宇宙実験におけるデータ転送 テレサイエンスとリアルタイム

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宇宙実験におけるデータ転送
テレサイェンスとリアルタイム
The Data Communication on Space Experiment
Telescience and Real Time Data Access
小林英三郎*
Hidesaburo Kobayashi
宇宙で実験を行う
!969年7.月20日に達成されたニール・アームストロングの月面着陸から25年,冒険の時代で
あった宇宙への挑戦は,微小重力を有効に利用する科学計画へと展開してきた。スペースシャトル
やロケットによるスペースラブを利用したものから恒久的施設である宇宙ステーションの利用へと
その科学の場を広め,多くの可能性を持つものに転換している。宇宙実験も初期にはロケットを利
用したものが多く,その飛行時間は短いものであったが,ライフサイエンスで利用する長時間の実
験には専らスペースシャトルが使われるようになった。ユ984年4月12日にスペースシャトルの初
飛行がコロンビア号で開始されてから宇宙での実験機会は増加した。1992年9月12日に開始した
エンデバーによるスペースラブでは日本人初の搭乗科学技術者(PS:Payload Specialist)毛利
衛博士により第一次材料実験(プUジェクトはふわっと’92とも呼ばれている)が行われ,多くの
宇宙科学実験の成果を上.げている。
1994年7,月8日の第2次国際微小重力実験室(IML−2:ln£ernational Microgravity Labora一
もory No.2)のコロンビア号の飛行は63回目のスペースシャトルの飛行となり,日本人初の女性
搭乗科学技術者向井千秋博士が搭乗した。この国際微小重力実験室計画は米国航空宇宙局
(NASA:NatiOnal Aeronautics and Space Administration)が国際協力により推進するス
ペースシャトルに搭載する宇宙実験室スペースラブを用いた微小重力実験のシリーズ化されたもの
であり,第2回目のIML−2では13力国の科学者が提案する82の実験テーマが行われた。
宇宙は生命科学にとって未知なことが多く,生物の発生や分化を始めとし,微小重力環境を利用
した生命現象の研究課題が展開されている。我々はこのIML−2に「電気泳動による線虫染色体
* 城西大学理学部
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DNAの分離」を提案し,スペースシャトル・コロンビアのスペースラブで宇宙実験を行った。宇
宙環境での実験プUセスを追いながら,宇宙と地上とのリアルタイム交信を取り上げ考察する。
壌.宇宙実験「電気泳動による線虫染色体DNAの分離」
提案したテーマは電気泳動原理を用い遺伝物質であるDNAを効率的に分離するための基礎実
験である。電気泳動は荷電物質を高電圧下で移動させ,個々の移動度の差により分離するものであ
る。今回使用した無:壇体電気泳動(FFE:Free Flow紐ec宅rophoresis)は,分離能に孫弟物を使
わずに泳動を行うので,低分子物質はもとよりタンパク質,核酸などのような高分子をはじめ,超
分子や細胞顯粒などの巨大サイズの物質の分離には特に有用であるω。FFEはCFFE(COntinu−
ous Free Flow E!ectrOphoresis)とも呼ばれ,電気泳動原理に基づく分離方法の中で,大量処
理にはもっとも適した方法であり,産業界で要求する規模の物質分離に対応することも出来るω。
我々はF[FEでpH勾配を形成する分離原理GEF:Isoe!ectric FOcus癒g)(3)を用い染色体DNA
の分離を目的としている。地上ではpH勾配を形成させるため高電圧を与えると,分離心内で起こ
る熱対流は避けることが出来ず,低電圧では長時間の泳動を余儀なくされる。これに対し微小重力
環境下では熱対流がないので高電圧で電気泳動が可能であり効果的な電気泳動分離が期待出来る。
また比重差により沈降を起こすサンプルも安定に取り扱える利点も見逃すことが出来ない。
今回の実験では染色体DNAの試料として線虫(Chaenorhαbditls elegαns)を選んだ。線虫
Celeg(xnsは細胞系統樹が完成しており,動物の基本体制である生殖機能,神経系,筋肉,消化
器官などを有する(’a)(5)(6)。Celegansの染色体は雌雄同体で5AA+XOであり,また半数体
DNA含量は!00 Mbでヒトの!/30であるので,ヒューマンゲノム計画に先駆け,完全なDNA
配列を決める適切な候補となるべき生体でもある。さらにCelegαnsの遺伝子の多くは広範囲に
わたり哺乳類の遺伝子に類似していることも,この生物を先駆候補として取り上げる理由である。
2.平坦体電気泳動装置(FFEU:Free F豆ow E豊ec駿筆《)茎癒ores蔓s u撤も)デー一夕の転送
