水深 33.6m の 蛍光 水面 486nm 441nm 435nm 405nm 33.6m 水の

海上技術安全研究所報告
潤滑油
軽 油
第6巻
A重油
蛍光強度(arbit.)
700
600
500
400
300
200
100
0
420
440
460
480
500
波長(nm)
図4.10 油の識別例
(3) 海面下の油の検知
海面に浮かんだ油の検知は問題なく可能であるが、
荒天時に油が海面下に潜り発見できないといわれて
いる 15) 、また、エリカ号重油流出事故では事故後に
海底に沈んだ油が潜水艇で確認されている。
355nmレーザビーム
φ16m
φ6m
33.6m
深海水槽
ターゲット
405nm
水のラマン散乱
486nm
光
第4号
特集号
(平成 18 年度)
基調論文
45
YAG レーザの第2高調波532nm であるグリーンレ
ーザは海水による減衰が小さく海底地形探査に使わ
れている。文献調査や測深実験により、以下の検討
結果が得られた。
①グリーンレーザは海水の濁度によって測定でき
る水深が異なる。
②海面下の潜った油は海底からの反射信号との差
から計測可能である。
③グリーンレーザでは蛍光情報が得られないため、
海底に沈んだ油は泥などとの判別が難しい。
そこで、紫外レーザ355nm が利用できれば水深と
蛍光を同時に計測することができる。その可能性を
調べるため、深海水槽において観測実験を行った。
水槽の底に石英ガラスと真鍮で構成される容器に収
納されたプリンター用紙をターゲットとして、紫外
レーザビームによる蛍光と水深の計測を行った。図
4.11にその結果を示す。これは水深33.6m における
計測例で、清水の場合、ターゲットの蛍光が観測さ
れることが確認された。これは、荒天時に海面下に
潜った油や沈んだ油に関する検知の可能性を示すも
のである。
4.1.3 フォトマル受信機の開発
海面反射レーザ散乱光をトリガー信号として用
いる計測系において、計測系の各要素の持つ時間遅
れ100~300ns によるタイミング不良を解消し、レー
ザ入射から数 ns で発光する蛍光の画像を鮮明に計
測するためのフォトマル受信機を開発した。
フォトマル受信機を使用し、受光系の自動計測を
検証した。受光系は、フォトマルセンサ、フォトマ
ル受信機、多波長蛍光計測装置で構成される。実験
は当所構内の道路上で、ベニア板に張り付けたプリ
ン タ ー 用 紙 を タ ー ゲ ッ ト と し 、 観 測 距 離 100~350m
で実施された。これは、ヘリコプターへの搭載を模
擬した実験である。レーザは単独制御とし、内部ト
33.6m
水面 435nm
図4.11
水深 33.6m の
蛍光
441nm
水深33.6m における蛍光の計測例
図4.12
フォトマル受信機による自動計測
(445)
46
リガ4Hz でビームが発射される。ターゲットからの
ビーム反射光をフォトマルセンサが受け、フォトマ
ル受信機による遅延パルス信号で多波長蛍光計測装
置の自動計測が円滑に実施されるか検証された。図
4.12に計測画像例を示す。これは、観測距離350m、
50回、連続的に記録された例で自動計測が可能であ
ることが確認された。
ELECTRICAL RACK
GPS
CABIN RACK
4.1.4
高度化のまとめ
高度化された装置の主な仕様を表 4.2 に示す。
表 4.2
高度化された装置の仕様
レーザ
仕様
YAGパルスレーザ(BigSky CFR400)
波長=THG(355nm)、出力=60mJ
パルス周波数=1~10Hz、パルス幅=13ns
ビーム広がり角=4mrad
①レンズ;4個
透過率=70%以上(400~700nm)
絞り=1.2~C、焦点距離=50mm
多波長蛍光計測装置 ②ICCDカメラ;1台(浜松ホトニクス C7972)
ゲート開放時間=20ns~連続
感度ゲイン=1~64
光電面有効面積=18mm
有効画素=1344×1024
①計測用基準クロック周波数;100MHz
②シャッターディレイ時間
設定時間=10ns~1,000ns
設定分解能=10nsステップ
③出力パルス
フォトマル受信機 設定パルス幅=10ns~1,000ns
設定分解能=10nsステップ
出力レベル=TTL、50Ω
④距離測定
測定可能範囲=120m以上
測定分解能=3m
高度化によって、以下の成果が得られた。
①油類や29種の有害液体物質に関するデータベース
が構築された。
②多波長蛍光計測装置の検証により、蛍光情報と背
景情報に関する4波長画像が同時かつリアルタイ
