階段型模擬 「圃場」 を用いたイネの水ストレスレベルの品種間差異と乾物

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階段型模擬「圃場」を用いたイネの水ストレスレベルの
品種間差異と乾物生産の関係
藤井, 道彦
静岡大学教育学部研究報告. 自然科学篇. 43, p. 27-40
1993-03-25
http://dx.doi.org/10.14945/00002829
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静岡大学教育学部研究報告
(自
然科学篇)第 43号 (1993・
3)27∼ 40
27
階段 型模擬 「圃場」 を用 いたイネの水 ス トレス
レベ ルの 品種 間差異 と乾物 生 産 の 関係
Relationship between Cultivar Differences in Water Stress Level and Dry
Matter Production in Rice by Stair'Type Simulated "Field"
藤
井
道
彦
Mic国 回玉o FuJII
(平 成4年 10月 12日
受理
)
Abstract
Phased water stress levels were established by stair‐ type silnulated field, which consists
of three levels of height above free water(50,110 and 170cm)and flooded plots.In the
silnulated field,cultivar differences in rice in drought avoidance and in dry matter production
were investigatedo Six cultivars of lowiand rice and upland rice from iaponica type and
indica type were used. Two days after transplanting, drought treatment was commenced
and pF in the soil showed high values in a short tilne. Top dry "ё
ight at harvest relative
to that in flooded plot decreased greatly in the intense water stress levels. In the intense
water stress level, D■ lar l which is one of the drought resistant cultivars maintained high
leaf water potential, and relative top dry weight was high. On the other hands,in Akihikari
and Nipponbare that are japonica lowland cultivars , leaf water potential decreased greatly,
and relative top dry weight decreased. And cultivar differences in relative top dry weight
at harvest could be detected by the differences in leaf water potential.By stair‐
field, intense water stress could be created in a short til■
type simulated
e. And there was great cultivar
differences in leaf water potential.
植 物 体 が 水 ス トレス 環境 に遭 遇 した場 合 、 そ の 影 響 を軽 減 し、 生 長 の 低 下 を抑 え る機 能 と し
2種 の メ カ ニ ズ ム
て 、 乾 燥 回避性 (drOught avoidance)と 乾燥 耐 性 (drOught tolerahce)の
が 考 え られ て い る 12,13,14,17,19,2の 。 乾 燥 回避性 は、水 ス トレス 環 境 条 件 下 で 深 根 性 な どに よ り葉
身 の 水 ポ テ ンシ ャ ル を よ り高 く保 つ 反 応 で あ り、 乾 燥 耐性 は 葉 身 の 水 ポ テ ンシ ャ ル が低 下 した
状 態 にお い て も浸 透 調 節 や 細 胞 壁 の 弾 性 の 変 化 な ど を通 じて 生 理 機 能 を維 持 す る 反 応 で あ
る 18)。 植 物 体 の 実 際 の 反応 は この 2種 類 が 複 合 した もの で あ るが 、 どち らの メ カ ニ ズ ム が 主
