【沖縄大学】 【Okinawa University】 Title Author(s) Citation Issue Date URL Rights バスケットボール授業における認知的トレーニングの有 用性 竹内, 俊介; 岩田, 昌太郎; 嘉数, 健悟; 二宮, 亜紀子 広島体育学研究 = Hiroshima Journal of Physical Education, 37: 11-17 2011 http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/okinawa/10102 広島体育学会 広島体育学研 究 3 7・I I- 1 7.2 0日 〔実践研究〕 パスケッ トボール授業における認知的トレーニングの有用性 内回数宮 竹 岩 嘉 二 俊介‘ 昌太郎帥 健悟山 亜紀子' A StudyontheAvailabilityofCognitionTraininginTeaching Basketball ShunsukeTAKEUCHI (HiroshimaU n i v e r s i t ぁG raduateS c h o o lofEducation, M a s t e r ' sProgrami nL i f e l o n gA c t i v i t i e sE d u c a t i o n ) ShotaroIWATA (HiroshimaU n i v e r s i t y , GraduateS c h o o lo f E d u c a t i o n ) KengoKAKAZU (HiroshimaU n i v e r s i t ぁG raduateS c h o o lo fEducation, D o c t o r a lProgrami nAr t sandS c i e n c eE d u c a t i o n ) Ak ikoNINOMIYA (HiroshimaU n i v e r s i t y , GraduateS c h o o lofEducation, M a s t e r ' sProgrami nL i f e l o n gA c t i v i t i e sE d u c a t i o n ) Abstract c o g n i t i o nt r a i n i n g "i nt e a c h i n gb a s k e t b a l l Thepurposeo ft h i sstudyi st odemonstratet h a t“ improvedt h eperformanceo fd e c i s i o n m a k i n gbyj u n i o rh i g h s c h o o ls t u d e n t sd u r i n gagame. Wehaveg o ttwof i n d i n g s ;1 )a f t e rt h et r a i n i n g, t h ep r o p o r t i o no fa p p r o p r i a t ed e c i s i o nmakingt h e s t u d e n t sd i dwhent h e ywerep o s s e s s i n gab a l li nat h r e e o n t h r e egamewasi n c r e a s e dby31 .7 9 もf o r s h o o t i n g, 23.7%f o rp a s s i n g ,5 9 . 0% f o rkeepingap o s s e s s i o no fab a l l.2 )With“ c o g n i t i o nt r a i n i n g ", morethan95%o fthes t u d e n t swerea b l et omakea p p r o p r i a t ed e c i s i o n s,basedons t r a t e g i c knowledg 巴o fp l a y i n gb a s k e t b a l l . -広 島大学大学院教育学研究科 生涯活動教育学専攻 "広 島大学大学院教育学研究科 山 広 島大学大学院教育学研究科 文化開発教育学専攻 広島体育学研究第 3 7巻 平 成 2 3年 3月 ところで.バスケットボールの「戦術学宵」に 1.