〝農と食〟 北の大地から - 滝川康治の見聞録

〝農と食〟
北の大地から
連載第 105 回
道北の幌延深地層研究センターで進む
〝核
の ゴ ミ 〟の 処 分 研 究 が 波 紋 を 広 げ て い る。
幌延町長は核関連施設の誘致に淡い期待を
抱 き、 周 辺 地 域 の 住 民 た ち は 処 分 場 に 狙 わ
れることへの不安を払拭できない。そうし
た な か で、 地 層 処 分 に 向 け た ス ケ ジ ュ ー ル
はどこまで進み、関係者は北海道の実情を
ど う 捉 え て い る の か ──。 処 分 事 業 の 実 施
主体を取材したり、原子力問題に明るいN
PO代表の話などを聞きながら、脱原子力
時代を迎えたなかでの
「よりましな
〝核のゴ
ミ〟の扱い方」や酪農を柱にした地域づくり
のあり方を考えてみた。
揺れる幌延の処分研究。〝核のゴミ〟は
──再処理・核燃料サイクル政策からの脱却をめざして──
関連施設の誘致に淡い期待
疑念が残る幌延町長の見解
「
(北海道・幌延町・日本原子力研究
開発機構
〔略称=原子力機構〕
が交わ
し た )3 者 協 定 に 違 反 し な い こ と を
前提に
(略)
将来、深地層の研究の成
果や施設などを有効活用した関連施
設 や 研 究 機 関 な ど の 誘 致 を 促 進 し、
新たな雇用の場として事業の創出に
幌延深地層研究センターは約 年
の研究期間が終わると、「坑道は埋め
たい、というのである。
いが、核関連施設は引き続き誘致し
立地のための文献調査を受け入れな
う答弁した。任期中は最終処分場の
9月 日の幌延町議会。鷲見悟議
員の一般質問に対し宮本明町長はこ
努めてまいりたい…」
だ か ら、 町 長 の 真 意 は 分 か ら な い。
誌 の 取 材 は 受 け ま せ ん 」と 拒 否 し た。
今、町民のなかに具体的な動きはな
す る こ と は で き る 」と 公 言 し て き た。
会など開いて関連施設の誘致を検討
宮 本 町 長 は 以 前 か ら「 協 定 当 事 者
の町は無理だが、民間レベルで学習
なのか。曖昧模糊としている。
来、どんな〝有効活用〟をするつもり
文がある。そんななかで幌延町は将
長 )と さ れ る。 協 定 に も そ の 旨 の 条
閉鎖する」(坂巻昌工・同センター所
業省からの天下り、武田精悦常勤理
た人物、樋口政治副理事長は経済産
前東電常務で福島原発の所長も務め
を知らせる必要はない。この件で雑
「テレビや新聞に述べた以上のこと
町の基本姿勢について町長への取
材を要請したが、窓口の町総務課は、
ち に 事 実 上、 撤 回 )し た こ と と 関 係
はこれから検討する課題」と答弁(の
す の か。 6 月 の 町 議 会 で「 文 献 調 査
可能な「関連施設の誘致」とは何を指
い。ならば、町長が言う民間で検討
人、電力会社などからの
出向者が多いという。
員数は約
社長や佐藤佳孝・北電社長……。職
事 件 」の 渦 中 に あ る 眞 部 利 應・ 九 電
長、 非 常 勤 理 事 に は「 や ら せ メ ー ル
があるのか。疑念が残る。
戻し、やぐらを撤去し、地上施設は
〝原子力マネー〟に淡い期待を抱いて
事は幌延深地層研究センターの元所
15
億円)を交付する、という。
億 円 )、 概 要 調 査 段 階 で 同
億円(同
だが、未だ文献調査にも入れてい
ない。 年に全国で初めて、高知県
本方針で、核燃料サイクル政策を前
埋め棄てる──というのが政府の基
300メートルより深い処分施設に
長が誕生して応募を取り下げた。そ
職して選挙戦に臨んだが、反対派町
などが反対の意思を表明。町長は辞
東洋町が応募したが、住民や県知事
ュ
ー
モ
幌延深地層研究センターは、「日本
で も 地 層 処 分 が で き る 」と P R す る
相次ぐ協定に抵触する文書
住民の追及で道も動いて…
提にしている。2000年には、最
ニ
事 業 の 実 施 主 体 と し て「 原 子 力 発 電
