新生児と乳児の連続血液ガス測定

新生児と乳児の連続血液ガス測定
www.radiometer.com/tc
目次
はじめに ........
3
pCO2 (二酸化炭素分圧)モニタリング-pCO2 低値の意味 ........................................................ 4
pCO2 (二酸化炭素分圧)モニタリング-pCO2 高値の意味 ......................................................... 6
pO2 (酸素ガス分圧)モニタリング-pO2 の高値と低値の意味 .................................................. 8
血液ガスモニタリングの方法 ...................................................................................................... 9
小児集中治療室 (PICU) で経皮モニタリングを行った例 ........................................................ 12
新生児集中治療室 (NICU) で経皮モニタリングを行った例 .................................................... 14
正確な経皮モニタリング-実際的な問題 ................................................................................ 15
2
はじめに
新生児学および小児集中治療の技術と科学は、過去数十年間に劇的に発展しました。
その焦点は、「単に生存させること」から「ハンディキャップなく生存させること」
へ変わりました。
生存者における長期の影響に関する検討も広がりました。脳の病変と大脳の損傷が検
討事項の中心ではありますが、肺の損傷を避けることも一層重要になっています。
生理学と病態生理学の新しい知識、サーファクタントやNO(一酸化窒素)などの新し
い薬物療法、およびHFO(高頻度振動換気法)や少量の血液で行う高度な検査分析と
いった新しいテクノロジーにより、臨床医は、新生児と小児の患者の疾病に対する闘
いで有力な武器を得ていると言えるでしょう。
しかしながら、病気に罹っている新生児と乳幼児の死亡率および合併症のリスクはな
お高く、これらのリスクを最小限にするために、臨床医は重要なパラメーターを管理
し続けなければなりません。これらのパラメーターの中には、血液ガス、酸素、およ
び二酸化炭素が含まれます。
病気のこどもたちの管理においては酸素と二酸化炭素の測定が基本ですが、新しい
効果的な治療法が使用される現在、その重要性は以前にも増しています。近年、私
たちは、臓器の機能と臓器への損傷に関する血液ガスの影響、特に二酸化炭素の影
響について重要な新しい知識を得ました。また、適切なモニタリングによって有害
な結果に至るリスクをどのように最小限にできるか、ということについても証明され
てきました。
酸素と二酸化炭素の両方を連続的にモニタリングすることは極めて重要です。変化は
急に起こるので、臨床医が血液検体のような断続的な測定にのみ頼っていると、臓器
の損傷が発現するのに充分な時間が経つまでそうした事態が検知されずに放置されて
しまう可能性があります。
本書では、新生児と乳児における連続した血液ガスモニタリングの重要性をまとめ、
それを血液検体に関連付けます。症例は教育の目的で構成してありますが、それらは
すべて、私の15年以上にわたる新生児および小児集中治療におけるケースに基づいて
います。
デンマーク
コペンハーゲン国立大学病院、助教授
新生児学専門医ならびに小児科学集中治療専門医
Kaare E. Lundstrøm
[日本語版監訳: 国立成育医療センター 手術集中治療部 中川 聡]
3
pCO2(二酸化炭素分圧)モニタリング
-pCO2低値の意味
4
大脳の血流
症例
動脈血中の二酸化炭素分圧pCO2(aB)が、2~3分の応答
時間で大脳の循環に強く影響するということが一般的
に受け入れられています[1]。pCO2(aB)が低下すると、
その結果大脳の血流(CBF)が低下します。いくつかの
研究で、pCO2(aB)の低値と有害な大脳の転帰が強く相
関していることが証明されました[2,3]。どのくらい
の時間pCO2(aB)が一定の値を下回っていると脳の損傷が
誘発されるかはまだ確立されていませんが、数値が低
いほど短時間の内に損傷が引き起こされる、というこ
とを確信する理由があります。数値が22.5 mmHg(3.0
kPa)以下では、2~3分という僅かな時間内に損傷が起
こり得ますが、この値よりも僅かに高い分圧に長時間曝
すことも危険であると考えられます[4]。
この理由だけでも、人工呼吸管理を必要とする急性疾
患に罹った子供では、脳が損傷するリスクを軽減する
ためにpCO2の連続測定を標準的な実践に取り入れるべ
きです。
地方の病院で、妊娠25週で女児が生まれた。直ちに挿
管し、サーファクタントを投与した。臍カテーテルを
挿入し、適切な圧と40/分の回数で換気した。酸素化能
と循環は良好であった。生後2時間以内に搬送チームが
到着し、85分かけてその女児を中央の大学病院に搬送
した。出発時、pCO2(aB)は37 mmHg(4.9 kPa)で、人工
呼吸器の換気回数を下げた。搬送中、pCO2は測定しな
かった。受け入れ病院に到着したとき、pCO2(aB)は21
mmHg(2.8 kPa)で、血圧、心拍数、および酸素化能は
満足の行くものであった。
pCO2値が低いと、大脳損傷のリスクがあるが、搬送中
にpCO2を測定していればpCO2の低値は避けられたであ
ろう。