1・
要 因 とな るか は 環境 条 件 に よって異 な る 1)。 一 般 に 圃場 条 件 下 で は、乾燥 回避性 が主要 因 となっ
て い る と考 え られ て い る 19。
圃場 を用 い た こ れ まで の 研 究 報 告 で は、 ス プ リ ン ク ラ ー か らの 距 離
5,21,29,30、
灌 水 の 回数 22)
28
井
彦
および、生体情報 による自動灌水制御装置 を用いた方法 0な どによ り、土壌乾燥程度を設定 し
ている。 しか し、 この ような方法 で段階的な土壌乾燥程度を設定するには、広 い圃場面積や大
がか りな灌水設備 を必要 とす る。 また、土壌 の乾燥 は降雨や多湿な どの気象条件 の影響 を大 き
く受け、土壌 の乾燥 に時間を要するために、短期間に強度の水 ス トレス条件 を設定することは
容易 ではない。
段階的な土壌乾燥程度の設定方法 としては、これまでに も、吸湿体 としての レンガ上に土壌
を配置 し、地下水位 を10cmか ら90cmま で任意に設定 で きる自動灌水式苗床 の例がある25,26)。
しか し、この装置 ではレンガ上に厚 さ1 5cmの 土壌 を配置 し20、 基本的に土壌層 内でほぼ均 一
な乾燥状態 を設定す るものである。 このため、乾燥回避性が十分に発揮 されない と考えられる。
また、 この装置では地下水位をさらに低下 させるのは容易 ではない。本研究 では、 自由水面 は
一定 として、水面か ら土壌表面 までの高さに170cmま での段階を設けた階段型模擬圃場 を用 い
て、湛水条件か ら強度の水 ス トレス条件 までの段階的な土壌乾燥程度を設定 した。 また、長 さ
81mの 傾斜圃場で、 自由水面か らの高 さに30cmか ら140cmま で差 を設 けた例があるH)が 、 本
研究でははるかに小規模 な装置でス トレス条件 を設定で きる。
これまで、ポ ット栽培 した水 ス トレス条件下で、イネの葉身水 ポテ ンシャル と光合成速度の
品種間差異 との間に相関のあることが報告 されてい る2つ 。 この報告 で測 定 された光合成速 度
は瞬間値であ り、それが乾物生産に反映 されているか どうか は明 らかにされていない。 これに
対 し、Turnerら は、 圃場 で短期間ではあるが土壌乾燥処理 を行 い、葉 身水 ポテ ンシ ャル には
品種間差異がみ られたが、乾物生産には反映 しなかったと報告 して い る29,30)。 _方 、 著者 ら
は圃場 における長期間の水 ス トレス条件下 で、イネの品種間における葉身水 ポテ ンシャルの差
と乾物 生産 との間に相関関係 を認めたつ。 しか し、土壌の乾燥 に時間を要 したため、短期 間に
強度の水 ス トレス条件 を設定 した場合 の、葉 身水 ポテ ンシャル と水 ス トレス条件下の乾物生産
の品種 間差異 との関係 は十分 に明 らかになっていない。
本研究 では、ポ ッ トと比べ 圃場条件 に近 く、 また段階的な土壌乾燥程度を容易に設定する目
的 とした、階段型模擬圃場 を用 いて、イネの品種間の乾燥回避性 の差異が乾物生産に反映 され
るかの検討 を行った。
材 料 と方法
1.栽 培方法
供試品種 として、 日本型 とイ ン ド型 の水稲 と陸稲か ら、 日本晴 (日 本型の水稲)、 IR30(イ
ン ド型の水稲)、 戦捷 (日 本型 の在来型陸稲 )、 Dular l(イ ン ド型 の在来型水陸両用稲 23)、
ハ タキヌモチ
本型 の改良型陸稲 )、 アキ ヒカ リ (日 本型 の水稲)の 計 6品 種 を用 い た。 1989
ペーパー
ポ ッ トを用 いて育苗箱に播種 し、 6月 12日 に京都大学農学部京都農
年 5月 19日 に、
場 の降雨を遮断 した ビニ ルハ ウス内で、後 に述べ る階段型模擬圃場 に移植 を行 った。各品種は
(日
1列 に移植 し、栽植密度は15X10cmで 、1株 1本 植 えとした。
K20 2kg、 追 肥 と して 6月 28日 と 8月 8日
P205 1 kg、 K20 1kgを 均
「え、言
計N5kg、 P205 5 kg、
施肥 は元肥 と して10a当 りN2kg、 P205 4 kg、
にNlkg、 K20 1kg、 8月 19日 にN l kg、
K20 5kgと した。 倒伏 を防 ぐため に、慣 行栽培 よ り比較 的少肥条件 とした。
階段 型模擬 圃場 の概要 は以 下 の 通 りで あ る。 Fig.1の よ うに、
厚 さ1811ullの 合板 を用 い 、 地 表 か
ら処理 区 の 土壌 表面 まで の 高 さが 60cmの Wl区 、120cmの W2区 、1 80cIIlの
W3区 を設 けた。 各
階段型模擬「圃場」を用いたイネの水ス トレスレベルの品種問差異と乾物生産の関係
29
W3
WO
Fie.l.Diagram of stair-type simulated "field'
The size of each plot is 90 x 90cm.
