第1章サービスの高収益モデルのつくり方 Putting the Service-Profit Chain to Work Ｗ．アール・サッサー Jr. W. Earl Sasser, Jr. ジェームスＬ．ヘスケット James L. Heskett レオナルドＡ．シュレジンガー Leonard A. Schlesinger ゲイリーＷ．ラブマン Gary W. Loveman トーマスＯ．ジョーンズ Thomas O. Jones Ｗ. アール・サッサー Jr. W. Earl Sasser, Jr. ハーバード・ビジネススクール教授。共著書に Management of Service Operation（Free Press： 1990.）、The Service Management Course（Free Press：1991.）、The Service Profit Chain（Free Press：1997. 邦訳『カスタマー・ロイヤルティの経営』日本経済新聞社）がある。ジェームスＬ. ヘスケット James L. Heskett ハーバード・ビジネススクール名誉教授。また、オハイオ州立大学教授、ロジスティック・システム社長、ファースト・セキュリティ・サービスなど数社の取締役を務める。主要な共著書に The Service Management Course（Free Press：1991）、The Service Profit Chain （Free Press：1997.邦訳『カスタマー・ロイヤルティの経営』日本経済新聞社）など多数。レオナルドＡ. シュレジンガー Leonard A. Schlesinger ハーバード・ビジネススクール元教授。教鞭を執る傍ら、中小のサービス企業の執行役員や取締役を務める。共著書にはThe Service Profit Chain（Free Press：1997. 邦訳『カスタマー・ロイヤルティの経営』日本経済新聞社）などがある。ゲイリーＷ. ラブマン Gary W. Loveman ハーラーズ・エンタテインメントの上級副社長兼COO。トーマスＯ. ジョーンズ Thomas O. Jones エルム・スクエア・テクノロジーズ（顧客サービスに関するソフトウエアの開発会社）社長。［論文初出データ］ Putting the Service-Profit Chain to Work（HBR, 1994年3-4月号）サービス・プロフィット・チェーンの実践法（DHB, 1994年6-7月号, 小野譲司訳） 14 をはじめとする企業の多くが、従業員と顧客を最優先に考えれば、マネジメントや評価システムに︶、タコ・ベル、ＭＣＩテレコミュニケーションズ︵以下、ＭＣＩ︶バンク・ワン、インテュイット、サウスウエスト航空、サービスマスター、ＵＳＡＡ︵ United 15 抜本的変革が求められることを承知している。要するに、新しいサービス経済ではイノベーティブ Service Automobile Association な評価手法が必要とされているからである。は組織が備えるべき﹁高潔な精神﹂と﹁裏方仕事の大切さ﹂を重要視したものである。である。また彼らは、アメリカ企業ではめったに耳にしない言葉でビジョンを表明している。それートする技術、新しい採用方法やトレーニング、そして全階層の従業員に対する実績ベースの報酬と思われる要因に関心を寄せている。すなわち、それは人的資源への投資、第一線の担当者をサポ第1章サービスの高収益モデルのつくり方成功したサービス企業の経営者たちは、このような新しいパラダイムにおいて収益性に貢献するである﹂と理解している。しいサービス経済においては、﹁市場と日々接する第一線の担当者と顧客を企業経営の要とすべきた経営行動、つまり、利益目標の設定や市場シェアへの傾倒などに時間を費やしたりはしない。