献血率の
減少1)2)が,需要面では高齢受血者数と受血率の増
2002年に行ったところ,過半数が賛意を表した
加3)があり,需給の不均衡を生じることが懸念され
が,「分からない」との回答者が20∼30%認められ
る.既に両者の関連を推計した報告4)があるが,そ
た6).そこで,これらの採血法に関する解説資料を
の後に,献血年齢の上限が69歳に引き上げられ,
提供して,「分からない」との回答者がその前後で
医療技術の進歩や適正使用の推進により新鮮凍結
どのように意識の変化を示すのかの,介入試験を
血渠ヤアルプミン製剤の供給量は明らかに減少
試みたので報告する.
し,MAP加赤血球濃厚液のそれは微増に留まっ
ている5)ことなどにより,現在は輸血用血液の需給
え,まず社会的な合意が得られるか否かの調査を
方 法
対象者は,集団献血実施校の高校生(A群)400
の均衡は維持されているが,本質的な状況に変化
人,非実施校の高校生(B群)450人,およびA,
はないと考えられる.
B両群の教諭(C群)200人と父母(D群)400
このような状況から,今後の血液の量的確保対
人である.調査方法は,高校生では献血に関する
日本輸血細胞治療学会誌 第52巻 第6号
685
Table 1 Questionnaire
Questionl.Recently.400m]wholeb]coddoJlatjonsfrαmyOungperSOnS(highschooIstudents)aged16
0r17havebeendiscussed.Whatdoyouthinkofthisidea?
①Approveifhe/shemeetsthecriteria(b車y−Weightetc・)de丘nedbytheBloodCollection
Standards.
⑳Approveatorovertheageof17.
③Approveatorovertheageof16.
(初Unclear.
⑤Unacceptable.[Reasons:
]
Question2.Recently.apheresisdonations(collectingonlyplateletsorplasma)fromyoungpersons(high
schooIstudents)aged160r17havebeendiscussed.Whatdoyouthinkofthisidea?
①Approveifhe/shemeetsthecriteria(body−Weightetc.)de丘nedbytheBloodCollection
Standards.
②Approveatorovertheageof17.
③Approveatorovertheageof16:
④Unclear.
⑤Unacceptable.[Reasons:
アンケート調査用耗(Tablel)を配布・記入し
別クロス集計をTable2に示す.前調査での(拍
(前調査),次いで配布した解説資料を読んでも
(彰の賛成回答は,A,B,C,D群順に74,55,
らった後に,再度同一内容のアンケート調査用紙
72,70%で,B群が他群より少なく(p<0.005),
に記入(後調査)を依頼し,回収した.教諭と父
④「わからない」は各々25,42,16,22%で,B
母については,同様な手順による記入を依節し,
群が他群より多く(pく0.005),C群はA群より少
郵送により回収したJ
なかった(p<0.025).一方,⑤「やるべきではな
解説資料の内容7)としては,循環血液量(体重)
い」は各々1,3,13.8%で,A,B群はC,D
と安全な採血量の関係,過去15年間の献血者数,
群より少なかった(p<0.005).
採血基準の概要,400mJ採血と成分採血の概要,前
述の2002年に実施した調査結果の要約を記載し
後調査では,賛成回答がA,B,C,D群順に
83,69,83,76%に増加したが,それは各群の④
た・調査期間は2003年1∼2月とした・
の32−50%および(9の8∼36%が賛成回答に移
両調査について回答の得られたものを,対象者
動したためである.その結果(強が16,28/10,
群別に,400mJ全血と成分採血についてクロス集
17%へと減少し,⑤もわずかなから減少した.逆
計し,さらにC,D群については献血経験の有無
に賛成回答から⑤に変わったのは,B群の0.5%
別に,・A群は献血の種類(400mJと200mJ全血献
とD群の1%,④へは各々4,4,1,1%と少数で
血)別にも比較検討したが.B群については献血歴
あった.
の有無の調査は行わなかった.なお,回答は①「体
後調査の対象群間差をみると,賛成回答ではB
重等の基準を満たしていればやってもよい」,②
群はA,C群より(p<0.005),D群はA群より少
「17歳以上なら可」,(参「16歳以上なら可」,④「分
なく(p<0.025),④ではB群は他群より多くなり
から.ない」,(9「やるべきではない」(反対)であり,
(p<0.005),⑤は変化しなかった.
