入学式「校長のことば」 (平成27年4月

秦野高校入学式
校長のことば(平成 27 年)
360名の新入生の皆さん、そして保護者の皆様、本日はご入学おめでとうございます。
秦野高校は今年創立89年、平塚市金目の宗信寺を仮校舎としてスタートした草創期から
数えると129年を迎えます。第29代の校長として、皆さんを心より歓迎いたします。
私は学校経営の大きな柱に、
『人を育て、社会を育て、未来を育てる学校をめざして』を
掲げています。「前向き、上向きの若者を育てることが将来性のある日本を創る」「生徒は
“未来”」との信念に従い、これまで「ぶれない」「明確な」メッセージを「繰り返し」発
信してきました。
本日、皆さんの入学に際し、2つの話をさせていただきます。1つ目は、
「学校は教育の
場である」です。2つ目は、「過去は変えられない。しかし、現在と未来は変えられる。」
です。私はよく生徒たちに「高校生は3年間。しかし、卒業生は生きている限り。」と言い
ます。3年間を仲間と一緒に過ごし、いろいろな話をし、同じ目標に向かって行動を共に
することにより、皆さんが身体だけでなく、精神的にも、人間的にも成長を遂げることを
期待しています。そして、将来にわたって、皆さんが高い志を持ち、夢の実現に向けて、
充実した人生を送ることができるように、私たち教職員は力を合わせ、一生懸命皆さんの
サポートをしていきます。
さて、最初の話に移ります。日本で一番高い山は富士山です。では、富士山の姿を頭に
思い描いてください。思い描けましたか?質問します。富士山の下の方「山すそ」はどう
なっていますか?山頂付近と比べて、どうですか?明らかに広がっていますよね。
山すそが狭いのに標高が高い山はありません。同じことが木についても言えます。根が
貧弱なのに高くてりっぱな木はありません。人間だって同じです。人間としての高みをめ
ざすためには、山すそを広げたり、地面の下の根をしっかりはるのと同じように、これか
ら先大きく成長するための土台づくりをしっかりとやっておく必要があります。それが高
校の3年間なのです。
人間としての土台がしっかりしていれば、社会に出て辛いことに出会った時に、心が折
れそうになっても何とか踏み止まり、再び前進を続けられるようになるのです。高校では、
いろいろなことを教わり学びますが、その対象は教科の学習に限りません。私たちは、
「教
える」ことに加え、
「人を育てる」ことの重要性をしっかりと認識し、皆さんが大きな成長
を遂げられるように一緒に努力を重ねたいと思っています。
2番目の「過去は変えられない。しかし、現在と未来は変えられる。」についてです。非
常に大切なことですので、心を開いてしっかりと聴いてください。皆さんは秦野高校を受
検したわけですが、志願の動機は同じではありません。中には、第一志望校を断念して秦
野高校に変更した人もいます。過去に『不本意入学だった』との言葉を残し、途中で違う
高校に移った生徒がいます。とても残念ですし、悔しい思いでいっぱいです。
「今まであまり良いことがなかった」と思っている人は、「どうせ」「しょせん」という
言葉をもう使わないでください。これらの言葉はマイナスのエネルギーを発するだけで、
プラスに転じることは絶対にありません。大切なのは、皆さんが自分の意思で前を向くこ
とです。
「本気」
「実践」
「気づき」の3つが揃えば、必ず前に進むことができます。限界だ
と思っていることのほとんどは、自分の心の中に限界やあきらめをつくっているのです。
ここで、私が尊敬する岩手県陸前高田市の村上育朗先生の言葉を紹介します。村上育朗
先生は東日本大震災で被災し、命は助かったものの、一切が流され、親戚を亡くしました。
にもかかわらず、前を向き続け、ボランティア活動に力を入れ、他の方々の支えとなって
います。昨年 12 月に、秦野高校にも来ていただき、お話を伺いました。
私はいつも、生徒たちにこう語りかけてきた。
「努力して成功すれば、自信となる。」
「努
力して失敗すれば、経験となる。」「努力しないで成功すれば、天狗になる。」「努力しない
で失敗すれば、あきらめる。」人生において一番価値あるものは何か。それは「経験」だ。
一生懸命に努力したのに成功しなかったという経験。第一志望の大学は受からなかったけ
れど、全力を出し切ったと自分自身が思える努力をした経験。第二志望以下の大学に進学
して、そこが自分にとって最高の学校だと思い直して、新たな目標を見つけ、それに挑戦
して成功した経験。
もし、高い目標に向け努力を続けても、受験勉強で伸び悩み、苦しんでいる生徒がいた
ら、私はさらに言う。
「艱難辛苦(かんなんしんく)のときは、下へ下へと根を伸ばせ。」この言葉は、かつて
私が苦境に立ったとき、祖母から言われた言葉だ。努力に努力を重ねても成功できなかっ
た生徒が、その経験から“何か”を掴んだとき、成功への道が開ける。その経験が成功の
元となる。
失敗や挫折を経験している人間は、他人から愛されやすくなる。人の痛みを知っている
からだ。人の痛みは、教わるものではない。自らがさまざまな「体験」を通して、初めて
感じるものだ。それを「経験」という。
※村上育朗著『心を動かす教育論』より
最後に、私が大切にし、心がけている言葉を3つ皆さんに贈ります。秦野高校の生徒と
して、ぜひ皆さんにも心がけて欲しいと思っています。
「現在をあきらめることは未来をあ
きらめること。」
「大事なのはできるかできないかではなく、やるかやらないかである。」
「で
きない理由を考えるより、できる方法を考える。」
本日ご列席いただきました保護者の皆様、そしてお忙しい中をご臨席いただきましたP
TA関係者様、同窓会関係者様、学校評議員様に厚くお礼申しあげます。
本日はご入学まことにおめでとうございます。