土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月) Ⅶ-107 茨城県沿岸部における飛来塩分量の調査 茨城大学工学部 正会員 ○沼尾達弥、正会員 木村亨、中央工機産業(株) 白土雅彦 そこで、0.5 時間毎に 24 時間の飛来塩分測定し、1日の 1.研究背景 沿岸地域では海からの飛来塩分によって、鉄筋コンク 変化量を調査した。なお、測定地点は O 地点とした。 リート構造物の劣化および鋼材の腐食などの塩害が発生 3.実測結果および考察 する。特に、日本海沿岸では季節風の影響により、冬季 3.1 測定月の影響 に飛来塩分量が多く、海岸線から離れた橋梁等の構造物 図2に茨城県の県北地域、県央地域における測定月と についても塩害が報告されている。道路橋の塩害対策指 飛来塩分量の関係を示す。月別の飛来塩分量の平均値に 針(案) では、塩害の危険度に応じて区分 A として沖縄 茨城県の県北地域および県央地域での差はない。また、 県全域を、区分 B として長野以北の日本海沿岸部(海上 年間を通して飛来塩分量は4月 0.04mdd が最も高くな 部および海岸線から 300m まで)を、区分 C として他の った。これは、4月に南南東風が多く観測されることに 沿岸域(海上部および海岸線から 200m まで)を塩害対策 よると考えら。なお、本調査において飛来塩分があまり が必要な飛来塩分量が多い地域とされている。 多く測定されなかった原因は、雨天や強風の日は測定を 1) 茨城県は南北に長い海岸線を有するにも関わらず飛 来塩分量の調査および研究がほとんど行われていない。 行わなかったためである。 3.2 飛来塩分量に及ぼす海岸からの距離の影響 本研究では、茨城県沿岸部における飛来塩分量の調査 図 3 に調査地点O(久慈川沿い)および調査地点V(那 を行い、測定月、風速、風向き、海岸距離、海岸地形、 珂川沿い)における海岸からの距離と飛来塩分量の関係 海岸構造物が飛来塩分量に与える影響を調べた。 を示す。どちらの調査地点ともに海岸からの距離が長く 2.飛来塩分量調査 2.1 調査概要 図1に調査地点を示す。茨城県の県北地域および県央 地域の A から Y 地点において、2007 年 7 月から 2008 年 6 月の 1 年間の飛来塩分量調査を行った。 調査地点 D、 F、J、N、O、P、Q、S、V では、内陸方向にも暴露装 置を設置し測定した。飛来塩分捕集方法は JIS Z 2382 に規定のドライガーゼ法を採用した。 図1 飛来塩分量調査地点 2.2 調査地点 表1 調査地点の地形要因 表 1 に調査地点の地形要因を示す。また、飛来塩分量 に与える主要因として、①測定月、②海岸からの距離、 ③海岸構造物の有無、④植生の有無を設定した。 2.3 ドライガーゼ法と土研式タンク法の飛来塩分量 本実験では主としてドライガーゼ法を用いた。 しかし、 飛来塩分量測定方法にはもう 1 つ多く用いられる手法と して土研式タンク法がある。そこで、ドライガーゼ法と 設置場所 地形要因 設置場所 地形要因 A 直線型(崖) N①~④ 湾・ワンド型(片岬)・北 B (データ無) O①~⑦ 湾・ワンド型(片岬)・北 C 浦型(片岬)‐南 P①~② 浦型(片岬)‐南 D①~④ 浦型(片岬)‐南 Q①~② 浦型(片岬)‐南 E R 窪型(両岬) 浦型(片岬)‐南 F①~③ 湾・ワンド型(片岬)・北 S①~④ 浦型(片岬)‐南 G 湾・ワンド型(片岬)・北 T 窪型(狭磯) 土研式タンク法の差異が出るかを調査した。なお、調査 H 直線型(崖) U 湾・ワンド型(両岬) 地点は K 地点、暴露期間は 7 日間とした。 I 浦型(片岬)‐北 V①~⑦ 湾・ワンド型(両岬) 2.4 日変化量調査 J①~③ 湾・ワンド型(片岬)・北 W 窪型(狭磯) K 浦型(両岬) X 浦型(片岬)・北 L 湾・ワンド型(片岬)・北 Y 浦型(片岬)・北 M 湾・ワンド型(片岬)・北 本実験の飛来塩分量調査は 3 日~5 日間の曝露期間を もって飛来塩分を採取していた。しかし、飛来塩分量は 同じ場所でも 1 日の中で風向・風速・気温が変動する。 