法情報の基本構造と法的論点 明治大学法学部教授・弁護士 夏 井 高 人 Copyright © 2003 Takato Natsui, all rights reserved. Table of Contents はじめに 法情報学とは何か 法情報学の基礎となっている理念 法情報学の対象 法的論点 今後の展望 まとめ 2 法情報学とは何か 実質的な意味での法情報学 法情報(法の情報)について,情報論の立場から 考究する 法情報の利用のための手段を考究する あるべき法情報のあり方について考究する 形式的な意味での法情報学 「法情報学」という名称が付された授業科目 法律情報検索(情報検索学,図書館情報学) サイバー法(情報法) 3 法学の基礎となっている理念 情報の自由(Free Information) 民主主義の基本原理(Democracy) 法情報へのアクセス(Free Access) 法の構築(Legislation) 他の諸利益との調整 表現の自由(Free Speech) プライバシー(Privacy) セキュリティ(Security) プロバイダ責任(Provider Liability) 4 法情報が不明瞭であることは,法情報の不存在と同じ 派生原理:明確性の原則,説明責任,証跡の保持 封建時代の理念 よらしむべし,知らしむべからず 民主主義の時代の理念 情報の自由 法治主義(Rule of Law) 応用例:罪刑法定主義,告知と聴聞(Notice and Hearing),証拠開示請 求(Discovery) 5 法情報学の対象 立法情報 司法情報 行政分野の法情報 処理 入力 出力 フィードバック 6 例1:司法情報 入力=事件(紛争) 処理=裁判手続,ADRなど 出力=判決,仲裁決定など 処理 入力 出力 フィードバック 7 例2:立法情報 入力=立法要求(閣議決定,請願など) 処理=議会における法律案の審議 出力=法律の制定 処理 入力 出力 フィードバック 8 法的論点 法情報それ自体 存在しない情報またはアクセスできない情報に対 するアクセス権の確保 情報公開法が適用されない対象に対する開示請 求のための手段の確立 他の矛盾する利益との調整 プライバシーの権利などとの衝突 公共(Public)という概念の確立 なぜ私的利益を優先させないのか? 9 今後の展望 法情報は,特定の国の自国民のためのみに 存在するわけではない リスク評価の素材 国際関係樹立のための素材 法情報は,即時に利用できるものでなければ ならない ネットワークの利用 法情報のバージョン管理 背景事情,概念,用例に関する情報の提供 10
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