資料3 養殖 平成18年3月 水 産 庁 【水産基本計画における「養殖」関係部分】 第1 水産に関する施策についての基本的な方針(略) 第2 水産物の自給率の目標 2 我が国漁業の持続的生産目標 (1)漁業生産に関する課題 ア∼ウ(略) エ 海面養殖業(海藻類を除く) 海面養殖業については、新たな養殖技術の開発及び導入、対象 魚種の増加、漁場の拡大等により生産量は増加してきたが、近年 では、主要魚種の需要の減退、過密養殖による漁場環境の悪化等 により、生産量は横ばいで推移しており、漁業経営も不安定とな っている。 こうした中で、漁業生産の維持及び増大を図るため、養殖漁場 の造成及び改善、疾病の防除、新たな養殖対象種の導入等を進め るとともに、飼育方法の改善等により品質の向上を図ること等が 必要である。 また、消費者の需要に対応するための付加価値の向上、事業の 共同化等により漁業経営基盤の強化に取り組むこと等も課題とな っている。 オ(略) カ 採藻・藻類養殖業 採藻・藻類養殖業については、養殖の拡大を背景に、生産量は 増加傾向を示してきたが、近年、漁場環境の悪化等により、横ば いないしやや減少傾向で推移しており、漁業経営も低迷している。 こうした中で、漁業生産の維持を図るため、水質の保全、藻場 の保護及び造成等により漁場環境の改善を図るとともに、養殖に おける栽培方法の改善等により品質の向上を図ること等が必要で ある。 1 また、生産コストの低減、事業の共同化等により漁業経営基盤の 強化に取り組むこと等も課題となっている。 3 望ましい水産物消費の姿 (1)水産物消費に関する課題 ア 魚介類 ①(略) ② 非食用魚介類 非食用魚介類の消費量は、養殖用餌料等の多くを賄ってい マイワシの漁獲量が減少する一方、養殖生産において品質の 上、環境への配慮等のため配合飼料化が進んだことから、近年 減少傾向で推移している。 こうした中で、資源の有効利用や環境への負荷の低減の一 として、養殖生産における給餌の際の残餌の削減等に取り組 ことが課題となっている。 ( 2 )( 略 ) た 向 、 環 む 第3 水産に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策 1 水産物の安定供給の確保に関する施策 ( 1 ) ∼ ( 4 )( 略 ) (5)水産動植物の増殖及び養殖の推進 (前略) また、水産動植物の養殖については、持続的養殖生産の確保に関す る基本方針に沿い自主的な養殖漁場の改善を促進するとともに、水産 動植物の疾病の防除、新たな魚種についての養殖技術の開発等を推進 する。 ( 6 ) ∼ ( 9 )( 略 ) 2 (略) 第4 水産に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事 項(略) 2 養殖業に対する施策 ◎経営対策(競争力強化)の推進 ○共同利用施設整備の支援 ○共済制度 ○政策金融(漁業近代化資金等) ○ブランド化の推進 など ◎養殖技術の改善 ○総合水産研究センターによる基礎研究 ○水産試験場等での技術開発 ○人工種苗生産技術開発 など ◎養殖漁場環境保全の推進 持続的養殖生産確保法 ○漁場の適正利用の推進(漁場改善計画策定・適切な実施) ○環境負荷低減に資する餌料、給餌手法の開発 ○複合養殖の技術開発 など ◎養殖水産物の安心・安全の確保 薬事法 飼料安全法 水産資源保護法 JAS法 ○疾病対策・水産用医薬品の適正利用 ○適正表示・トレーサビリティ ○餌料の安全性確保 ○資機材の適正利用 ○消費者への情報開示 3 1.養殖業の現状 海面養殖業の位置付け ○我が国海面養殖業の生産量は122万トン、生産額は4,363億円(平成16年)。 ○海面総漁業生産に占める割合は量で21%、金額で29%。 ○ブリ類は69%、マダイは84%、カキ類及びノリ類ではほぼ全量が養殖による生産。 ○養殖業の地位(平成16年) ○主要養殖種の総生産量に占める割合(平成16年) 生産量(千トン) 生産額(億円) 海面全体 遠洋漁業 沖合漁業 沿岸漁業 養殖業(計) うち魚類 貝類 海藻類 その他 養殖業/総生産 5,670 535 2406 1,514 1,215 262 451 484 18 21.4% 15,023 1,691 3,960 5,004 4,363 1,965 725 1,193 480 29% 対象種名 魚類 うち ブリ類 マダイ 貝類 うち カキ類 ホタテガイ 海藻類計 うち ノリ類 養殖生産量 養殖の割合 千トン ( )は推定 262 7.2% 150 81 451 234 215 484 359 コンブ類 47 69.4% 鹿児島、愛媛、大分、香川、長崎 84.4% 愛媛、三重、熊本、長崎、高知 52.4% (100%) 広島、宮城 40.6% 北海道、青森 80.9% (100%) 佐賀、兵庫、福岡、熊本、香川 宮城、愛知、千葉 34.1% 北海道、岩手 資料:漁業・養殖業生産統計年報 資料:漁業・養殖業生産統計年報 注 :「その他」は、クルマエビ、真珠等 注 :割合の( )は養殖以外の統計数値がないもの。 4 主要生産県 世界の養殖生産 ○世界の養殖生産量は年々着実に増加。 ○国別でみると、中国がその多くを占める ○中国では、コイ類をはじめとする淡水魚の割合が高い。 ○世界の漁業・養殖生産量の推移 ○国別養殖生産量の推移 百万トン ○中国の魚種別養殖生産量 百万トン 百万トン 160 60 45 140 40 50 ノルウェー 35 120 100 韓国 日本 インド その他 40 漁業 30 その他 25 80 30 ホタテガイ 20 60 ソウギョ 20 15 中国 カキ類 40 10 20 0 1997 コンブ 10 養殖業 コイ類 5 1998 1999 2000 2001 2002 2003 0 1997 1998 1999 2000 資料:いずれもFAO[FISHERIES STATISTICS] 5 2001 2002 2003 0 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 養殖漁家の経営について ○経営体数は減少傾向、ノリ類養殖では平成に入って現在までに半減。 ○漁業所得は業種による差があり、ブリ類では市況の変動等による年変動が激しい。 ○給餌養殖の代表的なブリ類養殖では、漁業支出が大きく、その大半がえさ代と種苗代。 ○ノリ類養殖では減価償却費の占める割合が高い。 18,000 ぶり類 まだい ほたてがい かき のり類 16,000 14,000 12,000 ○漁業支出(家族経営型:15年)の比較 ○漁業所得の推移(家族経営型) ○養殖業種別経営体数注)の推移 10,000 (万円) 12,000 万円 3,000 その他 9,318 減価償却 10,000 2,500 油 8,000 ブリ類養殖 漁具漁船 6,000 2,000 労賃 種苗 4,000 1,500 2,000 ● 5,868 えさ 1,435 8,000 1,000 0 ブリ類養殖 6,000 500 ノリ類養殖 4,000 ○漁業支出(家族経営型:15年)の比較 0 2,000 H元 H3 H5 H7 H9 H11 H13 H15 (万円) 1,200 ▲ 500 0 H元 H3 H5 H7 H9 H11 H13 H15 資料:漁業・養殖業生産統計年報 H元 H5 H10 H15 H16 ブリ類 2,730 2,153 1,644 1,284 1,288 マダイ 2,823 2,580 2,060 1,534 1,440 ホタテ 6,492 6,530 5,791 5,100 4,820 カ キ 4,895 4,769 4,813 4,545 4,710 ノリ類 15,262 11,245 8,789 6,549 6,381 注)営んだ経営体数。 10-20tの漁船漁業 ブリ類 ノリ類 その他 減価償却 諸施設 労賃 油 漁具漁船 1,000 資料:漁業経済(経営)調査報告 H元 1,719 360 1,069 (単位:万円) H5 H10 H15 H16 2,253 1,261 1,014 617 732 644 692 763 800 297 600 400 ● 200 0 ノリ類養殖 漁船漁業平均 資料:漁業経営調査報告 (注)「漁船漁業平均」は20t階層以下の平均 6 316 海面養殖の生産性の推移 ●生産性をブリ類の施設面積当たり生産量でみた場合、安定した増加傾向にあり、投餌量当たりも近年増加傾向。 ●生産性向上には環境への散逸が少ない配合飼料やワクチンの開発・普及といった技術の進展が寄与。 ●このほか、海藻類(ノリ)でも生産性の向上。 