(互X亘X参を賛成群として集計した.有意差検定には
即ち,資料による介入効果がみられたのは,賛
成回答の増加したA,B群(p<0.005)とC群(p<
x2検定を用いた.
成 績
l)1(i・17歳の400mJ献血について
有効回答数および回答率はA,B,C,D群順に
0.025)であり,A,B群での④の減少であった(p<
0.005).
献血歴別にみると(Table3),C群の献血歴あり
337(朗%),383(85%),167(朗%),290(73%),
は130人(78%),なしは36人,D群のありは175
稔数1,177(81%)であった.前調査と後調査の群
人(61%),なしは114人であった.C群のあり,
ーl
JapaneseJournalofTransfusionandCellTherapy;VoL52.No,6
槌6
Table2 0pinionandchangeinopinionconcerningtheacceptabilityof400mtwholeblooddonationsfromyoungper−
SOnSbeforeandafterreadingadocumentabout400mtwholeblooddonationsbygroups.
a允er
before total
Agroup
① ② 国 ④ 団
175
b e
①
6
217 40 24 55
⑤
4(1)
337
a加
(%) (朗) (12) (7) (16) (0)
be
ロ 0 国
国
(9
10
ロ
1)
‡
2
2
21(13)
4
Changeinopinionfr・Om④td①⑦③‥60/160=38%
(9to髄)③:1/4=25%
(9to軟至X至):4/11=茄%
(9to@) 二 2/4=50%
⑤to㊥ 二1/1i=9%
2
0
12
D騨Oup
105(63)
2 6 0 0 0 8(5)
0 0 7 0 0 7(4)
国
r e
2
ロ
266(由%)
before total
庄) ② 国 国 団
(%)
99
■ 畠
ertotaI 232 14 20 107 10 383
(%) (61) (4)(5)(謂)(3)
281(83%)
Changeinopiniorlfrom(むto(榊:42/85=49%
①
2‘
r e
0 0 2
Cgroup
2
5 0 15 .・0 0 20(5)
ロ 0
④ 30 6 6
169
(%)
7 2− 0 ロ 0
b e
5 0 14
ロ t)
before total
ゆ ② ③ 由 団
(%)
ロ
26(16)
6 0 ロ 3 田
af ertotaj 117 9 12 17 12 167
(%) (70) (5) (7) (10)
138 t83%ノ
before total
巾
ゆ ④ ナ⑤
(
177 オ
b e
3
0
ロ 0
r e ④
⑤
aftertotal
(%)
2
201 15 3 48 23 二
(69) (5)
(17) (8)
219(76%)
Changeinopinionh)m㊥to¢喧唾)‥13/26=郭%
Changeinopinionfrom(むtoE唾)③:20/63=32%
⑤to(享蠍享):7/21=33%
⑤to①②③:2/別
⑤to亘) 二 3/21=14%
(9to④ :6/24主25%
AgTOup:Studentsinhighschoo7sgivingmassbtooddonation
Bgroup:StudentsinhighschooIsnotgivingmassblooddonations
Cgroup:Teachersinthesesch001s
Dgroup二Parentsofthesestudents
なし,D群のあり,なしの順に前調査の賛成は各々
A群の献血種別による回答を,Table4に示す.
72,72,70,.69%,④は各々16,14,22,21%,
前調査の賛成回答は400mJと200mJ献血者では
⑤は同様に12,14,8,10%で,献血歴の有無に
各々79%,70%で差は無かったが,資料により
よる差は認められなかった.復調査ではそれぞれ
400mJ献血者の(もの59%,200m7献血者のそれの
が同じように(亘X9から賛成へ変化し,同様の順に
46%が賛成回答へと変わり,後調査では賛成は
賛成が84,81,77,72%,④は各々11,6,15,
各々90%,80%で,400mJ献血者のほうが有意に
・19%となり,⑤はC群のありとD群のなしが5,
多くなった(p<0.025).即ち資料による介入効果
9%になったが,(二群のなしとD群のありは変化
は両者に認められるが400mJの方がより高かっ
しなかった.資料による介入効果が認められたの
た(p<0.025,p<0.05).
はC群の献血歴ありの賛成回答の増加のみ(p<
0.025)であった.
