4 特集:フォーカス中部(1.1 MB) - 一般社団法人 中部経済連合会

フォーカス中部
中部圏のさらなる国際化を目指して
∼国際連合地域開発センター・JICA中部との連携促進に向けて∼
中経連では、2012年4月に国際交流懇談会を新設し、中部圏の国際関係
機関と中経連会員とのネットワーク構築を目指した取り組みを行っている。
名古屋を中心に様々な活動を展開する国際関係機関があり、地域のさらなる国際化にそれぞれ重要な
役割を果たしていただいている。その中で、国際連合地域開発センター(UNCRD)およびJICA中部で
は、当地域の企業との連携促進に向けて大きな一歩を踏み出している。中経連では、皆様に両機関の各種
支援制度をご紹介することで、企業の海外展開やグローバル人材育成の一助となれば幸いである。
UNCR D「環境的に持続可能な交通」研修の様子
中日本高速道路㈱ 名古屋環状2号線工事現場詰所にて
JICA
「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」
を活用し、
BOP層への飲料水販売ビジネスモデルの検証を実施している様子
日本ベーシック㈱の自転車一体型浄水装置(撮影:鈴木 革 氏/JICA)
■国際連合地域開発センター(UNCRD)
UNCRD組織図
国連におけるUNCRDの位置づけ
所長
UNCRDは、国連本部と日本政府の協定によ
り、1971年10月に名古屋に設立。国際連合事務
局の
「経済社会局(UN DESA)」
に属する特別機
関であり、主に日本政府が国際連合に拠出する信
託基金によって運営されている。国内に本部機能
UNCRD 顧問委員会
総務
コンピュータサービス
経済・社会開発
環境
環境的に持続可能な
交通(EST)
防災管理計画
廃棄物管理/3R
を有する数少ない国連機関の一つであり、開発途
上国の「地域開発」に関する総合的機能を持つ。
「研修」
「 調査研究」
「 助言」
「 情報ネットワークの確
立」
を活動の目的とし、
アフリカ事務所、
ラテンアメ
リカおよびカリブ海事務所を有している。
UNCRDの設立∼名古屋が選ばれた理由∼
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情報サービス
アフリカ事務所
(ケニア)
ラテンアメリカおよび
カリブ海事務所(コロンビア)
さらに、中部圏の地域開発(=戦後復興や都市問
1968年9月、
UNCRDの前身「国際地域開発
題への対策)が世界から注目され、途上国の研修
調査訓練計画中部センター」が名古屋で発足した
生が経済発展・地域開発を学ぶ上で、最適な環境
ことに始まる。名古屋を中心とする中部圏は、自動
であると考えられた。
また、当時の中部圏開発整備
車・繊維・窯業などに代表される日本の主力工業
本部、愛知県、地元経済界による熱心な誘致活動
地帯であると同時に、すぐれた農業地帯でもある。
が実を結んだ結果でもある。
中経連 2014.2
中経連 2014.2
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フォーカス中部
「持続可能な地域開発」の実現を目指して
UNCRDでは、開発途上国の生活水準の向上
を目指して
「地域」に根付いた開発支援を行ってい
る。
「地域開発」
の中でも、
「経済・社会開発」
「環境」
「防災管理計画」
を中心テーマに据えて、循環型社
会の形成に向けた持続可能な開発プロジェクトの
提案や研修用の教材開発を行っている。特に、中堅
幹部行政官を対象とした、開発途上国の抱える諸
課題の解決策の立案・実施に関する研修に力を注
いでいる。
写真2:食品廃棄物の飼料化施設について説明を受けている様子。研修
先は中部有機リサイクル㈱。同社の所有する施設「名古屋エコフィード
センター」にて
写 真1・2は、いずれもバンコク都 庁からの研
修生。バンコクは急速な都市化が進み、住宅問題、
交通渋滞、大気汚染、廃棄物問題、自然災害等に
直面している。研修の依頼を受けたUNCRDが、
「持続可能な都市開発」
に向けた戦略づくりの研修
を実施した。研修では、成功事例の現場視察を豊
富に取り入れることで、
より具体的で実効性の高
写真1:エコステーション
(使用済み容器包装の店頭回収)の説明を受けて
いる様子。研修先はユニーグループ・ホールディングス㈱。同社が管理・運営
する