高頻度振動換気法
低二酸化炭素血症と肺損傷
高頻度振動換気法(HFO)は、多くの施設において、新
生児患者はもとより小児でも使用されている人工呼吸
法です。新生児に関する数件の研究から、HFOで治療さ
れた患者では、予期せぬ過換気とpCO2のレベルが低いこ
とが原因で、大脳に有害な結果を招く危険性が増加す
ることが明らかになりました[5,6]。この方法は、こ
のような危険性があるものの、従来の換気と比較して
肺の損傷を保護すると考えられるため、広く使用され
ています。HFOは、従来の換気で高二酸化炭素血症にな
った患者の状態を改善する場合にも有効です。HFOを開
始してから数分以内にpCO2の著しい低下が観察される
ことがあります。pCO2値が低下し過ぎないようにpCO2の
連続測定と組み合わせてHFOを使用すると、大脳の損傷
のリスクが最小限になります。
サーファクタント治療の前や人工呼吸中のpCO2の低値
が、早産児の慢性肺疾患の発症と相関することが明ら
かになっています[7]。この関係は、一回換気量が大
きいがために肺のvolutraumaを惹き起こしていること
が原因だろうと推察されます。早産児では、出生時に
僅か6回肺を拡張させただけでvolutraumaが誘発され得
ます[8]。過換気の結果、低二酸化炭素血症になりま
す。したがって、早産児を換気している場合には、肺
の損傷のリスクを最小限にするために、連続して
pCO2を測定することが重要です。
症例
妊娠31週で男児が生まれた。24時間以内にB群溶連菌
による重篤な肺炎と敗血症を発症した。pCO2を望まし
い45~52 mmHg(6~7 kPa)のレベルで維持するため
に、換気の圧力を高くする必要があった。したがって、
pCO2とpO2の経皮測定と一緒にHFOを開始した。HFOの最
初の30分間に、tcpCO2(経皮二酸化炭素分圧)が望まし
いレベルより低くなったので、人工呼吸器の設定を5度
変更した。1時間後、経皮測定値が安定し、血液ガス分
析からpCO2(aB)が45 mmHg(6.0 kPa)であることがわ
かった。もし連続してモニターしていなければ、この
患児が重篤な低二酸化炭素血症を起こしていた事は間
違いない。
1
Pryds O, Andersen GE, Friis-Hansen B. Cerebral blood flow reactivity in spontaneously breathing, preterm infants shortly after birth. Acta Paediatr Scand 1990; 79: 391-96. 2 Graziani LJ,
Spitzer AR, Mitchell DG, et al. Mechanical ventilation in preterm infants. Neurosonographic and developmental studies. Pediatrics 1992; 90: 515-22. 3 Greisen G, Vannucci RC. Is periventricular leucomalacia a result of hypoxic-ischaemic injury? Hypocapnia and the preterm brain. Biol Neonate 2001; 79,3-4: 194-200. 4 Ambalavanan N, Carlo WA. Hypocapnia and hypercapnia in respiratory management of newborn infants. Clin Perinatol 2001; 28,3: 517-31. 5 Henderson-Smart DJ, Bhuta T, Cools F, Offringa M. Elective high frequency occillatory ventilation
versus conventional ventilation for acute pulmonary dysfunction in preterm infants. Cochrane Database Syst Rev 2001; 3: CD000104. 6 Moriette G, Paris-Llado J, Walti H et al. Prospective
randomised multicenter comparison of high frequency occilatory ventilation and conventional ventilationin preterm infants of less than 30 weeks with respiratory distress syndrome.
Pediatrics 2001; 107,2: 363-72. 7 Garland JS, Buck RK, Allred EN, Leviton A. Hypocarbia before surfactant therapy appears to increase bronchopulmonary dysplasia risk in infants with
respiratory distress syndrome. Arch Pediatr Adolesc Med 1995; 149,6: 617-22. 8 Bjørklund LJ, Ingemarsson J, Curtedt T et al. Manual ventilation with a few large breaths at birth compromises the therapeutic effect of subsequent surfactant replacement in immature lambs. Pediatr Res 1997; 42,3: 348-55.