問題の所在 おいて,ゲームパフォーマンスを向上させる大き な要凶の lつに状況判断力を高めることが注目 世界の球技は. 300- 400種類存在し,その中 でもサッカー,バスケットボール,バレーボール r されている O 例えば.鬼i 宰ら ( 2 0 0 4 .2 0 0 6 .2 0 0 7 a . 2 0 0 7 b .2 0 0 8 ) は.適切な状況判断を下すには判 は競技人口も多く. 世界三大球技Jとも言われ 断根拠となるプレー選択に関する戦術的知識が ている 。 さらに,学校体育で実施されている種目 必要で.この有無が状況判断力の優劣と積核的な の約 3割が,上記の 3つの種 目を中心とした球技 関係にあり,ゲームパフォーマンスを効果的に発 であり,年間指導計画の中で大きな位置づけと 揮する ためにも 重要な学習内容であると述べてい なっている(鈴木ら. 2 0 0 8 )。 しかしながら,学 る。 ここでの状況判断力とは,鬼津ら ( 2 0 0 4)に 校現場における球技の授業のイメージといえば, よると.適切な判断根拠をもとに行動することで 技術指導中心や生徒に任せっきりのゲーム中心の あり,ボール保持者が状況に応じたプレーを判 授業になっている場合が多いように恩われ,観点 断(シュート・パス・ボールキープの 3種類のプ 別評価の 「 知識・理解 Jの育成を意図した指導も レーの選択)できる能力のことである 。 また.鬼 重要な視点である 。 海ら ( 2 0 0 8 ) は,アウ トナ ンバーゲーム単元は状 一方,新しい中学校学習指導要領では,球技の 況判断場面に直面する学習者数や l人あたりの直 内容として「攻防を展開する際に共通してみられ 面回数がイーブンナンバーゲーム単元よりも状況 るボール操作などに関する動きとボールを持たな 判断の学習機会が多く保証できることを実証して いときの動きについての学習課題に着目 Jするこ いる 。 とが明確に位置付けられている。この 中で球技は r r r 以上を踏まえると. 戦術学習」で.戦術的知 「ゴール型 J . ネット 型J. ベースボール型」の 識を学 ばせることにより,ゲームパフォーマンス 類型別で示すことが提示されている 。 ところが, の優劣を規定する状況判断力を向上させることが 現状では球技において,それぞれの類型の戦術内 できると考えられる 。しかしなが ら,鬼津ら (2ω8) 容は示せておらず,学習課題を設定できないとい の研究では . 10時間の 単元全体においてシュー う点で,誰もが安定した学習成果を保障し得 る指 ト場面, ボールキープ場面に 直面しな かった学習 導の在り方は不明瞭な点が多々あると考えられ 者の割合が.それぞれ約 2割,約 l割であるとい る。すなわち,学校現場の授業時間数では,基本 う問題点があり,多くの生徒が状況判断場面に直 r ( 1 9 9 7 )は.認知的トレー 的技術の向上をあまり期待できない上. 技術指 面していない。勝田隆ら 導」と「ゲーム中の技術の用い方の指導」との聞 ニングとして, 学習者 に映像を 表示し, 判断根拠 に大きなギャップがあり,教師が生徒の技術習得 をもとに状況判断をさせフィードパックすること とゲームパフォーマンスを向上させるための指導 が状況判断の早さや正確性が向上すると述べてい との調和を図るうえで多くの課題がある ( G r i f f i n e ta l .. l9 9 7 )。 る。すなわち.全体に映像を表示し状況判断を させ,正解をフィードパックすることで,実際の このような諸問題を解決する糸口の lっとし r て.近年. 戦術学習 Jが脚光を浴びている 。「 戦 r 術学習 Jとは. 技術と戦術の関係を 具体的に 示 体験ではないものの,それに近い状況判断場面を 生徒に効率的に経験させることができると思われ る。 すことによって,戦術的な問題を解決しようとす 2 . 研究目的 ることであり.ゲームの授業を改善させたいとい う要求に応えるもの Jと定義されている e ta l .. l997)。 ( G r i f f i n 本研究では,中学校におけるバスケッ トボール - 12- バスケ ットボール授業における認知的トレーニ ングの有用性 r の授業において. 認知的トレーニング J注 J )を 定した明確な判断根拠の存在する静止画を 参考に 用いたことで.生徒が状況判断をもとにプレーす , 実際 し作成したトレーニングである 。図 lは ることができるようになったのかについて調査す に使用した「認知的トレーニング」の問題例であ ることを目的とした。