〇ノリ類の生産性の推移 (H元=100) 〇ブリ類の生産性の推移 (H元=100) 指数 指標 250 250 経営体当たり 経営体当たり 施設面積当たり 200 施設面積当た り 200 投餌量当たり 150 150 100 100 50 50 0 0 S50 S55 S60 H2 年 資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」 H7 S50 H12 資料:農林水産省聞取調査 7 S55 S60 H2 年 H7 H12 資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」 養殖魚種及び手法の多様化 ○養殖魚種の多様化、新魚種養殖が進展している。 ○魚種特性によっては、ヒラメなど陸上養殖が相当部分を占める。 ○魚種別養殖生産量の推移 ○マグロ養殖 クロマグロ養殖については、資本力のある企 業が地元漁協と協力して、大規模な施設を利用 して実施する例がみられる。 魚類養殖魚種別生産量の推移 300000 250000 その他(まぐろ等) ふぐ類 ひらめ まだい しまあじ まあじ その他ぶり類 かんぱち ぶり ぎんざけ トン 200000 150000 100000 50000 0 59 60 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 *カンパチ、その他ブリ類は平成13年まではブリに含まれる。 8 ○岩ガキ養殖 マガキと異なり夏場に旬となる岩ガキの養殖 が、近年各地で実施されるようになっている。 ○陸上養殖(流水式) ヒラメについては、酸素消費量が比較的少い (動き回らない)魚種であり、また、飼育適水 温(18∼24℃の範囲で餌料効率が高い)で の飼育期間を長くすることが重要であることか ら、陸上養殖が施設面積で全体の6∼7割を占 めている。 ノリ生産量の推移 ○ ノリの生産量は、昭和40年代後半から徐々に増加し、昭和63年ごろから100億枚前後で推移。 ○ 経営体の数は、昭和40年代後半より、一貫して減少。 ■我が国のノリの生産量・価格・経営体数の推移 生産量 平均単価 18.68円 120 20 経営体数 10,980百万枚 69千経営体 16 ︵ 生 100 産 量 18 14 80 95.7億枚 12 60 10 大型全自動機導入 計画生産開始 浮上筏普及 40 千 8 協業推進 6.1円/枚 9.8円/枚 酸処理技術の導入 ︶ 多収性品種導入 20 浮流し養殖普及 6.4千経営体 浮流し養殖普及 4 新品種の開発 冷凍網技術普及 34.2億枚 6 2 人工採苗普及 0 0 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 資料:全国海苔貝類漁業協同組合連合会 注:ノリ年度は、前年12月∼当年11月 図ー1 技術の変遷と生産量、平均単価、経営対数の推移 9 ノリ年度 円 / 枚 ︶ ︵ ・ 経 営 体 数 平 均 単 価 ︵ ︶ 億 枚 ○経営体ごとの生産規模については、大きな差が見られるが、生産規模にかかわらずほぼ全ての経営 体 で自動海苔乾燥機等が個別に所有されている。 ○投下固定資本額当たりの生産枚数は、生産規模に比例して高くなっており、生産規模によって生産 性に大きな差が見られる ■主たる生産県における1経営体当たり生産量(平成16年) 福岡 経営体数 954 生産量 (百万枚) 1,362 1経営体当たり生産量 (千枚) 佐賀 936 1,830 1,955 三重 758 367 484 熊本 660 1,056 1,600 愛知 468 588 1,256 千葉 467 523 1,120 兵庫 399 1,317 3,301 宮城 292 645 2,209 香川 257 751 2,922 岡山 158 283 1,791 5,349 8,722 小計(a) ○ 生産規模別の生産性等 1,428 6,381 9,220 83.8% 94.6% 50-70a 120 100 80 30-50a 60 59枚 92枚 70a以上 97枚 40 20 0 ○ 協業化による効果分析例 資料:佐賀県よりの聞き取り A漁協 1,631 個人標準 1,445 ノリ1枚の生産コスト 100 世帯当りの労働時間 100 (全国平均) a/b ② 生産規模別の生産性の比較(平成11年∼15年度の1経営体平均) (生産量上位10県平均) 全国計(b) 資料:漁業経済(経営)調査報告 ① 生産規模別の年間生産枚数(平成15年度の1経営体平均) 30∼50a : 102万枚 50∼70a : 142万枚 70a以上 : 184万枚 投下固定資本1,000円当り の年間生産枚数 生産県 生産量(上位10県) B漁協 協業体 (5経営体) 個人標準 協業体 (5経営体) 61 73 100 100 78 80 注:対象漁協内の個人標準の数値を100としたときの協業体の値 112.8% 資料:漁業・養殖業生産統計年報 10 「のり」をめぐる貿易の状況 ○ 主要輸出国である韓国、中国と合意した結果、2006年の輸入枠は韓国枠3.4億枚、中国枠2.3 億枚、グローバル枠0.15億枚、合計5.85億枚(韓国枠については10年後に12億枚まで拡大) ○ 従来の干しのり、無糖味付けのりに加え、2006年は焼きのりなども輸入割当て(0.6億枚) ○ IQ枠の消化率は高く、9割程度 国内生産量に対する輸入品の割合は2∼3% (1)輸入元国・輸入量 (2)関税率 2004年までは歴史的経緯により韓国のみに輸入割当て 2005年、原産国制限の撤廃(グローバル枠化)に伴い中国が参入 2006年、グローバル枠を維持しつつ、主要輸出国である 韓国、中国の枠を設定 干しのり 1.5円/枚 味付けのり(無糖のもの) 味付けのり(加糖のもの) 注:1枚の大きさは19㎝×21㎝ 割当枠と輸入量の推移 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 割当枠 (億枚) 1.2 1.5 1.8 2.1 2.4 4.0 5.85 輸入量 1.1 1.5 1.5 2.1 2.2 3.4 年(暦年) 資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」、経済産業省「通関実績報告」 12 25% 28% 海面養殖業に係る漁業共済の現状 ●海面養殖業に対する漁業共済は、 ・魚類養殖業(カキ養殖の一部を含む)を対象とする養殖共済(物損保険方式) ・貝類・藻類養殖業を対象とする特定養殖共済(収穫高保険方式) があり、それぞれ不慮の事故等による損失の補てんを行っている。 ●養殖共済の加入率は37%(共済金額1,222億円)、特定養殖共済の加入率は71% (共済金額1,059億円)である。(数値は平成15年度実績。共済金額とは補償額をいう。) ○ 養殖共済の加入率及び共済金額の推移 億円 ○ 特定養殖の加入率及び共済金額の推移 億円 100 700 % 600 80 60 300 40 100 % 800 80 700 500 400 900 600 はまち 60 500 400 ほたてがい 20 100 200 はまち 0 H3 H5 H7 H9 H11 H13 0 H15 0 H元 ほたてがい 年度 20 100 0 H元 40 300 200 H3 H5 H7 H9 H11 H13 H15 年度 資料:加入率の分母は漁業・養殖業生産年報から推計 注:折れ線グラフは加入率、棒グラフは共済金額を示している。ほたてがいは平成7年度以降養殖共済から特定養殖共済へ移行。 養殖共済の加入率(%) は ま ち ほたてがい H元 48.2 1.1 特定養殖共済の加入率(%) H5 44.0 2.0 H10 43.8 H15 52.8 の り 等 ほたてがい 13 H元 65.3 H5 84.0 H10 83.2 37.2 H15 84.7 38.8 のり等 ほたてがい のり等 ほたてがい 水産防疫への対応 ○最近の魚病被害額の推移 1.魚病の発生状況 魚病対策は養殖振興上の重大な課題。 近年、給餌養殖生産の進展と養殖魚種の多様化 により、魚病被害額は減少しているが、魚病発生 の状況は複雑化。 年 (平成) 近年の傾向としては、 ①外国産種苗の増加等に伴う海外からの疾病侵入 ②薬剤による治療が困難なウイルス病の発生増加 等。 推定魚病被害額 (億円) 推定魚病被害割合 (%) 11 329 3,390 227 6.3 12 321 3,182 130 3.9 13 321 2,862 134 4.5 14 322 2,694 108 3.8 15 326 2,693 (90) 16 310 2,536 (集計中) 注1:生産量・生産額は農林水産統計値。 注2:推定魚病被害額・推定魚病被害割合は消費・安全局調査データより作成。平成15年は未提出県 分が含まれないため暫定値。