5
pCO2 (二酸化炭素分圧)モニタリング
- pCO2 高値の意味
高pCO2値と有害な転帰との間の相関性はまだ証明さ
れていないので、新生児の大脳循環にとって高値の
pCO2が危険ではないかもしれません。しかし、動物試
験では、僅かな高二酸化炭素血症が、脳を虚血から保
護する作用があることが明らかになりました[9]。
高二酸化炭素血症の結果、アシドーシスになる可能性
があり、その場合には処置が必要です。pCO2の突然の
上昇は患児の状態の変化、または治療に対する合併症
を意味しているので、その状況を慎重に評価しなくて
はいけません。
6
症例
妊娠26週で誕生した男児を、最初にサーファクタントを3回
投与して治療した。6日目、人工呼吸管理は必要であるもの
の、気道内圧は低く、酸素濃度も高くなかった。1時間以内に、
酸素化能は全く変化はなかったものの、tcpCO2が42 mmHg(
5.6 kPa)から51 mmHg(6.8 kPa)まで上昇した。状態を慎
重に評価したところ、呼気相が長くなり、肺が多少過伸展し
たことが判明した。気管内チューブの吸引を繰り返して粘性
の塞栓を除去すると、状態が直ちに正常になった。pCO2を連
続して測定していなければ、患児を危険に曝す状態にまで
症状が進行していただろう。
気胸
新生児の気胸は死亡率とその後の合併症の頻度が顕著で
す。早期の診断で転帰が改善されると思われます。最近、気
胸と診断されるのが遅いことが多々ある、ということが示さ
れました。発症から臨床上の診断までにかかる時間の中央
値は、127分です[10]。pCO2の経皮モニタリングにより、診断
を早期に行うことができ、その結果、転帰が有害になるリス
クを軽減できることが明らかになりました。
高二酸化炭素血症を許容する人工呼吸法
(Permissive hypercapnia)
新生児の無作為化した臨床試験では、許容される高二
酸化炭素状態が有益であることはまだ証明されていま
せんが、多くの施設で使用される治療の戦略です
[11,12]。目標にするpCO2の正確なレベルは充分に定
義されてなく、施設間で異なっています。Permissive
hypercapniaを使用するときには、pCO2のレベルを高く
しすぎてアシドーシスにならないようにすることが重
要です[13]。許容される高二酸化炭素状態の始め、
およびこの過程の後半でも、過度の高二酸化炭素血症
とアシドーシスを避けるために、pCO2の経皮測定を使用
するのが安全な方法です。
症例
妊娠25週で誕生した女児を、最初にサーファクタント
を2回投与して治療した。3日目、人工呼吸管理は必要
であるものの、気道内圧や酸素濃度も十分低くなって
いた。気道内圧が低く、酸素要求があり、まだ人工呼
吸器に接続していた。30分以内に、酸素化能は全く変
化なく、tcpCO2が38 mmHg(5.1 kPa)から50 mmHg(
6.7 kPa)まで上昇した。気管吸引の後も、患児の容
態に変化は認められなかった。胸部X線で右側の気胸が
明らかになり、直ちに脱気をしたところ、容態は改善
された。
9 Vannucci
RC, Towfighi J, Heitjan DF, Brucklacher RM. Carbon dioxide protects the perinatal brain from hypoxic-ischemic damage: an experimental study in the immature rat. Pediatrics
1995; 95,6: 868-74. 10 McIntosh N, Becher JC, Cunningham S, Stenson B, Laing IA, Lyon AJ, Badger P. Clinical diagnosis of pneumothorax is late: use of trend data and decision support
might allow preclinical detection. Pediatr Res 2000; 48,3: 408-15. 11 Woodgate PG, Davies MW. Permissive hypercapnia for the prevention of morbidity and mortality in mechanically ventilated newborn infants. Cochrane Database Syst Rev 2001; 2: CD002061. 12 Bigatello LM, Patronitti N, Sangalli F. Permissive hypercapnia. Curr Opin Crit Care 2001; 7,1: 34-40.
13 Varughese M, Patole S Shama A, Whitehall J. Permissive hypercapnia in neonates: the case of the good, the bad and the ugly. Pediatr Pulmonol 2002; 33,1: 56-64.