今回の計画で使用した電気泳動装置FFEUは宇宙開発事業団(NASDA:National Space
Development Agency of Japan)が開発し,三菱重工業神戸造船所で製作された。この電気泳動
装置をスペースシャトルコロンビアのスペースラブに搭載し,地球を周回する軌道飛行で生じる微
小重力下で電気泳動を行った。
スペースラブでの搭載位置は〈図1>に示すようにラック番号3の下部である。本装置は電気泳
動本体とサブユニットからなり〈図2>,本体には電気泳動の電極液,電気泳動緩衝液,サンプル
導入ポンプ,また,サブユニットは電気泳動のモニター信号の表示画面と電気泳動緩衝液タンクが
収納されている。これらの機能は全てCPU:Z80で制御されており,ハウスキーピングデータお
よび電気泳動状態を判断するディテクターの信号は後述するスペースラブのDIU経由で地上に送
宇宙実験におけるデータ転送テレサイェンスとリアルタイム 3
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図2 無斜体電気泳動装置FFEU
られる。32ビット機が主流になった現在では,このCPUは少し時代遅れであるが, FFEU装置
が1979年から始まった第一次材料実験(FMPT:First Material Processing Test)のために開
発されたこと,NASAの安全基準に合格するために多くの検査項目に渡る実験検証が必要で,新
らしい機種を導入するには時間がかかることなどが反映されている。スペースシャトルという現代
科学の最先端の技術を集積しているシステムとはちぐはぐな面であるが,1986年1月28日のチャ
レンジャの事故などのことを考えると,有人宇宙飛行の安全基準に関してかなり慎重にならざるを
得ない。この様な事情が背景にあるので,軌道上実験の計測データの2次的処理は地上で行うこと
になった。さらに,軌道上で実験を行う科学者は電気泳動の専門家ではないので,実験進行と共に
リアルタイムで地上から指示を出す必要がある。
軌道高度300kmの円軌道を飛行し,約90分の周回周期で地球を回るスペースシャトルからの
データおよびビデオ信号のダウンリンクを〈図3>に示す。スペースシャトルからの信号は,追跡
データ中継衛星(TIDIRS)で受け,ホワイトサンズの地上局(TDRSS)へ送られ,さらに米国内
通信衛星(DOMSAT)を経由してマーシャル宇宙飛行センター(MSFC)へ送られる。 MSFC
はスペースシャトルの実験運用の管理基地で実験研究者が待機しており,ポック(POCC:Pay−
10ad Operations Control CeRter)と呼ばれている。こ:の間のデータの流れの概要を〈図4>に
示すが,スペースシャトルでの実験データは約50Mのサイズで地上へ送られており, POCCでは
HRDM, DDs, IFTEを次々経由して電気泳動のモニターであるFAM(FFEu Absorption
Monitor)に到達する。地上基地からスペースシャトルには同じ経路を逆に辿るのであるが,
POCCの管制官の許可をもらい直接搭乗科学技術者と音声交信が出来るほか:FAXによる指示も
できる。
宇宙実験におけるデータ転送テレサイェンスとリアルタイム 5
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(米国内通信衛星)
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(追跡・データ中継衛星)
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(ホワイトサンズ内)
・データの中継
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・シャトルの飛行官制
・実験運用
図3 データ転送システム概要図
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102.4K
変換部
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VIDEO
MONITOR
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DD
Terrriinal
VIDEO
MONITOR
ViDEO
MONITOR
図4 スペースラブからPOCCへのデータダウンリンク
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!992年の第一次材料実験のために使用されたFAMは電気泳動状態を10秒毎に1回1画面だけ
ディスプレイで観測することが出来るのみで,経時的記録は全てプリントアウトするものになって
いた。今回は電気泳動の無加撃および加電状態のサンプル流下安定性,過渡現象およびサンプルの
