介護ストレスの ストレスマネージメント

介護ストレスの
ストレスマネージメント
高齢者を介護する家族の
鬱やストレスへの対処法
立命館大学文学部心理学専攻
小牟禮 尚子
問題
日本では急速な高齢化と長寿化により高
齢者介護の問題が深刻化し、特に在宅で
介護を行う家族の負担は大きい。2000年4
月に開始された介護保険制度により介護
援助サービスの利用が可能となったが,未
だに一人で介護を抱え込んでいる家族が
多い。
問題2
高齢者の在宅介護は人生における最大
のストレスの一つであるとされる(Zarit &
Edwards,1999)。介護は極度の疲労、社
会的孤立、経済的負担、家族関係や仕事
との葛藤などを引き起こし、介護者として
の役割が増すにつれ、抑うつや免疫反応
の減退といった介護者の健康は悪化され
るとされる。(Coe & Neufeld,1999)。介護
者の中には様々なストレスを抱え,心身の
不調を呈している人が多い。
ストレスとは
ストレスという専門用語を最初に用いた
のはSelye(1974)であり、「ひずみ」を表す
言葉として物理学から導入された。生物体
は環境の変化に対して適切に反応するこ
とにより体内のバランスを維持しようとする
が、有害な刺激にさらされるとバランスが
崩れた状態となる。ストレスとはバランスの
崩れた、専門的には恒常性―ホメオスタシ
スを維持できない生物体の生理的な「ひず
み」のことである。
介護ストレスとは
ストレスの認知理論(Lazarus & folkman、
1984)が発表されて以来、理論に基づく介護者
の心理モデルが提唱されるようになってきた。
(Pealin, Mullan, Semple & Skaff, 1990; 新名・
矢富・本間・坂田、1989)。この心理モデルの導
入により、客観的ストレッサーとしての被介護者
の状態や介護者自身の状況、一時的評価として
の負担感や二次的評価としての疲労感などが区
別されると共に、媒介変数としてソーシャルサ
ポートや対処が位置づけられ,各々の関連性が
総合的に示されることとなった。
介護ストレスとは
基本的にLazarusは、 Selyeに由来する刺激
―反応の生理学的な視点を心理的ストレスに適
用し、刺激的な出来事に喚起される、いわばイベ
ント性のストレスを想定している。介護についても、
終わりの見えない介護状況の否定的影響が蓄
積して、介護以前の生活との落差を深めていく
構図を、ストレスの発生として捉えた。つまりここ
では「出来事」ではなく日常化した状況に埋め込
まれた、いわば状況的ストレスとして、また蓄積
性のストレスとして、介護ストレスを捉えていく。
介護ストレスに対して
介護に追われ家庭にこもって孤独になり
やすい介護者にとって、仲間と気持ちを共
有し、介護に関するさまざまな情報交換を
行うことは大きな支えとなるとされている。
また、ソーシャルサポートにストレスマネジ
メントに関する教育や活動を積極的に取り
入れることが重要である(櫻井 2000)。
研究目的
本研究においてどのようなストレッサーに、
どのようなソーシャルサポートや対処が行
われることにより、ストレス反応が軽減する
か効果を検討する。
本研究ではストレス反応の軽減に有効と
されるストレス・マネージメントを習得する
ことで介護ストレスに対しての効果を検討
する。
調査対象
京都市内で在宅介護支援サービスある
いは在宅介護者の会を利用している高齢
者の主介護者に質問紙調査を実施する。
各機関に調査用紙の配布を依頼し回収を
行う。
調査内容 質問調査
介護者と要介護者の基本的属性、身体
状態,介護状況
介護者のバーンアウト・・介護者のス
トレス測定のために家族介護者バーン
アウト尺度(MBI)を用いる(中谷、
1992)
ソーシャルサポートについて5項目で尺
度評価
独立変数・介入
イメージリラックス・トレーニン
グ ・・精神的および身体的ストレ
ス反応における多様な症状を軽減
するセルフマネジメント法
自動思考法 ・・現実的で柔軟な思
考に変えることが治療の目的 。自
動思考記録表 を用いる
従属変数
リラクセーションを習得すると,自
律神経系の働きを整え、不安などの感
情をコントロールする有効な手段を身
に付けることとなる。
現実的で柔軟な思考は、気持ちを落
ち着かせ、問題解決のために有効な行
動の原動力となる
実験計画・参加者
実験計画・・・個体内条件比較法
ABデザインで実施
被験者・・・MBIによりストレス反応が高結
果を示した介護者3名を被験者
とする
参考文献
中野 敬子(著) (2005) ストレスマネジメント入門 金剛出版
兵頭好美・田中宏二・田中共子(著(2003)介護ストレス・サポートモデ
ルの検討 健康心理学研究 第16巻
櫻井成美(著) (2006) 高齢者を介護する家族のためのサポートグ
ループの効果についての研究 平成国際大学研究報告
石川利江・井上都之・岸太一・西垣内磨留美(著) (2003)
在宅介護者の介護状況、ソーシャルサポートおよび介護
バーンアウト
健康心理学研究 第16巻
久保田進也(著) (2005) ストレスリダクションとしての思考場療法の
有効性の検討 産衛誌 47巻
山口正二(著) 1998 講座サイコセラピー 第12巻リラクゼーション
日本文化科学社
五十嵐 透子(著) 2001 リラクゼーション法の理論と実際
医師薬出版株式会社