具体的な目的としては,以 2限-4限においては.ボール保持者の状況 判断(シュート・パス・ボールキープの 3種類の 下の 2点から検討した。授業中に「認知的トレー る 。 ニング」を用いたことで, ①戦術的知識における プレーの選択) を口答で答えさせた。5限 -11 瞬間的なボール保持者の状況判断が向上したの 限においては, 口答での状況判断の適切率が高 か. ② ゲーム中のボール保持者の状況判断力が向 まってきたので,子ども達が下したボール保持者 上したのかについて調査した。以上より,生徒が の状況判断 ( シ ュート・パス ・ボールキープの 3 状況判断をもとにプレーできるようにな ったのか 種類のプレーの選択) を実際のプレーに生かせる を明らかにした 。 ようにジ ェスチャーによって反応させた。 なお, 3 . 研究方法 表 1 単元指導計画(全 12時間) 3 .1.調査対象 9名 調査対象は,広島県内の S中学 l年男子 3 とした 。生徒の実態として ,部活動でバスケ ッ ト 1 オリエンテー ション ボールに所属している生徒は多数いたものの.所 属していなかった生徒との技能に 差 はみられな 2 ゲーム <前> かった。 また,体育の授業への意欲は高 く,活発 に取り組む生徒が多かった。なお調査時期は,平 1年 1 1月 平成 2 1年 1 2月の約 1か月とした。 成2 3 4 練習 3.2.授業計画とその概要 授業は.中学校における「ゴール型」の球技で 2時間 実践した。単 あるバスケットボールを全 1 5 ゲーム<中 > 元指導計画は .S中学校の教職員との相談のもと. ボール保持者の状況判断(シュート ・パス・ボー 6 戦術的知識に 関する学習 ルキープの 3種類のプレーの選択)及び非ボール 保持者の空間に走り込むなど動きの理解・習得を 目指して以下のように筆者が構成 ・実施した。具 7 体的には,ゲーム.ゲームの反省.その反省を生 8 練習 かして練習ができるように, ゲーム ,戦術的知識 に関する 学習.練習が繰り返されるように構成し 9 戦術的知識に 関する 学習 た。 また,ボール保持者の状況判断カを向上させる ために第 2限 第1 1限を通して導入の部分にお 1 0 いて 「 認知的トレーニング」を 実施した 。「認知 1 1 練習 宰ら ( 2 0 0 4)が,実際 的トレーニング」 とは,鬼i のゲーム中に下される状況判断場面に近づけて設 1 2ゲーム<後 > -1 3一 主な指導内容 -単7cのねらいと流れを理解 -チームわけ -非ボール保持者の動きに関す る学習 -認知的トレ一一ング -ゲーム<前i> -認知的トレーニング 3対1) -鬼ごっこ ( .2人のパッシングゲーム . 2対 2 -認知的トレーーング .3対 1のパ ッシングゲーム .1対 1のピボ ット .2対 2 -認知的トレーニング -ゲーム<中> -認知的トレ一一ング -非ボール保持者の動きに関す る学習 -ゲーム<中>の反省 -認知的トレーニング . vカット . 2対 2 -認知的トレーニング . 3人のパッ シングゲーム . 3対 3 -認知的トレ一一ング -非ボール保持者の動きに関す る学習 -認知的トレーニング . 3対 2 . 3対 3 -認知的トレ一一ング . 3対 2 . 3対 3 -ゲーム<後> 広島体育学研究第 3 7巻 平 成 2 3年 3月 図1. f 認知的トレーニング」の問題例 ( 3対 3のパス) シュートコースに ディフェンスカfいない 制限区域内の位置で ボールを受けた場合 味方へのパスコースに ディフェンスカfいない シュ ートコースに デイフェンスがいる 味方へのパスコースに ディフェンスがいる →ボールキープ② . 戦術的状況判断のための判断材料とプレー選択の原則(鬼漂 o 2004) 図2 状況判断を下す際,鬼津ら ( 2 0 0 4 ) の戦術状況的 れの位置関係が分かるように収録されている 。問 ) 判断のための判断材料とプレー選択の原則 ( 図2 題となる映像は o 1聞につき 1回ずつ流され,終 を判断根拠として用いた。 わり次第映像が消える 。回答は「認知的トレーニ 3.3 調査内容 種類のプレーから選択させた。 なお,判断場面 ング」同様にシュート ・パス ・ボールキー プの 3 授業中に「認知的トレーニング Jを用いたこと lO秒」で行ったが. の映像の提示時聞は単元前 f ) 戦術的知識における瞬間的なボール保持 で. 1 80%以上の正解数であったため.