処理区の面積 は90X90cmと した。W2区 とW3区 は一体型 としたが、Wl区 は分離 した。 W
2区 とW3区 では、地際 と地表か ら高 さ60cmご とに、 1辺 9 cmの 角材 で合 板 の周囲 に補強 を
行 った。階段型模擬圃場 の周囲は ビニ ルで覆 ったブ ロ ックで堀状 に囲 って水 を蓄え、オーバ ー
フロー させて水深は10cmに 保 った。
自由水面か ら各処理区の土壌 表面 までの高 さは、Wl区 で 50cm、 W2区 で 110cm、 W3区
で1 70cmに 保 った。各処理区内の水分 を均 一 に保つ ために、各 区 の地表 10cmの 位置 に18cm間
隔で、多数 の穴 の開いた径 5cmの 暗渠用パ イプを通 した。 また、Wl区 、W2区 、W3区 のセッ
トに隣接 して、合板 の内側 に ビニル を敷 いて高 さ60cmの 湛水区を設 け、 WO区 とした。 最初
に、Wl区 か らW3区 について十分に灌水 を行 った。また、移植後は活着 させ るため、各処理
区の土壌 表面 に灌水 したが、移植翌 日の 6月 13日 以降は灌水 を停止 し、土壌乾燥処理を行った。
2.測 定方法
1)pFの 測定
土壌乾燥処理期間中の 6月 23日 か ら 9月 5日 までに計 8回 、お よびW3区 の収穫 を行った11
月14日 に、テ ンシオメー ター (大 起理化工業社製)を 用 いて、 各処理 区 の土壌 のpFを 測定 し
た。測定 は、Wl区 の土壌表面か らの深 さ10cm、 W2区 の深 さ10cmと 20cm、 W3区 の深 さ10cm
と1 00clllに ついて行 った。なお、W2区 の深 さ20clllで は 8月 6日 、14日 、31日 、またW3区 の
深 さ10cmで は 7月 4日 と9月 5日 は、テ ンシオメー タ‐の不調に よ り測定値が得 られなかった。
2)葉 面積 と乾物重の測定
6月 12日 の移植時には各品種 15個 体、各品種 の収穫時 には各区反復 7個 体 で、 乾物重 と葉
面積 の測定を行 った。葉面積 は 自動葉面積計 (林 電工社製)で 測定 し、葉 0茎 ・穂・ 枯葉 の部
位別の乾物重は、80℃ で48時 間以上通風乾燥 させた後に測定 した。
収穫時のサ ンプリングは、WO区 とWl区 では 9月 6日 か ら10月 30日 に行 った。また、W2
30
彦
井
区のDular lを 除 くと出穂が大 きく遅延 したために、W2区 では11月 13日 に、 W3区 では11月
14日 に収穫時のサ ンプリングを行 った。ただ し、出穂の早 かったW2区 のDular lは 9月 28日
に行 った。
3)葉 身水ポテンシ ャル と葉気温差 の測定
葉身水 ポテ ンシャルは、最上位 の完全展開葉 について、プレッシャーチェンバー (3000‐ 40、
なお、測定は 3反 復 で行 った。 日中の葉身水 ポ
テ ンシャルの測定 は、移植後40日 目の 7月 22日 と58日 目の 8月 9日 に行 った。 両 日ともに、
Soil Moisture社 製)を 用いて測定 した15,20。
天候はほぼ晴天であった。 また、夜明け前 の葉身水 ポテンシャルの測定 は、 移植後 42日 目の
7月 24日 と60日 目の 8月 11日 に行 った。
葉気温差は、 日中の葉温 と気温 の測定値か ら求めた。葉温は放射温度計 (TR‐ 0510b、 ミノ
ルタ社製)で 測定 し、葉温の測定 の前後にはアースマ ン温度計で気温 を測定 した。測定 に用 い
た放射温度計 はlXO.5cmの 狭 い範囲 について測定可能で あるため、葉身 のみ を対象 に測 定す
ることがで きた。測定は晴天 日の 7月 23日 、 8月 8日 、 8月 12日 、 8月 13日 に行 った。
結果
1.出 穂 日
各区にお ける出穂 日をTable lに 示す。 ここでは、50%の 出穂 をもって出穂 日とした。 WO
区の出穂 日は、Dular lの 8月 5日 か ら日本晴の 8月 24日 まで、Wl区 ではDular lの 8月 8
日か ら日本晴の 8月 29日 までであった。土壌乾燥程度が強度 になると出穂 は大 き く遅延 し、
W2区 ではDular lの 8月 14日 か らハ タキヌモチでは 8月 31日 であったが、 日本晴 とIR30で
はごくわずかに出穂 したものの、出穂 日には達 しなかった。また、W3区 の出穂 日はDular l
で 8月 31日 、戦捷で 9月 12日 であったが、他の品種では出穂は認められなかった。
Table l.Heading dates of cultivars investigated in each treatl■
Cultivar Cultivar
No.
①
②
③
・④
⑤
⑥
NippOnbare
ln30
Sensho
Dular l
Hatakinunochi
Aklhikari
Treatment
WO
Wl
3/24
8/21
3/10
3/5
3/14
8/10
Bars show heading dates were not attained.
8/29
8/29
8/15
8/8
8/19
8/10
ent.
W2
W3
3/21 9/12
0/14 8/31
3/31 3/23 -
階段型模擬「圃場」 を用 いたイネの水ス トレス レベ ルの品種間差異 と乾物生産の関係
・
―
Wl 10Cm凛 口 h
W240m dttth
¨
一‐
全¨―
W22∝m de● h
W310cm depth
―‐ ― W3100m晨 h
…
撃
6ノ 1
7rl
8ノ 1
Date rmOnth′
9ノ 1
11ノ 1
ぬリ
Fig.2.Daily changes in pF.