平成16年は集計中。 水産用抗菌・抗生物質製剤使用額、水産用ワクチン販売額、魚病被害額の経年変化(推定) 250 70 60 200 推 定 魚 150 病 被 害 額 100 50 40 ︵ 30 億 円 20 億 円 50 ︶ 推 定 薬 剤 使 用 額 ・ ワ ク チ ン 販 売 額 推定薬剤 使用額 (億円) ワクチン 販売額 (億円) 推定魚病 被害額 (億円) 10 ︶ 14 生産額 (億円) ︵ 2. 水産用医薬品の使用状況 (1)これまでの魚病対策は、抗生物質などによる細菌 感染症の治療が主体だったが、ここ数年で多くの水 産用ワクチンが承認され、近年では、魚の病気を治 療する対策から、病気を予防する対策へと進展。 (2)水産用ワクチンは、魚体や環境中への残留等の心 配もないことから、より安全な水産物の生産に寄与。 その普及により「養殖魚は薬漬け」のイメージの払 拭を期待。 (3)平成15年薬事法改正により、未承認医薬品の養殖 水産動物への使用を禁止。また、抗生物質などの 残留に特に注意が必要な医薬品については、すべ ての養殖水産動物が使用規制の対象動物となり、 養殖水産動物に対する薬剤使用の規制が強化。 生産量 (千トン) 0 0 S55 H2 H12 H13 H14 H15 H16 注1:水産用ワクチン販売額は『動物用医薬品、医薬部外品及び医療用具生産(輸入)販売高年 報』より。なお、平成16年は集計中のため暫定値。 注2:推定薬剤使用額、推定魚病被害額は消費・安全局調査データより作成。平成15年は未提出 県分が含まれないため暫定値。平成16年は集計中。 1 【主な水産用ワクチンには、α溶血性レンサ球菌症ワクチン(平成9年承認)、イリドウイル ス感染症ワクチン(平成10年承認)などがあり、最近では2種以上のワクチンを混合した多 価ワクチンが主流。】 持続的養殖生産確保法・持続的な養殖生産を図るための基本方針 ○ 全国的な養殖漁場環境の悪化が進むなか、平成11年に「持続的養殖生産確保法」を制定。 ○ 農林水産大臣は「持続的な養殖生産を図るための基本方針」を策定。 ○ 基本方針の中で、養殖漁場の改善の目標に関する事項、改善を図るための措置に関する事項等を策定。 ○ 基本方針に基づき、漁協等は「漁場改善計画」を作成し、都道府県知事が認定。 ○養殖漁場環境の悪化 過剰な餌料投与、漁場の発生等に よる養殖漁場環境の悪化が進行 持続的な養殖生産の確保を図るための基本方針(抜粋) ・養殖生産の不安定化 ・消費者ニーズに応じた 水産物の供給が困難 1 養殖漁場の改善の目標に関する事項 (1)海面養殖(海産魚介類を対象とするものをいう。) ア 水質に関する改善目標 イ 底質に関する改善目標 持 続 的 養 殖 生 産 確 保 法 (H11.5) ウ 飼育生物の状況に関する改善目標(魚類を対象とするものに限る。) 法律の内容 ○基本方針 2 養殖漁場の改善を図るための措置並びに必要な施設の整備に関する事項 ・農林水産大臣は、「持続的な養殖生産を図るための基本方針」を策定 ・養殖漁場の改善目標、改善を図るための措置等に関する事項を策定 (1)養殖漁場の改善を図るための措置 ア 漁場の状態に応じた養殖生産 イ 飼餌料の適正な使用 ○漁場改善計画 基本方針に基づき、 ・漁協等は、「養殖漁場の改善に関する計画(漁場改善計画)」を作成 ・都道府県知事が認定 漁場への有機物負荷を低減するため、給餌量の制限に努めるとともに、 モイストペレットや固形配合飼料等有機物負荷の比較的少ない飼餌料の 使用を促進すること。 ○勧告及び公表等 ウ 養殖施設の適切な管理 ・都道府県知事は、養殖漁場の状態が著しく悪化していると認めるときは、 漁場改善計画作成を勧告、従わない場合は公表等 エ 魚病の予防と対策のための措置 (2)養殖漁場の改善を図るために必要な施設の整備に関する事項 養殖の態様、漁場の特性等に応じ、次に掲げる施設を整備することが重要 である。 持 続 的 な 養 殖 生 産 の 確 保 イ 配合飼料用給餌機等の漁場への有機物負荷の軽減に資する給餌施設 3 養殖漁場の改善を図るための体制の整備に関する事項 養殖業の発展・国民への安全安心な水産物の安定供給 15 漁場改善計画の策定状況 ○ 基本方針に基づき、漁協等は「漁場改善計画」を作成し、都道府県知事が認定。 ○ 漁場改善計画の策定は着実に進捗、魚類養殖ではカバー率※)は約84パーセントに到達。 ○漁場改善計画策定状況 ○○漁業協同組合 漁場改善計画(例) 1.養殖漁場の改善目標 指標 水質 漁場改善計画の策定は着実に進捗し、現在のカバー率※)は魚類 養殖で約84%、藻類養殖で約61%に到達している。 目標 溶存酸素 ○○mL/L(○○mg/L)以上 硫化物 ○○mg/g乾泥以下 底生生物 多毛類(ゴガイ等)などの底生生物が生息していること カバー率 都道府県数 底質 飼育生物の状況 計画数 22 条件性病原体である連鎖球菌及び白点虫による年間の累 積死亡率が増加傾向にないこと 340 参画漁協数 400 魚類 貝類 藻類 83.6% 38.0% 61.4% ※)カバー率(%)=漁場改善計画が策定された養殖場での生産量×100/全養殖生産量 2.養殖漁場の改善を図るための措置 (1)養殖密度 生簀内における飼育密度は○kg/m3以下とする。 ○愛媛県下波湾(宇和海)における漁場環境※)の推移 (2)飼餌料の種類の制限 0.55 生餌単独での給餌は行わず、固形配合飼料もしくはモイストペレットを使用する。 0.50 (3)へい死魚の処理 3.漁場環境モニタリング調査 0.45 mg/g乾泥 調査項目 調査方法 水温 毎月○回、定点において○m、○m層で測定 溶存酸素 ○∼○月の毎月○回、定点において○m、○m層で測定 硫化物 ○∼○月の毎月○回、定点において測定 底生生物 ○∼○月の毎月○回、定点において測定 0.61 水質 0.40 0.35 0.30 0.30 底質 0.25 4.漁場改善を推進していくための体制の整備 0.20 計画の履行と進捗状況等を調査するための計画推進委員会を H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 組織する。 ※)底質の酸揮発性硫化物量 5.その他 16 愛媛県水産試験場計測 H17 飼餌料の適正使用(配合飼料への移行) ○ 配合飼料の散逸(食べ残し)率は、生餌に比べて大幅に減少。 ○ 魚類養殖の飼料の56パーセントが配合飼料に移行している。 ○飼料の形態別生産量と固形化比率の推移 ○餌飼料の散逸(食べ残し)率 生餌ミンチ 生餌 ブリの例 マダイの例 70% 42% 固形化比率は増加傾向にある。 80.0% 180,000 160,000 140,000 20∼30% 70.0% ブリ用飼料 60.0% 配合飼料(モイストペレット) 15∼20% 配合飼料(ドライペレット) 3%以下 5∼15% トン 120,000 50.0% 100,000 40.0% 80,000 30.0% 60,000 ○配合飼料の特徴 40,000 20.0% 20,000 10.0% 0.0% H9 H1 0 H1 1 H1 2 H1 3 H1 4 H1 5 H1 6 H8 H7 H6 H5 H4 H3 S6 1 S6 2 S6 3 H元 H2 0 ・散逸率が低く、漁場への有機物負荷を低減することが可 能である。 粉末 ・栄養素が過不足なく含まれ栄養素のバランスが良いため、 飼料効率が高い。 固形 固形化比率 ○飼料への規制 ・特定の原料に偏っていないので、供給が安定している。 となる等、労働時間の削減が可能である。 ・飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律により、 主要養殖水産動物を対象に飼料及び飼料添加物の成分規 格等を設定。 ・生餌に比べて高コストの場合もある。 ・養魚飼料中の抗菌性物質等の使用を規制。 ・魚種、時期によって嗜好性に課題がある。 ・餌料の栄養成分の公定規格の設定。 ・調餌の不要、給餌時間の短縮、自動給餌機の利用が可能 17 2.今後の課題 ① 持続可能な養殖経営体の育成 ○今後の国際化の進展や、消費者に信頼される養殖魚づくり、漁場環境の改善の必要性の下、育成すべき経営体像 (責任ある養殖経営の実践)を明確化し、その育成を図ることが課題。 養殖業者の意欲的取り組み 価格低迷、経営悪化などの厳しい状況の中で、グループ化、ブランド化等の取り組みが行われている。 ■取り組み事例 取り組み主体 A県漁連、ワカメ流 通業者 魚種 ワカメ B県ギンザケ養殖業 ギンザケ 者 取り組みの内容 ・品質、製造管理等で一定以上の基準を満たす製品を県漁連が認定。 ・認証製品には統一したロゴマークを添付。 ・県漁連のホームページ等で認証製品の原料ワカメの生産海域名を公開。 ・呼び名を「伊達のぎん」と統一し商標登録。ブランド化、輸入サケマスとの差別化を図る。 ・餌料会社と共同で、専用のドライペレットを開発し、餌の統一による身質の改良と品質の均質化 を図る。 ・養殖業者の氏名、餌等の生産履歴データを県漁連のホームページで表示。 ・ブリ養殖業者でグループを形成。グループ内で餌を統一し、品質の均質化を図るとともに、グ ループ内の情報交換、切磋琢磨により、技術水準の向上、生産コストの削減を実現。 ・統一の商品名で、ロゴマーク入りのラベルを添付し、共同で出荷。ある程度のボリュームの供給 をめざす。 D県養殖業者、定置 ブリ、ヒラメ、定置網 ・周年の原料供給を目指し、ブリ養殖業者、ヒラメ養殖業者、定置網漁業者でグループ(中核的漁 網漁業者グループ 漁獲物 業者協業体)を形成。 ・共同で加工場を整備し、地元の漁師料理等を素材とした加工品を開発。 ・県外在住の地元出身者を対象に、出身者組織、ダイレクトメール等を活用しPR。 資料:業界からの聞き取り C県養殖業者グルー ブリ プ 18 輸出への取り組み 外国政府の衛生管理基準への適合、海外の消費者のニーズに対応した生産等の着実な努力により、ホタテ、ブリ等の養殖水産物の輸出が 行われている。 ■ 取り組み事例 養殖業者 E漁連 魚種 ホタテガイ F県養殖業者 ブリ、カンパチ、マダ ・米国、EU(イギリス、ドイツ等)へ輸出 イ、シマアジ等 ・平成12年に加工場の対米HACCP認定、平成16年に対EU HACCP認定。 ・ブリに関しては、北米嗜好に合わせ大型魚を加工。 ・養殖魚と共に、地先の天然魚(メバル、サワラ等)も輸出。 ブリ ・米国、EU(イギリス、ドイツ等)へ輸出 ・平成12年に加工場の対米HACCP認定。平成15年に対EU HACCP認定。 ・北米嗜好に合う大型魚を周年供給するため独特の飼育管理手法を開発。供給量を確保するた め近隣の養殖魚家による委託生産方式(養殖方法を統一)を採用。 G県養殖業者 H県養殖業者 ブリ 概要 ・米国、EU、アジア等へ漁連が一括して輸出。 ・対EUへは、輸出基準に従い、生産海域の限定、HACCP認定加工場での加工を経て輸出。 ・米国へ輸出 ・昭和60年代から対米輸出を実施。生産量のほとんどは輸出向け。 ・完全無投薬による養殖。米国のニーズ(脂が乗って変色しにくい)に沿った飼育管理。 資料:業界からの聞き取り 19 ② 養殖魚に対する消費者の信頼の構築 ○養殖業について流通業が求める方向は、一定の品質と価格、安定した供給。 ○養殖業について消費者は、医薬品の適正使用や漁場環境の改善を含めた安全と信頼の確立に高い関心。 ○医薬品の使用、漁場環境、品質面では一定の成果。養殖の特性を生かした更なる改良に期待。 ○消費者ニーズの把握と対応、消費者への情報発信(生産履歴の保持、公表、需要喚起への取り組み)が課題。 ○安全性の確保等の観点から、人工種苗生産技術の開発を推進することも重要。 ◎一般の消費者のイメージ ◎流通業者の評価 ・生産者の顔が見えない、情報発信が少ない。 ・食の安全・安心への対策がわからない。 ・何よりも「安心」が重要。 ・養殖魚は脂がギトギトというイメージ。 ・刺身や塩焼きだけでない料理法を知りたい。 ・品質に関しては一定レベル以上で、仲卸からのクレーム も無くなったが、品質の産地間の差もほとんど見られない。 ・(ブリに関して)品質は餌の改良やワクチンの効果もあり 良化。脂の質も良くなり、色変わりもしにくくなった。 ・もう少しPRをして消費者のイメージを変える必要あり。 ・養殖魚は品質・相場が安定。 ・年輩の方を中心に天然志向というのは依然強い 資料:消費者からの聞き取り 資料:業界からの聞き取り 20 生産者と消費者の交流の取り組み ○ 消費者の養殖漁場視察、生産者との意見交換会、消費者を対象とした勉強会やシンポジウム等の開催。 ○ 参加した消費者の養殖水産物に対する評価は向上。 ○現地見学会 ○参加した消費者へのアンケート調査の結果 消費者を養殖現場に招き、漁場視察、養殖魚試食や地元生産者 との質疑応答・意見交換。 養殖魚に対する評価は? 下がった 0% 養殖魚の試食について まあまあ 18% 変わらない 9% 不味かった 0% 上がった 91% 美味しかった 82% ○参加した消費者から寄せられた感想・意見 ○学習会 ・今まで養殖魚というと、少し脂っこく柔らかい身だと思っていまし たが、今回の見学で変わりました。