2)lfi・17歳の成分献血について
有効回答数(率)はA,B,C,D群順に,336
日本輸血細胞治療学会誌 第52巻 第6号
687
Table30pinionandchangeinopinionconcemingtheacceptabdityo吏400miwholeblooddonationsfromyoungper_
sonsbeforeandafterreadingadocumentabout400miwholeblooddonationsbypreviousblooddonationsinCand
Dgroups.
after
C伊仙p前山
C訂Oup
without blood
donadon
before total
p陀V如拙加
donadon
(%)
①
田
ロ
ロ
ロ
0
82(63)
①
慮ter
before total
(%)
20
口
口
ロ
0
23(64)
b e
5(4)
7(5)
u 0
beロ
0
r e
r e
⑤
6
dtertotal
(%)
0
口
2
6
15(12)
95 5 9 14 7 130
aftertotal
(%)
(73) (4) (7) (11) (5)
ひ
0
0
0
22
4.
3
2
(61)
100(朗%)
5
5
5(14)
:施
(8) (6) (14)
29(81%)
Changeinopinionfrom④to(湘:9/21=43%
Changeinopinionfrom㊥to碑宣):4/5=80%
(参to碑宣):7/15=47%
⑤to(初 :2/15=13%
DgrDupwith
a血er
p血仙
donation O O O O O
①
0
2
8
0
0 0
u 0
ロ
0
2
110(63)
口
0
11(6)
0 0
a血er
wi也ムutbkd
donadon
(%)
、107
b e
D group
before total
(%)
68
1el’′
before total
2
ロ
b e
ロ
4
0
u 0
0 0 0
2
0
ロ
74(65)
0
5(4)
0 0(0)
r e
r e
⑤
0
aLtertotal
(%)
0
0
4
10
14(8)
2
124 8 2 27 14 175
(71) (5)
aftertotal
(15) (8)
(%)
75 6
0
0
7
11(10)
22 10 114
(66) (5)
1封(77%)
2
(19) (9)
82(72%)
Changeinopinionh−Om④to①⑳③‥15/39=38%
⑤to④ :4/14=甜%
Changeinopinionfrom④to(王糧堰):4/24=17%
(9to(主X至X宣):2/11=18%
⑤to㊥ :2/11=18%
CandDgroups:seeTable2
Tableヰ Opinionandchangeinopinionconcerningtheacceptabilityof400mEwholeblooddonationsfromyoungper−・・−
SOnSbeforeandafterreadingadocumentabout400mlwholeblooddonationsby400mland200mtwholeblooddo一
血tion主atsurveyinAgroup.
a托er
400!mZdonation
細
GX至×享)
.100
肋e
④
2
0
102(79)
0
27(21)
16
⑤
a允ertotal
(%)
0
116
(90)
beforetota】
⑤
0
13
(10)
0
0
(0)
Changeinopinionfrom④to①含唾):16/27=59%
a允er
2(氾mJdonation
(%)
(弼)
GX宣X享) 137
kあre
④
26
0(0)
129
before total
@
(%)
8
0
145(70)
31
0
57(28)
4(2)
2
aftertotal
(%)
164
(80)
41
(20)
206
(0)
Changeinopinionfrom④to(亘XiX3):26/57=46%
(9to(事診③:1/4=25%
(9to④ :2/4=50%
Agroup:seeTable2
「
JapaneseJournalofTransfusionandCeuTherapy,Vol.52.No.6
6払
Table5 0pinionandchangeinopinionconcerningtheacceptabilityofapheresisfromyoungpersonsbeforeandai
terreadingadocumentaboutapherersisdonadonsbygroups,
after
Agroup
before total
① ②
①
be
国
163
4
0
8
0
f 0
before total
① ② ゆ ④ ⑤
175、(52)
3 26 口 3 0 33(10)
5 ロ 16 0 0 22(7)
after
Bgroup
(%)
①
162
3
口
4 4 0
b e
5
ロ 0
7
(%)
0
173(45)
0
0
田
0
9(2)−
0
16(4)
r e
r e
⑤
aftertotal
(%)
0 0 0 0 0
0 0 0 2 5
0(0)
202 39 20 75 0 336
aftertotal
(%)
(00) (12) (6) (22) (0)
261(78%)
233 16 16 113 7 3a5
(61) (4) (4)
(2)
265(69%)
Changeinopinionfrom④to①②③:42/1鵬=40%
a氏er
Cgroup
7(2)
before total
③ ④ ⑤
Changeinopinionfrom④to(亘XZX3):75/180=42%
⑤to(少 :2/7=29%
正ter
Dgroup
②
(%)
before total
④
(%)
156 ロ ロ 4 ロ 163(56)
3 0 0 0
b e
b e
ロ 0
ロ 0
r e
8
12
0
0
0
20(7)
0
0
ロ
0
0
1(0)
ロ
0
0
184
(63%)・
r e
⑤
aLtertotal
(%)
3
0
ロ
ロ
8
13(8)
115 6 12 23 9 165
(70) (4) (7) (14) (5)
133(81%)
aftertotal
(%)
3
15
19(7)
197 14 2 60 19 292
(67) (5)
(21) (7)
213(73%)
ChangeinoI)iniorlfrom㊥to①②③:23/43=53%
Changeinopinionfrom(彰to(か宣)③:3/89=37%
⑤to秒◎③:4/13=31%
(9to(互X宣X彰:1/19=5%
⑤to由 :1/13=8%
(9to④ :3/19=16%
A,B,CandDgroups:seeTable2.
