建設業の現状 - 日本建設業連合会

4
建設業の現状
1. 建設業者の構成と企業経営
許可業者数の推移
(建設投資:兆円)
60.1
90
(許可業者数:万)
60
58.6
建設投資額(実質)
80
55
51.9
50.9
50
70
49.6
許可業者数
60
45
0
1981 82 83 84
85 86 87
88
89
90 91
92 93
94 95
96 97
0
98 99 2000 01(年)
(注)1. 業者数は各年とも3月末時点
2. 建設投資は年度値(1995年度価格)
資料出所:国土交通省
建設業者数は90年代の需要停滞期に一貫して増加を続け、2000年には60万を超えるに至ったが、
2001年は58.6万となり、11年ぶりに減少に転じた。
規模別許可業者数の推移
60
(万)
600,980
585,959
551,661
518,964
508,874
50
226,348
(38.6)
資本金10億円以上
1,644(0.3)
1億∼10億円
4,802(0.8)
5,000万∼1億円
10,385(1.8)
1,000万∼5,000万円
40
30
20
63,940
(10.9)
500万∼1,000万円
130,051
(22.2)
200万∼500万円
699(0.1)
10
0
148,090
(25.3)
200万円未満
個 人
(注)
( )内の数字は規模別構成比
1985
1990
1995
2000
2001(年/各3月末現在)
資料出所:国土交通省
建設業者の大半は中小・零細業者である。2001年の減少は主として個人業者による。
11
建設業許可の種類
特定・大臣
6,643
経審・大臣
8,436
建設大臣許可
10,899
特定・知事
43,498
経審・知事
194,937
都道府県知事許可
590,081
※2つ以上の都道
府県に営業所を
設ける場合
※1つの都道府県
のみに営業所を
設ける場合
特定建設業
50,141
※元請として
3,000万円
以上(建築
工 事 業 は 、
4,500万円
以上)の 下
請契約を締
結して施工
する場合
経営事項審査受審(99年度) 203,373
※公共工事を請け負おうと
する場合に義務付け
許可業者総数 600,980
(注)60万余の許可業者のうち、建設工事の実績があった業者数は305,996(建設工事施工統
計)
。公共工事を実際に請け負った業者数については、統計上の把握は困難であるが、公共工
事の約70%をカバーする前払対象工事の元請となった実績のある業者の数が 86,108(99
年度、保証事業会社協会調べ。測量業者、建設コンサルタント業者等を含む)であることを
考慮すると、経営事項審査受審業者数203,373をかなり下回るものと推測される。
わが国で建設業を営む場合
は建設業許可の取得が必要
となる。
建設業許可には、業者が行
う工事の種類による分類(建
築、土木、左官、電気、造
園等28業種)や、複数の県
に営業所を設置するか否かに
よる分類(大臣許可あるい
は知事許可)がある。また、
発注者から請け負った工事
の一部について下請契約を締
結する業者(特定建設業)
はその他の業者(一般建設
業)に比べ厳しい要件をク
リアしなければならない。
公共工事を請け負おうとする
業者は、許可とは別に、経
営状況についての審査(経
営事項審査)を受けること
が義務づけられている。
資料出所:国土交通省(許可業者数は2000年3月末現在)
大手建設業者の工事受注額推移
(兆円)
30
海外等
官公庁
民間
25
23.8
22.8
(1.0) (6.2)
(0.8)
(6.9)
18.6
20
(0.7)
15.1
15
27.9 27.8
(0.9) (0.9)
(0.9) (1.1)
(8.2)
(5.5)
(0.5) (4.6)
(4.6)
(19.9)
(16.3)
(10.0)
(7.4)
(20.8)
10
1987
88
(7.0)
(8.0)
(1.1) 17.1
16.4
(0.7)
(0.6) 15.4
(0.8)
(7.0)
(6.0) (6.3)
(5.4) (4.8)
(14.8)
(13.3)
(11.3) (11.4) (11.3) (12.5) (11.8) (10.1) (10.4) (9.8)
5
0
20.4 20.9
19.7 19.5
(1.1) (1.4) 18.9
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
2000(年度)
