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名古屋ペイン2009(日本ペインクリニック学会第43回大会、第31回日本疼痛学会) ランチョンセミナー
2009年7月/名古屋国際会議場
共催●名古屋ペイン2009(日本ペインクリニック学会第43回大会、第31回日本疼痛学会)アボット ジャパン株式会社 丸石製薬株式会社
古家 仁 先生
奈良県立医科大学麻酔科学教室 教授
■Lecture1
セボフルランと脳機能:
神経科学研究から臨床麻酔への提言
西川 光一 先生
群馬大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座 麻酔神経科学 准教授
■Lecture2
脳波モニターからみた
セボフルランの麻酔作用へのオピオイドの影響
萩平 哲 先生
大阪大学大学院医学系研究科麻酔集中治療医学講座 講師
名古屋ペイン2009において、ランチョンセミナー
「術中覚醒予防のためのセボフルラン」が開催され
た。ペインクリニックにおいては目的とする神経部位に薬剤を適切に作用させることが重要だが、術中
覚醒の予防においても同様である。
本セミナーでは、群馬大学の西川光一先生より、覚醒や記憶に関与する脳の部位に対するセボフル
ランの作用について、大阪大学の萩平哲先生より、オピオイドを併用した麻酔管理における潜在性記憶
形成の可能性などについて講演いただいた。
このような麻酔薬およびオピオイドの脳に対する作用が十分に認識されることを通じて、術中覚醒予
防の取り組みが今後一層進むことを期待したい。
古家 仁
記載されている薬剤の使用にあたっては添付文書をご参照ください。
■Lecture1
セボフルランと脳機能:
神経科学研究から臨床麻酔への提言
西川 光一 先生
その結果、プロポフォール投与時は同用量でもノック
アウトマウスの方が野生型マウスよりLORRに至る率
群馬大学大学院医学系研究科
脳神経病態制御学講座
麻酔神経科学 准教授
が低く、同剤の鎮静作用は脳内GABA濃度に影響を受
けた3)。
一方、セボフルラン投与時の両者の用量反応曲線
はほぼ同様であり、セボフルランの鎮静作用は脳内
GABA濃度に影響されにくく、脳内GABA濃度の変動
GABAと鎮静作用の関係
(マウス)
幅が20∼30%程度であれば、約1.4%で安定した鎮
術中覚醒の原因の一つに、麻酔薬の作用における
静作用が得られることが示された(図1-①)4)。また、
個人差に伴う相対的浅麻酔がある。個人差が生じる
マウスの尾をつまんで動かなくなる反応( loss of
理由として、アルコール、不安、うつなどが麻酔薬抵抗
tail-pinch withdrawal reflex:LTWR)
で鎮痛作用を
性に関与しており1)、このような状態では脳内の抑制
4)
比較した場合でも同様の結果が得られた
(図1-②)
。
性 神 経 伝 達 物 質γ-アミノ酪 酸
(GABA)
濃 度 が25∼
手術患者は、不安、ストレス、痛みなどによって脳の
50%減少している2)ことが考えられる。つまり、脳の興
興奮と抑制のバランスが崩れている可能性があるた
奮と抑制のバランスが崩れると、麻酔薬の感受性が変
め、鎮静作用が脳内GABA濃度に影響されやすい麻酔
化すると推測される。
薬では個人差が生じやすいと考えられる。
我々は、GABA合成酵素のGAD65遺伝子を破壊し、
脳内GABA濃度を通常より約25%減少させたノックア
脳に対するセボフルランの作用
ウトマウスと野生型マウスを用いて、麻酔薬投与量と
横臥状態からの立直り反射の消失(loss of righting
1.視床への鎮静作用
reflex:LORR)
との用量反応曲線を作成し比較した。
ラットを対象に、セボフルラン1.4%にて麻酔し、視
図1 GABA濃度の低下とセボフルランの作用(マウス)
❶ LORR
❷ LTWR
(%)
100
(%)
100
50
50
0
0
1
2
セボフルラン濃度(%)
3
0
0
1
2
3
セボフルラン濃度(%)
野生型マウス GAD65ノックアウトマウス
(群馬大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座麻酔神経科学 西川光一)
01
LUNCHEON SEMINAR