「リーフウォーク稲沢(愛知県)」
にて
たかせ
いプログラムを提供している。
ちかこ
国際連合地域開発センター 高瀬 千賀子 所長から経済界へのメッセージ
国際連合地域開発センター(UNCRD)は、1971年10月に名古屋に設立され、
今年で43年目を迎えます。国際社会に向けて当地域の企業が誇る技術、情報、知識の
発信を行うため、民間企業の皆様と連携を図りながら粘り強く国内外のネットワーク
構築に努めております。持続可能な地域開発の実施は民間企業との連携なしには進
められません。途上国の政府や地方自治体がそれぞれの計画を実施する際の架け橋
になることができれば幸いです。
UNCRDでは、
「 環境」や「防災」の分野において、企業の社会貢献活動を支援する
「グローバル・パートナーシップ・プログラム」
(※1)を実施しています。
開発途上国の
地域住民に直接手を差し伸べる支援策として、耐震性を備えた学校計画や信号機の設置、交通安全や環境
教育等のプロジェクトを提案しております。
ご関心のある方は、ぜひお声掛けいただけますと幸いです。
これからも国際社会で「持続可能な地域開発」の実現を目指した積極的な活動展開に加え、中部圏に広く
情報発信を行うことで国連およびUNCRDの活動に対する理解の輪を広めてまいり
たいと思います。ぜひ、中部経済連合会の会員企業・大学・経済団体の皆様のご支援と
ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
(※1)
グローバル・パートナーシップ・プログラム URL:http://www.uncrd.or.jp/ja/gpp/index.html
国際連合地域開発センター(UNCRD)
〒450-0001 名古屋市中村区那古野1-47-1 名古屋国際センタービル6階
TEL:052-561-9377 FAX:052-561-9375
URL:http://www.uncrd.or.jp/ja/
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中経連 2014.2
中経連 2014.2
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フォーカス中部
■独立行政法人国際協力機構(JICA)
中部国際センター
展開を踏みとどまっている中小企業に対し、新たな
JICA中部の設立
進めており、途上国・民間企業・ODAが、WIN−
1961年3月、
JICA中部の前身「名古屋国際
可能性やパワーを引き出すための支援を本格的に
WIN−WINの関係になることを目指している。
研修会館」が(社)
アジア協会によって設立されたこ
とに始まる。2008年10月、旧国際協力銀行の海外
《支援メニュー》
経済協力業務と外務省の無償資金協力業務を継
1.情報提供:ODA事業や開発途上国に関する
承することとなり、新JICAが発足した。同時に民
情報について、中小企業海外展開支援セミナーや
間連携室が新設された。
また、2009年3月に名古
ODA事業紹介セミナー、
また、相談会等を通じて
屋市名東区から名古屋駅近隣のささしまライブ24
提供している。
地区に移転され、交通アクセスが向上した。
2.調査支援:企業の海外事業に必要な基礎情報
JICA中部の役割
の収集や事業計画の策定等、初歩的な調査から
JICA中部は、東海4県(愛知・岐阜・三重・静
製品・技術の開発援助を案件化することを念頭に
岡)における国際協力の総合窓口・活動拠点として
おいた豊富な支援メニューを揃えており、BOP
の機能を担い、
UNCRDや自治体、経済団体、大学
(※2)ビジネス連携促進や中小企業連携促進基
等と幅広く連携しながら以下4事業を実施している。
礎調査、
PPP(※3)インフラ事業の準備調査を行っ
●
技術研修生の受入
ている。新たに平成25年度から中小企業に特化し
●
海外ボランティア派遣(青年海外協力隊等)
たODAを活用した支援事業が設けられ、ニーズ
●
市民参加協力
(草の根技術協力等)
調査、案件化調査等の支援メニューが整っている。
●
民間連携促進
2012年度から民間連携の促進に向けて新たな
支援制度を設け、中小企業の海外展開支援に取り
組んでいる。
JICAのめざす民間連携
∼注目を集める中小企業の海外展開支援∼
JICAで は 、
(※2)Base of the Pyramidの略。世界の所得別人口