資料出所:日建連(法人会員65社対象)
建設ブームの期間中、大手総合建設会社の受注は民間工事を中心に急拡大した。これは建設需要の増
加が、大手業者の主要マーケットである大都市での大型民間非住宅を中心としたものであったためで
ある。それだけにその後のバブル崩壊の影響もまた大きく被ることとなり、受注全体も大幅に水準を
下げた。93∼96年度は19∼20兆円台で推移したが、その後再び減少に転じ、2000年度は15.4
兆円と87年度以来の低水準となった。
12
大手建設業者の市場占有率
(%)
40
1983年度
30
28.1
26.6
1991年度
23.8 24.8
24.4
︵
累
積
市
場 20
占
有
率
︶
29.3
22.5
20.9
20.6
22.6
23.8
30.2
31.0 31.7
32.4
27.0
27.5
25.6 26.3
24.7
25.6
26.9
26.3
21.2
17.719.2
15.2
1999年度
16.3
12.6
11.5
10
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
業者数が多いだけに、
大手企業の市場占有
率は他産業に比べ低
い 。 上 位 10 社 の 占
有 率 は 11.5 % 、 上
位100社の場合でも
26.9 % で あ る 。 建
設ブーム期に大手企
業のシェアは高まっ
たが、バブル崩壊後
低 下 し 、 99 年 度 は
「建設冬の時代」と言
わ れ た 80 年 代 前 半
のレベルにまで低下
した。
100(位)
(完成工事高順位)
(注)1. 総合建設業上位100社の市場占有率を示す。
2. 占有率算出の分母にあたる完成工事高総額には国土交通省「建設工施工統計」
の元請完成工事高を使用。
資料出所:国土交通省等
下請完成工事比率の推移
(兆円)
90
下請完成工事比率(B/A)
86.2
85.5 86.2
82.7
82.8 82.4
81.6
76.5
元請完成工事高
(A)
74.8
70.6
80
(%)
70
下請完成工事高
(B)
70
66.5
64.6 64.7 64.3
63.2 63.2
59.5
60
53.6
50
49.9
40
55.9
61.2
51.5
58.2 57.8
55.2 55.8
67.6 65.9
69.1 68.4 67.5
60
55.7 56.7 57.1 52.4
53.2
47.3
40.7
30
20
27.9
31.2
65
47.6
55
50
34.4
10
0
1986
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99(年度)
資料出所:国土交通省
建設生産における下請業者への依存度の高まりを反映して、下請完成工事高の元請完成工事高に対す
る比率は上昇傾向にある。近年は60%台後半で推移している。
13
完成工事高の内訳
(資本金1,000万円∼5,000万円の企業の場合)
材料費
18.48%
(21.94)
完成工事
原価
84.23%
外注費
45.37%
(53.87)
一般管理費等
14.37%
完成工事
総利益
15.77%
特別損益
営業外損益 −0.18%
0.34%
法人税および住民税
0.95%
経費
13.66%
(16.22)
税引前当期利益 当期利益
営業利益
0.62%
1.57%
1.41% 経常利益
1.74%
労務費
6.72%
(7.98)
14.02%
(15.52)
(資本金10億円以上の企業の場合)
7.60%
−4.94%
−4.63%
−0.89% −3.72%
9.70%
55.01% 90.30%
(60.92)
16.16%
(17.89)
2.10%
1.22%
0.91%
5.12%
(5.67)
(注)(
)内は完成工事原価を100とした場合の割合 資料出所:国土交通省「建設業の経営分析」
(98年度)
完成工事高のうち、85∼90%は外注費、材料費、労務費などの原価が占めており、特に外注費の
割合が大きい。最終的な儲けを示す当期利益の売上高に占める割合は小さく、特に大手業者の場合
は、バブル期の債務処理の影響でマイナスとなった。
売上高経常利益率の推移
(%)
6.0
5.0
4.7
建設業・資本金1∼10億円未満
4.9
建設業・資本金10億円以上
4.0
3.4
3.5
製造業
2.9
3.0
2.9
2.8
建設業計
2.0
2.2
建設業・資本金1億円未満
1.5
1.0
0.0
1.0
1987