新高業績を上げているサービス企業の経営トップたちは、一九七〇年代から八〇年代に一般的だっサービス･プロフィット･チェーンとは何か企業の利益と成長は、主として顧客ロイヤルティが原動力となっている。顧客ロイヤルティとは、して見なされるべき︶いくつかの因果関係によって成り立っている。ヤルティ、そして生産性のそれぞれを関係づけるものである。これは以下に述べるような︵命題とサービス・プロフィット・チェーンとは、収益性、顧客ロイヤルティ、従業員満足、従業員ロイ凡な競合他社との格差を広げるような競争力を確立できるだろう。従業員および顧客満足の向上を目標として新規投資を行い、市場リーダーとなるサービス企業と平れは﹁漠然としたもの﹂を﹁数値化﹂するものである。これによって、経営者はサービスの開発と﹁サービス・プロフィット・チェーン﹂は成功したサービス企業の分析をもとに開発されたが、こ価値が期待できる。ナーからは三三万二〇〇〇ドル、そして営業用航空機の購買担当者からは実に数十億ドルもの生涯いほど莫大なものとなる。たとえば、ピザの得意客からは八〇〇〇ドル、︿キャデラック﹀のオー品のリピート・オーダーから得られる利益に新規顧客の開拓が加算されると、その額は計り知れな客自身が経験した価値の総和︶は、特に﹁カスタマー・リテンション﹂︵顧客の維持・継続︶や関連製﹁生涯価値﹂︵顧客が取引を開始したときからそれを終了させるまでの間に企業にもたらした、あるいは顧し、それが収益性と成長性に及ぼす効果を評価できるようにする。実際、一人の顧客から得られる価値に与える影響を測定するものであり、その結果、経営者が顧客満足と顧客ロイヤルティを確立これらの評価手法は従業員満足と従業員ロイヤルティ、そして労働生産性が、製品とサービスの 16 17 ﹁奉仕者の心﹂を持って経営者は﹁教え学ぶ﹂ことが重要であると強調し続けている。また、バンサービスマスターの社長であるウイリアム・ポラード︵現会長兼ＣＥＯ︶は、彼が言うところのを見落としている﹂と信じている。﹁簡単に数量化できる要因だけで物事を見ている者は、ビジネスの真髄である〝人間〟というもの重要であり、採用に際しては﹃高潔な精神﹄が必要である﹂とケレハーは信じている。彼はまたミナルで従業員や顧客に自ら率先して応対している。﹁節度を持った従業員を雇うことがきわめてたとえば、サウスウエスト航空のＣＥＯであるハーブ・ケレハーは、機内や滑走路、そしてターンに終わるものではない。第1章サービスの高収益モデルのつくり方ＣＥＯが顧客と従業員に向ける熱いまなざしは、けっして年次経営会議用のお題目だけのスローガなサービス・リーダー企業のＣＥＯ︵最高経営責任者︶は、従業員と顧客の大切さを強調している。︵図１﹁サービス・プロフィット・チェーンの流れ﹂を参照︶サをに顧サー持強客ービちく満ビス、影足ス︵そ響に・のさよプ従れっロ業るてフ員。もィロサたッイーらトヤビさ・ルスれ︶テのるチ、ェそィ価直ーしは値接ンて高は的は顧い、な、客。有結従サそ能果来ーしなでとビて従あはス、業る異の従員。な業に顧る。提員よ客供満っ満リを足て足ー実は創はダ現、造顧ーさ主さ客シせとれにッるしる提プたてが供とめク、さものオ彼れ定方リらた義策テ彼サでにィ女ーき影のらビる響高はス。さい充の模れ社実価範る内感値的 internal service ク・ワンの会長兼ＣＥＯであるジョン・マッコイは﹁非凡なるパートナーシップ﹂を強調している。図１サービス・プロフィット・チェーンの流れ 18 いたバンク・ワンが、現在では四半期ごとに顧客継続率の測定を行っている。すなわち、顧客一人 19 深い要因をモニタリングするシステムを開発した。かつては財務指標に基づく厳密な経営を行ってオハイオ州コロンバスに本拠を置くバンク・ワンは、顧客ロイヤルティや顧客満足と相関関係がるの︵質第的４側章面﹁をサ評ービ価スしのてＺみＤる運と動、 │ そ │ の既量存的顧客側は面新に規匹顧敵客すよるり重も要儲性かをる持﹂をっ参て照い︶る。