環境整備機構」(原環機構・NUMO
と略)が設立された。
〝原子力村〟を支える面々がNUMO
の現役員に居並ぶ。山地亨理事長は
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“ 核のゴミ ” の後始末と農業(その 2)
いることだけは伝わってきた。
実施主体は設立されたが
調査に応じる町は現れない
日 本 で は、 原 子 炉 で 燃 や さ れ〝死
の 灰 〟が た ま っ た 使 用 済 み 核 燃 料 を
国が描く最終処分までのスケ
ジュールを別項に示す。9年前に候
「地域共生」と称し、電源3法交付金
ガラスに廃液を混ぜてステンレス容
レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 」と 呼 ぶ。 廃 液
を使って自治体を誘導する作戦を展
補 地 の 公 募 に 着 手 し た N U M O は、
は茨城県東海村の再処理工場に38
開。 文 献 調 査 段 階 で 年 間
億 円( 期
0立方メートル、ガラス固化体は東
間内
年実績)が保管されている。
海村と青森県六ヶ所村に合計169
2本(
ガラス固化体は 〜 年程度、冷
却のために貯蔵管理したのち、地下
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20
福島原発の事故で審議が中断していた原子力委員会の「新大綱策定会議」が再開された。1年ほどかけて、エネルギーと原発、核燃料サイクル、
研究開発などのテーマを議論し、原子力政策のあり方をまとめる。世論とは異なり、脱原発の委員は少数派だ(9月 27 日、東京都内で)。
細野豪志・原発担当大臣は委員に対し、
「国民の目はきびしくなっており、廃炉や使用済み燃料、放射性廃棄物対策などを含めて、コスト面を
徹底的に検証してほしい」と呼びかけた(写真右下)
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◀幌延町生涯学習センター前に設置されたモ
ニュメント。3者協定を締結した北海道と原
子力機構、町が手を携える姿をイメージした
作品という
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ルポライター
北の大地から
▲幌延深地層研究センターの展望台から見た
坑道施設の建屋。2本の立坑が掘削され、地
層処分に向けた試験が続く(昨年 11 月)
器 に 詰 め た ガ ラ ス 固 化 体 だ け を「 高
再処理したあとに残る廃液と、耐熱
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の後、続く自治体は現れない。
50
終処分に関する法律が成立し、処分
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滝川 康治
脱原発を踏まえ地層処分から決別を
“農と食”
ど を 含 む「 研 究
書(レビュー版)のなかで、
研究開発部門長
博久・地層処分
なった。
受ける事態に
派住民の追及を
公表され、反対
文書が相次いで
ところが最近、
協定に抵触する
ない(第5条)
蔵施設を設置し
廃棄物の中間貯
幌延町に放射性
終処分場とせず、
スタッフを擁していたが、現在はい
ギ ー 課 )は、 か つ て 幌 延 問 題 の 専 任
環 境・ エ ネ ル ギ ー 室
(旧資源エネル
当初は道側の動きが鈍く、住民た
ちがいらだつ場面もあった。経済部
を指摘した」と弁解する。
らず、NUMOには記述のおかしさ
UMOが共同研究をする話は出てお
た表現があり申し訳ない。うちとN
センターの坂巻所長は、「誤解を招い
削除・訂正された。幌延深地層研究
こうした記述に気づいた住民グ
ループが道に働きかけ、関係部分が
を貸与することになってしまう。
と記した。現場で共同の試験をや
ると、原子力機構がNUMOに施設
置試験などを行なうことを検討中」
