第11回授業(12/11)の学習目標 第8章 分散分析 (ANOVA) の学習 分散分析の例からその目的を理解する 分散分析の各種のデザイン Fisher の実験計画法の3原則とは? 作業仮説と帰無仮説の違い 帰無仮説棄却の意味と多重比較とは? 分散分析表とその作成方法 完全無作為化デザインANOVA の検定方 法と実習(実習の手前までで、終了) 例1 睡眠遮断実験データ 睡眠遮断実験データ (Kirk, 1985) 要因ー睡眠遮断1要因 要因の水準ー4 12h, 24h, 36h, 48h の睡眠遮断条件 サンプル数ー各水準に 8名づつ無作為割り付 け 従属変数ー手先の鈍感 さ 完全無作為化法 1 2 3 4 5 6 7 8 12h 24h 36h 48h 3 4 7 7 6 5 8 8 7 9 3 4 3 3 6 8 1 2 5 10 2 3 6 10 2 4 5 9 2 3 6 11 睡眠遮断実験の目的 実験の目的は、「手先の敏捷さ(鈍感さ)は、 睡眠遮断により影響を受ける(睡眠遮断の効 果あり)」という作業仮説を検討することであ る。 そのためには、どのような手順でデータを収 集する必要があるだろうか? 完全無作為化法とは? 完全無作為化法とは? 当該実験での主要な因子(要因) 1つの各水準に対 して、各被験者を無作為に割り付ける方法。うえの 例では、睡眠遮断要因が主要な因子である。 水準 観測値 A1 ・・・ Ap 均質な被験者集団 完全無作為化法の特徴 完全無作為化法では、テキスト p.36 にある ように、次のような特徴を持つ: (1)反復 各水準ごと、複数の被験者(標本)が割 り付けられている。 (2)無作為化 被験者(標本)の、各水準への割り付け は無作為(randomize) になされている。 実験計画におけるFisher の3原則 テキスト p.36 の下方に書いたように、一般に実 験計画法(狭義の分散分析)では、つぎの3つの原 則が重要である: (1)反復 同一水準には2回以上の標本が必要 (2)無作為化 標本の各水準への割付は、無作為化 が必要 (3)局所管理 作業仮説と 統計的仮説(帰無仮説)の違い 実験の目的は、「手先の敏捷さ(鈍感さ)は、 睡眠遮断により影響を受ける(睡眠遮断の効 果がある)」という作業仮説を検討することで ある。 この場合の帰無仮説は、「手先の敏捷さ(鈍 感さ)は、睡眠遮断により影響を受けない(睡 眠遮断の効果はない)」というものである。 帰無仮説の棄却の意味 帰無仮説「手先の敏捷さ(鈍感さ)は、睡眠遮断によ り影響を受けない(睡眠遮断の効果はない)」が棄 却された時(否定された時)、 睡眠遮断の効果は(統計的に)有意であった、 と言う。 このことは、手先の敏捷さ(鈍感さ)は、睡眠遮断に より影響を受ける(睡眠遮断の効果がある)、という ことである。また、このことは、うえの作業仮説が支 持されたことを意味する。 睡眠遮断の効果が有意とは? o ( 手 先 の 鈍 感 度 平 均 ) o o 12h 4つの水準のどこ かに平均値の差 がある o 24h 36h 48h 効果が有意な場合の多重比較 うえの例のように、効果が統計的に有意な場 合には、水準間のどこかに差があることになる ので、 つぎに、どこに差があるかを統計的に検定する ことにより明らかにする必要がある。 この検定は、多重比較(multiple comparison) と呼ばれる(テキスト p.37 上部)。 標準的な分散分析表 テキスト p.36 の表8.2 変動因 平方和 自由度 平均 平方 F値 要因名 SSA I-1 UA= UA/UE SSA /(I-1) 誤差 SSE N-I UE = SSE/(N-I) 計 SST N-1 p値 p 例2 ミラーリエル錯視実験データ ミラーリエル錯視実験 (18年度計量心理学演習 受講者データ) 要因ー斜線分の長さ 要因数ー1 要因の水準ー3 サンプル数ー12名 従属変数ー錯視量 (単位mm) 1要因反復測定デザイン ANOVA 15mm 条件 1 2 . . . 12 30mm 条件 45mm 条件 17.8 18.5 19.5 25.8 30.5 28.8 . . . . . . . . . 21.0 29.0 31.5 上記ミラーリエル錯視実験の目的 ミラーリエル錯視における斜線分の長さの効 果の有無を検討すること。 問題 睡眠遮断実験とミラーリエル錯視実験の 違いは? ヒント => 両実験での一人の被験者が反応す る条件(水準)は、それぞれ幾つか? 問題の解答 上記ミラーリエル錯視実験では、睡眠遮断実 験と異なり、同一被験者がすべての条件に反 応させられている。 このようなデザインは、テキスト p.36 の中程 に書いたように、 反復測定分散分析 (repeated measures ANOVA) と呼ばれる。 例3 反応時間実験データ 反応時間実験データ (18年度修士2年 金田君データ) 1 要因ー反応形態と刺激の 中立性 要因数ー2 2 要因の水準ー反応形態3、 刺激の中立性2 … サンプル数ー25名 従属変数ー反応時間 2要因反復測定デザイン 25 ANOVA A1 B1 A1 B2 A2 B1 A2 B2 A3 B1 A3 B2 240 218 437 439 485 567 197 195 267 382 366 363 … … … … … … 256 301 411 416 407 480 例3の反応時間実験の目的 例3の反応時間実験の目的は、反応時間に 影響を及ぼすと考えられる反応形態と刺激の 中立性の2要因の(主)効果と、両要因の交 互作用(からみの効果)の有無を検討するこ とである。 