と二人は結論づけていれば、利益は二五％から八五％も増加すると推定している。顧客ロイヤルティを基準に市場シェアフレデリック・Ｆ・ライクヘルドとＷ・アール・サッサー Jr. は、顧客ロイヤルティが五％増加すを示している。業に関する新しい目標を見ると、顧客ロイヤルティが利益を生み出すための決定的要因であること第1章サービスの高収益モデルのつくり方るという〝目標〟に突き進んできた。しかし最近になって、ソフトウエアや銀行のようなサービス利益を最大化するために、経営者たちはおよそ二〇年もの間、業界の一番手もしくは二番手にな ∏ 顧客ロイヤルティは収益性と成長性の原動力であるのように機能するのかが明らかになってくるだろう。個々の相関関係を詳しく見ることによって、サービス・プロフィット・チェーンが全体としてどを最大限エンパワーメントするようなサポートの仕方である。これは、顧客満足や財務指標に関する情報システムと共通の評価手法を整備したうえで、各支店長会長であるスコット・クックの言葉であり、非常に満足した顧客はその製品やサービスの﹁リピーをつくる努力を始めた。ちなみに伝道者とは、財務ソフトウエア製造開発会社のインテュイットのたところ、何と前者は後者の六倍も存在していた。この分析結果を見て、ゼロックスは〝伝道者〟較して、﹁ゼロックス製の機器を再度購入したい﹂と考えている顧客がどれくらいいるのかを調べり異なることが明らかになった。五ポイントを付けた顧客グループと四ポイントを付けたそれを比てみると、﹁非常に満足﹂か﹁満足﹂かによって評点と実際の顧客ロイヤルティとの関連性がかなしかし、九一年にゼロックスに対する顧客満足度を四ポイントと五ポイントとした顧客を分析しの評価を得ることだった。までの目標は、九三年末までに全回答者から四ポイント︵満足︶ないしは五ポイント︵非常に満足︶までの五ポイント評価で製品とサービスに関する顧客満足度を測定している。ゼロックスの二年前たとえば、ゼロックスは年間四八万人の顧客を対象にして、最高五ポイントから最低一ポイント先進的なサービス企業は、現在、顧客満足度の数量化に取り組んでいる。 π 顧客満足は顧客ロイヤルティの原動力である社の二倍以上のＲＯＡ︵総資産利益率︶を達成したのである。ある。このような情報に基づいて展開された戦略のおかげで、バンク・ワンは数年足らずで競合他ひとりの利用サービスの数量、リレーションシップ、そして顧客満足度の水準を測定しているので 20 図２顧客満足度と顧客ロイヤルティとの相関関係 21 第1章サービスの高収益モデルのつくり方搬、避難所への誘導といった支援サービスとクレーム処理を迅速に行っている。法的コストを減らプログレッシブのＣＡＴ︵災害︶チームのメンバーは、ほとんどの事故現場に駆け付け、移動や運保険契約者の労を煩わせない、すなわち顧客の機会コストを低減させるという価値を提供している。プログレッシブという保険会社は、スピーディなクレーム処理と補償を提供することによって、を意味することを顧客から学んだ。我々は、価値とは﹁総コスト﹂︵そのサービスの価格と利用に伴う他のコストを含む︶に見合った成果最近の顧客は非常に価値志向的である。さて、それはいったい何を意味しているのだろうか。 ∫ サービスの価値が顧客満足の原動力であるィとの相関関係﹂を参照︶クスの製品やサービスを。試すことすら思いとどまらせかねない︵図２﹁顧客満足度と顧客ロイヤルテある。テロリストたちの声は何百人もの潜在顧客に届きかねないし、ときには、その知人がゼロッまり、かなり不満に思っている顧客は、ことあるごとに拙いサービスについて吹聴して回るからでし同時に、ゼロックスの収益性にとって重要なことは、〝テロリスト〟を生まないことである。つ末までにすべての顧客を信者にする、あるいは五ポイントを付けてもらいたいと望んでいる。しか現在、ゼロックスの経営陣はサービスの水準を高め、顧客満足を保証することによって、九六年ター﹂になることを表現したものである。 22