構 成の中で最も収 入が 低い所 得 層を指す言 葉 。
約40億人が該当。
(※3)Public-Private Partnershipの略。公民が連携して
公共サービスを行うスキーム。
∼BOPビジネス連携促進 採択事例∼
●
企業名:マイウッド・ツー㈱(愛知県岩倉市)
●
調査概要:コロンビアでは油採取後のオイルパ
中小 企 業の優れ
た技 術 や製 品を
開発途上国の開
発や持続的発展
に活かす目的で、
2012年度から政
ームの廃材がゴミの増加をもたらしている。
このため、
同社の圧縮技術を用いて、廃材全て
途上国の持続的発展
を利用して屋根
JICAのめざす
民間連携
民間企業の
活性化
材や外 壁 材 等
の新 製 品を開
ODAの
有効活用
発・市場化する
府開発援助(OD
ための 調 査 を
A)
による中小企業海外展開支援事業を開始した。
行っている。
JICAが支援する途上国の国々では、環境・エネル
ギー・廃棄物処理、水処理、農業、医療保健、教育、
防災・災害対策等の多種多様な課題を抱えており、
●
企業名:㈱オーミ
(静岡県磐田市)
日本の中小企業の技術や知識、
ノウハウが必要とさ
●
調査概要:ベトナム・ハノイ近郊で自動車・自動
れている。
このため、資金や人材の制約により海外
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∼ODA案件化調査(外務省委託事業)採択事例∼
中経連 2014.2
二輪車用のプレス加工に用いる金型製作事業
中経連 2014.2
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フォーカス中部
■独立行政法人国際協力機構(JICA)
中部国際センター
展開を踏みとどまっている中小企業に対し、新たな
の 立ち上 げ を目指
可能性やパワーを引き出すための支援を本格的に
し、ベトナムにおける
は、
グローバルな視野や素養を備えた人材の育成
JICA中部の設立
進めており、途上国・民間企業・ODAが、WIN−
金 型 産 業と技 術 人
や企業の海外事業展開に貢献することを目的とし
材 の 育 成 に関 する
た制度。企業の要望に応じて派遣国、職種、派遣
1961年3月、
JICA中部の前身「名古屋国際
WIN−WINの関係になることを目指している。
研修会館」が(社)
アジア協会によって設立されたこ
とに始まる。2008年10月、旧国際協力銀行の海外
途 上 国に派 遣する民 間 連 携 ボランティア制 度
調査を行っている。
《支援メニュー》
期間を決定するため、事業展開の予定地に社員を
派遣することができることに加え、人件費や一般管
経済協力業務と外務省の無償資金協力業務を継
1.情報提供:ODA事業や開発途上国に関する
3.
グローバル人材の育成・活用:民間企業、
とりわ
理費が一定の範囲内で補てんされるなどメリット
承することとなり、新JICAが発足した。同時に民
情報について、中小企業海外展開支援セミナーや
け中小企業の社員を青年海外協力隊員として開発
の大きな制度である。
間連携室が新設された。
また、2009年3月に名古
ODA事業紹介セミナー、
また、相談会等を通じて
屋市名東区から名古屋駅近隣のささしまライブ24
提供している。
地区に移転され、交通アクセスが向上した。
JICA中部の役割
岡)における国際協力の総合窓口・活動拠点として
おいた豊富な支援メニューを揃えており、BOP
の機能を担い、
UNCRDや自治体、経済団体、大学
(※2)ビジネス連携促進や中小企業連携促進基
技術研修生の受入
ている。新たに平成25年度から中小企業に特化し
●
海外ボランティア派遣(青年海外協力隊等)
たODAを活用した支援事業が設けられ、ニーズ
●
市民参加協力
(草の根技術協力等)
調査、案件化調査等の支援メニューが整っている。
●
民間連携促進
支援制度を設け、中小企業の海外展開支援に取り
組んでいる。
ポートする機関は様々ありますが、
JICAのODA活用支援は、途上国の開発に貢献す
ることが大前提となります。
自社の優れた製品や技術、知識やノウハウを生かして、途上
国の開発に貢献したいと願う企業の皆様に、ぜひJICAの支援制度をご活用いただき
たいと思います。そうすることで、相手国の政府から歓迎され、現地でのネットワーク形
成やビジネスに移行するための環境をいち早く整えていただくことが可能となります。
