1-1 英国

世界電力小売りビジネス総覧
第 1 章 電力市場改革と小売りビジネス
1-1 英国
世界で最も早く電力小売りを全面自由化
英国は、世界で最も早く電力小売りの全面自由化に踏み切った“最先進国”である。
1990 年以前には、イングランド・ウェールズ地域では国営の CEGB(Central Electricity Generating
Board:中央電力庁)が発電と送電をすべて担い、全国に 12 あった地域の配電局(Regional Electricity
Boards)が配電と小売りを担当していた。スコットランドでは、北部を NSHEB(North of Scotland Hydro
Electricity Boards:北スコットランド水力電力局)が、南部を SSEB(South of Scotland Electricity
Boards:南スコットランド電力局)が、各々発電、送電、配電、小売りを垂直統合体制で担っていた。
つまり、地域独占の小売電気事業者が全国で 14 社あった。
これが、1990 年から電力自由化が始まり、発電、送電、配電、小売り部門の構造分離(アンバンド
リング)が進み、2002 年には小売り電気事業の各種規制が撤廃されて、完全自由化が実現した。
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CEGB は分割民営化され、NP(National Power)
、PG(Power-Gen)
、NE(Nuclear Electric)の発電
事業者 3 社と、送電事業者の NGC(National Grid)に分割された。12 の地域配電局はそのまま株式会
社となった。スコットランドでは、NSHEB と SSEB がそれぞれ株式会社化されて、SHE(Scottish Hydro
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Electric)と SP(ScottishPower)となった。
欧州企業の M&A を経て、
「ビッグ 6」が形成
その後、各社の株式が公開されて自由化が進み、企業の M&A(合併・買収)が活発化し、各社は欧
州の大手エネルギー企業に買収された。分割した 3 社は、NP がドイツ RWE に、PG がドイツ E.ON に、
NE がフランス EDF に、スコットランドの SP はスペイン Iberdrola に買収された。SHE は、12 の地域
配電会社の一つである Southern Electric と合併して、SSE(Scottish and Southern Energy)となっ
た。
Sa
他の地域配電会社の多くもこれらの大手電力会社の傘下に入り、E.ON 系、RWE 系、EDF 系、Iberdrola
系、SSE 系の 5 大グループを形成した。これに旧国営ガス会社の British Gas が電力分野に参入して、
「ビッグ 6」に集約された(表 1)
。ガス事業の自由化も並行で進んだことから、電力各社もガス事業
に参入し、ビッグ 6 はいずれも電力とガスを供給する総合エネルギー企業となった。英国のデュアル
フィーエル率(電気とガスをセットで供給する比率)は、9 割を超えている。
表 1 英国「ビッグ 6」の概要とシェア
企業グループ
小売事業会社
沿革
シェア
(2014 年時点)
ドイツ E.ON
E.ON UK
PG(Power-Gen)を買収
16%
ドイツ RWE
npower
NP(National Power)を買収
12.5%
フランス EDF
EDF Energy
NE(Nuclear Electric)を買収
13.5%
スペイン Iberdrola
SP(ScottishPower)
SP(ScottishPower)を買収
12%
SSE(Scottish and
SHE(Scottish Hydro Electric)が
Southern Energy)
Southern Electric と合併
British Gas
旧 British Gas が電力市場に参入
英 SSE
英 Centrica
7
17%
24%
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