試験報告 けい酸塩系表面含浸材の性能試験 (発行番号:第 12A1428 号) この欄で掲載する報告書は依頼者の了解を得たものです。 1.試験の内容 株式会社 エバープロテクトから提出されたけい酸塩系表 面含浸材「エバープロテクト」を塗布したモルタル基板につ いて,加圧透水性試験を行った。 2.試 料 試料は,けい酸塩系表面含浸材である。けい酸塩系表面 含浸材の概要を表 1 に示す。 表 1 けい酸塩系表面含浸材の概要 (依頼者提出資料) 一 般 名 称 けい酸塩系表面含浸材 商 品 名 エバープロテクト 主 成 分 けい酸ナトリウム,けい酸カリウム 者 株式会社 エバープロテクト 製 造 業 写真1 試験体の外観(搬入時) 3.2 含浸材の塗布 含浸材の塗布は,建材試験センター職員の立合いのもと 3.試験方法 で行った。塗布方法は刷毛塗りで,塗布回数は 2 回(塗り重 加圧透水性試験は,土木学会規準 JSCE-K 572[けい酸塩 系表面含浸材の試験方法(案) ]の 6.12 加圧透水性試験に準 ね間隔 3 時間) ,塗布量は 1.88g(標準塗布量:240g/m2 )と した。塗布状況を写真 2 に示す。 じて行った。詳細を以下に示す。 3.1 試 験 体 試験体は,モルタル基板にけい酸塩系表面含浸材を含浸 させた含浸試験体及び比較用の無塗布原状試験体である。 モルタル基板の概要を表 2 に,外観を写真 1 に示す。 表 2 モルタル基板の概要 (依頼者提出資料) 名 称 硬化モルタル 寸 法 φ 100mm × 100mm 打 込 日 平成 24 年 10 月 9 日 搬 入 日 平成 24 年 11 月 12 日 数 16 量 原状試験体:3 体 写真 2 塗布状況 含浸試験体:3 体 建材試験センター 建材試験情報 9 ’ 13 3.3 養 生 試験体は,温度 20 ± 2℃,相対湿度 80%以上の試験室で 14 日間養生したのち,温度 20 ± 2℃,相対湿度( 60 ± 5)% の試験室で 14 日間養生を行った。 3.4 加圧透水性試験 ( 1)試験体の設置方法 試験体は,図 1 に示すように,含浸面または原状面に水圧 がかかるよう,エポキシ樹脂系接着剤及びロジンとパラ フィンの混合物(質量比 1:1 )を用いて圧力容器に設置し 図 3 水の浸透深さの測定位置 たのち,試験に供した。 図 1 試験体の設置状況 写真 3 試験状況 ( 3)水の浸透深さ及び水の浸透深さ比の算出 ( 2)透水試験 透水試験は,圧力容器上部の空間に水を注入し,図 2 に示 すように,窒素ガスを用いて 0.50 ± 0.05MPa の水圧を 48.0 水の浸透深さは,試験体 3 体の平均値とした。水の浸透 深さ比は,次式によって算出した。 ± 0.5 時間加えた。加圧終了後,試験体を割裂し,図 3 に示 す位置で水の浸透深さをノギスを用いて 0.1mm のけたまで χ= 測定した。 試験状況を写真 3 に示す。 d × 100 db ここに, χ:水の浸透深さ比(%) d:含浸試験体 3 体における水の浸透深さの平均値 ( mm) db:原状試験体 3 体における水の浸透深さの平均値 ( mm) 4.試験結果 加圧透水性試験結果を表 3 に,試験結果の詳細を表 4 に, 水の浸透状況を写真 4 及び写真 5 に示す。 なお,各試験体の拡散係数を参考として付録に示した。 表 3 加圧透水性試験結果 図 2 透水試験の概略図 建材試験センター 建材試験情報 9 ’ 13 試験体 水の浸透深さ mm 原状試験体 16.1 含浸試験体 8.5 水の浸透深さ比 % 52.80 17 表 4 加圧透水性試験結果 試験体 原状試験体 含浸試験体 番号 水の浸透深さ mm a b c d e f g h i 平均値 No.1 6.5 17.2 17.1 16.7 16.7 16.3 14.6 14.3 11.0 14.5 No.2 9.1 15.0 15.8 17.9 16.8 16.7 16.3 19.3 20.6 16.4 No.3 14.1 16.9 18.5 17.3 17.0 16.8 15.7 19.3 21.2 17.4 No.1 8.6 10.9 10.3 9.9 9.0 8.5 8.6 7.5 9.5 9.2 No.2 6.5 8.1 10.9 9.4 10.0 9.5 8.2 8.0 8.5 8.8 No.3 9.5 8.3 6.7 7.9 8.5 7.0 6.1 6.7 6.7 7.5 平均値 16.1 8.5 6.付 録 各試験体の拡散係数を付表 1 に示す。 なお,拡散係数は,水の浸透深さの平均値を用いて,次式 によって算出した。 