7
pO2(酸素ガス分圧)モニタリング
-pO2の高値と低値の意味
病気の新生児の治療において最も重要な目標は、患児
の組識および臓器に対して確実に適切な酸素供給を行
うことです。新生児は、年齢を重ねた患児よりも低酸
素血症に対して耐性があることが多いのですが、低酸
素血症と虚血は他の患者の場合と同様に、新生児の患
者においても危険です。しかしながら、高酸素症は、
早産児においては、他の年齢層の患者に比べより危険
です。これは、抗酸化能力が低いことによるものと推
測されます[14]。
早産児では、酸素が多すぎると、酸素の状態が正常に
なった後も数時間にわたり大脳の血流が低下している
ことが明らかになりました。肺に対する毒性も証明さ
れています[15,16]。したがって、特に早産児では、
高酸素症を避けなければなりません[17]。
ヘモグロビンの総濃度が高く、胎児ヘモグロビンの量
が多い新生児のpO2(aB)とsO2(aB)の最適な目標レベルに
ついてはほとんど知られていません。胎児は、19~23
mmHg(2.5~3 kPa)のpO2と65~70%のsO2で成長するこ
とに留意しておくことが重要です。
新生児
例
無作為化した臨床研究で、早産児の74%が、出生時に酸
素の補給をせずに安定化され得ることが示されまし
た。早産児に、出生時にルーチンで酸素を投与した結
果、大脳の血流が著しく低下し、その状態が数時間持
続しました[15]。
出生後最初の数分間の正常なsO2は90%未満であること
が、いくつかの研究で示されています。
新生児の酸素の状態は急激に変わるので、連続でのモ
ニタリングが適切なモニタリングの中の重要な位置を
占めます。
おそらく、最適なモニタリングは、tcpO2とパルスオキ
シメトリーと、乳酸測定を含む動脈血の断続的な測定
の組み合わせです。
パルスオキシメトリーは、酸素の摂取と輸送の変化に
迅速に応答します。tcpO2からは組識への酸素供給に関
するトレンド情報が得られます。非侵襲的に測定した
数値と動脈血の数値の相関を確認し、酸素の状態を充
分に把握するために動脈血の採血は必要です。酸素の
供給が低下して、嫌気的な代謝が起こると乳酸の生成
が増すので、乳酸の測定は組識に酸素が適切に供給さ
れていることを評価するのに重要です。
成人
新生児では、成熟児でも早産児でも、ヘモグロビン濃度が高く、胎児ヘモグロ
ビンの分画が大きいため、pO2値が低くても、ctO2は高くなります。
14 Weinberger
B, Laskin DL, Heck DE, Laskin JD. Oxygen toxicity in premature infants. Toxicol Appl Pharmacol 2002; 181,1: 60-67. 15 Lundstrøm KE, Pryds O, Greisen G. Oxygen at birth
and prolonged cerebral vasoconstriction in preterm infants. Arch Dis Child 1995; 73,3: F81-86. 16 No authors listed. Supplemental Therapeutic Oxygen for Prethreshold Retinopathy Of
Prematurity (STOP-ROP), a randomised, controlled trial. I: Primary outcomes. Pediatrics 2000; 105,2: 295-310. 17 Askic LM, Henderson-Smart DJ. Restricted versus liberal oxygen exposure for preventing morbidity and mortality in preterm or low birth weight infants. Cochrane Database Syst Rev 2001; 4: CD 001077.