との共同研究として工学技術の原位
国などへの態度表明をしてほしい」
た態度をとるべきだ。事あるごとに
「 文 献 調 査 に つ い て、 道 は 毅 然 と し
こう注文をつけた。
連 絡 協 議 会 」代 表 委 員 の 久 世 薫 嗣 さ
「核廃棄物施設誘致に反対する道北
「 幌 延 の 施 設 で は 今 後、 原 子 力 機 構
(当時)の挨拶文をホームページに載
ない。泊原発をめぐる〝やらせ事件〟
日本中の〝核のゴミ〟が北海道に集
中することを歓迎する道民はいない
実 施 区 域 」を 最
「
( 幌 延 な ど の 施 設 で は )実 際 の 放 射
や再稼働問題で忙殺され、腰を据え
だろう。道には、より住民らの目線
るので、今後もご指摘いただきたい」
(同室の金山哲参事)
と、 や や 前 向 き の 姿 勢 を 見 せ る。
9月 日、処分事業に対する見解
を取材するために東京都内にあるN
幌延町はハードルが高いが
調査の対象は
「全国一律」だ
に沿った対応を望みたい。
ん( 1944 年、 岡 山 県 生 ま れ )は、
性物質を用いた試験でこれまでの技
て勉強する余裕もなさそうだ。
原子力機構は
年3月、石川
に 反 映 さ せ る、 と 位 置 づ け て い る。
術を確かめるとともに、最新の成果
「地元の皆さんと情報を共有しつつ
ための施設だ。現時点では、幌延で
す っ た も ん だ の 末、〝核 抜 き 〟施 設 に
で地層処分が将来にわたって安全に
取り組まなければならない課題と考
せ、こう述べた。
なった経緯があるから、3者協定は
実施できることを確信を持って示す
得た研究成果をNUMOなどの事業
次のように定めている。
ことができる…」
い
〔第3条〕
月の報告
つまり、放射性廃棄物を持ち込む
こともあり得るわけである。
一方、NUMOは昨年
を す る 」と の 立 場 を と っ て い る。 北
「そうですね」
隣町村は全国一律の対象になる、と。
──事実上、研究所の周辺を含め
て幌延での文献調査は難しいが、近
は効力があると思っています」
海道に対する捉え方を聞いた。
前出の原子力機構との共同研究に
ついては、内部で検討したことを認
(各地で開催するワークショップな
──自治体の最高規範である道の
条例を尊重する姿勢はないのか。
める一方、「原位置試験まで踏み込ん
UMOの事務所を訪れた。
「 お っ し ゃ る〝尊 重 〟と い う の が よ く
だ報告書の記述はおかしい。少なく
ずいぶん事務的に公募活動をこな
しているような印象を受けた。NU
分からない。北海道だけ公募活動を
とも、現地での共同研究を行なう予
ど で )理 解 活 動 を 進 め て い く 状 況 で
ていないですね」
しないということですか?」
M O は「 全 国 一 律 に 文 献 調 査 の 公 募
とは先月号で紹介した。これを処分
──震災前の1年間、公募に関心
を示した自治体はあったのか。
定に向けた文献調査の実施を申し入
日 付 け )が 報 じ た こ
れる予定だった──と、
青森県の
『東
奥 日 報 』( 5 月
「様子見の状態で、まだ見通しは立っ
──その活動は中断していますね。
いつ再開されるのか。
る感じではありません」
事業者はどう捉えるのか、NUMO
「 あ く ま で 問 い 合 わ せ で し て、 そ れ
─ ─「 条 例 な ん て 関 係 な い。 我 々
は 全 国 一 律 だ 」と、 配 慮 の 範 疇 に も
自治体に処分地選
広報グループ課長の赤司友一郎、阿
が公募にはつながらない、と。自治
入っていないのか。
含む全国の5〜
部克也の両氏に聞いた。
体がどう認識されているか、こちら
査 に )手 を 上 げ て も、 道 を 含 め て の
「そうです。でも、幌延町が(文献調
まれるのか。
──「研究実施地域」以外の幌延町
内や周辺自治体は、全国一律には含
ントしている。
絶 対 に 処 分 場 に は な ら な い 」と コ メ