単元後は f 1秒 J 者の状況判断が向上, また 2) ゲーム中のボール と し 条 件 を 厳 し く し た。 保持者の状況判断力が向上したのかについて調査 するため.それぞれ,戦術的状況判断テスト(鬼 2 0 0 4 ) ゲームパフォーマンス評価法(宣ame 浮ら . 0 2 ) GPAI GPAIは.信頼されるゲームパフォーマンスの E e r f o r m a n c eAssessmentl n s t r u m e n t:以下, 評価を行うために開発されたもので,パフォーマ GPAIと略記) ( G r i f f i ne ta . l1 9 9 7 ) を用いた。 ンス行動を観察 ・コード化する道具として生み出 された評価法である ( G r i f f i ne ta l .. l9 9 7 )。本研究 では.ゲーム中の戦術的課題を解決する能力であ 1)戦術的状況判断テスト 戦術的状況判断テストとは,プレーヤーの視線 る状況判断力に着目した。つまり,生徒が技能を に近い画像から状況判断力を評価できるテストで うまく発栂できなかったとしても,正しい状況判 0 0 4 )。映像は,ゴール正面,右 ある(鬼浮ら. 2 ) が下されていれば評価を行った。以下 断(図 2 サイド,左サイドという 3か所からの攻撃を想定 に本研究におけるデータ収集を具体的に示す。 し.ゴール,オフェンス,ディフェンスのそれぞ 単元前後における 3対 3のイーブンナンバー - 14- バスケ ットボール授業における認知的トレーニ ングの有用性 ゲーム(各試合 3分間)の様子を SANYO社 製 4 . 結果と考察 のデジタルビデオカメラで撮影しその映像から GPAIを行った。評価は .H大学バ スケットボー ル部員 3名(バスケットボール歴 9-11年の熟 4 . 1 . 戦術的状況判断テストの結果と考察 練者)で、行った。まず,状況判断場面における選 表 2は,単元前後 における戦術的状況判断テス 択したプレーに関して 3人が適切なプレ ーかどう トの結果を 表 したものであり .r T o t al J . rシュ ー かを協議し. 2人以上が適切と評価したものを採 トの問題 J . パスの問題j 及び「ボールキープの 用した。; 音、見が異なった場合は. 2人以上の意見 問題 j の正答数の結果について表している 。4つ が一致するまで協議を行った。 の項目の単元の前後を通した正答数の変化を見る 3. 4.分析方法 ら1 9. 41: t2 . 4 8( 9 7 % ) へと増加. シュ ート の問 1)戦術的状況判断テストの分析方法 題 ( 8問 ) Jは 6 . 7 4土 2 . 16( 8 4 % ) から 7 . 8 5: t0 . 8 1 r と. r T o t a !( 2 0問) J は. 1 6 . 6 1: t4 . 9 2( 8 3%) か r 戦術的知識における瞬間的なボール保持者の状 r . ( 9 8 % )へと増加 パスの問題 ( 8問)Jは 6 . 3 9: t2 . 3 7 況判断が向上したかどうかを検証するため,単元 ( 8 0 %に か ら 7 . 7 7: t0 . 9 3( 9 7 % ) へと増加. r ボー の前後において戦術的状況判断テストにより評 ルキープの問題 ( 4問 ) Jは3 . 4 7: t1 .0 1 (87%) . 価した。分析は. rシュート J . rパス J .rボール から 3 . 7 9: t0 却 ( 9 5 % )へと全項目とも増加した。 キープJの問題における単元前後の正解数の変化 I秒以内の状況判断場面の提示で.95%以上が適 について対応がある t検定を行 った。なお,統計 切な状況判断ができるようになり 処理には,統計用ソフト S PSS17. 0 ]f o rWindows ニング」による 生徒の瞬間的な状況判断力が向上 を使用しいずれの場合も有意水準は 5% 未満 ( p したと思われる 。実際の授業に おいても,授業を <0. 0 5 ) とした。 . r認知的トレー かさねるに つれて 「 認知的ト レーニング」 時の生 徒の状況判断のスピードや正確さが高まっていた 2 )GPAIの分析方法 と思われる 。 また,授業実践者及び観察者の観察 実際のゲームにおいてボール保持者の状況判断 を通して.ゲーム中や練習においてバスケ ッ ト が向上するのかを調査するため,単元の前後にお ボール部員が状況判断を無視し単独でプレーす いて GPAIにより評価した 。