礎調査、
PPP(※3)インフラ事業の準備調査を行っ
●
2012年度から民間連携の促進に向けて新たな
発援助(ODA)
を活用した中小企業の海外展開支援が明示されました。海外進出をサ
の収集や事業計画の策定等、初歩的な調査から
製品・技術の開発援助を案件化することを念頭に
(※2)Base of the Pyramidの略。世界の所得別人口
構 成の中で最も収 入が 低い所 得 層を指す言 葉 。
約40億人が該当。
(※3)Public-Private Partnershipの略。公民が連携して
公共サービスを行うスキーム。
や すじろう
2012年3月、
日本政府による
「中小企業海外展開支援大綱」の改定により、政府開
2.調査支援:企業の海外事業に必要な基礎情報
JICA中部は、東海4県(愛知・岐阜・三重・静
等と幅広く連携しながら以下4事業を実施している。
すずき
独立行政法人国際協力機構 中部国際センター 鈴木 康次郎 所長から経済界へのメッセージ
また、
JICAでは青年海外協力隊のボランティア派遣の他に、途上国での円借款事
業や無償資金協力の活用に加え、技術協力として専門家を毎年約1万名派遣するなど多岐に渡る事業活動を
展開しております。
ご関心をお持ちの事業がありましたら、遠慮なく
お問合せいただけますと幸いです。今後とも皆様のお役に立てるよう
努めてまいりますのでご支援とご協力をお願いいたします。
JICA中部
たてば
み わ た
独立行政法人国際協力機構 中部国際センター 民間連携担当 立場・三輪田
〒453-0872 名古屋市中村区平池町4-60-7
TEL:052-533-1387 FAX:052-564-3751
JICAのめざす民間連携
∼注目を集める中小企業の海外展開支援∼
JICAで は 、
∼BOPビジネス連携促進 採択事例∼
●
企業名:マイウッド・ツー㈱(愛知県岩倉市)
●
調査概要:コロンビアでは油採取後のオイルパ
中経連の今後の取り組みについて
た取り組みを展開するとともに、引き続き中経連の
高瀬UNCRD所長および鈴木JICA中部所長
国際交流懇談会を活用し、当地域に所在する総領
このため、
同社の圧縮技術を用いて、廃材全て
は、地元企業との連携のあり方について、
「まずは組
事館との交流事業をはじめ、企業の海外展開支援
開発途上国の開
を利用して屋根
織の知名度向上に努め、事業活動に対する理解促
セミナーの開催、外国人留学生との交流を通じて、
発や持続的発展
材や外 壁 材 等
進を図ると同時に、途上国の開発に資する諸制度
当地域のさらなる国際化に貢献できるよう、地道な
に活かす目的で、
の新 製 品を開
の利活用を民間企業に促すことが大切である」
との
活動にも取り組んでいきたい。
2012年度から政
発・市場化する
共通認識を抱かれていた。
府開発援助(OD
ための 調 査 を
A)
による中小企業海外展開支援事業を開始した。
行っている。
中小 企 業の優れ
ームの廃材がゴミの増加をもたらしている。
た技 術 や製 品を
ギー・廃棄物処理、水処理、農業、医療保健、教育、
∼ODA案件化調査(外務省委託事業)採択事例∼
体として、当地域のさらなる国際化に寄与すべく、
連携を強化し、民間企業、大学、地元団体を繋ぐ
防災・災害対策等の多種多様な課題を抱えており、
●
企業名:㈱オーミ
(静岡県磐田市)
コーディネータの役割を果たすことが求められて
日本の中小企業の技術や知識、
ノウハウが必要とさ
●
調査概要:ベトナム・ハノイ近郊で自動車・自動
いる。
「 企業の海外展開支援」や国内外での幅広い
二輪車用のプレス加工に用いる金型製作事業
活躍が期待される
「グローバル人材の育成」
に向け
れている。
このため、資金や人材の制約により海外
中経連 2014.2
(国際部 宮下 秀子)
中経連は、中部圏を活動拠点とする広域経済団
UNCRDやJICA中部などの国際関係機関との
JICAが支援する途上国の国々では、環境・エネル
12
URL:http://www.jica.go.jp/chubu/index.html
【取材協力・画像提供】
・国際連合地域開発センター
(UNCRD)
・独立行政法人国際協力機構
(JICA)中部国際センター
中経連 2014.2
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