(糾%),認5(86%),165(83%),292(73%)で,
稔数1,178(81%)であり,Table5に前調査と復
④は各々22,29,14,21%、に減少し,C群では(D
調査の群別クロス集計を示す.前調査では,A,
もわずかながら減少した.賛成回答から(9にか
A,B,C,D群順に78,69,81,73%に増加し,
B,C,D群順に賛成が68,51,66,63%で,400 わったのは D群の0.5%のみ,④へは各々5,
mJ献血に対する賛成回答より4∼7%少なかった
4,3,2%であった.その結果,後調査の対象群間
が,同様の傾向であり,B群では他群より少なかっ
差は,賛成回答ではB群はA,C群(p<0.01,
た(p<0.005).④「わからない」は各々32,47,
0.005)より少なく.④ではB群は他群より(p<
2(;,30%で,B群が他群より多かった(p<0.005).
0.005∼0.05),A
6)「やるべきではない」は0,2,8,7%と少数で
(9ではC,D間以外はすべての群間に差を認めた
あり,A,B群はC,D群より少なかった(p<
(p<0.005∼0.025).
0.005).
資料読後には,④では各群とも37∼53%が,⑤
即ち,資料による介入効果はすべての群にみら
れ,賛成回答は有意に増加(A群(p<0.01),B,
ではA,B群は変化なくC,D群で各々の31,5%
C群(p<0.005),D群(p<0.025))し,④は有意に
が賛成回答に変ったことから,後調査での賛成は
減少(A,C,D群(p<0.01),B群(p<0.005))した.
日本輸血細胞治療学会誌 第52巻 第6号
689
Table6 0pinionandchangeinopinionconcemi醸theacceptabihtyofapheresisfromyoumgperSOnSbeforeandaf
t寧rreadingadocumentaboutapherersisdonationsbypreviousbl00ddonationsinCandDgroups.
C卵1pWi也
before total
a允er
(%)
l・tヽl= don血n
Cgmup
a允er
beforetota]
Wi也outb旭
donadon
①
(%)
20
0
ロ
0
亭2(61)
2 0 0 0
b e
beロ
f 0
0
r e
r e
⑤ 0 0 0 0 3 3(8)
(9 3 0 ロ ロ 5 10(8)
云血ertotal
(%)
94
4
8
18
6
aLtertotal
130
(72) (3) (6) (14) (5)
(%)
106(82%)
㌘(75%)
Changeinopinionfrom④to(鋲至)⑨:18/34=53%
、(9to(獅:4/10=40%
(9to(初 :1/10=10%
beforetota)
Changeinopiniorlfrom④to①②③:4/9=44%
Dg和up
6
0
0
0
12(7)
u 0
beforetot白1
donadon
92 P ロ ロ ロ 95(54)
6
after
wi也outbkl元
(%)
b e
22 2 3 6’ 3 36
(61) (6) (8) (17) (8)
(%)
① 63 口 0 こ3 0 67(59)
b e f
1(1)
r e
0
r e
0 0 0 3 7 10(6)
aftertotal
(%)
121 7 2 35 10 175
(69) (4).