分析は.状況判断場 ること及びパスを行うべき状況であるにもかかわ 面における単元前後の適切なプレーの割合の変化 らず,技能が極端に低い生徒にパスをしないとい について対応がある t検定を行った。 なお,統計 うプレーがほとんど見られず,適切に状況判断し P S S 1 7 . 0 ]f o rWindows 処理には.統計用ソフト S プレーするよ うになったこと が見取れた。すなわ を使用し,いずれの場合も有意水準は 5% 未満 (p ち.生徒は個人の能力ではなく,デイフェンスの <0 . 0 5)とした。 有無や位置という適切な判断根拠をもとにプレー することができるようになったと考えられる 。 表2 . 戦術的状況判断テストの結果 パスの問題 ( 8問) 単元前 6 . 7 4: t2 . 16 I84% t2 . 3 7 I80% 6 . 3 9: 3 . 47: t1 .0 1 単元後 7 . 8 5: t0 . 8 1 I98% 3 . 7 2 8 申 ・ t0 . 9 3 I97% 7 . 7 7: 3 . 8 5 9 ' " 3 . 7 9: t0 . 8 0 I95% 1 9. 41: t2 . 48I97% 4 . 2 3 4 ・ , . 2 . 0 8 6 ' ,: pく. 0 5 . . :p<. 0 1 :pく. ∞ 1 t値 ※平均点±標準偏差 ボールキープの問題 ( 4問) T o t a ! シュートの問題 ( 8問) 0問) ( 全2 I87% 1 6 . 6 1: t4 . 9 2 I83% 山 広島体育学研究第 3 7巻 平 成 2 3年 3月 表 3 ゲームパフォーマンス評価法 (GPAI)の結果 単元前 シュート場面 パス場面 ボールキープ 場面 T o t a ! 直面回数 適切なプレー数 2 0回 1 1回 4 5回 2 4回 3 5回 6回 9 8同 4 1回 適切なプレー割合数 55.0% 55.8% 1% 1 7. 41 .8% 直面回数 適切なプレー数 1 5回 1 3回 4 4回 3 5閏 4 6回 3 5回 1 0 5回 8 3回 適切なプレー割合数 86.7% 79.5% 有意差 T o t a ! 単元前 〈 単元後 T o t a ! 単元後※ 79.0% 7 6. 1% • :p < . 0 5 . . :p < . O l . . . :p < . O O l 判断力に着目し. 1 認知的トレーニング」をバス 4 . 2 . GPAIの結果と考察 表 3は,単元の前後に行った 3対 3のイーブン ケットボールの授業に導入することで,戦術的知 ナンバーゲームの映{象を GPAIによって評価した 識とゲーム中のボール保持者の状況判断力を戦術 ものである。表 3から分かるように,単元の前後 的状況判断テスト. GPAIを 用 い て 測 定 し 生 徒 における適切なプレーの割合 (TotaO は. 41 .8% が状況判断をもとにプレーすることができるよう から 7 9 . 0 %と増加した ( pく0 . 0 5 )。このことから, になったのかを調査した。その結果,以下の 2点 単元の前後で実際のゲームにおける状況判断力が が明らかとなった。 向上 Lたことが認められた。さらに. 1 シュート 1 ) 1認知的トレーニング j の実施により,戦術的 .1 パス場面 J .1 ボールキープ場面」の単元 場面 J 知識における瞬間的なボール保持者の状況判断 の前後における適切なプレーの割合の変化を見る に関して 95%以上の生徒が適切な状況判断を と.それぞれ 31 .7%. 2 3 . 7 % .5 9 . 0 %増 加 し 特 に することできるようになった。 「ボールキープ場面」の適切なプレーの割合の増 2 ) 1認知的トレーニング」を実施したことで 3対 3のイーブンナンバーゲームにおける適切なプ 加が顕著で、あった。 授業では.状況判断力を高めることを強調して レーの割合が.1 シュート場面」で 3 1 .7%増.1 パ 指導しており,生徒同士でも「キープ!キープ!J ス場面」で 2 3.7%増. 1 ボールキープ場面 Jで などと大声で後押しをする場面や「今のプレーは, 5 9 . 0 %増とゲーム場面におけるボール保持者の 今 状況判断はできていた(プレー不成功時)J. I 状況判断力が向上した。 のプレーは,シュートだよ」とプレーに対する反 本研究では.