ムに取得されることが確認された。また、水深
33.6m の蛍光観測に成功し、荒天時の海面下に潜
った油や沈んだ油観測の見通しが得られた。
③フォトマル受信機の検証により、自動観測への
見通しが得られた。
4.2 ヘリコプター搭載型観測システム
ヘリコプターによるシステムの観測性能を検証す
るため、搭載するための架台を製作した。その概要
を図 4.13 と写真 4.1 に示す。架台は、①観測用機器
を搭載するためのベリーラック、②制御機器を搭載
するためのキャビンラック、③バッテリーと接続し
全ての機器へ電源を供給するための電源ラックで構
成される。
(446)
BELLY RACK
図 4.13
ヘリコプター搭載架台の概要
フォトマル受信機
フォトマル受信機
レーザー
レーザ
4波長蛍光装置
多波長蛍光計測装置
写真 4.1
ベリーラックへの搭載状況
ベリ ーラ ック には 、レ ーザ ヘッ ドお よび 同電 源、
フォトマルセンサおよび同プリアンプ、フォトマル
受信機、多波長蛍光計測装置および同コントローラ、
ジャイロ、下方監視カメラ(可視)、またキャビンラ
ックには、画像記録用ノートPC、GPS受信機、
GPS・ジャイロデータ収録装置、パルスジェネレ
ータ、レーザコントローラ、モニタ、さらに電源ラ
ックには 28V/100V 変換インバータ2台が搭載され
ている。
GPSアンテナはヘリコプター機内の天窓に設置
される。
これらを装着するヘリコプターの型式はアエロス
パシアル式AS355F2型である。ヘリコプター
に搭載する新たな機器の仕様を表 4.3 に示す。
4.3 飛行観測実験によるシステムの検証
4.3.1 飛行観測実験による基本性能の検証
(1) 渡瀬遊水池における観測
飛行観測実験は平成16年1月に渡瀬遊水池(海
抜約 13m)で2日間行われた。観測対象物は水のラ
マン散乱光と水中植物プランクトン等の蛍光物質と
した。飛行高度 150m~300m と飛行速度 5kt~100kt
およびICCDカメラの露光時間(I.I.のゲー
ト幅;100ns~1,000ns)およびI.I.の感度ゲイ
ンを観測性能検証のパラメータとした。観測機の離
海上技術安全研究所報告
第6巻
陸風景を写真 4.2 に示す。
観測の結果、微弱光である水のラマン散乱光と水
中の蛍光物質が計測された。しかし、飛行時間の経
過に伴って欠落データが増加することが判明した。
そのため、2日目の観測実験では手動観測に切り替
えて実施したが、同様の結果であった。
飛行観測実験終了後、機器の総点検を行い、以下
の問題点が明らかになった。
表 4.3
ヘリコプターおよび機器の仕様
仕 様
機器名
ヘリコプター
(AS355F2型)
ジャイロ
GPS
搭載重量;400kg~600kg
巡航速度;Max.110knot
航続時間;2.5~3.0hour
ピッチ;-90~+90度
ロール;-90~+90度
方 位;-180~+180度
受信時間間隔;0.2秒
GPS時間;hhmmss、速度;knot
方位;-180~+180度(北0度)
その他;緯度、経度、高度(m)
上記データの記録他
GPS・ジャイロデータ収録装置 CPUタイム、データ間隔時間
下方監視カメラ
可視CCDカメラ
ベリーラック
写真 4.2
第4号
特集号
(平成 18 年度)
基調論文
47
①ヘリコプターの飛行時の振動により、レンズの
焦点距離が∞から 1.5m に変化した。その結果、焦点
がぼやけたシグナル(水のラマン散乱光)しか観測
されなかった。
②ベリーラック内のレーザ電源のノイズがフォト
マルセンサのプリアンプへ影響を与えた。その結果、
プリアンプからフォトマル受信機へ出力する信号に
ノイズが付加され、ICCDカメラの露光開始時間
が不安定になった。
③レーザ出力が 60mJ/パルスから 20mJ/パルスへ低下
していた。
以上の問題点を解決するため、以下の対策を講じ
た。
①の振動対策として、レンズの焦点距離が∞から
1.5m に変化しないように設定部を金具で固定した。
②のノイズ対策として、フォトマルセンサとプリア
ンプを離すことは信号系にあまり好ましくないが、
プリアンプをキャビン内に設置することとした。ま
た、プリアンプのノイズカット機能(レーザのQス
イッチ信号立ち上がりから 750ns までの間で 120mV
以下の受信信号をカット)を付加した。
③の出力低下問題を解決するため、メンテナンスを
行い 34mJ/パルスまで回復した。
以上の対策を講じて地上実験で、ノイズ対策の効
果が昼夜、雨天時に検証された。観測状態を写真 4.3