(20) (6)
130(74%)
Changeinopinionfrom④to①②③:24/57=42%
(9to(む :3/10=卸%
鱒
aftertひtd
(%)
ロ .0 0 0 8 9(8)
75 7 0 23 9 114
(66) (6) (0) (20) (8)
82(72%)
Changeinopinion血・Om④toG◎◎:9/30=30%
(9to①◎③:1ノ9=11%
CandDgroups:seeTable2
献血歴別にみると(Table6),C群の献血歴あ
前調査の賛成率は400mJ献血者では77%と200
り,なし,D群の献血歴あり,なし順に前調査の
mJ献血者の糾%より多く(p<0.025),後調査で
賛成は各々66,67,62,66%,④は各々26,
は,400mJ献血者の④の57%,200mJ献血者の
25,33,26%,(9は各々8,8,6,8%で,献血歴 33%が賛成に変わったことから,後調査の賛成は
の有無による差は認められなかった.後調査では,
各々泌%と72%になった(p<0.005)が,介入効
賛成が各々82,75,74,72%,④は各々14,
果が有意であったのは400mJ献血者のみであっ
17,20,20%,(9はC群献血歴ありのみ減少して
た(p<0.025).
5%になったが,後調査でも献血歴による差は認
3)反対意見の理由
められなかった.一方,資料による介入効果が有
⑤「やるべきではない」との回答の理由について
意に認められたのは,C,D群ともに献血歴あり
のみで,両群の賛成の増加(p<0.005,0.025)と④
は,400mJ,成分献血の導入に共通しておりt C
群では未だ成長過程にある,体力面での不安があ
の減少(p<0.025,0.01)およびC群の⑤の減少
る,大人(18歳あるいは20歳)になってからでよ
(p<0.05)であった.
い,最近の高校生は弱くなっている,等が挙げら
A群の献血種別による回答を,Table7に示す.
れていた.またD群ではC群と同様の理由の他
▼「
JapaneseJournalofTransfusionandCellTherapy,Vol.52.No.6
6餌)
Table7 0pinionandchangeinopln10nCOnCerningtheacceptability’ofapheresisfromyoungpersonsbeforeanda
terreadingadocumentaboutapheresisdonationsby400mland200mEwholeblooddonationsatsurveyinAgroup.
after
欄)
before total
⑤
④
(%)
96
3
0
99(77)
17
13
0
30(23)
0
0
0
0(0)
113
(88)
16
(12)
0
a允er
129
(0)
Changeinopinionfrom④to(獅:17/30=57%
Agl−Oup:seeTable2
before total
200mLdonation
(%)
(互X萱X卦
GX至)③ 123
l)dbre
5
0
aftertotd
(%)
148
(72)
8
0
131(64)
50
0
75(36)
0
0
58
(28)
0
0(0)
206
(0)
Changeinopinionfrom(彰to①②③:25/75=33%
に,本人に正しい判断が望めない,成分採血時の
全血由来から400mJ全血由来へと大幅に移行し,
感染が恐い,フィルター経由の環流(返血)は不
200mJ全血由来の赤血球成分の使用量が激減して
可,との回答があった.これらの見解は資料を読
きていることから,日赤血液センターでは200mJ
んだ後でもほとんどの回答で変化はなく,献血経
全血採血を抑制する方針であることも挙げられ
験の有無による差も認められなかったが,保護者
る.しかしながら,献血のきっかけとして高校生
の許可を条件とするとの⑤から(弧への変更が,C
献血を挙げる献血者が多いとの報告があり6),高
群に1人あった.
校生献血がその後の献血指向性に大きな役割を
持っているといえることから,より合理的な高校
前調査の賛成回答から⑤への変更では,B群で
量が多い,D群で正しい判断が望めない,他の方
法を考えるべきとの理由が挙げられていたが,④
への変更には理由の記載はなかった.
考、
今後予測される血液不足対策としては,献血量
生献血を堆進することが必要と考えられる.
