第5章 競争的な市場が望ましくない場合 ①公益事業のかかえる問題 市場の失敗 ・問題が競争では解決しない ・競争状態の到達点が望ましい状態と 言えない 費用逓減産業問題(自然独占問題) 圧倒的コスト優位のため市場が競 争的にならず、自然と独占状態になる 産業 再び費用関数 平均費用=費用/生産量 平均可変費用=可変費用/生産量 生産量が少ない状況では、平均費用は極 端に高くなる 損益分岐点:限界費用が平均費用よりも 高くなる点(利潤+) 操業停止点:限界費用が平均可変費用よ り高くなる点(利潤-、可変費用分の損 失を補う)→供給曲線 自然独占問題の発生 固定費用が大きい産業→需要曲線と限界費用 曲線の交点が操業停止点や損益分岐点より下 になる=競争状態では利益が出ない→独占 ex.インフラ産業 限界費用規制:政策に よってE点での取引を強 制する 平均費用規制(総括原 価方式):A点での取 引を強制する インセンティブを与える規制 独占企業に対して価格規制に代わる自 然独占産業問題への対応: *規制監督する対象の最小化(電力事 業の発送電分離) *コスト削減や技術開発を誘発し得る 規制方式をみつける(ヤードステック 規制、プライスキャップ規制) ②外部性と公共財 負の外部性(公害など)がある状態にお いて、完全競争均衡は需要曲線と社会 的限界費用線の交点 →外部性の内部化 ・合併 ・権利設定とその後の交渉調停 ↓ 企業は社会的費用を考慮して生産 量を選ぶことによって、最適な活 動状態となる コースの定理 ピグー政策 公共財と”タダ乗り” 公共財:非排除性(代金を払わない人の利用を妨げられない) と非競合性(複数の人が同時に消費しても各人の受ける効用が 変わらない)を有する財 (ex.法制度、国防、 警察、消防) 公共財の最適供給件:限界的な便益と限界費用が等しくなる ような生産量 •公共財は消費者の財に対す る評価が価格に反映されず、 それを測ることが困難であ る。 •消費量を消費者が決められ ないため、限界代替率を調 整できない 自由な取引では最適状態にな らない ③情報の非対称性 取引の当事者間で知っていることに差があるため市場が 成立しなくなること 逆選択の問題(隠された情報の問題) ex.中古車市場、保険 対応策:シグナリング 自分が契約相手にとって望ましい性質を持っているこ とを何らかの手段で伝えようとする行動 →分離均衡状態が成立 モラル・ハザード(隠された行動の問題): 契約後の行動を他方が観察できない、できても客観的 に立証する手段がない場合に生じる ex.自動車保険、株主による経営者への委任 対応策:望ましくないインセンティブを低下させる契約 ストップオプション ④経済学は再分配政策を語り得 るか 格差・貧困・不平等問題が再分配政策で改善さ れようとすることはパレート最適ではないが、 その重要性は示されている 再分配政策の正当化 格差の無い社会を公共財(治安の悪化を防ぐ)、 民間には提供不可能な保険としてとらえる →モラル・ハザードの可能性と保険として の機能のバランスをどのように取るかの計量 的な把握が必要 経済学は汎用性の高い仮定;方法論的個人主義 から出発しているため、その正当化へのハー ドルが高い。
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