に示す。装置はベリーラックを 90 度回転させて設置
された。観測は、水平方向約 150m 先の樹木をターゲ
ットとした。雨天時の観測例を図 4.14 に示す。観測
されたスポットは樹木の蛍光である。対策を講じた
結果、昼夜、雨天時においても自動観測ができるこ
とが確認された。
(2) フランス沖における観測
フランス CEDRE との研究協力協定に基づき、平成
16年5月にフランス沖散布油の観測・防除トレー
ニング実験(DEPOL04) 16) に参加し、観測システムの観
測性能を検証した。
観測機の離陸風景
多波長蛍光計測装置
405nm
486nm
435nm
441nm
雨天観測
355nmレーザ
写真 4.3
ノイズ対策検証実験の観測状態
図 4.14
ノイズ対策後の自動観測例
(447)
48
観測の結果、以下の成果が得られた。
① レ ー ザ 出 力 34mJ/パルス、 I . I . の ゲ ー ト 幅
400ns、I.I.のゲイン 48、飛行高度 300m、飛行
速度 5kt で海水のラマン散乱光が 200 枚の連続画像
として取得された。
②レンズに施 した 振動 対策 (振動に よる レンズの
焦点距離変動)に問題がないことが確認された。
③ICCD カメラのみによるパッシブ観測を行い、図
4.15 に示す流出油画像(飛行高度 220m、飛行速度
5kt、I.I.のゲイン 48)が得られた。
④アクティブ観測では、海水のラマン散乱光が連
続的に全て観測されたが、油を示す顕著な蛍光スポ
ットは図 4.16 の1例(レーザ出力 34mJ/パルス、I.
I.のゲート幅 1μs、I.I.のゲイン 50、飛行
高度 220m、飛行速度 100kt)のみであった。観測後
の解析で薄膜油の蛍光が4データ程取得されている
ことが判明した。飛行高度 220m、飛行速度 100kt
においても海水のラマン散乱光の連続画像が取得で
きることが確認された。
405nm
486nm
435nm
441nm
図 4.15
散布油のパッシブ観測画像(丸囲)
405nm
486nm
435nm
441nm
図 4.16
(448)
散布油のアクティブ観測画像
油のパッシブ画像や水のラマン散乱光・蛍光など
のデータが収集でき最小限の目標は達成した。
また、観測時において以下のソフトウエア上の問
題点が明らかになった。
① 画像取得のモニタリングができないため、油
が計測されたか再生し確認しなければなら
ない。
② 取得した画像の記録にファイル名を手動で
入力する必要があり、誤入力や時間の浪費と
なった。
③ 記録が取得画像を一時記録したRAM
(Random Access Memory)からHDDへ記録
するのみの方式であった。
④ 観測機器の設定記録が自動でないため、メモ
を取る必要があり、未記入や時間浪費につな
がった。
⑤ フランスにおける実験時では、GPSと画像
収録PCが統合されていなかった。
4.3.2 飛行観測実験による総合検証実験
飛 行 観 測 実 験 17) に よ る 基 本 性 能 の 検 証 で 得 ら れ
た問題点に対して講じた対策を以下に示す。
①画像取得時のモニタリングを可能にした。
②取得データのファイル名を自動生成方式とし、フ
ァイル名は画像収録PC時間の年月日時分とした。
③画像記録方式を自動生成ファイル名でHDDへ直
接記録できる方式も追加した。
④GPS と画像収録PCを統合し、位置情報のモニタ
リングがPC側で行えるようにした。
⑤GPS 情報、画像収録 PC 時間、機器設定条件等を記
録する管理ファイル(txt)を自動生成できる機能を
追加し、汚染マップを作成できるようにした。
各観測実験を踏まえた改良点や追加した機能等を
総合的に検証するため、平成17年1月と3月に本
田エアポート(桶川、海抜約 50m)で飛行観測実験
を実施した。下方監視カメラで撮影したターゲット
を図 4.17 に示す。ターゲートは 1.8m 角容器に入れ
た各 20 リットルの軽油、灯油、1,2 ブチレングリコール
である。
(1) パッシブとアクティブ観測
本田エアポートで飛行高度(絶対高度=飛行高度
-海抜高度)と飛行速度をパラメータとして飛行観
測実験を実施した。
パッシブ観測では、絶対高度212m、飛行速度47kt
でターゲットを補足できることが確認された。
アクティブ観測では、パッシブ観測で得られたタ
ーゲットの位置情報を基にその上空からホバリング
でターゲットを観測し、図4.18に示すように絶対高
度132m において、日中の強い背景光下においても鋭