2口
pF
水 ス トレス処理期 間中 の 6月 23日 か ら11月 14日 にお け る pFを Fig.2に 示 す 。 W2区 とW3
区 で は、 移植 11日 後 で土 壌乾燥処理 開始 10日 後 の 6月 23日 か ら、深 さ 10cmに お け る pFは ほ
ぼ 2.5以 上 の 高 い値 を示 し、非常 に乾燥 して い た。 一 方、Wl区 で は初期 の pFは 2以 下 であっ
たが、 7月 末 以 降 は急激 に乾燥 し、約 2.5の 値 を示 した。 またW2区 で、深 さ20 clllの 値 は 深 さ
1 0cmの 値 とほぼ等 し く、 W2区 で は深 さ20cIIl以 下 まで乾燥 が進行 して い る こ とが 分 った。 W
3区 の深 さ100cmに お け る pFで も、7月 初 め まで は 2以 下 であったが徐 々 に 高 くな り、8月
初 め にはほぼ2.5と な り、 W3区 で は深 さ100cmの 深層 まで徐 々 に乾 燥 した こ とを示 した。 W
l区 の pFは 、 9月 以 降急激 に低 下 したが 、 そ の他 の pFの 値 はほぼ一 定 して い た。
乾物重
収穫時 の 地上部乾物重 は、WOttewl区 と比 べ 、 W2区
3口
OW3区 で は大 き く低 下 したが 、
各処 理 区内 で 品種 間差異 がみ られた (Table 2)。
WO区 で は、 ハ タキヌモ チが他 の 品種 よ りもや や高か った。Wl区 で も、 ハ タキヌモ チが最
も高 く保 たれたが、 品種 に よ りWO区 よ りも高 い値 を示す ものが あ った。 W2区 で は、 ハ タキ
ヌモチ とIR30の 地上部乾物重 は重 く、WO区 に対す る相対値 で も90%以 上 で あ つた。 こ れ に
対 し、 アキ ヒカ リと日本晴 では地上 部乾物 重 は大 き く減少 し、 WO区 に対す る相対値 で もそれ
ぞれ 28.9%、 45.6%と 大 きく低 下 した。
土壌 乾燥 程度 の最 も強度 なW3区 の 地上部乾物重 は、WO区 の ほぼ 50%以 下 に低 下 したが 、
顕著 な品種 間差異 がみ られ、 ハ タキヌモ チ の地上部乾物重が最 も重 く、アキ ヒカ リが最 も軽か っ
た。 一 方、 WO区 に対す る相対値 で は、Dular lと 戦捷 で はそれぞれ 54.5%、 51.3%と ハ タキ
ヌモチ よ りも高 く、 アキ ヒカ リと日本晴 ではそれぞれ 7.1%、 21.0%と 著 しく低下 した。
彦
Table 2.Top dry weight at harvest, midday and predawn leaf water potential, leaf
temperature and leaf-air temperature difference in each plot.
Tttatagnt
Cultlvar
Top dw telght
Average
at hwBt
‖
lday laf
ccrplant)0 腱ter
7
0
7
0
Leaf:alr
tf|Peratrre t€rpemturc
('O
tmperahFo
dlfference(l)
32.55
‐
1.92
30.02
32.55
‐
2.53
20。 92
32.55
‐
2.70
32.55
‐
2.70
30.63
4
0
5
0
3
4
7
0
20.85
30.05
32.55
-2.50
15
32.55
‐
2.40
ALiblkari
13.70
Nlppmm
lo.53
2)‐ 0.50
‐0。 10
31.00
1030
13.07
(101.0)‐ 0,40
‐
0.00
30。
Smsho
lo。
30。
(130。
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7
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(127.7)… 0.44
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32.62
‐
2.12
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‐
1.00
‐1.25
‐0。 20
03.08
32.60
0.39
‐
0。 ロ
‐0.24
32.02
32.69
‐
0.07
‐
0。 76
‐0.13
12.60
02.60
-0169
‐0.07
33.12
32.00
‐
0.09
‐0。 14
32.80
32.00
0。
17
‐1.10
‐0。 19
33.10
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Values in parantheses are the percentage of top dry weight to those in W O plots.