床の各部位にニコチンを投与した際のニコチン性ア
術中覚醒予防のためのセボフルラン
図2 麻酔薬による脳の血流低下〈PET〉
セチルコリン受容体活性化による覚醒の程度につい
て調べた研究がある。同研究では、ニコチン投与部位
❶セボフルラン
(呼気終末濃度1.5%)
血流低下部位:
視床、小脳
によって反応が異なり、central medial thalamus
(CM)
への投与時に完全な覚醒が認められることから、低濃
度のセボフルランの作用部位として視床のCMが重要
であると結論している5)。
ヒトにおける麻酔薬の作用部位については、BIS値
❷プロポフォール
(3.7μg/mL)
血流低下部位:
大脳皮質
40を維持するよう麻酔薬を投与した際の脳血流の変
化を調べた研究があり、セボフルラン呼気終末濃度
1.5%投与時は視床および小脳、プロポフォール作用
部位濃度3.7μg/mL投与時は大脳皮質の血流がそれ
6)
ぞれ低下した
(図2)
。
色のついた部分は有意な低下がみられた部位(p<0.05)
statistical parametric mapping softwareにて統計解析
これらの研究から、BIS値が同程度でも麻酔薬の種
類によって作用部位が異なることが示唆された。セボ
(文献6より引用)
フルランは、視床への血流を低下させ、大脳皮質を抑
制するのかもしれない。
図3 LTPに対するセボフルランの作用
(ラット)
術中のエピソード記憶の残存と、これに伴う精神障
害を回避するためには、エピソード記憶に深く関与し
ている海馬や側頭葉の抑制が求められる。
そこで我々は、ラットの脳のスライス標本を用いて、
海馬を高頻度刺激
(100Hz、1秒)
後、1時間以上にわた
fEPSP slope(% of baseline)
200
2.エピソード記憶に関与する海馬の抑制作用
対照群(n=9)
150
100
セボフルラン0.5%投与群(n=6)
50
る長 期 的 なシナプス伝 達 効 率 の 増 強
(long-term
potentiation:LTP)
の程度に対する麻酔薬の影響
を検討した。その結果、セボフルラン0.5%投与群は対
照群に比べてLTPの程度が低く、海馬シナプス可塑性
0
-10
0
10
20
30
40
経過時間(分)
テタニック刺激
(100Hz、1秒)
7)
を完全に抑制した
(図3)
。
(文献7より引用)
したがって、セボフルランは低濃度でも海馬のLTP
を抑制することで、術中のエピソード記憶の抑制、つま
8)
低減しており
(図4)
、情動記憶に関与するこれらの神
り健忘作用を期待できる可能性が示された。
経回路が低濃度のセボフルランによって抑制されるこ
とが認められた。
3.情動記憶に関与する扁桃体の抑制作用
条件恐怖反応などのような情動記憶において中心
的役割を担う扁桃体に対するセボフルランの作用は、
術中覚醒予防のために
男性ボランティア11名を対象に酸素およびセボフルラ
術中覚醒に関する臨床研究の一つに、BISモニター
ン0.25%を20分間吸入させ、その間の脳の活動をPET
を使用した麻酔管理症例2,000例中、術中覚醒の疑い
スキャンで調べた研究で検討されている。同研究で、
16例、そのうち確定9例が認められ、これらの80%は
セボフルラン0.25%投与群は対照群に比べて、右半球
BIS値60以下で生じたことから、同モニターは術中覚
の扁桃体から海馬、青斑核から海馬への入力が大きく
醒の発生頻度を減らすことはできないと報告したも
02
図4 扁桃体と海馬に対するセボフルランの影響
❶対照群
❷セボフルラン0.25%投与群
L
R
NBM NBM
Amyg
Amyg
L
R
NBM NBM
Amyg
Amyg
ThaI
Hipp
❸①と②の差
L
R
NBM NBM
Amyg
Amyg
ThaI
Hipp
Hipp
LC
ThaI
Hipp
Hipp
LC
Hipp
LC
0.01-0.30
0.31-0.60
0.61-1.00
対象:男性ボランティア11名
NBM:マイネルト基底核
Amyg:扁桃体
ThaI:視床下部
Hipp:海馬
LC:青斑核
扁桃体から海馬への入力抑制
(文献8より引用)
表1 術中覚醒のリスクファクター
また、術中覚醒のリスクファクターとして、吸入麻酔
薬を使用しない麻酔がオッズ比3.20と最も高いとする
(多変量解析)
