岩手県における MBI-D耐性イネいもち病菌の rep-PCR法による

北日本病虫研報
57:10-13(2006)
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岩手県における MBI
D耐性イネいもち病菌の r
epPCR法による
フィンガープリント解析とそれらのレース
佐 々 木 直 子*・荒 井 治 喜**・鈴 木 文 彦**
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2004年から2
005年にかけ岩手県で MBI
D 耐性イネいもち病菌の発生が確認された.本
耐性菌発生の遺伝的背景を解明するため,2004年と2005年に県内から分離したイネいもち
病菌4
23菌株について,Pot
2r
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pPCR 法によるフィンガープリント(FP)解析を実施し
た.その結果,これら菌株から5
2種類の FPが検出され,このうち耐性菌1
43菌株は9種
類の FPに類別された.また,耐性菌39菌株のレースを検定したところ,これらは0
07.
0
および0
37.
1の2種のレースに判別された.FP解析,レースおよび分離地点の情報をもと
に,県中南部に特定の遺伝子型の耐性菌(FP,I
wa3;レース,037.
1)が優占して分布
していることを明らかにした.
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2001年,佐賀県において,カルプロパミド,ジクロシ
メット,フェノキサニルなどの MBI
D 系統の薬剤(シ
材料および方法
1.供試菌株
タロン脱水酵素型の薬剤,以下 MBI
D)に耐性を示す
2004
年および2
005
年の県内の耐性菌発生調査(2,5)
イネいもち病菌(以下耐性菌)の発生が確認された(7)
.
で一般栽培圃場から分離したイネいもち病菌株を本研究
岩手県の MBI
D の箱施用は,1998年から始まり,2001
に用いた.すなわち,2004年に北上市の8地点,11圃場
年には岩手県病害虫防除所の調査で県内水稲栽培面積の
の葉いもち病斑から分離した耐性菌8菌株を含む27
菌株,
約25%で本剤が施用された.この様な状況下で,耐性菌
2005年に22市町村95地点,164圃場の葉いもち135病斑,
の発生が懸念されたため2002年よりその発生調査を行っ
穂いもち2
61病斑から分離した耐性菌1
35菌株を含む計
てきた.その結果,2004年は12市町村42地点中,1市4
396菌株を本研究に供試した.
地点5圃場(2)で,2005年は22市町村95地点中,4市
2.r
epPCR法によるいもち病菌のフィンガープリン
15地点42圃場(5)で耐性菌の発生が確認された.
ト解析
鈴木らは(3),Pot
2r
e
pPCR 法を用いたイネいも
r
e
pPCR 法は,Suz
ukie
tal
.
(4)の方法に準じて
ち病菌の個体群構造を解析し,九州各地で発生した耐性
行った.プライマーはイネいもち病菌の転移因子 Pot
2
菌は地域ごとに異なる遺伝的背景を持ち,その起源は複
の末端部反復配列内に設計したシングルプライマーを用
数であると推定している.
いた.本解析に供した鋳型 DNA は,供試菌株を9
mL
そこで,本研究では,耐性菌の遺伝的背景や一般栽培
の pot
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o社製)で2
5℃,4日
圃場での耐性菌の伝搬ルートを明らかにするため,2004
間暗所静置培養した菌体を DNA 抽出キット (Ul
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年と2005年に岩手県で分離された耐性菌を含むイネいも
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O 社製)
ち病菌集団を対象に,Pot
2r
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pPCR法によるフィンガー
を用いて調製した.フィンガープリント解析は,検出さ
プリント(FP)解析を行い,それらのレースを同定し
れたバンドの有無を比較することにより行った.なお,
た.
本解析では分子量が6kb以上のバンドは再現性が低い
と判断し,解析には用いなかった.
岩手県農業研究センター
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,0240003Japan
農業・食品産業技術総合研究機構
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九州沖縄農業研究センター
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