8
血液ガスモニタリングの方法
経皮モニタリング
経皮pCO2モニタリング
pO2とpCO2の経皮測定は、電極の下で皮膚を加温し、ガスの
拡散を増加させることに基づいています。温度が上がると
ガスの分圧が増し、数値は電極の温度に依存します。電極
は、動脈血中のガスの分圧ではなく、電極の下の皮膚にお
けるガスの分圧を測定します[18]。
動脈と静脈のpCO2値間の差異はわずかであり、二酸
化炭素は酸素よりも容易に組識内に拡散するので、
tcpCO2はtcpO2に比べて循環の状態による影響を受けま
せん。経皮pCO2値は37℃に補正され、動脈の数値に近
くなります。
経皮pO2モニタリング
呼吸終末二酸化炭素モニタリング
経皮pO2は皮膚に対する酸素供給のトレンド情報を提供
します。この数値は、動脈の酸素状態だけでなく、末
梢循環の影響も受けます。これは、患者の血行動態が
安定しているとtcpO2が動脈血の数値と充分に相関する
ようになることを意味していますが、両方の数値が同
じになるということではありません。
患者の血行動態が安定しない場合、tcpO2は循環状態の
変化を反映します。循環動態の悪化に対する最初の生
理的応答の一つは、血圧を維持するための末梢血管の
収縮です。そのため、中心臓器への血液供給が損なわ
れる前に、皮膚の灌流がしばしば低下します。tcpO2値
の低下は、循環の低下が起きて組識に対する酸素供給
が損なわれることを早期に警告します。
現在のモニターは死腔が小さくなっているので、今や
この方法は早産児にも使用できます。しかし、この方
法は挿管した患児にしか使用できず、また、肺にも心
臓にも疾患のない乳児の周術期のモニタリングとして
のみ使用するよう推奨されています。心肺に疾患のあ
る乳児は、呼吸終末二酸化炭素濃度と動脈血値との相
関が良くないことが明らかになっているので、動脈血
液ガスの代替として使用してはいけません[19]。そ
うした患児では、tcpCO2測定が有効であることが分か
っています[20]。
9
血液ガスモニタリングの方法(つづき)
10
パルスオキシメトリー
症例
パルスオキシメトリーからは、酸素運搬能について連続し
た情報が得られます。パルスオキシメータは、酸素化能と脈
拍数に関する使い易い測定装置です。但し、この方法にはい
くつかの限度があります。
最近の研究では、新世代のパルスオキシメータでも、徐
脈(69%)はもとより、低酸素血症(5.4%)の症状をかなり見
落とす可能性のあるものがあることがわかりました[21]。
種々のパルスオキシメータの不正確さは様々で、sO2の計算
に使用されるアルゴリズムは製品によって異なっており、そ
のため2機種のパルスオキシメータ間で報告されるsO2は2~
3%差が出ることがあります。使用するパルスオキシメータ間
の相関性と、COオキシメトリーで測定したsO2の数値を知る
ことが重要です。
sO2とpO2間の相関性は、酸素解離曲線(ODC)で描かれま
す。この相関性は変動し、酸素が多すぎる場合の毒性は
pO2に依存しているため、高酸素症を検出するためにパルス
オキシメトリーに頼ってはいけません[22]。更に、パルスオ
キシメトリーからはpCO2に関する情報は得られません。
したがって、パルスオキシメトリーと経皮測定を組み合わせ
ることが推奨されます。これらを組み合わせることで、臨床
医があらゆる悪化を検出する能力が増し、患者の重要な情
報を得ることができます。
仮死と胎便吸引症候群で出生しHFOとサーファクタントの
投与を要した成熟新生児。生後35時間時点のFO2(I) は
0.45、平均動脈血圧は45 mmHg(6.0 kPa)で、ドーパミンを
6 g/kg/分で注入したところ、1時間足らずでtcpO2が低下
し始め、52 mmHg(6.9 kPa)から44 mmHg(5.9 kPa)になっ
た。血圧、パルスオキシメータの値、およびtcpCO2を含む他
のパラメータはすべて安定していた。パルスオキシメータで
の酸素飽和度の変化がなくtcpO2が低下した場合、それは末
梢血管の収縮によるものと思われた。動脈血の酸素分圧が
安定していることと、乳酸値が正常であることが血液検体
から確認された。生理食塩水をボーラス投与したところ、
tcpO2が増加した。1時間後、再びtcpO2が下がり始めたが、
他の数値は変化しなかった。心エコー検査により、心臓の収
縮力が弱いことが判明したので、ドブタミンの注入を開始し
たところ、tcpO2は速やかに正常になった。この症例で
は、酸素供給と循環動態に関して、複数のモニタリングを組
み合わせることにより極めて重要な情報が得られ、早期の
治療を行い、更に重篤な悪化を避けることができることが示
された。
臍動脈カテーテル
血液検体
最近の臨床評価で、血液ガスとpHを侵襲的に連続測定する
ための装置が、pO2(aB)とpCO2(aB)について信頼性のある情
報を得るのに有効であることが証明されました[23,24]。し
かし、これらの装置は侵襲的であるので、感染のリスクが増
大し、限られた時間内でしか使用できません。この技法は、
特に、皮膚の状態から経皮測定が困難な患者(特に超未熟
児や極小未熟児など)で経皮モニタリングに代わる貴重な
ものとなります。
動脈の血液検体は、現在でも血液ガス評価の標準です。
しかし、結果を得るには、どのように血液を採取するかが