4.葉 身水 ポテンシャル
各品種 の 日中の葉身水ポテ ンシャルの平均値は、WO区 では -0。 32MPaか ら-0.47MPa、
W
l区 では -0.43MPaか ら-0.56MPaと 高 く保たれ、品種間差異 も小 さかった (Table 2)。 W2
区では Dular lは -0.69MPaと 高か ったのに対 し、 日本晴 は -1.25MPaと 低下 した。 W3区 で
は品種間差異 はさらに拡大 し、Dular lは -1.28MPaと 高 く保 たれたが、アキ ヒカ リと日本晴
はそれぞれ -2.15MPa、 -2.08MPaと 著 しく低下 し、差は約0。 9MPaで あった。
夜明け前 の葉身水ポテ ンシャルの平均値 は、WO区 とWl区 ではわずかの差はみ られる もの
の、 0近 くに保たれていた (Table 2)。 W2区 ではDular lは -0。 07MPaと 高 く保 たれたが 、
日本晴では -0.26MPaと 低 かった。W3区 では顕著な品種間差異が認め られ、 Dular lと 戦捷
ではそれぞれ -0.13MPa、 -0.22MPaと 高 く保 たれたが、アキ ヒカ リと日本晴 はそれぞれ -1.02
MPa、 _―
o.65MPaと 著 しく低 く、最大値 と最小値 の差は約0。 9MPaで あ った。
階段型模擬「圃場」を用 いたイネの水 ス トレス レベ ルの品種間差異 と乾物生産の関係
33
5.葉 気温差
WO区 とWl区 における葉気温差の平均値 は、WO区 では-1.9℃ からL2.7℃ 、Wl区 では一
1.6℃ か ら-2.1℃ で負 の値 を示 し、葉温 は気温 よ り低下 していた (Tabb 2)。 しか し、W2区 、
W3区 へ と土壌乾燥程度が強度 になるに従 い、葉温は上昇 した。W3区 の葉気温差 は、戦捷 で
は0。 3℃ と低 かったが、 日本晴 とアキ ヒカ リではそれぞれ1.5℃ 、 1。 3℃ と高 く、 品種 間差異 は
大 きか った。
考察
日本 の栽培条件下 で イボ の水 ス トレスの圃場実験 を行 う場合、土壌乾燥処理開始後 1カ 月以
上経過 して も、 日中の葉身水 ポテ ンシャルは -1.5MPa7,10程 度、夜明け前 の それ は -0.2MPa
程度 の以下に低下 しないこ とも多 い。本研究で用 いた階段型模擬圃場 では、最 も乾燥程度 の著
しいW3区 の、深 さ10cmに おける土壌 の pFは 、処理 開始 10日 後 に2.61の 値 まで上昇 した (Fig.
そ して、土壌乾燥程度の最 も強度なW3区 では、処理 開始後約 1カ 月で 日中の葉身水 ポ
2)。
テ ンシャルは -2.2MPaま で、夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャルは -1.OMPaま での低下 を示 した
(Table 2)。 梅雨明けは 7月 19日 で、7月 22日 に行 った処理開始40日 後 の葉身水 ポテ ンシ ャル
の測定 までに、約 15日 間降水がみ られたが、階段型模擬回場 を用 い ることによ り、強度の水 ス
トレス条件 までの段 階を短期間に設定す ることがで きた。 フィリピンの 国際稲研究所 (IRRI)
では、 日中の葉身水 ポテ ンシャルが -2MPa以 下 まで低下する例が多 くみ られるが、 それ らは
圃場 での測定であ る 20,20。 これ らの結果 と比較す ると、階段型模擬圃場 を用 い ることにより、
10・
東南 アジアで対象 となる程度の土壌乾燥程度 を、比較的容易 に設定 で きた と考 えられる。
葉身水 ポテ ンシャルの低下 に伴 う生理機能 の低下 は多 くの植物 につい て知 られて い る3,8)。
一方、水 ス トレス条件下 における葉身水 ポテ ンシャルの品種間差異が、生理機能 に反映する例
イネの光合成2η と葉身の水分状態 との間に相関関係が
も知 られてお り、 コムギの気孔抵抗
"や
み られてい る。 また、イネの葉身水 ポテ ンシャルは、外観 によって判定 した耐乾性 のス コアと
相関がみ られてい る10,20。 しか し、水 ス トレス条件下 の葉身水 ポテ ンシャルの品種 間差異 と乾
物生産 の品種間差異 との関係 については、十分に解 明 されて い な い。 Kobataと Takami16)は 、
登熟期において、葉身水 ポテ ンシャル と乾物生産の関係に品種間差異は認め られず、葉身水 ポ
テ ンシャル を高 く保 つ能力が重要 だとしてい るが、水 ス トレス区のみについての乾物生産の品
種間差異 と葉身水 ポテ ンシャルの品種間差異 との関係 は十分 に明 らかにされて ぃ ない。 また、
イネの葉身水ポテ ンシャルの品種 間差異が乾物生産に反映 されなか ったとい う報告 もある29)。
WO区 の収穫 時地上部乾物重の値 には、品種 間差異が み られ、 ハ タキヌモチでは16.61gと
大 きか ったが、Dular lで は12.70gと 小 さかった。湛水条件においても、光合成速度、葉面積、
草型な どの違 い によって、イネの乾物生産 には品種間差異がみ られ 13)、 湛水条件 における こ
れ らの差が、水 ス トレス区の地上部乾物重 の差に影響 を及ぼすことが考えられ る。そこで、湛
水区における水 ス トレス以外 の要因を除去 して、地上部乾物重 に及 ぼす水 ス トレスの影響 を明
らかにす るために、本研究では各処理区の地上部乾物重 を各品種 のWO区 の値 に対す る相対値
で表す ことにした (Table 2)。
日中の葉身水 ポテ ンシャルの平均値 と、WO区 に対す る相対値 で表 した収穫 時の地上部乾物
重 には、処理区間お よび品種 間で顕著 な差異が認め られた (Fig.3,Table 2)。
土壌乾燥程度が最 も強度のW3区 では、 日中の葉身水 ポテ ンシャルの品種間差異は0.87MPa
井
彦
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Fig.3.Relationship between average nlidday leaf water potential
and top dry weight at harvest relative to W Oo Numerals in this
figure show the cultivar numbers shown in table l.