10)
報告が見られる
(表1)
。
吸入麻酔薬を使用しない麻酔
OR 3.20
術中覚醒を予防するためには、聴覚の遮断、鎮痛、
女性
OR 3.08
視覚の遮断が重要であるため、セボフルランのように
麻薬性鎮痛薬の使用
OR 2.12
作用が脳内GABA濃度の変動に影響されにくく、健忘
筋弛緩薬の使用
OR 2.28
作用を期待できる薬剤を選択するなどの工夫が求め
られる
(図5)
。
(文献10より引用)
まとめ
図5 術中覚醒予防のための臨床的工夫
セボフルランは、
視床や小脳の抑制が強く、
エピソー
ド記憶の回避という点で有利な海馬シナプス可塑性
・聴覚の遮断
・鎮痛
・視覚の遮断
の抑制作用をもつ。また低濃度で、情動記憶に関与
する扁桃体を抑制する。脳内GABA濃度に左右されに
鎮静
セボフルラン
(個人差)
プロポフォール
健忘
くい鎮静・健忘作用を有するセボフルランは、術中覚
醒予防の一助となりうる麻酔薬の一つと言えよう。
(?)
■文献
ミダゾラム、ケタミン
のがある9)。
BISは前頭葉の脳波解析に基づいているため、視床
から大脳皮質領域への鎮静作用の指標にはなり得て
も、辺縁系、海馬、扁桃体等が関与している術中記憶
や健忘の指標としては不適切であることを本研究は示
している。
03
1)Cahill L, et al.: Trends Neurosci 1998 ; 21 : 294-9.
2)Behar KL, et al.: Am J Psychiatry 1999 ; 156 : 952-4.
3)Kubo K, et al.: J Pharmacol Exp Ther 2009 ; 329 : 592-9.
4)Nishikawa K, et al.: submitted.
(2009)
5)Alkire MT, et al.: Anesthesiology 2007 ; 107 : 264-72.
6)Kaisti KK, et al.: Anesthesiology 2003 ; 99 : 603-13.
7)Ishizeki J, et al.: Anesthesiology 2008 ; 108 : 447-56.
8)Alkire MT, et al.: Proc Natl Acad Sci U S A 2008 ; 105 : 1722-7.
9)Avidan MS, et al.: N Engl J Med 2008 ; 358 : 1097-108.
10)Domino KB, et al.: Anesthesiology 1999 ; 90 : 1053-61.
LUNCHEON SEMINAR
術中覚醒予防のためのセボフルラン
■Lecture2
脳波モニターからみた
セボフルランの麻酔作用へのオピオイドの影響
萩平 哲 先生
図1 Response Surfaceの概念
、
拍
脈 圧
血
麻酔概念の変化における鎮静と鎮痛
麻酔深度の増加
無反応となる確率の増加
大阪大学大学院医学系研究科
麻酔集中治療医学講座 講師
Hy
po
oti
c
動
体
近年、複数の研究1、2)によって吸入麻酔薬に鎮痛作
拡張して鎮静と鎮痛を組み合わせ、挿管、皮切、呼名
静
鎮
答
応
応
反
用がほとんどないことが明らかとなり、MACの概念を
挿管
id
Opio
鎮痛
皮切
呼名
刺激
の各刺激に対して脈拍・血圧、体動、応答という各反
応の確率をグラフ化するresponse surfaceという概念
(文献3より引用改変)
3)
(図1)
が提唱されている。
しかし、皮切に対する体動は麻酔薬の脊髄への作用
は同等ではない4)。
を、呼名に対する応答は麻酔薬の大脳皮質への作用
また、図3に見るようにMAC - BAR、MACおよび
を示しており、MACとMACawakeは異なる作用部位へ
MACawakeのisobologramは、フェンタニル濃度が
の反応を示すため、前述の概念は異なる刺激と反応を
6ng/mL程度以上になると順序が変化し、循環動態は
同一にとらえる点で問題がある。図2のようにフェンタ
安定しているのに覚醒するといったことが生じ得る5)。
ニル併用時のセボフルランのMACおよびMACawake
ここに、術中記憶の抑制に必要な麻酔薬濃度を示す
は変化のあり方が異なるうえ、例えばMAC95となる両
MACmemoryなる概念を加えると、循環動態の安定、