重要ですし、血液検体は常に状態の一瞬の臨床像に過ぎま
せん。血液検体の解釈は、連続モニタリングと組み合わせ
ると著しく向上します。
血液検体には望ましくない副作用があります。検体採取を
繰り返すことは患者を不快にさせてストレスをかけるだけで
なく、輸血の必要が生じる場合もあります。したがって、採
血の回数は必要最小限に減らすべきです。
最近の研究で、臍動脈カテーテルからの血液採取に関連し
て脳循環が著しく変化し、酸素化能が損なわれることがわ
かりました[24]。この障害を最小限にするように注意しな
ければなりません。
適切に採取できれば、毛細血管からの検体が動脈血検体の
代わりになります。しかし、毛細血管検体の方が分析前の誤
差を一層起こしやすいので、結果を解釈するときにはこのこ
とに留意しなければなりません[25]。毛細血管検体におけ
る酸素の状態と乳酸は、特に末梢循環が低下している患児
では動脈血の数値との差が顕著になる可能性があります。
症例
人工呼吸管理中の早産児。動脈血採血が必要であった。
侵襲的な採血を行う前に経皮測定値を記録した。それか
ら患者にアプローチして検体を採取した。採血時に再び経
皮測定値を記録した。採血前に比べ、この時点のtcpO2は9
mmHg(1.2 kPa)低く、tcpCO2は6 mmHg(0.8 kPa)高かっ
た。採血の行為自体が血液ガス値を変化させた。そういった
ことも含めて血液ガスの結果を解釈すれば、臨床医は急性
の変化への対応を適切に行うことができるであろう。
18
Franklin ML. Transcutaneous measurement of partial pressure of oxygen and carbon dioxide. Respir Care Clin N Am 1995; 1,1: 119-31. 19 Short JA, Paris ST, Booker PD, Fletcher R. Arterial to end-tidal carbon dioxide tension difference in children with congenital heart disease. Br J Anaest 2001; 86,3: 349-53. 20 Carter BG, Wiwczaruk D, Hochmann M, Osborne A, Henning
R. Performance of transcutaneous pCO2 and pulseoximeter monitors in newborns and infants after cardiac surgery. Ananaest Intensive Care 2001; 29,3: 260-65. 21 Bohnhorst B, Peter CS,
Poets CF. Pulse oximeters reliability in detecting hypoxemia and bradycardia: comparison between a conventional and two new generation oximeters. Crit Care med 2000; 28,5: 1565-68.
22 Wimberley PD, Helledie NR, Friis-Hansen B, Siggaard-Andersen O, Fogh-Andersen N. Some problems involved in using hemoglobin saturation in arterial blood to detect hypoxemia
and hyperoxemia in newborn infants. Scand J Clin Lab Invest 1988; 48, Suppl 189: 45-48. 23 Coule LW, Truemper EJ, Steinhart CM, Lutin WA. Accuracy and utility of a continuous intra-arterial blood gas monitoring system in pediatric patients. Crit Care Med 2001; 29,2: 420-26. 24 Meyers PA, Worwa C, Trusty R, Mammel MC. Clinical validation of a continuous intravascular
neonatal blood gas sensor introduced through an umbilical artery catheter. Respir Care 2002; 47,6: 682-87. 25 Roll C, Huning B, Kaunicke M, Krug J, Horsch S. Umbilical artery catheter
blood sampling decreases cerebral blood volume and oxygenation in very low birth weight infants. Acta Paediatr 2000; 89,7: 862-66. 26 The Whole Blood Sampling Handbook, Radiometer, 2000.