βi 2 =α Dm2 4tξ2 ここに, βi2:拡散係数( cm2/s) 写真 4 水の浸透状況(原状試験体) Dm :水の浸透深さ( cm) t :水圧を加えた時間( s) α :水圧を加えた時間に対する係数 ( 48 時間では,175.7) ξ :水圧に対する係数 [ 0.5MPa(約 5kgf/cm2 )では,0.905] 付表 1 各試験体の拡散係数 試験体 写真 5 水の浸透状況(含浸試験体) 原状試験体 5.試験の期間,担当者及び場所 期 間 平成 24 年 12 月 11 日から 平成 24 年 12 月 13 日まで 担 当 者 材料グループ 統括リーダー 統括リーダー代理 中 里 侑 司 場 所 18 含浸試験体 番号 水の浸透深さ mm 拡散係数 -4 2 × 10 cm /s No.1 14.5 6.53 No.2 16.4 8.35 No.3 17.4 9.40 No.1 9.2 2.63 No.2 8.8 2.40 No.3 7.5 1.75 鈴 木 敏 夫 岡 田 裕 佑(主担当) 中央試験所 建材試験センター 建材試験情報 9 ’ 13 コメント・・・・・・・・・・・・・・・・ コンクリート構造物は,高度経済成長期を境に多数建設 表 土木学会規準で規定されている試験項目 され,人々の生活を支える重要な役割を担っている。一方, ・反応性確認 1980 年代前半から塩害やアルカリシリカ反応等の早期劣化 問題が顕在化したため,コンクリート構造物の適切な設計, ・乾燥固形分率 施工はもとより,効果的かつ経済的な維持管理が求められ ている。 ・種類判定 コンクリート構造物の維持管理は,構造物の調査や診断 ・外観観察 を行い,補強や補修等の対策を検討する方法が一般的であ り,補強は構造物の力学的な性能低下の回復および向上を, ・含浸深さ 補修は構造部材の劣化進行の抑制や耐久性の回復および向 上を目的として使用される。補修には,表面被覆工法,表 ・透水量 面含浸工法,断面修復工法等が挙げられ,その中でも,表面 ・吸水率 含浸工法は,コンクリート表面に表面含浸材を塗布するこ とで効果を発揮するため,比較的工程が少なく短期間で施 ・中性化に対する抵抗性 工でき,環境負荷の小さい水溶性の材料が多く,既設のみ ならず新設コンクリート構造物にも適用可能等の特徴があ ・塩化物イオン浸透に対する抵抗性 る。 ・スケーリングに対する抵抗性 表面含浸材は,主成分の違いによりシラン系とけい酸塩 系の 2 種類に分けられ,シラン系はコンクリート表面に疎 ・ひび割れ透水性 水基を形成することにより,水分の移動を伴う劣化因子の 移動を抑制する。一方,けい酸塩系は,固化型と反応型の 2 ・加圧透水性 種類に分けられ,固化型は,コンクリート内部に含浸した 表面含浸材自身が固化することにより空隙を充填させるの に対し,反応型は,セメントの水酸化カルシウムと表面含 的なけい酸塩系表面含浸材よりも若干抑制効果が認められ 浸材のけい酸アルカリ金属塩が反応することにより内部を る結果となった。 当センター材料グループでは,このような補修に使用さ 緻密化させる。 けい酸塩系表面含浸材の試験方法は,次表に示すように れる材料(表面被覆材,表面含浸材,断面修復材)について 中性化に対する抵抗性試験やひび割れ透水性試験等があ 土木学会規準や関連規格に基づく品質性能試験を実施して る。今回は,防水性を把握することを目的とした加圧透水 いる。また,けい酸塩系表面含浸材については,土木学会 性試験を行った。この試験方法は,けい酸塩系表面含浸材 規準で規定されている試験の全項目を実施できる体制を整 を含浸させたモルタル基板と含浸させていないモルタル基 えている。上記材料に関するご依頼・ご質問については, 板を用いて,水の浸透深さを測定し,水の浸透深さ比を算 下記までご連絡いただければ幸いである。 出するものである。土木学会規準では,水の浸透深さ比の 基準値は規定されていないが,加圧透水性試験は,橋梁や 【お問い合わせ】 高架橋等の防水性が要求されるコンクリート構造物の設計 中央試験所 材料グループ や照査を行う際に必要となる。一般的にけい酸塩系表面含 TEL:048-935-1992 FAX:048-931-9137 浸材を使用した場合,水の浸透深さ比は概ね 60%となる。 今回実施した試験の水の浸透深さ比は約 50%であり,一般 建材試験センター 建材試験情報 9 ’ 13 (文責:中央試験所 材料グループ 岡田 裕佑) 19
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