見る/開く

【沖縄大学】
【Okinawa University】
Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
Rights
バスケットボール授業における認知的トレーニングの有
用性
竹内, 俊介; 岩田, 昌太郎; 嘉数, 健悟; 二宮, 亜紀子
広島体育学研究 = Hiroshima Journal of Physical Education,
37: 11-17
2011
http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/okinawa/10102
広島体育学会
広島体育学研 究
3
7・I
I- 1
7.2
0日
〔実践研究〕
パスケッ トボール授業における認知的トレーニングの有用性
内回数宮
竹 岩 嘉 二
俊介‘
昌太郎帥
健悟山
亜紀子'
A StudyontheAvailabilityofCognitionTraininginTeaching
Basketball
ShunsukeTAKEUCHI
(HiroshimaU
n
i
v
e
r
s
i
t
ぁG
raduateS
c
h
o
o
lofEducation,
M
a
s
t
e
r
'
sProgrami
nL
i
f
e
l
o
n
gA
c
t
i
v
i
t
i
e
sE
d
u
c
a
t
i
o
n
)
ShotaroIWATA
(HiroshimaU
n
i
v
e
r
s
i
t
y
,
GraduateS
c
h
o
o
lo
f
E
d
u
c
a
t
i
o
n
)
KengoKAKAZU
(HiroshimaU
n
i
v
e
r
s
i
t
ぁG
raduateS
c
h
o
o
lo
fEducation,
D
o
c
t
o
r
a
lProgrami
nAr
t
sandS
c
i
e
n
c
eE
d
u
c
a
t
i
o
n
)
Ak
ikoNINOMIYA
(HiroshimaU
n
i
v
e
r
s
i
t
y
,
GraduateS
c
h
o
o
lofEducation,
M
a
s
t
e
r
'
sProgrami
nL
i
f
e
l
o
n
gA
c
t
i
v
i
t
i
e
sE
d
u
c
a
t
i
o
n
)
Abstract
c
o
g
n
i
t
i
o
nt
r
a
i
n
i
n
g
"i
nt
e
a
c
h
i
n
gb
a
s
k
e
t
b
a
l
l
Thepurposeo
ft
h
i
sstudyi
st
odemonstratet
h
a
t“
improvedt
h
eperformanceo
fd
e
c
i
s
i
o
n
m
a
k
i
n
gbyj
u
n
i
o
rh
i
g
h
s
c
h
o
o
ls
t
u
d
e
n
t
sd
u
r
i
n
gagame.
Wehaveg
o
ttwof
i
n
d
i
n
g
s
;1
)a
f
t
e
rt
h
et
r
a
i
n
i
n
g,
t
h
ep
r
o
p
o
r
t
i
o
no
fa
p
p
r
o
p
r
i
a
t
ed
e
c
i
s
i
o
nmakingt
h
e
s
t
u
d
e
n
t
sd
i
dwhent
h
e
ywerep
o
s
s
e
s
s
i
n
gab
a
l
li
nat
h
r
e
e
o
n
t
h
r
e
egamewasi
n
c
r
e
a
s
e
dby31
.7
9
もf
o
r
s
h
o
o
t
i
n
g,
23.7%f
o
rp
a
s
s
i
n
g
,5
9
.
0% f
o
rkeepingap
o
s
s
e
s
s
i
o
no
fab
a
l
l.2
)With“
c
o
g
n
i
t
i
o
nt
r
a
i
n
i
n
g
",
morethan95%o
fthes
t
u
d
e
n
t
swerea
b
l
et
omakea
p
p
r
o
p
r
i
a
t
ed
e
c
i
s
i
o
n
s,basedons
t
r
a
t
e
g
i
c
knowledg
巴o
fp
l
a
y
i
n
gb
a
s
k
e
t
b
a
l
l
.
-広 島大学大学院教育学研究科
生涯活動教育学専攻
"広 島大学大学院教育学研究科
山 広 島大学大学院教育学研究科
文化開発教育学専攻
広島体育学研究第 3
7巻 平 成
2
3年 3月
ところで.バスケットボールの「戦術学宵」に
1.問題の所在
おいて,ゲームパフォーマンスを向上させる大き
な要凶の lつに状況判断力を高めることが注目
世界の球技は. 300- 400種類存在し,その中
でもサッカー,バスケットボール,バレーボール
r
されている O 例えば.鬼i
宰ら (
2
0
0
4
.2
0
0
6
.2
0
0
7
a
.