11
小児集中治療室(PICU)で
経皮モニタリングを行った例
pO2とpCO2の経皮モニタリングは、あらゆる年齢群の患児、
つまり新生児はもとより小児でも使用できます[26,27]。小
児における大脳の血管のCO2反応性は新生児のそれと同様
で、PICUの患者での低二酸化炭素血症による脳虚血の危険
性はNICUの患者と同じで、どちらの場合にもpCO2の連続モ
ニタリングの必要性があります。
12
症例
糖原病のひとつであるPompe病で呼吸筋の筋力低下が進
行している4歳女児。日中の酸素化能は正常で、pCO2は49~
56 mmHg(6.5~7.5 kPa)のレベルであった。夜間睡眠中の
モニタリングでは酸素飽和度の低下が何度も認められ、
tcpCO2は90~105 mmHg(12~14 kPa)まで上昇した。
フェイスマスクでの非侵襲的な陽圧人工呼吸を開始し、パ
ルスオキシメータと経皮的なpO2およびpCO2の連続モニタリ
ングをもとに人工呼吸の設定を調節した。この患児はマス
クによる人工呼吸に順応でき、血液ガスは著しく改善され
た。このシステムでのフローのリーク、特にマスク周囲のリー
クの増大は、酸素化の変化を伴わないtcpCO2値の上昇によ
って気づかれることが何度かあった。
このような症例では、人工呼吸器の設定を迅速に調整して
適切な換気をモニターするために、tcpCO2の連続モニタリン
グが重要な補助手段になる。
症例
症例
痙性四肢麻痺と重度の胃食道逆流があるが肺の機能は正
常な3歳の男児に、逆流を防ぐための胃の手術(胃底皺襞形
成術、ニッセンの手術など)が行われた。術後、痛みを軽減
するために、モルヒネとブピバカインの硬膜外腔への持続
注入を行った。この患児にはフェイスマスクで酸素を投与
し、パルスオキシメータ、pO2とpCO2の経皮測定、および呼吸
数の連続モニタリングを行った。手術の4時間後、tcpCO2が
徐々に増加し、酸素化能は安定した状態で、呼吸数が僅か
に低下した。血液ガス検査で動脈の酸素分圧が正常である
ことを確認したが、pCO2は65 mmHg(8.6 kPa)、pHは7.26で
あった。硬膜外薬物療法の注入速度を低下させたところ、
3時間後に血液ガス値が正常になった。
この症例は、肺の機能が正常な患児の場合には、換気が著
しく低くても酸素化能が正常に維持されることを示してい
る。この患児の場合、連続モニタリングによって高二酸化炭
素血症が検出されていなければ、アシドーシスが危険なレ
ベルにまで悪化した可能性がある。
急性リンパ球性白血病を患っている2歳半の男児が、
Pneumocystis Cariniiの感染によるARDS(成人呼吸窮迫症
候群)でPICUに入院した。この患児では、極端な人工呼吸
器の設定と100%の酸素でかろうじて酸素化が維持された。
HFOを開始したところ、2~3分以内にtcpCO2が低下し始めた
ので、再度設定の変更が必要になった。しかし、酸素化能の
著しい改善は認められなかったため、ECMO(体外循環)を導
入する前にサーファクタント治療を行うことに決めた。サー
ファクタントを気管内に投与すると、18時間以内にFO2(I)が
0.40まで下げることができ、ECMOは必要なくなった。その
後、1時間もたたないうちに、酸素化能の低下はないものの
tcpCO2が90 mmHg(12 kPa)まで急激に上昇した。胸部X線
写真で気胸はなかったが、重度の過膨張が認められた。気
管吸引では何も吸引できなかったが、吸引によりさらに状態
が悪化し、気管内チューブを入れ替えたところ、直ちに状態
が改善した。乾燥した分泌物がチューブ内で一方弁になっ
ていたことがわかり、気管支鏡では気管支からさらに多くの
分泌物が除去された。
その後の経過では合併症もなく、この患児は6日後に抜管さ
れた。3年後、この患児の状態は良好で、白血病の再発もな
かった。
この症例では、経皮モニタリングが、HFOの設定の調節と高
二酸化炭素血症の検出の両方において、きわめて重要であ
ることを証明した。
13
新生児集中治療室(NICU)で
経皮モニタリングを行った例
pO2とpCO2の経皮モニタリングは、酸素化能または二酸化炭
素の状態が突然変わる危険性がある場合にはいつでも適
応となります。適応の例としては、サーファクタント治療、人
工呼吸器の設定または換気方法の変更、ウィーニングの過
程、および抜管後が挙げられます。
症例
気管支肺異形成がある2ヵ月の女児が、人工呼吸器の機
械的な問題から人工呼吸器の変更が必要になった。人
工呼吸器を交換する間、この女児を用手換気した。3分
以内にtcpCO2が49 mmHg(6.5 kPa)から39 mmHg(5.2
kPa)に低下した。用手換気の回数を減らすと、pCO2は
即座に正常になった。pCO2を測定していなければ、数
分の内に脳循環を危険に曝すレベルまでpCO2が低下し
てしまった可能性がある。
14
症例
妊娠25週で出生した体重655 gの早産児が、サーファ
クタントの投与を2回行った後、生後2日目で人工呼吸
器から離脱した。酸素化能が安定した状態で、人工呼
吸器の回数と圧を徐々に下げたところ、tcpCO2は僅か