分離状況などを的確に判断することを目的にした3Dエレクトuフェログラム(3 DEP)を開発
した。
3.3Dエレクト日フェ。グうム(3 DE艶Tlixee MYgmae“sigitai E曼eegropheyogram)
:FFEU装置は電気泳動分離槽(W 60×H100 x D 4 mm)の下部に配置され,両脇に取り付
けられた電極問に512チャンネルのCCD吸光度モニター(254 nm)を装備している。この信号
は先に述べたダウンリンクシステムを経由してIFTEに送られてくる。この信号を基に電気泳動
状態の詳細を解析するため,我々は新たに3DEPプmグラムを開発した(?)。このプrrグラムは
FFEUサブユニットに用いられたX軸(検出器512チャンネル), Y軸(吸光度)に加え10秒ご
とのエレクトuフェログラムをZ軸(時間軸)とした3次元グラフで表わしたエレクトuフェロ
グラム(3DEP)を表示するものである。マーカーサンプルを電気泳動した3DEPを〈図5>に
示す。このデータは1FTEのステータスを読み,有効データのみFAMのハードディスクに512
チャンネル2バイトデータとして各ダウンリンクデータにラベルされているGMT(Greenwich
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図5加電条件を変えたマーカーの3DEP(宇宙実験では行うことが出来なかった。)
宇宙実験におけるデータ転送テレサイェンスとリアルタイム 7
Meridian Time)と共に書き込み,その後再度ハードディスクから読み出し3DEPをディスプ
レイに描き出したものである。一見回りくどい方法に見えるが,追跡データ中継衛星の位置によっ
ては通信回線が遮断すること,その他通信ラインの遮断に備え記録メディアへのアクセスを最優先
した。また各データにラベルされたGMTはスペースシャトル運航データやGジッタを計測する
SAMS等,他の計測機器で得られたデータの照合に使用した。
飛行実験に使用する実機であるFFEU/FMおよび地上検証用装置FFEU/BBMを使用し,
データ取得から3DEP表示までの実効速度を評価した。 POCCでの使用できるブースの広さや,
NASAデータラインとの適合性の検証しやすさなどを考慮し, FAMハードウエアとしてノート
型パソコンNEC/98 Noもe nx/eを採用した。!回の電気泳動実験時間は21分で終了するので,本
プwグラムの3次元の表示フレームはあらかじめビュウポイントを決めて書き込んでおき,この上
にディテクタデータを書き込む方式で表示実行時問の短縮を計った。データサンプリングから3
DEP表示までは1.8秒とダウンリンクデータ間隔!0秒以内に納まり,余剰時間で3Dエレクト
ロフェログラム画面のハードコピーを得ることができるなど,今回の目的に十分適合するもので
あった。
4.飛行実験
軌道上での電気泳動実験はスペースシャトルの打ち上げから9日目(MET:Mission Elapsed
Time)に行われた。計画ではMET day 4に行われる予定であったが, FFEU本体の熱交換を行
うスペースラブとの問に配管された冷却水循環系に気泡が入り,これを除去するため軌道上での修
理IFM(IR−Fllght Maintenance)が行なわれ,実験開始は大幅に遅れた。6回にわたり軌道上
で修理を行い水は循環するようになったが,実験時間は大幅に減少したので3回行う予定の実験計
画を1回のみに変更した。実験結果の詳細は既に報告(8)してあるが,ディテクターの校正を行う
ために受けた信号は泳動槽内の異常を示していた。<図6>この信号は電気泳動分離槽に気泡が入
り,気泡表面での光屈折により異常を起こしたものと判断した。POCCでは装置メーカーの対応
策を参考にし,気泡除去のため洗浄モードの実行を搭乗科学者に要求したが,微小重力で発生した
気泡は安定でFAMで観測する限り,その大きさ位置とも変化しないことが判明した。電気泳動
槽内に気泡が滞留していると考えられたが,他の機能は正常であったのでサンプルを導入し電気泳
動分離実験を実行した。3DEPに現れた電気泳動分離状況は地上では得られなかった安定したも
のであった。〈図7>地上実験との比較をく図8>に示すが,泳動状態の安定性は高く,また分離し
たマーカーピークの半値幅は約lmmと,加電による熱発生の影響の少なさを示していた。分離
したサンプルは回収後冷凍し,スペースシャトル帰還後地上でPCRによりDNAの検出を行った
結果,微小重力下での電気泳動分離が良好に行われたことを示す2つのピークに分離していたこと
が判明た。循環水系の気泡除去作業のため電気泳動分槽に気泡が混入していたのではある
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図7宇宙実験での3DEP。左の2本のピークはマーカー