2
0
0
7
b
.2
0
0
8
) は.適切な状況判断を下すには判
は競技人口も多く. 世界三大球技Jとも言われ
断根拠となるプレー選択に関する戦術的知識が
ている 。 さらに,学校体育で実施されている種目
必要で.この有無が状況判断力の優劣と積核的な
の約 3割が,上記の 3つの種 目を中心とした球技
関係にあり,ゲームパフォーマンスを効果的に発
であり,年間指導計画の中で大きな位置づけと
揮する ためにも 重要な学習内容であると述べてい
なっている(鈴木ら. 2
0
0
8
)。 しかしながら,学
る。 ここでの状況判断力とは,鬼津ら (
2
0
0
4)に
校現場における球技の授業のイメージといえば,
よると.適切な判断根拠をもとに行動することで
技術指導中心や生徒に任せっきりのゲーム中心の
あり,ボール保持者が状況に応じたプレーを判
授業になっている場合が多いように恩われ,観点
断(シュート・パス・ボールキープの 3種類のプ
別評価の 「
知識・理解 Jの育成を意図した指導も
レーの選択)できる能力のことである 。 また.鬼
重要な視点である 。
海ら (
2
0
0
8
) は,アウ トナ ンバーゲーム単元は状
一方,新しい中学校学習指導要領では,球技の
況判断場面に直面する学習者数や l人あたりの直
内容として「攻防を展開する際に共通してみられ
面回数がイーブンナンバーゲーム単元よりも状況
るボール操作などに関する動きとボールを持たな
判断の学習機会が多く保証できることを実証して
いときの動きについての学習課題に着目 Jするこ
いる 。
とが明確に位置付けられている。この 中で球技は
r
r
r
以上を踏まえると. 戦術学習」で.戦術的知
「ゴール型 J
. ネット 型J. ベースボール型」の
識を学 ばせることにより,ゲームパフォーマンス
類型別で示すことが提示されている 。 ところが,
の優劣を規定する状況判断力を向上させることが
現状では球技において,それぞれの類型の戦術内
できると考えられる 。しかしなが ら,鬼津ら (2ω8)
容は示せておらず,学習課題を設定できないとい
の研究では .
10時間の 単元全体においてシュー
う点で,誰もが安定した学習成果を保障し得 る指
ト場面, ボールキープ場面に 直面しな かった学習
導の在り方は不明瞭な点が多々あると考えられ
者の割合が.それぞれ約 2割,約 l割であるとい
る。すなわち,学校現場の授業時間数では,基本
う問題点があり,多くの生徒が状況判断場面に直
r
(
1
9
9
7
)は.認知的トレー
的技術の向上をあまり期待できない上. 技術指
面していない。勝田隆ら
導」と「ゲーム中の技術の用い方の指導」との聞
ニングとして, 学習者 に映像を 表示し, 判断根拠
に大きなギャップがあり,教師が生徒の技術習得
をもとに状況判断をさせフィードパックすること
とゲームパフォーマンスを向上させるための指導
が状況判断の早さや正確性が向上すると述べてい
との調和を図るうえで多くの課題がある
(
G
r
i
f
f
i
n
e
ta
l
..
l9
9
7
)。
る。すなわち.全体に映像を表示し状況判断を
させ,正解をフィードパックすることで,実際の
このような諸問題を解決する糸口の lっとし
r
て.近年. 戦術学習 Jが脚光を浴びている 。「
戦
r
術学習 Jとは. 技術と戦術の関係を 具体的に 示
体験ではないものの,それに近い状況判断場面を
生徒に効率的に経験させることができると思われ
る。
すことによって,戦術的な問題を解決しようとす
2
. 研究目的
ることであり.ゲームの授業を改善させたいとい
う要求に応えるもの Jと定義されている
e
ta
l
..