採血基準は.医学的な安全性とともに,社会的
な合意が得られなければならない.1986年の採血
基準改訂時には,400mJ全血採申と成分採血時の
安全性を循環血液量に対する採血量の比として検
の増量と使用適正化による量的抑制とが必要であ
討し,それが12∼13%以内(体重約50kgで400
る.前者については,1986年の400m∼全血採血と
mJ採血)であれば問題はないとされ8),同様なこ
成分採血の導入,1999年の年齢の上限の69歳へ
の引き上げとがあり,いずれも量的確保に効果的
とは他にも報告されている9).こめことは年齢に
は関係しないと考えられ,、事実自己血輸血では16
であった.今後の献血量の確保対策としては,先
歳未満あるいは70歳以上でも採血が行われてい
ずは現行の採血基準に該当する年齢層のより多く
るが,特に年齢による問題点は指摘されていない.
の参加を求める努力をすることであるが,さらに
しかし,1986年の採血基準の制定時には社会的に
は現在200mJの全血献血しかできない16,17歳
受入れ易いことを考慮して,18歳以上とされた経
の若年者(高校生)を対象にして,400mJ全血と成
緯がある.
分献血を導入することの是非を検討することであ
今回のアンケート調査では,400mJ全血献血で
与7%,成分献血で61%が,主に体重等の採血基準
る.
近年の年齢階級別の人口に対する献血率の推移
満たしていれば16,17歳での導入に賛成して
をみると,毎年若年者ほど高い傾向にあるが,16∼
いることから,現在では大方の合意は得られてい
】▼9歳の献血率は1985年をピークに以降の低下傾
るものと考えられる.このことは,両採血法への
向が顕著である1)2).このような低下傾向の理由の
理解が導入後20年近く大過なく行われてきてい
一一つとして,医療機関の血液使用状況が200mJ
ることから,より深まってきていることの表れと
日本輸血細胞治療学会誌 第52拳 第6号
691
もいえるであろう.さらに,前調査で400mJ全血
献血について「分らない」と回答した中の32∼
50%が,B群(献血非夷施枚)を含めて資料旋供
後に賛成に転じたこと,さらに成分献血について
も同様に「分らない」との回答中の37∼53%が賛
成に変わったこと.しかも「やるべきではない」(反
対者)の人数は少ないものの資料提供後には不変
ないしわずかな減少であったことは,400mJ全血
や成分献血についての実態を理解することによ
り,賛成者が増加することを示している.また,
C,D群(教諭,父母)では献血経験者の方が,ま
たA群(献血実施校)では200mJ献血者より400
mJ献血者のほうが,資料提供後の賛成への転換率
群島かった.高校生の多くは初回は200mJ献血で
あることも考慮すれば,献血経験が資料内容の理
解をより容易にする効果があると考えられる.
海外での状況としては,欧米での採血基準(主
に採血量と年齢)を各国のホームページ等で検索
した結果 全血採血は体重50kg以上 採血量
450∼500mJの場合,年齢の下限は17あるいは18
歳が多かったが,米国では一般には17歳10)として
し、るものの,ニューヨーク,カリフォルニア等の
7州では16歳でも親の同意があればよく,また
オーストラリアでも16,17歳の採血には親の同
意を必要としている.なお,ニューヨーク州が16
歳からとしたのは2005年4月であり】1),今後は
そ㌘他の州においても年齢の下限の見直しが行わ
れ苛ものと思われる.
以上のごとく,今回のアンケート調査結果や国
外の状況からして,16,17歳での400mJ全血およ
び成分採血甲実施は可能であると考える.本邦で
はすでに200mJ全血採血が16歳から行われてい
文 献
1)日本赤十字社:血液事業の現捉平成16年統計
表,2(氾5,4,5,訂∴
2)血液製剤調査機構:年齢別献血率の推移.血液事
業関係資料集(資科7),平成15年皮版,2004,8A
3)東京都福祉保健局保健政策部疾病対策課:平成
16年冷血状況調査集計結果.2005年.
4)渡辺義久 高徳孝喜,掛川裕嵐他:日本の将来
人口推計をもとにした今後30年間の輸血用血液
の需給予測.日輪血会誌,44‥328−335,1998.
5)厚生労働省:輸血用血液製剤の供給状況.血菓分
画架剤の供給状況.血液事業報告,平成17年度
版,2005.3㌃−39.
6)神谷 息 前田蔑章,柴田弘俊,他:採血基準見
直しに関する検討一献血者.一般市民および高校
生の献血に関する意識調査.採血基準の改訂と血
液製劫の適正使用に関する研究(主任研究者
清水膠).厚生科学特別研究 平成13年度研究報
告.2(氾2.8−42.