キーワード:飛来塩分量、海岸距離、海岸地形、海岸構造物、ドライガーゼ法、土研法、日変化量 連絡先 〒316-8511 茨城県日立市中成沢町 4-12-1 茨城大学工学部都市システム工学科 Tel:0294-38-5168 -213- 土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月) なるにつれて、飛来塩分量が減少した。また、久慈川沿 0.10 調査地点O( 久慈川) 平均飛来塩分量(mdd) いは構造物や植生などがない非常に開けた場所である ため内陸まで飛来塩分量が計測されたのに対し、那珂川 沿いでは海岸から 500m付近に植生があることから、海 岸から 500m付近で飛来塩分量が急激に減少している。 0.08 調査地点V(那珂川) 0.06 0.04 0.02 3.3 飛来塩分量に及ぼす海岸構造物と植生の影響 0.00 0 図 4 に海岸構造物の有無による飛来塩分量影響を示 500 1000 離岸距離(m) 防波堤あり テトラポッドあり 植生あり 平 均 飛 来 塩 分 量 (m d d ) 0.06 0.03 0.02 3.4 日変化量調査結果 2008年6月 2008年5月 や少量の塩分量の時はドライガーゼ法の方が有効である。 2008年4月 を示す。全方位でドライガーゼ法の方が大きい。短期間 2008年3月 0.00 2008年1月 図 5 にドライガーゼ法と土研式タンク法の飛来塩分量 2008年2月 0.01 2007年12月 3.4 ドライガーゼ法と土研式タンク法の比較 防波堤なし テトラポッ ドなし 植生なし 2007年11月 生が飛来塩分防止に効果があることを示している。 図 4 海岸構造物および植生と飛来塩分量の関係 図 6 に 0.5h 毎の風向と風速を、図 7 にガーゼプレー 0.0040 飛来塩分量(mdd) トに対し、垂直方向成分の風向とその時の風速を算出し、 それらを 3h ごとに積算したものと、3h ごとに測定した 飛来塩分量との関係を示した。なお、海側からの風を正、 山側からの風を負とした。飛来塩分量は、海側および山 0.0035 ドライガーゼ 法 0.0030 土研式タンク法 0.0025 0.0020 0.0015 0.0010 0.0005 側に関わらず風速が大きくなるにつれ増加し、その勾配 0.0000 東 は海側の方が大きい。また、山側から風に対しても塩分 西 南 北 図 5 ドライガーゼ法と土研式タンク法の比較 を含むのは、調査地点が海に非常に近い場所から常時浮 遊している飛来塩分の影響だと考えられる。 北 12:30~17:00間 4.結論 1)海岸から 500m までは飛来塩分が顕著に計測される。 ガ ー 南東の風 2)海岸構造物や植生は飛来塩分量の計測に影響する。 山 側 ゼ プ レ ー 西 3)風向および風速は飛来塩分量の計測に影響が大きい。 東 海 側 ト 参考文献 1) 社団法人日本道路協会、「道路橋の塩害対策指針(案)・同 解説」 17:00~12:30間 北西の風 南 図 6 0.5h ごとの風向と風速 0 .0 5 県北平均値 県央平均値 0 .0 4 ガー ゼプ レー ト背面(山側)で受けた 0.0014 飛来塩分量 0 .0 2 2008年6月 2008年5月 2008年4月 2008年3月 2008年2月 2008年1月 2007年12月 2007年11月 2007年10月 2007年9月 2007年8月 0 .0 1 ガー ゼプ レー ト前面(海側)で受けた 飛来塩分量 0.0012 飛来塩分量(mdd) 0 .0 3 2007年7月 平 均 飛 来 塩 分 ( m dd) 2000 0.04 2007年10月 植生がある場合、飛来塩分量は低下する。これは、植 0.05 2007年8月 とが原因と考えられる。 2007年9月 が増加する。これは、海岸構造物により砕波が起こるこ 0 .0 0 1500 図 3 海岸からの距離と飛来塩分量の関係 す。防波堤およびテトラポッドがある場合、飛来塩分量 2007年7月 Ⅶ-107 0.001 0.0008 0.0006 0.0004 海側からの風 0.0002 山側からの風 0 -20 -15 -10 -5 0 5 10 積算風速(m/s) 図 7 積算風速と飛来塩分量の関係 図 2 県北地域、県央地域における測定月の飛来塩分量 -214- 線形 (海側か ら の15風 ) 20 線形 (山側か らの風)
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