ボール保持者の状況判断力に着目 省やアドバイスを送る生徒の姿が,授業実践者及 し,それをシュート・パス・ボールキープの 3種 び観察者から見取れた。つまり,生徒はプレーの 類とした。しかし「実際のゲームにおけるボー 成功・不成功よりも適切な状況判断を行うことに ル保持の時間は非常に短く,むしろボールを持っ 注意を向けるようになっていたと考えられる。こ ( 藤 ていないときの動きがゲームの大半を占める J のことが,適切なプレーの割合の増加に影響を与 井ら. 2 0 0 3 ) ため,その視点からの学習が必要に えたのではないかと推察できる。 なってくる。よって,ボール非保持者の状況判断 の定義づけ及びその能力の向上を目指した授業実 5 . まとめ 践の蓄積が必要となる。 また,本研究は,比較の対象として統制群を設 本研究では,中学 1年生男子 3 9名を対象にパ けていない。したがって,他の経験や学習の発達, フォーマンスを向上させる要因の Iつである状況 同じテストを繰り返し行うことなどにより得点が - 16- バスケットボール授業における認知的トレーニングの有用性 伸びたという可能性を含んでいる。つまり,得点 5 文部科学省 ( 2 0 0 8 ) 中学校学宵指導要領解説 香保健体育編.東山書房. の伸びをすべて授業に帰属することはできない。 今後,さらに様々な視点からの事例を積み重ねる 6 .鬼津陽子・高橋健夫・岡出美則・吉永武史 ( 2 0 0 4 ) 中でより広範聞に適応できる結果を得たいと考え バスケットボールの攻撃の映像を用いた戦術 ている。 的状況判断テスト作成の試み.体育科教育学 研究, 2 0( 2 ) :1 1 1 くj 主〉 7 . 鬼浮陽子・高橋健夫・岡出美則 ・吉永武史・ 2 0 0 6 ) 小学校体育授業のバスケット 高谷昌 ( 1)本研究では,全体に映像を表示し戦術的状況 ボールにおける状況判断力向ヒに関する検討 判断のための判断材料とプレー選択の原則(鬼 ーシュートに関する戦術的知識の学背を通し 津 , 2 0 0 4 ) に則った状況判断させ正解をフィー てー.スポーツ教育学研究, 2 6( l ) :1 1 2 3 . ドバックするトレーニングを「認知的トレーニ 8 鬼津陽子・岡出美則・小松崎敏・高橋健夫 ( 2 0 0 7 a ) アウトナンバーゲームを取り入れた ング」とした。 バスケットボール授業における状況判断力 引用参考文献 の向上 日本スポーツ教育学研究, 2 6( 2 ): 5 9 7 4 . 1 藤井喜一・岩田靖・佐藤靖 ( 2 0 0 3 ) 特集「み 9 . 鬼津陽子・小松崎敏・岡出美則・高橋健夫・ んなが併1びる I ボール運動H球技jの授業 J i球 斉藤勝史・篠田淳志 ( 2 0 0 7 b ) 小学校高学年 技の分類と学習内容を考えるーハンドボール のアウトナンバーゲームを取り入れたパスッ を素材として J 体育科教育:10-17 ケトボール授業における状況判断力の向上. 2・2 8 9 3 0 2 . 体育学研究, 5 2 .G r i f f i n, L . ,S . M i t c h e l , l and, JOslon ( 19 9 7 ) TeachingSportConceptsandS k i l l s 1 0 . 鬼津陽子・小松崎敏・吉永武史・岡出美則・ AT a c t i c a lGamesApproach- HUMAN 高橋健夫 ( 2 0 0 8 ) 小学校 6年生のバスケット KINETICS. ボール授業における 3対 2アウトナンバー 3 .G r i f f i n, L . ,S . M i t c h e l ,land, JO slon [著]・高橋 ゲームと 3対 3イーブンナンバーゲームの比 1 9 9 9 ) ボール運動 健夫・岡出美則[監訳] ( 較ーゲーム中の状況判断力及びサポート行動 の指導プログラム 3 9 4 6 2 . に着目してー.体育学研究, 53:4 楽しい戦術学習の進め方 2 0 0 8 ) 1 1 鈴木理・庚瀬勝弘・士田了輔・鈴木直樹 ( 一.大修館書!占. 4 .勝田隆・栗本一博 ( 1 9 9 7 )大学生ラグビープレー ヤーに対する認知的トレーニングの効果.仙 台大学紀要, 2 9( 1 ) :1 11 . - 1 7一 ボールゲームの課題解決過程の基礎的検討. 4( 1 ) :1 11 . 体育科教育学研究, 2
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