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99(年度)
資料出所:国土交通省、財務省
建設業では受注から売上げ(完成工事高)への計上までに長期間を要するため、市場動向の利益面へ
の反映は他産業に比べ遅れる傾向がある。バブル崩壊後、製造業の利益率はいち早く上昇に転じた
が、建設業の場合は市場の長期停滞等により利益率の低下は依然として続いている。大手業者(資本
金10億円以上)の場合は90年台後半に底打ちし、その後は経営スリム化の効果等により若干の改
善がみられる。
14
有利子負債売上高比率の推移
(%)
60
51.3
大手建設業者(日建連会員)
50
40
36.2
建設業・資本金10億円以上
建設業・資本金1億円未満
31.5
建設業計
30
30.8
25.6
20
建設業・資本金1∼10億円未満
10
1987
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99(年度)
資料出所:財務省
バブル期に主として大手業者が行った過度の造注活動は、有利子負債等債務の増加という形でその後
の建設業経営に大きな影を落とすこととなった。大手業者の場合、近年、有利子負債額は減少に転じ
ているが、一方で売上の落ち込みがそれ以上に大きいことから、対売上高比率は上昇が続いている。
建設業の倒産の推移
件数
(単位:件)
6,000
5,440
4,785
5,000
3,041
2,125
1,385
1987
1,278
790
761
768
1,000
855
582
1,712
1,000 372
0
1,386 1,500
1,235
3,206
2,322
500
377
258
220
88
89
2,000
3,710
2,845 2,868
3,000
2,500
2,115
2,367
4,384
3,786
4,000
2,000
負債総額
(単位:10億円)
5,928
3,000
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
2000(年)
0
(注)負債総額1,000万円以上
資料出所:帝国データバンク
建設業の倒産件数は、不良債権問題等バブル後遺症や建設市場の冷え込み等を背景に、90年代に入
り増加が続いた。99年に一旦は減少したものの2000年には再び増加し、約6000件(60万業者
の1%)の倒産が発生した。
15
2. 建設労働と建設コスト
建設業就業者数の推移
(建設業就業者数:万人)
800
(建設投資額:兆円)
90
685
700
80
653
建設業就業者数
600
70
548
527
60
500
建設投資額(実質)
0
0
1980 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000
(年)
(注)建設投資額は年度値(1995年度価格)
資料出所:総務省、国土交通省
建設業就業者は、長びく不況の中でも一貫して増加を続け、結果的にわが国の雇用の安定に寄与してきた(92年∼
97年の就業者数は、製造業の127万人減に対して、建設業は66万人増)が、98年以降は減少が続いている。
就業者数減少の内訳
(職種別)
685万人
653万人
76
16
(2.4) (11.1)
75
(11.5)
129
(18.8)
127
(19.4)
(雇用形態別)
その他
11(1.7)
専門的・技術
的・管理的職
業従事者
685万人
122
(17.8)
(地域別)
685万人
653万人
115
(17.6)
自営業主
家族従業者
25(3.7)
事務
販売従事者
80(11.7)
77(11.3)
509
(74.3)
464
(67.7)
440
(67.4)
常用雇用者
166
(24.3)
臨時・日雇
1997
(注)(
)内は構成比
2000(年)
36(5.3)
58(8.5)
技能工
生産工程
労務作業者
54(7.9)
50(7.7)
1997
2000(年)
79(12.1)
九州
四国 23(3.5)
47(6.9)
97(14.2)
488
(74.7)
653万人
63
(9.2)
35(5.1)
1997
42(6.4)
中国
95(14.5)
近畿
77(11.8)
東海
36(5.5)
北陸
54(8.3)
北関東・甲信
15.2
(23.3)
南関東
62(9.5)
東北
北海道
33(5.1)
2000(年)
資料出所:総務省