剤の組み合わせは無数にあるが、それらは生理学的に
意識消失
(無意識)
および無記憶などを得るための鎮
図2 セボフルランのMAC・MACawakeとフェンタニル濃度
MACawake
A
1.0
MAC
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
B
3.5
セボフルラン濃度︵%︶
セボフルラン濃度︵%︶
言葉による指示に反応しない
言葉による指示に反応する
MAC awake
MAC awake95
MAC awake5
皮切に対する体動なし
皮切に対する体動あり
MAC
MAC 95
3.0
2.5
これらは
生理学的に
同等ではない
2.0
1.5
1.0
0.5
0
2
4
6
8
10
フェンタニル濃度(ng/mL)
12
14
16
0.0
0
2
4
6
8
10
12
フェンタニル濃度(ng/mL)
(文献4より引用改変)
04
図3 異なるIsobologramの重ね合わせ
ル0∼15ng/mL投与群と非投与群に分け、両群とも
にセボフルラン0∼6%を投与し、OAA/S(observer s
4.0
assessment of alertness/sedation)
スコア0∼2にお
セボフルラン濃度︵%︶
MAC-BAR
MAC
MACawake
3.0
ける 聴 性 誘 発 電 位
(auditory evoked potential:
AEP)
の 評 価 尺 度auditory evoked potential index
(AAI)
値を比較した研究では、同じ鎮静度でもレミフェ
2.0
6)
※。
ンタニル投与群の方がAAI値が高い
(図4)
レミフェ
MACmemory?
1.0
0.0
ンタニルとプロポフォール併用例においても、レミフェ
ンタニル濃度が高いほど無意識を得るのに必要なプ
0
2
4
6
8
10
フェンタニル濃度(ng/mL)
ロポフォール濃度は低下するが、AEPの評価尺度であ
るauditory evoked potential index( AEPex)
値は高く
なった7)。
(文献5より引用改変)
したがって、オピオイド併用時は無意識でも音刺激
静・鎮痛の組み合わせは限られ、レミフェンタニルに
に対する反応が残っている可能性があると考えられる。
より高濃度のオピオイド投与が可能となった現在で
さらに、48例を対象にセボフルラン1.5%で維持し、
は、一定濃度の吸入麻酔薬が不可欠であることが理解
執刀前、フェンタニル3μg/kg投与後、執刀後におけ
される。
る平均BIS値を比較した研究では、いずれも45程度と
8)
変化が認められず、SEF95値も同様であった
(図5)
。
フェンタニル3μg/kg程度のオピオイドの併用は無意
意識に対するオピオイドの作用
識が得られていても脳波には影響しないことが示唆さ
無意識を得るための麻酔薬とオピオイドのバランス
れた。
を考える際は、意識に対するオピオイドの作用を考慮
無意識はunconsciousnessあるいはunresponsiveness
することが求められる。
とも表現されるが、全身麻酔の目的とすべきは前者
24名の成人ボランティアを対象に、レミフェンタニ
の中枢が抑制されて意識がない状態である。刺激に
対 する応 答 の 消 失をもって判 断され た 無 意 識 は
図4 OAA /SスコアとAAI̶オピオイドの影響
unresponsivenessであり、オピオイド併用時は無意識
n=24
100
80
でも音刺激に脳が反応すればunconsciousnessではな
い場合があることを認識すべきである。
図5 フェンタニルとBIS値・SEF95値
AAI
60
セボフルラン1.5%投与
n=48
60
40
50
20
40
0
30
0
1
2
20
OAA/ S Score
レミフェンタニル非投与群
レミフェンタニル投与群
mean±SD
対応のない両側 t 検定
OAA /Sスコア
2:軽い刺激または揺さぶりに対してのみ反応する
1:軽い刺激または揺さぶりに対しても反応しない
0:侵害刺激に反応しない
(文献6より引用)
05
10
0
コントロール
(執刀前)
フェンタニル3μg/kg
投与後
BIS値 SEF95値
執刀後
mean±SD
(文献8より引用)