l997)。
(
G
r
i
f
f
i
n
本研究では,中学校におけるバスケッ トボール
- 12-
バスケ ットボール授業における認知的トレーニ ングの有用性
r
の授業において. 認知的トレーニング J注
J
)を
定した明確な判断根拠の存在する静止画を 参考に
用いたことで.生徒が状況判断をもとにプレーす
, 実際
し作成したトレーニングである 。図 lは
ることができるようになったのかについて調査す
に使用した「認知的トレーニング」の問題例であ
ることを目的とした。具体的な目的としては,以
2限-4限においては.ボール保持者の状況
判断(シュート・パス・ボールキープの 3種類の
下の 2点から検討した。授業中に「認知的トレー
る
。
ニング」を用いたことで, ①戦術的知識における
プレーの選択) を口答で答えさせた。5限 -11
瞬間的なボール保持者の状況判断が向上したの
限においては, 口答での状況判断の適切率が高
か. ② ゲーム中のボール保持者の状況判断力が向
まってきたので,子ども達が下したボール保持者
上したのかについて調査した。以上より,生徒が
の状況判断 (
シ ュート・パス ・ボールキープの 3
状況判断をもとにプレーできるようにな ったのか
種類のプレーの選択) を実際のプレーに生かせる
を明らかにした 。
ようにジ ェスチャーによって反応させた。 なお,
3
. 研究方法
表 1 単元指導計画(全 12時間)
3
.1.調査対象
9名
調査対象は,広島県内の S中学 l年男子 3
とした 。生徒の実態として ,部活動でバスケ ッ ト
1 オリエンテー
ション
ボールに所属している生徒は多数いたものの.所
属していなかった生徒との技能に 差 はみられな
2 ゲーム <前>
かった。 また,体育の授業への意欲は高 く,活発
に取り組む生徒が多かった。なお調査時期は,平
1年 1
1月 平成 2
1年 1
2月の約 1か月とした。
成2
3
4
練習
3.2.授業計画とその概要
授業は.中学校における「ゴール型」の球技で
2時間 実践した。単
あるバスケットボールを全 1
5 ゲーム<中 >
元指導計画は .S中学校の教職員との相談のもと.
ボール保持者の状況判断(シュート ・パス・ボー
6 戦術的知識に
関する学習
ルキープの 3種類のプレーの選択)及び非ボール
保持者の空間に走り込むなど動きの理解・習得を
目指して以下のように筆者が構成 ・実施した。具
7
体的には,ゲーム.ゲームの反省.その反省を生
8
練習
かして練習ができるように, ゲーム ,戦術的知識
に関する 学習.練習が繰り返されるように構成し
9 戦術的知識に
関する 学習
た。
また,ボール保持者の状況判断カを向上させる
ために第 2限
第1
1限を通して導入の部分にお
1
0
いて 「
認知的トレーニング」を 実施した 。「認知
1
1
練習
宰ら (
2
0
0
4)が,実際
的トレーニング」 とは,鬼i
のゲーム中に下される状況判断場面に近づけて設
1
2ゲーム<後 >
-1
3一
主な指導内容
-単7cのねらいと流れを理解
-チームわけ
-非ボール保持者の動きに関す
る学習
-認知的トレ一一ング
-ゲーム<前i>
-認知的トレーニング
3対1)
-鬼ごっこ (
.2人のパッシングゲーム
.
2対 2
-認知的トレーーング
.3対 1のパ ッシングゲーム
.1対 1のピボ ット
.2対 2
-認知的トレーニング
-ゲーム<中>
-認知的トレ一一ング
-非ボール保持者の動きに関す
る学習
-ゲーム<中>の反省
-認知的トレーニング
.
vカット
.
2対 2
-認知的トレーニング
.
3人のパッ シングゲーム
.
3対 3
-認知的トレ一一ング
-非ボール保持者の動きに関す
る学習
-認知的トレーニング
.
3対 2
.
3対 3
-認知的トレ一一ング
.
3対 2
.
3対 3
-ゲーム<後>
広島体育学研究第 3
7巻 平 成 2
3年 3月
図1. f
認知的トレーニング」の問題例 (
3対 3のパス)
シュートコースに
ディフェンスカfいない
制限区域内の位置で
ボールを受けた場合
味方へのパスコースに
ディフェンスカfいない
シュ ートコースに
デイフェンスがいる
味方へのパスコースに
ディフェンスがいる
→ボールキープ②
. 戦術的状況判断のための判断材料とプレー選択の原則(鬼漂 o 2004)
図2
状況判断を下す際,鬼津ら (
2
0
0
4
) の戦術状況的
れの位置関係が分かるように収録されている 。問
)
判断のための判断材料とプレー選択の原則 (
図2
題となる映像は o 1聞につき 1回ずつ流され,終
を判断根拠として用いた。
わり次第映像が消える 。回答は「認知的トレーニ
3.3 調査内容
種類のプレーから選択させた。 なお,判断場面
ング」同様にシュート ・パス ・ボールキー プの 3
授業中に「認知的トレーニング Jを用いたこと
lO秒」で行ったが.