建設業就業者は 97年∼ 2000年の 3年間で 32万人減少したが、その内訳をみると、職種別では、
就業者全体の2/3を占める現場労働者の減少が大きい。雇用形態別では、全体の3/4を占める常用
雇用者は、減少数は多いものの減少率は相対的に小幅なものにとどまっている。また、地域別では、
南関東地方での就業者の減少が他の地域に比べ大きい。
16
大手建設会社の従業者数の推移
(千人)
200
4.7
3.9
4.4
190.0 (2.5) 186.3
(2.1) 183.2 (2.4)
4.5
(2.4)
150
0
4.4
(2.4)
118.0
(63.3)
59.7
(32.0)
62.7
(33.0)
1994
57.9
(31.6)
95
55.8
(31.2)
96
159.6
97
2.2
(1.4)
その他
151.9
2.1
(1.3)
3.7
(2.4)
3.8
(2.2)
112.9
(66.6)
114.8
(64.3)
116.5
(63.6)
2.8
169.6 (1.7)
4.4
(2.5)
118.1
(62.2)
100
50
4.8
(2.6)
3.4
178.4 (1.9)
3.1
(2.1)
技能職
104.7
(65.6)
100.4
(66.1)
技術職
50.1
(29.5)
49.1
(30.7)
46.2
(30.4)
事務職
98
99
2000(年度)
(注)1. 大手総合建設会社36社の従業者(役員を含む)
2.( )内は構成比
資料出所:国土交通省(建設業活動実態調査)
大手建設会社においては既に90年代半ばから従業員の減少が始まっており、2000年までの6年間
で20%減少している。職種別では、技術職従業者に比べ事務職従業者の減少率が大きい。
労働条件の推移
(労働時間:時間)
200
(給与:千円)
500
450
468
給与総額(建設業)
191
456
187
190
398
421
400
175
給与総額(産業計)
176
180
総労働時間(建設業)
350
170
170
170
297
300
総労働時間(産業計)
289
160
250
200
155
1983 84
85
86
87
(注)1. 事業所規模30人以上
2. 給与、労働時間ともに月平均値
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
150
99 2000(年)
資料出所:厚生労働省
建設業従業者の給与総額は80年代後半∼90年代初めの建設ブーム期に急増し、全産業平均を上回
るに至った。その後も増加が続いたが、98年以降は減少に転じている。一方、労働時間は、改善し
てはいるものの、全産業平均と比べ依然として長い。
17
労働者の平均年齢
(才)
46
建設業のうち
生産労働者(男)
45
45.1
44
43.3
43
建設業
42
41.8
41.5
41 41.6
40
40.4
製造業
39.7
39.7
39
38
38.1
全産業
37
37.3
1983 84
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99(年)
資料出所:厚生労働省
建設労働で重要な問題の一つは労働者の高齢化である。平均年齢は他産業に比べ高いが、近年、その
差は若干縮小している。
建設需要と技能工需給
(兆円)
90
(%)
4.5
4.2
4.0
3.4
3.5
80
3.0
3.0
3.0
2.5
建設投資額(実質)
2.2
2.0
70
技能労働者不足率(%)
1.5
1.0
1.1
1.1
0.8
0.5
60
0.5
0.6
0.0
0.3
0.0
▲0.5
0.8
▲0.4
1986 87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
▲0.3
50
99 2000(年)
(注)建設投資額は年度値(1995年度価格)
資料出所:国土交通省
建設ブーム時は労働者不足、特に技能工の不足が大きな問題となったが、需要が頭打ちとなるに伴い不足状況は急速に解
消に向かった。93年以降の不足率は1%未満∼マイナス(技能工過剰)で推移。2000年は過不足ゼロの状況である。
18
労働災害発生状況の推移
(人)
7,000
6,212
6,000
5,000
4,057
全産業死亡者数
4,000
3,000
2,000
建設業死亡者数
2,556
1,804
2,354
2,489
2,432
1,844 1,992 1889
2,414
2,245
1,047
2,363
2,301