部 長 は「 幌 延 深 地 層 研 究 セ ン タ ー は
ン 」の 取 材 に 対 し、 N U M O の 広 報
この夏、テレビ朝日「報道ステーショ
者協定の存在は気にしているようだ。
「全国一律」の建前を口にするが、3
のはないのです」
ません、全国一律なので特別という
「 範 疇 に は 入 っ て お り ま せ ん。 す い
ている。今後についてはなんとも言
とはしない──という前提で検討し
「北海道の条例を無視して進めるこ
検討している段階です」
り、今は文献調査の進め方について
あり、そのメドについては白紙の状
らやっていきたいが、震災の影響も
いずれは申し入れを選択肢としなが
れることはしない。閣議決定もあり、
「今すぐ国側から文献調査を申し入
取材をするとこんな答えが返った。
で 忙 し い 」と 面 会 を 拒 ん だ が、 電 話
一方、資源エネルギー庁放射性廃
棄 物 等 対 策 室 の 担 当 者 は「 国 会 対 応
ているかのような印象を受けた。
NUMOには処分事業に対する切
迫感が乏しく、対応を政府にゆだね
態。高知県東洋町での痛い経験もあ
協定だからハードルは高い。協定に
定はない」と強調していた。
『東奥日報』
の記事が載ったこ
──
とは把握していたんでしょ?
して、事故によってスタンスが変わ
※将来とも、研究所と周辺のボー
リング地点や調査機器の設置地点な
えている。意見はしっかり受け止め
※研究所を最終処分の実施主体
(NUMOを指す)
へ譲渡・貸与しな
幌延深地層研究センターの調査坑道
(地下 140 m)
。日
量 100 t以上の地下水が湧出し、吹きつけたコンク
リートからにじみ出ている
(黒く見える部分)
では計りかねますし…」
福島原発の事故がなければ資源エ
ネルギー庁は今年夏までに北海道を
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「 裏 打 ち の な い 情 報 な の で、 コ メ ン
トのしようがありません」
──エネ庁は否定しなかったが。
「国は申し入れの腹案を持っている
のかもしれませんが、うちは公募制
なので立場が違うのかな、と」
──申し入れを関知しないのでは、
ずいぶん軽い処分事業者だなあ。
「 法 律 に 基 づ い て や っ て い る の で、
役割分担と見ていただければ…」
「申し入れ」
を
当事者のNUMOが
関知しないとの説明には、正直驚い
た。これでは形式的な処分事業者に
──福島原発事故の影響は?
「引き続きご応募いただけるように
深地層研究センターの立地受け入れに反対する集会。道北の酪
農青年はトラクターで駆けつけた(2000 年9月、道庁前で)
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すぎない存在ではないか。
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政府が描く処分事業のスケジュール(NUMOのパンフレットから)
“農と食”
えないが、現状では文献調査を申し
入れることは難しいだろう。原子力
政策大綱の見直しをめぐる議論も見
ながら進めていきたい」
役所の側から規定路線を変えられ
ないが、事はそう簡単には運ばない、
と受け止めているようだった。
て い く だ ろ う。 一 日 で も 早 く そ う
なってほしい。まず原発や再処理を
責任を持ち、泊原発サイトなどで長
核燃料は他県に押しつけず、北電が
うか。北海道内で発生した使用済み
れが、よりましな選択ではないだろ
減らす技術の開発に期待する──そ
疑念を払拭できずにいる。
わ れ 続 け る の で は な い か …」と い う
案 じ る 住 民 た ち は「 最 終 処 分 場 に 狙
設の誘致にこだわり、地域の将来を
ない。だが、町の幹部らは核関連施
落ちる〝原子力マネー〟は桁違いに少
前出の反対派リーダーの酪農家・
久世さんは、 年ほど前から豊富町
期保管しなければならない。