の映像の提示時聞は単元前 f
) 戦術的知識における瞬間的なボール保持
で. 1
80%以上の正解数であったため.単元後は f
1秒 J
者の状況判断が向上, また 2) ゲーム中のボール
と し 条 件 を 厳 し く し た。
保持者の状況判断力が向上したのかについて調査
するため.それぞれ,戦術的状況判断テスト(鬼
2
0
0
4
) ゲームパフォーマンス評価法(宣ame
浮ら .
0
2
) GPAI
GPAIは.信頼されるゲームパフォーマンスの
E
e
r
f
o
r
m
a
n
c
eAssessmentl
n
s
t
r
u
m
e
n
t:以下,
評価を行うために開発されたもので,パフォーマ
GPAIと略記) (
G
r
i
f
f
i
ne
ta
.
l1
9
9
7
) を用いた。
ンス行動を観察 ・コード化する道具として生み出
された評価法である (
G
r
i
f
f
i
ne
ta
l
..
l9
9
7
)。本研究
では.ゲーム中の戦術的課題を解決する能力であ
1)戦術的状況判断テスト
戦術的状況判断テストとは,プレーヤーの視線
る状況判断力に着目した。つまり,生徒が技能を
に近い画像から状況判断力を評価できるテストで
うまく発栂できなかったとしても,正しい状況判
0
0
4
)。映像は,ゴール正面,右
ある(鬼浮ら. 2
) が下されていれば評価を行った。以下
断(図 2
サイド,左サイドという 3か所からの攻撃を想定
に本研究におけるデータ収集を具体的に示す。
し.ゴール,オフェンス,ディフェンスのそれぞ
単元前後における 3対 3のイーブンナンバー
- 14-
バスケ ットボール授業における認知的トレーニ ングの有用性
ゲーム(各試合 3分間)の様子を
SANYO社 製
4
. 結果と考察
のデジタルビデオカメラで撮影しその映像から
GPAIを行った。評価は .H大学バ スケットボー
ル部員
3名(バスケットボール歴 9-11年の熟
4
.
1
. 戦術的状況判断テストの結果と考察
練者)で、行った。まず,状況判断場面における選
表 2は,単元前後 における戦術的状況判断テス
択したプレーに関して 3人が適切なプレ ーかどう
トの結果を 表 したものであり .r
T
o
t
al
J
. rシュ ー
かを協議し. 2人以上が適切と評価したものを採
トの問題 J
. パスの問題j 及び「ボールキープの
用した。;
音、見が異なった場合は. 2人以上の意見
問題 j の正答数の結果について表している 。4つ
が一致するまで協議を行った。
の項目の単元の前後を通した正答数の変化を見る
3.
4.分析方法
ら1
9.
41:
t2
.
4
8(
9
7
%
) へと増加. シュ ート の問
1)戦術的状況判断テストの分析方法
題 (
8問 )
Jは 6
.
7
4土 2
.
16(
8
4
%
) から 7
.
8
5:
t0
.
8
1
r
と. r
T
o
t
a
!(
2
0問)
J は. 1
6
.
6
1:
t4
.
9
2(
8
3%) か
r
戦術的知識における瞬間的なボール保持者の状
r
.
(
9
8
%
)へと増加 パスの問題 (
8問)Jは 6
.
3
9:
t2
.
3
7
況判断が向上したかどうかを検証するため,単元
(
8
0
%に か ら 7
.
7
7:
t0
.
9
3(
9
7
%
) へと増加. r
ボー
の前後において戦術的状況判断テストにより評
ルキープの問題 (
4問 )
Jは3
.
4
7:
t1
.0
1 (87%)
.
価した。分析は. rシュート J
. rパス J
.rボール
から 3
.
7
9:
t0
却 (
9
5
%
)へと全項目とも増加した。
キープJの問題における単元前後の正解数の変化
I秒以内の状況判断場面の提示で.95%以上が適
について対応がある t検定を行 った。なお,統計
切な状況判断ができるようになり
処理には,統計用ソフト S
PSS17.
0
]f
o
rWindows
ニング」による 生徒の瞬間的な状況判断力が向上
を使用しいずれの場合も有意水準は 5%
未満 (
p
したと思われる 。実際の授業に おいても,授業を
<0.
