山口県 湯田温泉(1) - 商船三井ロジスティクス

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新泉地紀行
その二十九
山口県湯田温泉(1)
湯老人・佐藤哲治
今回の旅は中原中也の足跡をたどることが主目的の一つで
ある。従い、本日津和野から湯田温泉へ防長バスで移動する
途中、長門峡をじっくり探勝するつもりだ。寒さは厳しい
が、幸い絶好の晴天である。因みに、今晩泊る湯田温泉は
中也の生地である。
長門峡は津和野の隣、山口県阿武郡阿東町の阿武川中流に
展開する峡谷で、巨岩・奇石・急流・深淵・瀑布が織成す峡谷
美が見事である、とこれはパンフレットの受売り。道の駅・長門
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峡を出て丁字川出合淵を出発点に龍宮淵まで川沿いに片道約 5.3KM.(標準的な歩きで約 1.5 時間)
、往復で 3
時間歩けば長門峡を踏破できる。標準が 3 時間ならば 2.5 時間もあれば十分行って帰ってこれる、と筆者は
考えた。ところがこれが誤算、結局 3 時間強を要し、飲み物を持参しなかったので喉がからからになった。
道の駅・長門峡の総合案内所の女性にザックを預け身軽になって行動を開始したまではよかったが、冬の道悪を
勘定に入れ忘れた。時刻は午前 10 時を越え、雪こそ残っていないものの、日陰の遊歩道がまだ所々うっすら
凍っていたのである。たいした上り下りでなくてもこうなると危ない、一度滑って危うく転びそうになった。
何せ筆者以外人っ子一人見かけない冬の遊歩道、頭を打ったり、骨を折ったりしたら一大事だ。携帯は通話
可能な場所か、ザックを道の駅に預けてあるので帰りが遅ければ探しに来るはず、などとつい変なことを考え
る。その後慎重の上にも慎重を期して道をたどり、結局予想外に時間がかかってしまった。かくて若き日感
銘を受けた中也の詩「冬の長門峡」の舞台をよわい 61 になって踏破、漸く念願を果したのである。
『在りし日の歌』より
永訣の秋 「冬の長門峡」
長門峡に、水は流れてありにけり。
寒い寒い日なりき。
水は、恰も魂あるものの如く、
流れ流れてありにけり。
われは料亭にありぬ。
酒酌みてありぬ。
やがて密柑の如き夕陽、
欄干にこぼれたり。
われのほか別に、
客とてもなかりけり。 (右上へ続く→)
あゝ! ――そのやうな時もありき、
寒い寒い 日なりき。
道の駅・長門峡内の和風レストラン「聴秋(ちょうしゅう、面白い名前)」で、乾いた喉と空きっ腹を癒すことにす
る。注文はやまめ定食 1,890 円、やまめは養殖だが、刺身 1 匹と塩焼き 1 匹にやまめ雑炊、山里らしからぬ
上品な味である。中也もかって料亭で酒を酌んだのであるから、筆者も当然?ビールで喉をうるおす、長門峡
を歩き終えて格別の甘さであった。
今回は中也の詩で誤魔化したような一編である、反省。
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【写真】
1.写真が小さいので見にくいがかなりの急流、冬で水量は少ない
2.淵では濃い青色の水
3.こざっぱりした JR 山口線・長門峡駅、駅に置いてある感想ノートには若い人の記述が多い
*続く*
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MLG CARGO WEEKLY DIGEST VOL. 245
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