原子力関連施設には頼らず
酪農に関わる仕事を増やす
内でチーズ工房を営む。無理に都市
部へ販路を求める生き方をせず、地
日本列島で地層処分をやろうとする
かは分からない。地殻変動の激しい
年後に人類が生き残っているかどう
年前といえば平安時代であり、1万
長期におよぶものもある。今から千
ル廃棄物の半減期は、数万年もの超
だが、危険物質の管理を放棄する
のは無責任もはなはだしい。高レベ
と似たような話である。
づいて動いてきた。原発の安全神話
地層処分ができる──との概念に基
バリアによって放射能の漏出を抑え、
締め固めた緩衝材、岩盤という多重
原子力機構やNUMOなどは、ガ
ラス固化体や鋼鉄製の容器、粘土を
るようです。
の)
資金さえ出せばいい」と捉えてい
電力会社も「(電気料金から処分事業
い っ た 切 迫 感 は 薄 い の で は な い か。
申し訳ないけれど、後始末対策は
後世の人たちに託し、放射能の量を
治 財
( 地
) 球環境産業技術研究機構
理事)といった意見がある。
い原子力大綱に明示すべき」(山地憲
政策オプションにできることを新し
にも、「再処理よりもベター。将来の
実績があり、原子力推進論者のなか
いい。このシステムはすでに欧米で
式 貯 蔵 シ ス テ ム 」へ 移 行 し て い く と
原 発 サ イ ト な ど で 長 期 保 管 す る「 乾
核燃料を専用の金属容器に入れ、各
遺産として残る。それは、使用済み
だが、脱原発が実現しても、すで
に発生した膨大な〝核のゴミ〟は負の
よりましなやり方だと思う。
んと責任を取らせていく──それが、
た う え で、 電 力 会 社 や 政 府 に き ち
分 」と い う 両 論 併 記 の よ う な 形 に な
処 理 の 推 進 」「 ワ ン ス ル ー で 直 接 処
では、(核燃料サイクルについて)「再
力委員会の新大綱策定会議のまとめ
識は変わっていません。今後、原子
燃 料 の 貯 蔵 能 力 を 増 や す 」と い う 認
る。 福 島 原 発 事 故 後 も「 使 用 済 み 核
分 の 方 式 も 検 討 す る 」と は 書 い て あ
現在の原子力政策大綱にも「(使用
済 み 核 燃 料 を 再 処 理 し な い )直 接 処
だわっているわけです。
かっていない人たちが地層処分にこ
発や核燃料サイクル事業に比べると、
5戸ほどの生乳生産額にすぎず、原
付金は年間1億円台。これは酪農家
の立地に伴う幌延町への電源3法交
を振り返った。深地層研究センター
しまった──と、長年にわたる経緯
原発の後始末施設に頼る道を選んで
先月号では、原子力文明とは無縁
な 酪 農 の 里・ 幌 延 町 は 易 き に 流 れ、
いを強くしている。
放射能汚染の深刻さを知り、その思
と考えてきたが、福島原発事故後の
「原子力と一次産業は共存できない」
動きを追い、記録も残した。ずっと
市民運動に参加しつつ「幌延問題」の
棄物に関する、にわか勉強を始めた。
験をきっかけに、原子力や放射性廃
山の坑道で行なった地層処分基礎実
ただし、議会決議などがあれば別で
ま す 」と 素 直 に は 言 え な い で し ょ う。
設のある地域では、「調査を受け入れ
とが難しくなります。原子力関連施
地元の反発を受けずに申し入れるこ
ま た、 調 査 個 所 を 少 な く す る と、
「処分場の候補地を絞った」と見られ、
う説明するのでしょうか。
なるわけです。国側はその理由をど
「なぜ、この地域を選んだのか?」と
で)「あなたの地域が処分場の適地で
話ではありません。(文献調査の段階
を見つけるヒントがあるのだろう。
と 提 案 す る。 そ の 言 葉 の な か に、
「脱原子力」を実現し、明日への希望
ら転換していけるはずです」
と、原子力関連施設に頼る生き方か
こうした取り組みを積み重ねていく
で完結する仕事に目を向けたらいい。
少なくする──風土に合った、地域
から絞った油を燃料にしてトラク
加え野菜や根菜類、麦を作る。菜種
