腐 食 の 評 価 は 腐 食 速 度 だ け で は あ り ま せ ん

volume
132
腐食速度
(mdd)=
テストピース重量(mg)
テストピース重量(mg)
−
(試験前)
(試験後)
テストピースの表面積(dm2)× 日数(日)
孔食(ピッチング)の評価
孔食は小さな領域だけで腐食が進行して、金属に孔が
生じる現象です。孔食が発生すると短い時間で熱交換
チューブが破孔して、冷凍機の運転ができなくなる可能
性があり、
リスクの 高い 現 象です。冷 凍 機 の 熱 交 換
チューブに使用されている銅は、淡水中では耐食性があ
るので全面腐食は発生しにくく、腐食事故は孔食による
ものがほとんどです。
このため孔食を正確に評価すること
がより重要です。腐食速度で孔食を評価しようとしても、
孔食は腐食する部分がわずかであるため、金属の重量
変化はわずかです。
そのうえ、孔食は金属表面のわずか
な不均一から始まるので、テストピースでは実機での金
属表面の不均一が再現しにくく、
そもそも孔食が発生し
塩素系薬剤の処理には孔食リスクに違いが
塩素系のスライムコントロール剤を使用する冷却水処
理では、腐食のリスクをコントロールすることが重要です。
冷凍機の銅チューブの保全を考えると、
なかでも孔食の
リスクをできる限り小さくする処理が求められます。
いずれ
の塩素系の処理方法でも腐食速度は小さな値ですが、
孔食の発生リスクに
テストピースによる
は処理方法によって
銅腐食速度の測定例
大きな違いがありま
す。アクアスのデュア
ルハイパー処理は銅
材質に対して孔食の
リスクが 最も低いの
に対して、次 亜 臭 素
酸 処 理は孔 食が 発
生するリスクが高いこ
とがわかります。
5.0
銅腐食速度(mdd)
腐食速度は全面腐食の評価
腐食速度は、腐食によって金属が酸化して減量された部
分の重さを腐食の大きさとして表したものです。腐食速度
は、腐食が金属の表面で均一にかつ同じ速度で進行して
いることが前提で、全面腐食の場合に適した評価方法で
す。測定が簡単にできることから広く腐食の評価に用いら
れています。腐食速度はテストピースを系内に設置して、
単位面積・日数当たりの腐食によって生じた重量の変化
から計算します。
にくい状況といえます。
この
自然電位の測定
ため測定される腐食速度は
電位差計
小さい値となり、一見腐食の
発生がないような結果になる
ことが少なくありません。孔食
試験水
のリスクを評価するデータと
基準電極
して「自然電位」があります。
(SSE)
自然電位は、水中に置かれ
テストピース(銅)
た、外部から電流が加えられ
ない状態にある金属の電位を測定したもので、
自然電位
が高いほど孔食が発生するリスクが高くなります。銅材質
で194mV vs SSE以上の自然電位で孔食が発生するリ
スクが高いと考えられています。※1
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0.35
結合塩素 次亜臭素酸
処理
処理
500
400
高
孔食
リスク
194mV
200
孔食
リスク
100
0
500.00μm
0.45
実機冷却水系での銅自然電位 測定例
300
孔食が発生した銅熱交換チューブ
0.60
デュアル
ハイパー
処理
銅自然電位(mV vs SSE)
腐食の評価は腐食速度だけ
ではあり ません
設備の腐食防止は水処理を計画する上で重要な項目
のひとつです。特に冷凍機の銅チューブは肉厚が薄く
作られていて、少し水処理を間違うと破孔して設備の
運転ができなくなる場合があります。
そこで、腐食を評
価する方法として一般的には
“腐食速度”
を計測します
が、銅材質の腐食は腐食速度だけでは評価しきれない
危険が隠れています。
●次亜臭素酸処理
●結合塩素処理
●デュアルハイパー
処理
低
0
1
2
3
4
経過日数(日)
5
6
アクアスは実機での腐食リスクを最小限にコントロー
ルする冷却水処理を提案します。
冷却水処理はアクアスにご相談ください。
参考文献
孔食部分の断面図(Ⅰ型孔食)
営業通信欄
www.aquas.co.jp
※1 馬場晴雄、小玉俊明、藤井哲雄、久松敬弘、石川百合子:温水中にお
ける銅管の孔食電位の測定, 防食技術, 30, 113-118(1981)