2,078
1,021
953
1,000
1,054
993
847
725
794
97
98
99
731
1,001
942
0
1961∼70 71∼80 81∼90
91
(年平均)
92
93
94
95
96
2000(年)
資料出所:厚生労働省
建設生産は屋外作業、高所作業を伴うため、労働災害は他産業に比べ多い。安全管理は建設業の重要
課題として従来から真剣な取り組みがなされており、徐々にその成果はあがっている。最近では、労
働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)に基づく安全管理を実施する企業が増えつつある。
建設コスト変化率の推移
(%)(前年度比変化率)
8
6
労務費
4
建設コスト
2
0.7
0.4
0.0
0
建設用材料卸売物価指数
▲2
▲4
1987
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
2000(年度)
(注)1. 建設コストは建設工事費デフレーターで示す。建設コストの2000年度値は4∼1月の前年同期比による。
2. 建設用材料卸売物価指数の89年度及び97年度の上昇は消費税の導入及び税率アップの影響による。
資料出所:日本銀行、厚生労働省、国土交通省
建設ブーム期は労働者不足を反映して労務費の上昇が大きく、コストアップ要因となった。しかしそ
の後、資材価格の下落と労務費上昇の緩和により、建設コストの動きは落ちついたものとなった。
93年度以降の上昇率は1%未満であり、98、99年度にはマイナスを記録した。
19
3. 生産性と技術開発
労働生産性の推移
(円/人・時間)
5,000
製造業
4,484
全産業
4,267
4,000
3,783
3,532
建設業
3,483
3,000
2,000
2,830
1990
91
92
93
94
95
96
97
98
99(年)
(注)労働生産性=実質粗付加価値額(1995年価格)/(就業者数×年間総労働時間数)
資料出所:内閣府、総務省、厚生労働省
90年代に製造業等の生産性がほぼ一貫して上昇したのとは対照的に、建設業の生産性は97年まで
低下が続き、その後はほぼ横ばいである。
研究費対売上高比率の推移
4
(%)
製造業
3.7
3.1
3
2
全産業
運輸・通信・公益業
建設業
1.3
1
0.6
0
1985 86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99(年度)
資料出所:総務省
建設業の研究費は他産業に比べ少ないが、大手企業の中には年間100億円を超える研究費を投じ、売上高比
率が1%前後に達する企業もある。また、大手企業の多くは独自で研究所を有している。欧米の建設業の場
合は、研究開発は主に大学や公共機関が実施しており、企業レベルではほとんど行われていない。この点、
国際的にみて日本の大手企業の研究開発意欲の高さは際立っており、このことがわが国の建設技術を世界の
トップレベルに押し上げる大きな原動力となった。一方、経営環境が厳しさを増す中、企業は経営資源活用
の効率化を迫られており、研究開発の分野に関しては企業同士による技術研究等の共同化に向けての動きが
出始めている。
20
建設技術開発の推移
■ 建築技術
1960
社会背景
65
1970
□東京オリンピック
□万国博
□新潟地震
□十勝沖地震
75
1980
85
95
2000
■ 環境・その他
05
2010
□地球環境問題
□規制緩和 □WTO政府調達協定
□コンクリートアルカリ骨材反応
□有珠山噴火
□三宅島噴火
□雲仙普賢岳噴火
□宮城県沖地震
□環境基本法
□RCの塩害
□北海道南西沖地震
□阪神大震災
□都市再開発法 □国土利用計画法
□高さ制限撤廃
建設行政
1990
■ 土木技術
□建設技術評価制度
□公共工事コスト縮減行動指針
□公共工事の品質確保指針
□耐震改修促進法 □多自然型川づくり
□日影規制
□耐震基準の一部改正
□新耐震設計法 □JASS5改正
□壁式PC基準(5F)
□高層建物入力指針 □建設産業政策大綱 □建設CALS/EC
□振動規制
建築物の性能標準化□ □ISO9000,14000
□原子力施設耐震設計指針
■限界状態設計法
■PC杭頭せん断破壊対策
■津波評価技術
■鉄骨プレス破断対策
■土壌汚染対策技術
■耐震スリット壁
■水質環境予測技術
■免震構造
■環境アセスメント
設計技術
■PC斜張橋
■制震構造
■制震・制振高度化技術