7)前田義幸.神谷 息,池田久賓,他:高校生にお
ける400mJと成分敵血を推進することに関する
アンケート調査.少手高齢化社会における献血に
よる安全な血液の国内自給自足対策のあり方に
関する研究(主任研究者 清水勝).厚生労働科学
特別研究 平成14年度報告書,2∝)3,11−52.
8)清水 勝‥鱒括研究報告一供血者保護のための
採血基準設定に関する研究(主任研究者 清水
勝).厚生省血液研究事業,昭和59年度研究報告
書,19a5,5….
9)SelectCommitteeonQualityAssuranceinBlood
TransfusionServices:Selecdonofdonors.Guide
tothepreparation,uSeand qualityassuranceof
bJ00dcomponents.RecommendationNo.R(95)15,
2005,33−54.
10)FriedeyJL:Requirementsforallogeneicdonor
qualification.Standards for Blood Banks and
TransfusionServices,23rded,AABB,2004,61.
11)AABB:The New York State Departmentpf
HealthrecentlygrantedNewYorkBloodCenter
(NYBC)avariancetoexistjngstateregulations,
る状況を踏まえれば,親権者の同意の必要性につ
permittingdonationsforthevery缶rsttimefrom
16−year−や1d blood donorsin New York.AABB
いては今後検討すべき課題であろう.
WeekJyReport,11(11)=7,2005.
本研究は厚生労働科学研究費補助金(平成14年度)に
よったものである.
 ̄
、
692
JapaneseJournalofTransfusionandCellTherapy,Vol.52.No、6
Ⅱ寸TRODUCTIONOF400MLWHOLEBLOODANDAPHERESISDONATIONSFROM
AGE16AND17(HIGHSCHOOLSTUDENTS)INTOTHEBLOODPROGRAM
−INVESTIGATIONOFCHANGINGOPINIONSBEFOREAND
AFTERREVIEWOFEXPLANATORYDOCUMENTS−
MichikoTakenakal),TadashiKamiya2),SayokoSugiura2),HisamiIkeda3),HirotoshiShibata4),
YoshiakiMaeda5),KazukoMurakami5)andMasaruShimizu6)
l)KanagawaHealthServiceAssociation
2)JapaneseRedCrossAichiBloodCenter
3)JapaneseRedCrossHokknidoBloodCenter
4)JapaneseRedCrossOsakaBloodCenter
5)JapaneseRedCrossFukuokaBloodCenter
6)DepartmentofLaboratoryMedicine,KyorinUniversitySchoolofMedicine
Inordertoobtainmorebloodforanincreaslnglyagedsociety,aqueStionnairesurveyWaSC
ductedtodiscoverwhetheritwouldbesocia11yacceptabletoaccept400mlwholeblood(WB)and
apheresisdonationsforthebloodprogramfromyoungpersonsoftheageof16and17(main1yhigh
schooIstudents),Whoarepresentlypermittedtodonate200mlWBonly.Wesurveyedhighschoo
StudentswhodidanddidnotparticipateinmassblooddonationsinschooIs,theirhighschoolte
ers,andparents.Theywereaskedtoreply tothesame questionsbefore and afterreading d
mentsexplainingbothblooddonationtypes.Thetotalnumberofrespondents(rate)wasl,450(81%
Beforereviewingthedocuments67%answered“acceptable”to400mlWBand61%toapheresis,
and28%and35%answered“unclear,reSpeCtively.One−thirdtoone⊥halfofthosewhoanse
unclear”changedtheiropinionto“acceptable”afterreadingthedocuments.Thisresultedinanin
creaseof“acceptable”oplnlOnStO77%for400mlWBandto74%forapheresis.Theproposalwa
“declined”byaroundlO%orlessinbothquestions.
Itisconsideredthat、ゆeintroductionof400mlWBandapheresisdonationsh−OmyOungperS
intothebloodprogramw9uldbecommonlyacceptedafterinformedconsentwasobtained,andthat
theprovisionofsuitableinformationonthesedonationscangainleadtoanincreaseinacceptability.
Keywords:Youngdonors,400mldonation,apheresisdonation,interventionsurvey