と大 きかったが、W2区 での品種間差異 は 56MPaと W3区 における差異 よ りも小 さか った。
Wl区 では0.13MPaと 、W2区 の差異 よ りもさらに小 さか った。 WO区 で も、 品種 間差異 は
15MPaと 小 さく、Wl区 の差異 とほぼ等 しかった。 この ように、 日中の葉身水ポテ ンシャル
では、WO区 か らW3区 へ と土壌 の乾燥程度が強度になるにしたが い、品種間差異が拡大する
0。
0。
傾向が認め られた。
夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャルの平均値 では、W3区 の品種間差異は0.89MPaと 大 きか った
が、W2区 では0.19MPaと 急激に縮小 し、Wl区 とWO区 では、それぞれ0.04MPa、 0.03MPa
と、 品種間差異 はほ とん ど認め られなかった (Fig.4,Table 2)。 このように、夜明け前 の葉身水
ポテ ンシャルにおいて も、土壌 の乾燥程度が強度になるにしたがい、品種間差異は拡大 し、W
3区 では日中の葉身水 ポテ ンシャルの品種間の差 とほぼ等 しかった。 しか し、W2区 では夜明
け前 の葉身水 ポテ ンシャルの品種間差異 は小 さか った。
上方、WO区 に対する相対値 で表 した収穫時の地上部乾物重 にお い て、 W3区 で は47.4%
と顕著な品種間差異がみ られた (Table 2)。 W2区 では、 品種間差異は66.1%と W3区 よ りや
や拡大 した。Wl区 では、品種 間差異 は67.4%と W2区 とほぼ等 しかった。 WO区 では定義
か ら全品種 100%で あ ったが、Wl区 か らW3区 では、いずれの区において も、地上部乾物重
の相対値 に大 きな品種間差異が認 め られた。
Turnerら は、7品 種 の イネについて土壌乾燥の進行に伴 う葉身水ポテ ンシャルの推移 を測定
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階段型模擬「圃場」を用 いた イネの水 ス トレス レベ ルの品種間差異 と乾物生産 の関係
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Fig。 4.Relationship
between average predawn leaf water pOtential
and top dry weight at harvest relative to W O. Numerals in this
figure show the Cultivar numbers shown in table l.
してい るが、夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャルでは、処理開始前にも処理期間中 にも品種 間差異
を認めなかった29。 しか し、 日中の葉身水 ポテ ンシャルで は、 処理 開始前 にお い て も水稲 の
方が陸稲 より約0.7MPa高 く保 たれ、その差は植物体内の通導抵抗 の差によると推定 してい る。
本研究 でも、WO区 の 日中の葉身水 ポテ ンシャルは、水稲 の 日本晴、 IR30、 アキ ヒカ リの方
が陸稲 よ りもやや高 い傾向がみ られたが、差は約0.lMPaと 非常 に小 さか った。 根圏土壌 の水
ポテ ンシャルと葉身水 ポテ ンシャルとの差は通導抵抗 と蒸散速度の積 で表 される 1,14)た め、蒸
散速度が高 いほど、通導抵抗 の差は葉身水 ポテ ンシャルの大 きな差 となる。 このため、土壌水
分 の十分な条件下での 日中の葉身水 ポテ ンシャルの品種間差異 に、Turnerら と本研究 とで差
がみ られた原因は、気温、湿度、 日射量などの環境条件 の違 いにより蒸散速度が異なることに
よる可能性があ る。本研究では、土壌乾燥程度の進行に伴 って、葉 身水 ポテ ンシャルの品種間
差異は拡大 したが、W3区 において 日中の葉身水 ポテ ンシャルと夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャ
ルの品種間差異 の値 はそれぞれ約0.9MPaと ほぼ等 しく、 日中と夜明け前 の 品種 間差異 には対
応がみ られる (Table 2)。 このため、W3区 における日中の葉身水 ポテ ンシ ャルの 品種 間差異
は、夜明け前の葉身水 ポテ ンシャルの差 を反映 していると考 えられる。
土壌乾燥程度が最 も強度なW3区 において、 日中の葉身水 ポテ ンシャルが -1.28MPaと 最 も
高 く保 たれたDular lは 、国際稲研究所 (IRRI)に おいて耐乾性 の高い とされて い る品種 で あ