■超大型ドック設計法
■免震橋梁
■性能照査型設計技術
■石油類地下
タンク設計法
■液状化対策技術
■スーパークリーン
■電磁シールド技術 ■躯体蓄熱の実用化
ルーム
■空気膜構造
■木造ドーム
■建物のLCA
■地下大空洞 ■高層HPC工法(14F) ■架構式PCa工法
■自動化建築工法
■壁式PCa工法
■情報化施工 ■シールドトンネル覆工合理化技術
建設技術
■洋上備蓄基地施工法
■無人(ロボット)化土工システム
高層壁式ラーメンPCa工法■
■柱RC・梁S工法 ■長寿命建築
■最終処分場建設技術
■大型複合断面シールド工法
■シールド工法
施工技術
■免震床構法
■長大トンネル施工法
(構・工法)
■ワイヤーリフトアップ工法
■リフトアップ工法
■GPS利用計測技術
■トラベリング工法 ■NATM工法
■海上空港施工法 ■リニア鉄道施設建設技術
■超高層積層工法 ■RCD工法
■岩盤内地下石油備蓄建設技術
■プッシュアップ工法
■長大吊橋施工法
■高層RC自動化施工システム
■拡底杭
■掘削土再利用連壁
■アースドリル工法
■本設地盤アンカー工法
■ベノト工法
施工技術
■リバースサーキュレーション工法
■大径ジェットグラウト工法
(杭)
■地下連続壁
大深度地下連続壁■
■SRC地下連続壁
■超高強度地下連続壁
■動的設計法(超高層建物)
■建設発生物等リサイクル技術
超高層(45F)RC住宅■
■鉄管コンクリート構造
■高層(25F)RC住宅
■超高層ビル
■新素材利用技術
■流動化コンクリート
■コンクリート圧送
■高強度コンクリート ■高流動コンクリート
■人工軽量骨材
施工技術
■耐震補強・リニューアル技術
■溶接部の超音波探索
(躯体) ■デッキプレート
■緑化コンクリート
■水中不分離性コンクリート
■ハイテンションボルト
■鋼管コンクリート建築構造(CFT)
■高張力鋼
■高耐火鋼
■大型H型鋼
■耐震改修技術
■アブレイシブジェット ■ダム施工自動化・省人化技術
施工技術
(仕上)
■PCカーテンウォール
■タイル打込PC板
■軟式石張り工法
■ハープPC板
CFRCカーテンウォール■
■多機能軽量間仕切壁
■システム天井
■湿式耐火間仕切壁
■フリーアクセスフロア
■セルフレベリング床工法
■自然エネルギー
(太陽光・風力他)利用技術
■埋設型枠
■クリーンビル(環境共生)
■TV電波障害防止外壁
■自然化・緑化技術
■仕上ロボット(床・塗装)
資料出所:日建連「新たな総合建設業の確立を目指して」ほか
高度化、多様化するユーザーのニーズに応えるため、建設の様々な分野で新しい技術が開発されてき
た。最近の主要な研究テーマとしては、自動化・合理化施工を目指した技術やシステムの開発のほか、
免震・制震、超々高層ビル、大深度地下、新素材、環境問題、IT等に関連した研究があげられる。
21
4. 環境問題への対応
建築物のCO2 排出
産業廃棄物の業種別排出量
(標準的事務所ビルの場合)
(1997年度)
鉱 業
(5.7)
建築工事
(16.2)
その他の業種
(19.9)
農 業
(22.7)
排出量計
41,485万トン 電気・ガス
(100%) 熱供給業・
水道業
建設業(18.6) (20.8)
運 用
(光熱・水、
保守管理・修繕)
(70.0)
鉄鋼業
(5.8)
パルプ・紙・
紙加工品製造業
(6.5)
改修工事(6.0)
廃 棄(7.8)
(注)
( )内は事務所ビルのライフサイクルを通じてのCO2 排出量
全体を100とした場合の段階別構成比を示す。
資料出所:厚生労働省
資料出所:「日建連ビジョン」(96年5月)
建設業は、施設の企画、設計、施工から竣工後の運用、補修、解体に至るライフサイクルを通じて環
境に深い係わりがあり、地球温暖化、産業廃棄物等深刻になりつつある環境問題への積極的取り組み
が求められる。
地球温暖化対策としてはCO2 排出量削減が重要であり、大手建設業3団体(日建連・土工協・建築
協)では2010年までに12%削減(90年比)する目標を掲げ、省エネルギー設備・システムの採
用、製造時のCO2 排出量が少ない資材の採用、型枠用熱帯材合板の使用削減等CO2 排出量削減策の
実施に取り組んでいる。
建設廃棄物の排出と処分
15
(千万トン)
(1990年度)
(2000年度)
(1995年度)
排出抑制
(8%)
12
建設発生木材等
9
6
建設発生木材等
建設混合廃棄物
再利用
(35%)
建設汚泥
減量化
(7%)
3
アスファルト
コンクリート塊
コンクリート塊
建設混合廃棄物
建設汚泥