乳製品などの加工もできる。酪農に
ことが基本であり、ゆとりがあれば
くりが必要です。生活を豊かにする
充実を図りながらやっていける町づ
的な家族経営を大切にして、質的な
に付随する仕事を増やすこと。自立
「 こ の 地 域 で 一 番 大 事 な の は、 酪 農
地層処分はあまりに無謀
「乾式貯蔵」
で長期の保管を
ことは無謀きわまりない。
(青森県六ヶ所村での)再処理事業は
ることが予想されます。
域のお客さんを大切にしてきた。
(NUM
原子力発電環境整備機構
O )は、 ど こ ま で 本 気 で 最 終 処 分 場
遅れており、原子力委員会の委員や
自身の判断では断れなくなる、とい
道北の下川町で生まれ育ったわた
しは、 年代初めに旧動燃が下川鉱
の候補地を探しているのか疑問なと
電力会社などのなかには、「実際の処
地元で脱原発の運動を続けてきた
人たちは、原発の運転をやめ、核燃
う面はあります。
や め、〝核 の ゴ ミ 〟の 総 量 を 確 定 さ せ
ころがありますね。「スケジュールを
分は相当先になるだろう」とか「再処
料 サ イ ク ル 政 策 が 変 わ っ て い け ば、
に占める原発の比率は確実に下がっ
「原子力資料情報室」
共同代表 西尾
切迫感の薄い原子力関係者
使用済み核燃料を増やすな
漠
生量をこれ以上、増やさないように
が条件であり、使用済み核燃料の発
での原子力政策を国が謝罪すること
入れるのではないか。ただし、今ま
一般の人が深く考えないなかで、経
い内容ではなく、メリットは乏しい。
3者協定があっても、さほどきびし
くる、ということです。道の条例や
地域が文献調査の対象地域になって
すが、実際に申し入れされると首長
す 」と は 言 え な い。 住 民 側 に す る と
ターを動かし、外部経済への依存を
示 し た 以 上、 や ら な け れ ば …」と い
理には期待しない」「原発のサイト内
「すでに発生した使用済み核燃料は
福島の大惨事を受けて脱原発を求
める世論が高まり、今後、全発電量
う 面 は あ る の で し ょ う が、 役 所 や
で
( 使 用 済 み 核 燃 料 の )乾 式 貯 蔵 を 」
北海道の人たちに考えてほしいの
は、関連施設のある幌延町や周辺の
さん
電力会社を含め
「地層処分が遅れる
乾 式 貯 蔵 す る 」と い う 選 択 肢 は 受 け
していくことが大前提です。
済的にきびしい地域に押しつけられ
ることになりかねません。(放射性廃
棄 物 対 策 に つ い て )今 か ら ど ん な 問
論が必要です。それが原発を減らす
「申し入れ」は簡単に進まず
関連施設の周辺が狙われる
国やNUMOは「申し入れ方式」に
よって地層処分の候補地を選定しよ
ことにもつながります。(談)
題点があるかを考え、オープンな議
うとしていますが、そんなに簡単な
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THE HOPPO JOURNAL
10
といった見方があります。そこを分
西尾 漠(にしお・ばく)
1947 年、東京都生まれ。広告制作会社で働いて
いた 73 年ころ、
「 電力危機」を訴える電力会社の
広告に疑問を抱き、原発の問題に関わる。78 年
の『反原発新聞』の創刊以来、その編集を担当。現
在、NPO法人「原子力資料情報室」共同代表。著
書は『脱!プルトニウム社会』
(七つ森書館)、
『原発
を考える 50 話』
(岩波ジュニア新書)など多数。
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巨大技術に頼らない町づくりや農
業のあり方を提案する久世薫嗣さ
ん。チーズやアイスクリームも製
造・販売している
と 困 る。 急 い で 処 分 場 を 造 ろ う 」と
北の大地から
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再処理を見直し
オープンな議論を
“農と食”