本研究では、「ラリー中の返球に成功した打球の数」を 「打球回数」とする。 2 所 氏 属:静岡大学教育学研究科 保健体育専攻 名:玉城将 1 「打球回数」とは、ラリーを説明する情報の1つ 吉田ら(2007)の先行研究 卓球では「ラリー中の第何打目か」によって、戦術的課題 が異なる。 例えば・・・ サービスレシーブ ・相手に強打されな いように返球する。 サービス ・回転、コースなど を判別させない。 選手によって、得意または不得意な 「打球回数」があると推測される。 本研究の目的 打球回数に着目したゲーム分析を簡易に短時間で行う ためのシステムを開発する。 本発表の内容 1.開発されたシステムの機能の概要 2.開発されたシステムを用いたゲーム分析についての 結果および考察 ○打球回数に着目した統計的分析 (例:分析対象選手は、打球回数3回で得点する確率が 高い。サービスによって第3打目での得点を容易 にしているのではないか。) ○視認的分析 (例:この選手のフォアハンドサービスに対して、対戦 相手はボールの回転を判別できていないことが多 い。) 成果 具体的で信頼性の高い分析結果が得られた。 課題 ゲーム分析に要する時間が膨大であった。 システムの概要 -開発環境- ・Microsoft Visual Studio 2008 Professional Edition (Micorosoft社製)を用いて開発した。 ・使用言語はVisual C++とした。 ・映像の再生には Windows Media PlayerのActive Xコ ントロールを用いた。 Visual Studio 2008 1 システムの概要 -情報記録機能- 映像を観察しながら情報を記 録する。 情報の記録に要する時間を短 縮させるため、以下の機能が 実装されている。 1)スコアとサービス選手名 の自動的入力 2)記録された情報より、打 球回数を自動的に求め る。 システムの概要 -統計機能- 記録された情報から、自動 的に統計情報を算出する。 統計情報を理解しやすいよ う、以下の機能が実装され ている。 1)統計情報を表や棒グラ フに表示 2)棒グラフの棒をクリッ クすると棒に対応する ラリ-が再生される。 システムの概要 -情報記録機能- ○記録される試合情報の一覧 1)撮影日 2)大会日(日本語) 3)大会日(英語) 4)種目 5)性別 6)ラウンド 7)選手名1 8)国名1 9)選手名2 10)国名2 11)試合結果 12)備考 13)映像ファイル名 ○記録されるラリー情報の一覧 1)ラリー開始時のセット番号 3)サービス選手名 5)打球回数 7)失敗打球 9)ラリー終了時刻 2)ラリー開始時のポイントスコア 4)得点選手名 6)タイムアウト後のラリー 8)ラリー開始時刻 10)備考 システムの概要 -統計機能- 統計情報 1)分析対象ラリー数 2)得点率 3)サービスラリーにおける得点率 4)レシーブラリーにおける得点率 5)サービスエース率 6)レシーブエース率 7)平均打球回数 8)得点ラリーにおける平均打球回数 9)失点ラリーにおける平均打球回数 10)打球回数ごとのラリー数 11)打球回数ごとの得点率 12)打球回数ごとの得点決定率 13)対戦相手の打球回数ごとの得点決定率 14)対戦相手とのポイントスコアの差ごとの得点率 システムの概要 -閲覧機能- ラリーの検索および再生。 ●分析対象 任意のラリーを効率的に観 察するために、以下の機能 が実装されている。 1)検索する情報の設定 2)検索されたラリーの連 続再生 3)ラリーの繰り返し再生 4)お気に入りラリー集の 作成 LM WM ラウンド 準決勝 準決勝 対戦日 2008/5/25 2009/5/4 勝者 敗者 ラリー数 選手B 選手A 79 選手A 選手B 93 N.B. ITTFプロツアーVOLKSWAGENオープン荻村杯2008で選手 Aが選手Bに負けた試合をLM、H.I.S.2009年世界卓球選手権 横浜大会(個人戦)で選手Aが選手Bに勝った試合をWMと示た. ●ゲーム分析内容 LMとWMの間の選手Aプレーの違いについて、 統計的分析と視認的分析を併せて行う。 2 ●ラリー情報の記録に要する時間 (秒) 3000 2430 2500 2000 1500 1509 1415 1000 ●選手Aの得点率 映像時間 試合時間 ラリー情報記録時間 2320 1488 1135 LMは試合時間の80%、 WMは試合時間の64% で記録できた。 500 0 LM1 2 WM ●レシーブラリーにおける総ラリー数に占める各打球回数の選手A の得点ラリー数の割合 (%) LM WM 10.1 6.3 4.3 0 3.8 2.5 1.3 0.0 2 4 60 40 100 80 80 58.1 60 39.2 40 20 44.7 50.0 0 2 WM 60 40 20 1 LM (%)レシーブラリー 100 66.0 34.1 20 1 LM 0 2 WM 1 LM 2 WM ●レシーブラリーにおける総ラリー数に占める各打球回数の選手A の失点ラリー数の割合 (%) 15.2 6.5 (%)サービスラリー ・サービスラリー、レシーブラリーのいずれも、WMの 方が高い。 ・WMでは、特にレシーブラリーにおける得点率が高い。 ・記録の誤りは、172ラリー中1ラリー。 ・打球回数6回を打球回数8回とする誤り。 2.2 80 0 ●ラリー情報の正確性 16 14 12 10 8 6 4 2 0 (%) 全てのラリー 100 0.0 6 0.0 8 10 2.2 0.0 12 ・WMでは、打球回数2回、4回、6回の得点ラリー数 が多い。 16 14 12 10 8 6 4 2 0 LM WM 9.7 8.6 10.1 3.8 3.8 1 7.5 3 5 2.2 2.5 7 1.1 9 0.0 0.0 0.0 11 ・WMでは、打球回数1回の失点ラリー数が少ない。 統計的分析より ●プレーの特徴に関する視認的分析 ・2試合の間では、レシーブラリーに大きい違いがみ られた。 ・WMでは、サービスレシーブのミスが少なかった。 ・WMでは、サービスレシーブ以降の得点数が多かっ た。 LMとWMにおける選手Aサービスレシーブには、ど のような違いがあるのか? ・WMでは、LMよりも速度の抑えたサービスレシーブ を多く用いていた。 ・WMでは、LMよりも対戦相手が強打しにくいコース へ返球していた。 速度を抑えた適切な コースへのサービス レシーブ WMのレシーブラリーにお ける得点率の上昇 3 (1)本システムは、短時間且つ正確にラリー情報を 記録することが可能であった。 (2)統計情報による分析によって、選手のプレーの 特徴を量的に評価することが可能であった。 (3)映像観察による分析によって、より具体的なプ レーの特徴について検討することが可能であっ た。 4
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