アスファルト
コンクリート塊
処分
(58%) コンクリート塊
0
排 出
処 分
(7,600万トン)
(4,400万トン)
再利用
(58%)
減量化
(1%)
処分
(42%)
再利用
および
減量化
(72%)
処分
(20%)
排 出
処 分
排出(予想)
処分(目標)
(9,900万トン)
(4,100万トン) (12,700万トン)
(2,500万トン)
(注)2000年度は建設副産物対策行動計画(リサイクルプラン21)による。
資料出所:国土交通省
アスファルト・コンクリート塊やコンクリート塊のリサイクルは着実に進んでいるが、混合廃棄物や
汚泥のリサイクルは低迷している。また、最終処分場の不足は深刻な状況にあり、建設廃棄物の再
(生)利用や発生抑制の一層の促進と、そのための技術やシステムの開発・普及が緊急の課題である。
法制度の面では、建築物の分別解体やリサイクルを義務づける建設資材リサイクル法が2000年5月
に成立する等整備が進みつつある。
22
5. 世界標準への対応
建設関連分野の新たな基準
分 野
新 た な 基 準
品質管理
ISO9000シリーズ
品質管理及び品質保証に関する国際規格。企業の品質保証体制についての要求事項を規定(2000
年12月に一部改訂)。公共工事への適用については、2000年度から難易度の高い直轄工事
を中心に9000sの認証取得が入札参加条件となった。2001年度は100件程度を試行予定。
環境管理
ISO14000シリーズ
環境マネジメントシステム・環境監理体制に関する国際規格。環境保全の目標を設定、その
達成のための一連のシステムを規定。 公共工事への適用については、地方整備局の工事事務
所においてISO14001に沿った環境管理システムを構築、運用するモデル事業が97年度か
ら実施されている。
企業会計
国際会計基準
国際会計基準委員会が定めている会計基準。わが国企業会計の透明度を高めるため、連結決
算制度の採用等新しい会計制度の導入が進行中。
建築基準
性能規定
工法、材料、寸法等の仕様による従来の建築基準規定方式に加えて、建築物が満たすべき性
能を基準とする新たな規定方式を2000年6月から導入。
計量単位
SI単位
SI単位系は1960年に国際度量衡総会で国際単位系として採択され、わが国では93年に新計
量法に正式採用。公共工事については99年4月からSI単位に移行。
(注) ISO=International Organization, for Standardization(国際標準化機構)
SI=Le Systeme International d Unites(国際単位系)
`
′
近年、わが国経済のグローバル化が急速に進展する中で、建設業に関連する様々な分野の制度や基準に関し
て、世界的な標準あるいは潮流への適合を目指して変更が図られつつある。
今後の建設業経営に当たっては、国際的に通用するビジネス・スタイルの確立はもとより、こうした周辺環境
のグローバル化にも適切に対応していくことが必要となる。
国際会計基準への移行スケジュール
新会計制度
連結会計
キャッシュフロー計算書
税効果会計
研究開発費等
販売用不動産の強制評価減
金融商品の時価会計
売買目的有価証券・満期保有目的の債権
その他有価証券
退職給付会計
減損会計
1999年度
2000年度
2001年度
2002年度
(2000年3月期)(2001年3月期)(2002年3月期)(2003年3月期)
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
⃝
△
◎
◎
◎
◎
◎
◎
?
(注)1. ◎:適用が強制される ⃝:適用が可能である △:適用が困難と認められる企業は1年先送りされる
2. 減損会計の導入時期は未定。
建設業が対応すべき諸基準のうち、企業経営に最も大きなインパクトを与えるものは国際会計基準である。連
結中心、キャッシュフロー重視、時価評価等の考え方に基づく新しい制度が順次導入されている。今後、導入
予定の中で最も注目されるものは減損会計である。これは固定資産の評価損の損失処理を義務づけるもので、
企業財務に大きな影響が生ずることになると予想される。
23
6. 今後の総合建設業
市場構造変化への対応
分野・領域等
具体的内容
・企画段階〔PM方式、PFI等〕
・入札段階〔総合評価方式等〕
多様化する発注方式
・設計・施工段階〔CM方式、分離発注方式、設計・施工一括発注方式等〕
・運営段階〔PFI等〕
・その他〔異業種JV等〕