※セボフルランの承認された用法・用量とは異なります。使用上の注意等、詳細につきましては製品添付文書をご参照ください。
LUNCHEON SEMINAR
術中覚醒予防のためのセボフルラン
以上の検討から、高濃度のオピオイドは、侵害刺激
11)
記憶が形成される可能性を示唆している
(図6)
。本
による覚醒を減少させるが、脳が音刺激に反応してい
研究に対し、潜在性記憶が術後の不安や抑うつ等に関
ても刺激に応答しないため意識の有無が不明であり、
与し得るとの指摘12)もあり、潜在性記憶の抑制は重要
ある程度以上の麻酔薬濃度を維持しなければ潜在性
である。
記憶が残る可能性があると言える。
潜在性記憶の予防策は、音や痛みの脳への入力と
脳での応答の抑制である。痛みは鎮痛薬や神経ブロッ
クによって、音はAEPを抑制できる濃度の麻酔薬で抑
潜在性記憶の形成と予防
制する。
術中記憶には顕在性記憶と潜在性記憶があり、前者
は無意識を得られる麻酔薬濃度でほぼ抑制できるが、
後者は無意識下でも形成され、抑制できる麻酔薬濃度
まとめ
は現在明らかではない。
術中覚醒を予防するためには、オピオイドは術中の
潜在性記憶に関する研究の一つでは、ボランティア
侵害入力を遮断するが鎮静作用はあまりなく、刺激に
10名を対象に全身麻酔中に耳元でささやいた言葉に
対する応答がないことが必ずしも無意識であるとは限
ついて、覚醒後に顕在性記憶はなかったが、催眠状態
らない点に注意を要する。また、無意識下でも潜在性
において4名は言葉を、4名は話しかけられたことを思
記憶は形成され得るため、潜在性記憶を抑制し得る麻
い出している9)。また、33名を無作為に2群に分け、術
酔薬濃度の維持が求められる。
中に
「術後回診時に耳をつまむ」
よう指示したグループ
は、同行動をとった患者の比率が対照群より有意に高
かったという報告10)もある。これらの研究は、全身麻
酔中でも音刺激が潜在性記憶として残存し得ることを
示している。
48名を対象に6文字の単語60種類を麻酔中にヘッド
ホンで聞かせ、術後に単語の最初の3文字を示し残り
を補わせるテストを行った研究では、いずれのBIS値に
おいても顕在性記憶はほとんど認められなかった。し
かし、潜在性記憶はBIS値が高いほど増えるとともに、
40以下でも残存したことから、深い鎮静度でも潜在性
■文献
1)
Segawa H, et al.: Anesthesiology 1998 ; 89 : 1407-13.
2)
Zbinden AM, et al.: Anesthesiology 1994 ; 80 : 261-7.
3)Stanski DR, et al.: Miller s Anesthesia 6th edition, Elsevier,
2005, 1236-9.
4)
Katoh T, et al.: Anesthesiology 1998 ; 88 : 18-24.
5)
渋谷欣一, 他 : バランス麻酔:最近の進歩 改訂第2版. 克誠堂
出版, 東京, 2005.
6)
Manyam SC, et al.: Anesthesiology 2007 ; 106 : 472-83.
7)
Schraag S, et al.: Anesth Analg 2006 ; 103 : 902-7.
8)
Hagihira S, et al.: Anesthesiology 2004 ; 100 : 818-25.
9)
Levinson BW : Br J Anaesth 1965 ; 37 : 544-6.
10)
Bennett HL, et al.: Br J Anaesth 1985 ; 57 : 174-9.
11)
Iselin-Chaves IA, et al.: Anesthesiology 2005 ; 103 : 925-33.
12)
Andrade J : Anesthesiology 2005 ; 103 : 919-20.
図6 BIS値と記憶
顕在性記憶
0.4
n=48
潜在性記憶
0.35
Memory score
0.3
0.25
0.2
0.15
ベースライン
麻酔を受けていない
ボランティアのスコア
0.1
0.05
0
21-40
41-60
61-80
21-40
BIS値
41-60
61-80
mean±SD
(文献11より引用)
06
2009年10月作成