グアテマラ小学科の二言語教育

2006年度第3期異文化理解講座
「現代中米・カリブ情勢の読み方」
第8回
グアテマラの地域開発と国際協力
久松佳彰(ひさまつ・よしあき)
東洋大学国際地域学部国際地域学科
[email protected]
中米グアテマラ
• 貧困: 2000年の国勢調査では、人口の
56.2%が貧困状態にあるとされた。
– 世界銀行の1日1ドル基準では13.5%、1日2ドル
基準では31.9%(2002年統計)が貧困層。
• 教育: 小学校就学率82%(‘99)→93%(’04)、
小学校修了率53%(’99)→70%(’04)。
• 先住民: 人口の42.6%が先住民(’00)。
• 内戦: 1960~96年の36年間。
• 【参考】ミレニアム開発目標(MDGs):貧困、教育、
ジェンダー、幼児、出産、疫病、環境、国際協力
今回のトピック
• 二言語教育をどう行うか?
– 地域開発の一側面としての教育
– 自主運営タイプの学校と二言語教育
• 先住民を支援するリーダーシップ研修
– 国際協力機構(JICA)グアテマラ国別研修「公共政策の
計画立案能力向上」
• 【参考】scope(範囲)はマクロ(鳥)ではなくミクロ(蟻)
①グアテマラ・キチェ県の小学校
における二言語教育プロジェクト
調査2004~5年
【資金支援】東京大学Comparative
Genocide Studies (CGS)
グアテマラ→キチェ
キチェ県
キチェ県(グアテマラ国)
• マヤ族の先住民が多く住む。
• キチェ県にはキチェ語を喋る先住民が多い。
• 社会経済的状況
– 貧しい
– 教育程度が低い
– 識字が低い
• 二言語教育の目的: キチェ語を通して学校
に慣れてもらい、スペイン語を導入する。
• 今回は二つの小学校を訪問した。
学校の自主運営
• グアテマラの小学校には二つのタイプがある
– 普通の小学校(教育省の統括)
– 共同体(村)の自主運営の小学校
• 自主運営の小学校
– 父母が運営を担う(父母会)
– 先生の雇用・解雇を決定できる
自主運営の小学校(PRONADE)
援助機関
援助機関
二言語教育
プロジェクト
教育省
米NGO
先住民
資金
NGO
親
資金
給料・雇用・休暇許可
利用者
子供
より父母が望む教育
父母会
先生
強い権限を持つ
二言語教育プロジェクトの役割
• 親に対しては、何が子供たちにとって良い教
育なのかを教える
– 先生と両親が協力する教育
– 二言語教育を通じて徐々にスペイン語を習得す
る教育
• 先生に対しては、どのような教え方が良いか、
新しい教え方、そして教科書の教え方を指導
する。
• 子供には、新しい教科書を提供する。
②JICA
グアテマラ国別研修「公共政策
の計画立案の能力向上」
2005年10月~11月
(3年計画)
【資金支援】JICA+科研費
JICA(国際協力機構)での研修
• JICA(旧:国際協力事業団、現:独立行政法
人国際協力機構)には長い研修プログラムの
伝統と能力がある
– 研修センター(代々木上原)
– 年間を通じて発展途上国からの研修生を受け入
れて様々な研修を行っている
• この仕組みを使ってグアテマラ振興の一助に
なれないものか?【背景】援助ブーム終了後
の自主的地域開発
JICAグアテマラ国別研修「公共政策
の計画立案の能力向上」(JICA研修と略)
• 内戦終結後、民主化の一環として市民参加型の地方分権化
• しかし、長く続いた中央集権のため、地方自治体の行政能
力や基本的制度、市民参加の枠組みなど地方分権化の推進
に欠かせぬ政治社会的基盤が未整備
– 特に内戦の被害が集中した先住民居住地域では、貧困や
社会的排除とりわけ先住民女性のあいだで極めて高く、
ジェンダー、多文化主義、平和構築ならびに人間の安全
保障の視点からも、地方行政の近代化が最優先課題
• 先住民族居住地域における若手・中堅市長や自治体の行政
担当者、ならびに地元市民団体の指導者に対して、地域社
会発展のための政策策定・実施に資する能力の育成、強化
を目的として研修を実施。
• 地域指導者層の多機能性に注目(市長⇔学校の先生⇔ NGO
リーダー⇔官僚、など)
地方分権化&JICA研修の焦点
中央政府
中央
SCEP(EUの援助)
県
SEGEPLAN
CODEDE
県単位のネットワーク
市町村
COMUDE
市町村単位のネットワーク
共同体
COCODE
弱い⇒グアテマラ国別研修
市民=住民
通常のJICA研修との違い
• 通常のJICA研修
– 各国から1名ないし2名
程度を選んで日本で研
修することが多い
– 研修生は各国の政府や
政府機関が決めること
が多い
• グアテマラ研修
– 一国から集中して研修
生を招く
– 研修生の人選にあたっ
ては、G政府・JICAの了
解のもとに日本の学者
が選考に参加した
(2005年9月)
• 狐崎知己(専修大学)
• 中村雄祐(東京大学)
• 久松佳彰(東洋大学)
研修の中身①
研修の中身②
日本の大学生との交流会
• グアテマラの発展は長期的な課題と位置づ
けられている。⇒一言では、時間がかかる
• 私の世代だけの問題ではない⇒若い世代に
関心をもってもらえるかが一つの勝負
• グアテマラの研修生のみなさんと大学生が交
流する会をやってみよう!
• いろんな大学の学生に声をかけよう!
• 11月上旬、JICAの研修センター
研修のフォローアップ
• こうして、第1回グアテマラ国別研修「公共政
策の計画立案の能力向上」は終了し、研修生
は自分の地元に戻りました。
• 我々はフォローアップ活動を進めるべくJICA
と相談し、2006年夏にグアテマラに行きまし
た。第2回は2007年の3月です。
JICA研修からの期待される効果
①
中
堅
地
域
指
導
者
の
選
考
②
事
前
研
修
(
予
想
の
醸
成
)
③
日
本
で
の
研
修
④
事
後
研
修
(
具
体
化
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⑤
具
体
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ロ
ジ
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プ
ロ
ジ
ェ
ク
ト
の
実
施
⑦
よ
り
良
い
暮
ら
し
参考文献
• グアテマラ一般について
桜井三枝子編著『グアテマラを知るための65章』明石書店、
2006年。
• グアテマラ内戦について
歴史的記憶の回復プロジェクト編『グアテマラ 虐殺の記
憶』岩波書店、2000年。
• 教育と開発について
大塚啓二郎=黒崎卓編著『教育と経済発展』東洋経済新報
社、2003年。
• 非営利事業の運営について
P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』ダイヤモンド社、原著
1990年。