養殖魚がこんなに美味しいとは 思っていませんでした。 都市部で消費者を対象にした学習会を開催し、学識経験者から の講演、生産者からの安全安心への取り組み状況の説明や質疑 応答・意見交換を実施。 ・病気予防のためのワクチン、配合飼料、給餌方法と現在の養殖 方法に驚きました。と同時に味、新鮮の良さにも、これまでの養殖 魚の考え方が変わった思いです。 ・視察して給餌など大変な事、水産用医薬品に対しても管理してい るようなので安心しました。もっと消費者に対してアピールしたらい かがでしょうか。 ・魚種ごとに何ヶ月目に、どの様な薬をどの様に使用しているのか、 詳しく知りたかった。 ・魚離れが言われて久しい昨今、もっと若い世代の人にどの様に 魚の良さを伝えていけるのか、今後とも重要と思いました。 21 ・トレーサビリティーが言われている時なので出所をきちんとして売 り出せば新たな消費が生まれるのではないか。 ③ ノリ養殖業における課題 ○ノリ養殖業については、国際競争力強化の観点から、協業化・委託加工・共同利用化等を通じた生産コストの削減が課題。 養殖ノリ生産・製造の協業・共同化 ○ ノリ養殖生産の協業や施設の共同利用は社会的条件などに応じていくつかのパターンが考えられる。 ○ 地域の特性に応じた協業・共同化の方式を選択することが重要。 全面協業タイプ 海上・陸上の施設・設備の全てを 協業により行う 海上作業 陸上作業 協業体参加 者が分担し て行う 協業体参加 者が分担し て行う 委託加工タイプ 加工場共同利用タイプ 海上作業は各個人が行い、原藻の 加工は施設所有者に委託 海上作業は各個人が行い、加工は 共同施設で各個人が行う ノリ養殖業者(4戸) ノリ養殖業者(3戸) 海 上 作 業 海 上 作 業 委 託 料 海 上 作 業 海 上 作 業 原 藻 陸上加工作業 施設所有者が行う 協業体の利益が個人に配分、設備 などの減価償却費を分担 加工施設所有者に対して委託加工 料を支払う 22 原 藻 製 品 加工施設所有者 海 上 作 業 海 上 作 業 加 工 作 業 海 上 作 業 製 品 加 工 作 業 加 工 作 業 共同加工場 加工施設を共同で利用す る 国 際 化 に 向 け た ノ リ 養 殖 業 の 体 質 強 化 【 我が国のノリを巡る現状 】 【 対 応 の 方 向 】 1.ノリをめぐる国際交渉 ・ 海苔IQ枠の拡大 ・ NAMAなどにおける関税引下げ交渉 ↓ 【予想される事態】 ・ 中国・韓国からの輸入量の増大 ・ 輸入品との競争の激化 [ 基 本 的 考 え 方 ] 2.国内の海苔養殖業の現状 (1)高コスト構造 ①生産面 ・ 経営規模が小さい(160万枚/経営体) ・ 生産性の低い小規模施設 ・ 乾燥機等の過剰な設備投資 (生産能力が十分に生かし切れていない) 国際交渉の進展を踏まえ、今後の我が国の海苔養殖業の 国内生産の維持を図るため、早急に高コスト構造の改革等 に着手 (1)構造調整・競争力強化の推進 ①漁協等の策定する構造改革計画の推進 ・ 構造改革に伴い不要となる設備等の廃棄 ・ 協業体における大型乾燥機・高性能刈取船等の整備 ・ 漁協等における大型加工施設の整備 ・ 既存施設の共同利用の推進 生 産 性 の 高 い 経 営 体 ① 協 業 化 ② 集 約 的 委 託 加 工 ②出荷・流通システム ③ 施設の共同利用など ・ 詳細な等級分類と相対的評価 ・ 検査及び入札のためだけに折り曲げ出荷 ・ 乾海苔のみによる出荷 (2)品質面等における課題 ①赤ぐされ病等の多発 (地球温暖化、過密養殖等) ②優良株の海外流出 (海外で生産され逆輸入) ③消費者は輸入品との認識が困難 【 将 来 像 】 生産コストの大幅削減を目指し、地域の実 態を踏まえて生産形態を選択 ② 効率的な流通加工形態の検討等 ・ 等級付けの簡素化、機械化等の検討 ・ 最終利用形態に応じた出荷形態や製品化の検討 (2)付加価値向上・製品差別化 ① 高品質な海苔の生産技術の検討 ② 優良形質を有する株の選抜、品種の登録 ③ 品種・原産地判別等の技術開発 ④ 海苔の健康食品としての優秀性に着目した 新需要の創出・開拓 ⑤ 適切な表示の推進 23 高品質な海苔を生産する経営体 品質・付加価値で勝負するケース
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