すなわち、検討すべき効果は A, B, A×B の3種類である。 完全無作為化デザイン ANOVAの一般的計算手順(1) テキスト p.36 の 表8.2 の分散分析表を完成す るには、一般にテキスト p.37 下方の (8.1)式か ら (8.3) 式の SST, SSA, SSE を計算しなけれ ばならない。 ただし、SST の計算には、テキスト p.37 の末 尾に記したように、 SST = SSA + SSE なる関係があることを利用し、(8.6) 式を用いれ ばよい。 完全無作為化デザイン ANOVAの一般的計算手順(2) SST は、p.38 の (8.4) 式からつぎのように計算 する: Ni I I Ni SST yik2 N ( y ) 2 yik2 K , i 1 k 1 I i 1 k 1 Ni 2 yik2 ( y112 y122 y12N1 y IN ), I i 1 k 1 2 y K N ( y11 y12 y1N1 y IN I ) 2 N . 完全無作為化デザイン ANOVAの一般的計算手順(3) 一方、SSAは、p.38 の (8.5) 式からつぎのよう に計算する。 y1 , y2 ,, yI は、各水準の総和 である: I SS A N i ( y i ) 2 N ( y ) 2 M K , i 1 y12 y22 y I2 M , N1 N 2 NI 2 y K N ( y11 y12 y1N1 y IN I ) 2 N . 完全無作為化デザイン ANOVAの一般的計算手順(4) 最後に、SSEは、(8.6) 式を用いて計算すれ ばよい。 結局、SST、SSA、及びSSE を求めるには、 テキスト p.38 の下方にある手順に従って、 これらを求めればよい。 完全無作為化デザイン ANOVA分散分析表の計算例(1) 水準 観測値 標本数 行合計 (各水準の和) A1 47, 30, 85, 59, 15 5 y1•= 236 A2 79, 30, 44, 26, 57 5 y2•= 236 A3 48, 53, 35, 86, 63 5 y3•= 285 完全無作為化デザイン ANOVA分散分析表の計算例(2) うえの計算例(1)で、既にデータの各水準の和を求 めたので、順次 p.38 下方の計算手順に進む。 2.データの総和と修正項は: y (47 30 ) (79 30 ) (48 53 ), y1 y2 y3 236 236 285 757. 2 2 y 757 573049 K 38203.27. N 555 15 完全無作為化デザイン ANOVA分散分析表の計算例(3) 3.データの各水準の和の二乗の計算と、それを各 水準のサンプル数で割った値、及び M は、 2 1 2 2 2 I 2 2 2 y y y 236 236 285 M , N1 N 2 NI 5 5 5 (2362 2362 2852 ) / 5, (55696 55696 81225) / 5 38523.40. 完全無作為化デザイン ANOVA分散分析表の計算例(4) 4.個々のデータの二乗値の計算と、その総和は、 I Ni 2 2 2 2 2 2 y 47 30 85 59 15 ik i 1 k 1 792 302 442 262 572 482 532 352 862 632 44745.00 完全無作為化デザイン ANOVA分散分析表の計算例(5) 5.SST の計算は、 I Ni I Ni SST yik2 N ( y ) 2 yik2 K , i 1 k 1 i 1 k 1 44745.00 38203.27 6541.73 6.SSAの計算は、 I SSA N i ( y i ) 2 N ( y ) 2 M K , i 1 38523.40 38203.27 320.13 完全無作為化デザイン ANOVA分散分析表の計算例(6) 7.SSE は、 SSE SST SSA 6541.73 320.13 6221.6 8.表8.2の分散分析表の残りの部分は、 I 1 3 1 2, N I 15 3 12 U A SSA /( I 1) 320.13 / 2 160.07, U E SSE /( N I ) 6221.6 / 12 518.47, F U A / U E 160.07 / 518.47 0.31 帰無仮説と統計的検定 一般に CR-I デザインの帰無仮説は、 H 0 : 1 2 I 上の例での帰無仮説は、データが斜線分の角度要 因で、3水準が 15°30°45°であるとすれば、 H0: 角度要因の効果はない あるいは、 H0 : 1 2 3 帰無仮説の検定 上記具体例での帰無仮説の検定には、帰無仮説の もとでは上記F値が2つの自由度 ν1=I-1=2、 ν2=NI=15-3=12 なる F 分布に従うことを用いて、岩原テ キスト p.435- のF分布表で、対応する棄却点の値( 5%有意水準では)を読み取ると、3.88 となるので、 F(2, 12)=0.31<3.88 から、上記帰無仮説は(5%水 準で)採択される、と言える。 言い換えれば、上の例からは斜線分の角度要因の 効果はなかった、と言える。 分散分析の実習 岩原テキストの各自の学籍番号に対応する 位置から順に5個づつ合計15個のデータを 取り出し、斜線分の3水準の錯視量データと 仮定して分散分析を行い、(斜線分の角度) 要因の効果の有無を検定せよ。
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