る4,20。 また、 -1.58MPaと 次に高 く保 たれていた戦捷 は、 日本型 の在来型陸稲 で あ る。 両品
種 の地上部乾物重 の相対値 は、それぞれ54.5%、 51.3%と 高か った。 一 方、 日本型 の水稲 で
あるアキ ヒカ リと日本晴は、 日中の葉身水 ポテ ンシャルが -2.15MPa、 -2.08MPaと 大 きく低
下 し、収穫時の地上部乾物重 の相対値 も、 それぞれ7.1%、 21.0%と 著 しく低 かった。
36
彦
Dular lは 、
W3区 において 日中の葉身水ポテ ンシャル と地上部乾物重の相対値がいず れ も最
も高かったが、W2区 で も日中の葉身水ポテ ンシャルは最 も高か った。 しか し、W2区 にお け
る地上部乾物重 の相対値 では、Dular lは ハ タキヌモチ、IR30、 戦捷 よ りも低 い値 を示 した。
またWl区 では、Dular lの 日中の葉身水 ポテ ンシャルは他品種 とほ とん ど差が なかったが、
地上部乾物重 の相対値 は低 かった。一方、 アキ ヒカ リはW3区 において、 日中の葉身水ポテ ン
シャル と地上部乾物重 の相対値が いずれ も最 も低かったが、W2区 で も地上部乾物重の相対値
は最 も低 く、 日中の葉身水ポテ ンシャル も 2番 目に低かった。
日中の葉身水 ポテ ンシャル と、収穫 時の地上部乾物重の相対値 との関係 には、品種 によ りや
や異なったが、差は大 きくなかった (Fig。 3)。 日中の葉身水ポテ ンシャルと地上部乾物重 の 反
応性 に品種間差異がみ られた ものの、W3区 で、日中の葉身水 ポテ ンシ ャルの 品種 間 に約 0.9
MPaと 大 きな差がみ られたために、 日中の葉身水 ポテ ンシャルの差が地上部乾物重 の差 に反映
された もの と考 えられる。
次に、夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャルと地上部乾物重の関係を検討する と、 Dular lと 戦捷
ではW3区 で夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャルが高か ったが、地上部乾物重の相対値 も高 く保 た
れていた
(Fig.4)。
一方、夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャルが低 かったアキヒカリと日本晴では、
地上部乾物重 の相対値 は大 きく低下 した。Dular lと 戦捷 では、W2区 の夜明 け前 の葉身水 ポ
テ ンシャル も高 く保 たれていた。
WO区 とWl区 では、 日中の葉身水ポテ ンシャルはほぼ -0.5MPa以 上 に高 く保 たれ、 W2
区、W3区 の値 との間に大 きな差がみ られた (Table 2)。 葉気温差 につ い てみ ると、 WO区
とWl区 では -1.5℃ 以下のマ イナスの値 で、蒸散が盛んであると予想 されたが、 W2区 とW
3区 ではプラス とな り蒸散 は抑えられてい ると予想 され、Wl区 とW2区 との間に差がみ られ
た。一方、各処理区内で葉気温差の品種間差異が認め られ、W3区 において 日中の葉 身水 ポテ
ンシャルが -1.58MPaと 高 く保たれていた戦捷 では、 葉気 温 差 は0.32℃ と比 較的低 かったの
に対 し、 日中の葉身水ポテ ンシャルが -2.08MPaと 低 かった 日本 晴 では、 葉気温差 は 1.48℃
と高 く、蒸散が大 きく抑制 されていると予想 された。W3区 で、葉気温差の低か った戦捷では
乾物重 の相対値 は高 く保 たれていた。一方、葉気温差 の高か った 日本晴 とアキヒカリでは、乾
物重 の相対値 は大 きく低下 した。
この ように、階段型模擬圃場 を用 いた水 ス トレス条件下における乾物重 の品種間差異を、葉
身水 ポテ ンシャルと葉気温差 の品種間差異か らとらえるこ とがで きた。Turnerら は回場 で 7
品種 のイネを栽培 し、10日 間の水 ス トレス処理 を与えた結果、葉身水ポテ ンシャルと葉気温差
には水稲 と陸稲間で品種 間差異が認 め られたが、乾物生産や光合成速度および気子Lコ ンダクタ
ンス には差 を認めなかったと報告 している29,30。 本研究 の結果 は、 著者 らが固場 で長期 間の
水 ス トレス処理を行った結果 つと、基本的 には同 じ傾向であった。 本研究では、階段型模擬 圃
場 を用 いることによ り、葉 身水 ポテ ンシャルが大 きく低下 し、水 ス トレスが強度であったため
に、葉身水 ポテ ンシャル と乾物重 の品種間差異が大 きくなった と考 え られる。 また、 Turner
らの実験では日中の葉身水ポテ ンシャルは -2MPa以 下 にまで低下 し、約 l MPaの 大 きな品種