・住環境整備〔屋上・壁面緑化等〕
・廃棄物処理・水処理関連
環境分野
・建設事業関連〔建設廃棄物のリサイクル推進等〕
・環境調査〔土壌汚染調査等〕
・その他〔ビオトープ*等〕
・構造物長寿命化〔耐震・免震補強等〕
リニューアル分野
・設備機器更新〔設備の交換等〕
・情報化対応〔通信・電気容量の増強等〕
・診断〔省エネルギー診断等〕
ライフサイクル・マネジメント
・資産評価〔建物デューデリジェンス等〕
・施設管理〔ビルエネルギー管理システム等〕
・環境管理〔LCCO2*の環境影響予測評価等〕
建設物の保守・運営
・建設物の保守・管理等
・建設後の運営〔PFI 等〕
・廃棄物処理・水処理関連
エンジニアリング分野
・生産施設関連〔HACCP*、バリデーション*等〕
・エネルギー施設関連〔都市型コ・ジェネレーションシステム等〕
・その他〔広域被害予測、環境アセスメント等〕
品質/性能保証等
IT(情報技術)関連
・法制定に伴う住宅品質確保〔瑕疵担保責任、性能表示等〕
・その他〔100年住宅、S/I住宅*等〕
・業務効率化・コストダウン
〔建設CALS、資材等の電子調達、現場管理等〕
・サービスの提供〔ASP事業、ホームエレクトロニクス関連等〕
(注)ビオトープ:野生生物が共存共生できる生態系をもった自然緑地。
LCCo2 :Life Cycle Co 2 建物の建設、運用、維持管理、解体、撤去までの生涯を通じて排出されるCo2。
HACCP:Hazard Analysis & Critical Control Point 食品の生産段階での微生物汚染についての安全確保に関する国際規格。
バリデーション:医薬品の製造工程や製造環境を科学的根拠に基づいて設計し、それが目的通りに機能していることを検証・文
書化する等の一連の品質保証行為。
S/I住宅:スケルトン(構造躯体、共用の供給処理施設・設備機器・階段等)とインフィル(内装、専用の設備機器等)を分離
して供給し、改修等を経て長期的な使用に耐える仕組みを採用した住宅。
資料出所:日建連(建設業基本問題研究委員会報告書「総合建設業の機能と役割」2000年5月)等
近年、建設市場構造の変化を背景に、建設業に求められるサービスの内容は多様化かつ高度化してい
る。わが国大手建設会社は高い技術力と豊富なノウハウに裏付けられた総合的な力を備えており、こ
うした市場のニーズの変化に的確に対応し、より高いレベルでの顧客満足を実現すべく積極的な取組
みを行っている。
24
ITと建設業
建設業への影響
○電子入札(CALS/EC※等)
・応札コストの削減
・業務の迅速化
・プロセスの透明化、簡素化
○情報共有
詳細設計、施工図等の図面作成、変更に関る
効率化、迅速化、高品質化、ペーパーレス化
○資機材の電子
調達
入 札
設 計
顧客・発注者
受注・契約
設計者
設計者
コンサルタント
企 業
企 画
○協力会社の募集
施工部門
設計部門
・選択肢の拡大
によるコスト
の削減
・共同購入によ
る調達コスト
の削減
・調達の合理化
サプライヤー
管理部門
○ビジネスプロセスの効率化
施工
生産性の向上、事務処理の迅速化、
意思決定のスピードアップ
協力会社
○ビジネス分析の効率化
営業活動状況、生産状況、財務状況、
資産保有状況等の経営者による確認、
分析作業の効率化
解 体
リニューアル
維持管理会社
○情報共有
完成・引渡
工程管理等に関る 業務の効率化、迅 速化
維持・管理
○情報共有
ライフサイクルデータの標準化、共有化によるコスト削減、工期、納期の短縮
(注)※CALS/EC
公共事業支援統合情報システム。2004年度までにすべての直轄工事での導入を予定。
ITを活用した新たなビジネス
建設業
1.
建設業の周辺事業領域からの展開
保有技術、実績を商品としたコンサルティング
2.
パートナーとの情報共有によるサービス提供型ビジネス
建設プロジェクトのライフサイクルデータを標準化して共有し、
ASP、施設管理、資産評価・運用、リニューアル、サイト運営な
どのサービスの提供、業務の代行
3.
インターネットによる不特定多数を顧客としたビジネス
ポータルサイトを活用した、与信・決済、保険、広告、Web サー
バーインフラ整備などの業務代行サービス等。
資料出所:日建連(企画委員会報告書「ITと建設業」2001年4月)
IT化は経済社会の様々な面に影響を及ぼしており、建設業においても例外ではない。
建設業への影響としては、現時点では主として建設生産の効率化の面にあらわれつつあるが、今後は
ITを活用した新たなビジネスの展開も期待される。
25