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図8地上実験と宇宙実験の比較。左の図は宇宙実験,右の図は地土実験での3DEP
が,電気泳動実験操作そのものは部分的にはその目的が達成できた。
5.テレサイェンス
この実験を進行していく間,あらかじめ決められた手順書を大幅に書き換え,音声とFAXでス
ペースシャトルのクルーに要求を出した。実験の進行をPOCCのFAMでモニターしながら手順
の再変更をくり返し,限られたクルータイムの間に目的の実験を達成するまでこの要求を続けた。
気泡混入による実験の短縮と実験手順の変更を始めとし,電気泳動分離実験に使用するサンプルの
選別,分離サンプルの回収対象になるポート番号の確認などクルーに要求する作業が地上予備実験
でシュミレートしたものより大幅に増えた。スペースラブでの実験操作状況をビデオカメラで追う
ことが出来ればさらに的確な要求を迅速に出すことが出来たと思われる。
今回の実験計画は遠隔地で実験を行うテレサイェンスの簡単な例でもある。通常,宇宙実験では
実験提案者が宇宙で実験実行者となることはない。今回の実験は比較的単純な操作が多く,クルー
の地上訓練もそれほど多くの時間を必要としなかった。しかしながら今後生物試料を取り扱い,サ
ンプルの分析条件を設定し,分析結果から次の実験計画を立てるなど,高度に複合化した研究を宇
宙で行う際には地上の専門家達の指示をより多く仰ぐことになる。音声とFAXを主体にした交信
は目の前に試料や装置を置いて実験しているときとは大きな相違がある。これは単に交信時間のず
れがあるだけでなく,テレサイェンスが実験科学者の経験と判断に合ったものになっていないこと
によるものである。現在,テレサイェンスは専門分野となりつつあり,画像情報を大幅に取り入れ
立体視が出来る顕微鏡下での実験や,動物の手術など高度の同時性および臨場性が必要な実験方法
が展開されている(9)。これらの成果は単に宇宙と地上という限られら空闇だけでなく,地上の遠隔
地での医療診断や機材の有効利用など,サイエンス全体が空間を越えて実験結果と情報を交換する
IO
時代になることを意味している。
21世紀当初,2001年!月29日にはスペースシャトルの108回目の飛行には,H本の宇宙ステー
ション建設飛行計画が予定されている。
おわりに
今回のスペースラブでの実験に際して,王FMによる装置の修復が出来なければ全ての実験機会
が失われるところであった。IFMを成功させたMr. HiebとMr。1{alsellに,また実験手順を大
幅に変更したにもかかわらず的確な実験操作を行ってくれたDr. ThomasとDr. Chiaoの諸氏に
またIFMの実施を強く支援してくれたNASAの関係者に深く感謝します。なお,この研究の一
部は宇宙化学研究所宇宙基地利用基礎実験費で賄われている。
〈参照文献〉
(!) K. Hannig and Hans−G. 1’{eid!ich, “Free−1一”}ow Electrophoresis: An lmportark Preparative
and Analytical Techniq#e for Bio}egy, Biochemistry aRd Diagnostics”, GIT VERLAG,
Darmsもadも,(!990)
(2) M. 」. Clifton and V. SaRchez, Chromatography (Tokyo), !6 (1995) 1−6
(3) O.Vesterberg, Acta Chem. ScaRd.23(1969)2653−2660
(4) S. Brenner, “The genetics of Caenorhabditis elegalts. GeRetics”, 77 (1974) 71−94
(5) R. K. Harman, Genetics. ln W. B. Wood (ed.), “The nematode Caenorhabditis elegans”,
Cold Sprlltg 1{arbor Laboratory, 1988, pp.17−4−5
(6) 」. Stt}ston, ln W. B. Wood (ed.), “rVhe nematode Caenorhabditis elegans”, Cold Spring
Harbor Laboratory, 1988, pp.123−155
(7)小林英三郎,石井直明,広川健。IML−2登載FFEUのBBMを用いた電気泳動一門2次国際微小
重力実験室計画(IML−2)の地上基礎実験一。第9回宇宙利用シンポジウム,粟京。151−!54(1992)
(8) 小林英三郎,石井直明,広川健,長岡俊治。第2次国際微小重力実験室計画GML−2)宇宙実験成
果報二会(予稿集)電気泳動を用いた線虫Celegansの染色体DNAの分離。 p.31−34(1995)
(9)渡邊悟ら,宇欝医学実験におけるテレサイェンス実験技術の開発。平成6年度文部省科学研究費補助
金研究試験研究成果報告書(1995)