間差異がみ られてい るが、地下水位が高かったために夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャルでは約 一
0.2MPaと 高 く保たれ、夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャルの品種間差異は認め られなか った 129)。
これに対 し、階段型模擬圃場 を用 いた本研究 では、 自由水面か らの高さを170cmに 保 ったW3
区では、 日中および夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャル に、いずれ も約 0.9MPaの 顕著 な品種 間差
階段型模擬「圃場」を用いたイネの水ス トレスレベルの品種間差異と乾物生産の関係
37
異 を認めた (Figs.3,4)。 これ らを比較 して、本研究で夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャルにも顕著
な差がみ られた ことが、乾物生産に品種間で差がみ られた原因 と考え られる。
夜明け前 の葉身水 ポテ ンシャルは、根 圏土壌 の水 ポテ ンシ ャルの推定値 とされて い る22)。
陸稲品種は水稲品種 よ りも深層へ根 を伸長 させ る傾 向 にあるが 31)、 w3区 にお い て、 夜 明け
前 の葉身水 ポテ ンシャルに顕著 な差異が認め られたことか ら、根 の深層土壌へ の伸長 に大 きな
品種間差異があ った と予想 される。土壌 も圃場 と比較 して柔軟で深層 まで根が伸長 しやす く、
乾燥 回避性 を発揮 しやす い と予想 されることも、一 因 と考 えられる。 さらに、階段型模擬圃場
では、植物体へ の水 の供給 は深層土壌か らのみで、土壌表層 か らの水 の供給 は皆無であ る。 こ
のため、土壌表面に灌水 を行 う条件5,21,29,3の と比較 して、吸水 における深根性 の利点が よ り顕
著 になると考え られる。
以上 のように、階段型模擬圃場 を用 いて段階的な水 ス トレス条件 を短期間に設定 し、水 ス ト
レス条件下 の乾物生産の品種間差異 を、葉身水ポテ ンシャル と葉気温差 の差異か らとらえる こ
とがで きた。
本研究では、 階段型模擬圃場 を用 いて、地上部乾物重 の比較 を行 ったが、稔性 には耐性 に品
種間差異が考え られ、収量 については今後 の課題 である。また、 自由水面か らの高 さが50cmの
Wl区 の乾物重が、湛水条件のWO区 よ りも大 きい場合がみ られたが、WO区 で水 の移動がな
いこ との影響 と考え られ、検討課題である。
要旨
湛水区 と、 自由水面か らの高 さが50cm、 110cm、 170cmの 区を設けた階段型模擬圃場を用い、
段階的な土壌 乾燥程度 を設定 し、イネの乾燥回避性 と乾物生産の関係 について検討 した。 日本
型 とイ ン ド型 の水稲 と陸稲か ら 6品 種 を供試 し、移植 5日 後 か ら水 ス トレス処理 を開始 したが、
土壌 の pFは 短期間に高 い値 を示 し、葉 身水 ポテ ンシャルは大 きく低下 した。強度 の土壌 乾燥
程度 において顕著 な品種 間差異がみ られ、耐乾性品種 とされてい るDular lと 日本型 陸稲 の戦
捷 では、葉身水 ポテ ンシ ャルが高 く保 たれ、湛水区 に対す る相対値 で表 した収穫 時の地上部乾
物重 も高か った。一方、 日本型 の水稲 のアキヒカリと日本晴 では葉身水 ポテ ンシャルは大 きく
低下 し、地上部乾物重 の相対値 も顕著に低下 した。水 ス トレス条件下の地上部乾物重 の相対値
の品種間差異 は、葉身水 ポテ ンシャルの品種間差異 を反映 していた。階段型模擬圃場 を用 い る
ことによ り、短期間に強度の段階的な水 ス トレス条件 を設定で き、葉身水ポテ ンシャルの品種
間差異 は0.9MPaと 大 きか った。
謝辞
本研究を遂行 し、研究を取 りま とめるに当た り、京都大学農学部堀江武教授 に御指導 いただ
いた。 また、論文の作成に当た り、静岡大学教育学部大河内信夫教授 に懇切 に御指導 いただい
た。 ここに深 く感謝す るも また、現鳥取大学農学部 の中野淳一助教授 には実験装置 の作製 に当
た り、助言かつ協力 していただ き、北陸農業試験場高見晋一室長 と島根大学農学部小葉田亨助
教授 か らは論文 の作成 に当た り貴重な助言 をいただいた。実験装置 の作製 には、現富士通の玉
城綾子氏 と現野菜茶業試験場 の濱野恵氏 に協力 していただいた。 ここに感謝 の意を表す る。
藤
38
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