に変化したのみだった。血液検体は全く採取しなかっ
た。SIMV回数が14/分、圧は15/4で、酸素化能に著しい
変化はないものの、tcpCO2が突然、20分間で11 mmHg
(1.5 kPa)増加した。人工呼吸回数は18/分まで増加
させ、tcpCO2は正常になった。6時間後、ウィーニング
を再開することができ、その2~3時間後には抜管でき
た。ウィーニングを開始してからは、血液検体を全く
採取しなかった。
この症例は、2つの事を示している。第一にpCO2を連続
モニタリングすることの重要性を示している。pCO2の
増加に気付かずに過ごしていたら、この乳児は著しく
悪化していたことだろう。第二に、ウィーニング中と
その後の採血の必要性をかなり減らすことができるこ
とである。
正確な経皮モニタリング
-実際的な問題
pO2とpCO2の経皮モニタリングは、患者の酸素と二酸化
炭素の状態を測定する、使いやすい非侵襲的な方法で
す。電極は、クラーク型の酸素センサーとセベリング
ハウス型の二酸化炭素センサーで構成されています。
迅速な(3分未満の)自動キャリブレーションの後、電
極を患者につけて、安定するまでの僅かな時間ののち
連続測定を開始します。しかしながら、pO2とpCO2の経
皮モニタリングは、パルスオキシメータを使うよりも
複雑ではあります。したがって、装置に付随している
ユーザーマニュアルに記載された指針と使用方法に従
って使用することが重要です。
経皮電極については、かねてよりいくつかの懸念がありま
す。それは、皮膚を加温すること、熱傷創と圧迫による壊死
の危険性が潜在していることです。これらの危険性は、以下
のいくつかの点に注意をすれば、避けられる、あるいは、最
小限にすることができます。
定リングを2、3個装着し、これらの間で電極の位置
を変えます。電極の位置を変える度に固定リングを
外すわけではないので、皮膚への影響は最小限にな
ります。但し、固定リングは、皮膚の状態に応じて
12~24時間毎に取り外してください。
• 経皮的電極を患者につけているときには、絶対に電
極を直接圧迫してはいけません。更に、患者が電極
の上に直接乗ってしまうような体位を避けます。こ
れらはどちらの場合でも、測定が意味がないばかり
か、皮膚の壊死を誘発します。
• 経皮測定を推奨できない患者もいます。これには、
特別な皮膚の問題や、胎児水腫のような皮膚の浮腫
による場合が該当します
• 皮膚が薄いほど(つまり、患児が未熟であるほ
ど)使用する温度を低くします。成人と小児の場
合は44℃が推奨されており、この温度は、新生児と
早産児でも使用できます。成熟新生児の場合では、
43.5℃の温度で充分であり、早産児では42℃という
低い温度で使用することもできます。温度が低いほ
ど、加温による皮膚の変化への危険性が小さくなり
ます。低い温度で測定する場合には、その分、応答
時間が長くなり、動脈と経皮の各酸素ガス分圧の差
が大きくなることに注意することが必要です。
• 電極部位を3~4時間毎に変えることが重要です。
皮膚が薄く、弱い患者では2時間毎に、可能であれ
ば1毎時毎に変えてください。これを行うには、固
15
信頼の提供
ラジオメーター社では、この信頼性をお客様に提供する
ことに焦点をおいています。私たちは、信頼性の高い製
品、充分な製品トレーニング、トラブルのない実施、効
率の良いカスタマーサポート、そして継続して知識を共
有することを通してこれを実行しています。
経皮血液ガス分圧測定に対するラジオメーター社のアプ
ローチは、この分野において30年以上、世界中の病院か
ら信頼を得ているソリューションです。
bloodgas.orgは、血液ガス検査室と緊急検査室で働く医
療従事者のための学術ウェブサイトであり、現在のさ
まざまな血液ガス関連の医学論文を紹介しています。
bloodgas.orgはラジオメーターが運営しています。
www.bloodgas.org
経皮血液ガス分圧に関する詳細な情報は、以下のサイト
にアクセスしてください。
www.radiometer.com/tc
ラジオメーター社と経皮モニタリングに関する詳細な情
報は、お近くのラジオメーター営業所にお問い合わせい
ただくか、以下のサイトにアクセスしてください。
www.radiometer.com
www.radiometer.co.jp
�
TM
ラジオメーター㈱はISO9001/2000認証を取得しています。
Radiometer Medical ApSはISO 9001/ISO 13485/EN46001を取得しています。
仕様は予告なしに変更される場合があります。TCM™およびTina™は、デンマークのRadiometer Medical ApSの商標です。
Windows®はMicrosoft Corporationの登録商標です。
© Radiometer Medical ApS, DK-2700 Brønshøj, 2004. All Rights Reserved. 928-436. 200411A.
正しい経皮的測定の方法を選ぶことは、装置の性能、測
定精度、バックアップ体制を含むすべての信頼性を意味
します。