0
5
) とした。
.
r認知的トレー
かさねるに つれて 「
認知的ト レーニング」 時の生
徒の状況判断のスピードや正確さが高まっていた
2
)GPAIの分析方法
と思われる 。 また,授業実践者及び観察者の観察
実際のゲームにおいてボール保持者の状況判断
を通して.ゲーム中や練習においてバスケ ッ ト
が向上するのかを調査するため,単元の前後にお
ボール部員が状況判断を無視し単独でプレーす
いて GPAIにより評価した 。分析は.状況判断場
ること及びパスを行うべき状況であるにもかかわ
面における単元前後の適切なプレーの割合の変化
らず,技能が極端に低い生徒にパスをしないとい
について対応がある t検定を行った。 なお,統計
うプレーがほとんど見られず,適切に状況判断し
P
S
S
1
7
.
0
]f
o
rWindows
処理には.統計用ソフト S
プレーするよ うになったこと が見取れた。すなわ
を使用し,いずれの場合も有意水準は 5%
未満 (p
ち.生徒は個人の能力ではなく,デイフェンスの
<0
.
0
5)とした。
有無や位置という適切な判断根拠をもとにプレー
することができるようになったと考えられる 。
表2
. 戦術的状況判断テストの結果
パスの問題
(
8問)
単元前
6
.
7
4:
t2
.
16 I84%
t2
.
3
7 I80%
6
.
3
9:
3
.
47:
t1
.0
1
単元後
7
.
8
5:
t0
.
8
1 I98%
3
.
7
2
8
申
・
t0
.
9
3 I97%
7
.
7
7:
3
.
8
5
9
'
"
3
.
7
9:
t0
.
8
0 I95% 1
9.
41:
t2
.
48I97%
4
.
2
3
4
・
,
.
2
.
0
8
6
'
,:
pく.
0
5 .
.
:p<.
0
1
:pく.
∞ 1
t値
※平均点±標準偏差
ボールキープの問題
(
4問)
T
o
t
a
!
シュートの問題
(
8問)
0問)
(
全2
I87% 1
6
.
6
1:
t4
.
9
2 I83%
山
広島体育学研究第 3
7巻 平 成 2
3年 3月
表 3 ゲームパフォーマンス評価法 (GPAI)の結果
単元前
シュート場面
パス場面
ボールキープ
場面
T
o
t
a
!
直面回数
適切なプレー数
2
0回
1
1回
4
5回
2
4回
3
5回
6回
9
8同
4
1回
適切なプレー割合数
55.0%
55.8%
1%
1
7.
41
.8%
直面回数
適切なプレー数
1
5回
1
3回
4
4回
3
5閏
4
6回
3
5回
1
0
5回
8
3回
適切なプレー割合数
86.7%
79.5%
有意差
T
o
t
a
!
単元前
〈
単元後
T
o
t
a
!
単元後※
79.0%
7
6.
1%
• :p
<
.
0
5 .
.
:p
<
.
O
l .
.
.
:p
<
.
O
O
l
判断力に着目し. 1
認知的トレーニング」をバス
4
.
2
. GPAIの結果と考察
表 3は,単元の前後に行った 3対 3のイーブン
ケットボールの授業に導入することで,戦術的知
ナンバーゲームの映{象を GPAIによって評価した
識とゲーム中のボール保持者の状況判断力を戦術
ものである。表 3から分かるように,単元の前後
的状況判断テスト. GPAIを 用 い て 測 定 し 生 徒
における適切なプレーの割合 (TotaO は. 41
.8%
が状況判断をもとにプレーすることができるよう
から 7
9
.
0
%と増加した (
pく0
.
0
5
)。このことから,
になったのかを調査した。その結果,以下の 2点
単元の前後で実際のゲームにおける状況判断力が
が明らかとなった。
向上 Lたことが認められた。さらに. 1
シュート
1
)
1認知的トレーニング j の実施により,戦術的
.1
パス場面 J
.1
ボールキープ場面」の単元
場面 J
知識における瞬間的なボール保持者の状況判断
の前後における適切なプレーの割合の変化を見る
に関して 95%以上の生徒が適切な状況判断を
と.それぞれ 31
.7%. 2
3
.
7
%
.5
9
.
0
%増 加 し 特 に
することできるようになった。
「ボールキープ場面」の適切なプレーの割合の増
2
)
1認知的トレーニング」を実施したことで 3対
3のイーブンナンバーゲームにおける適切なプ
加が顕著で、あった。
授業では.状況判断力を高めることを強調して
レーの割合が.1
シュート場面」で 3
1
.7%増.1
パ
指導しており,生徒同士でも「キープ!キープ!J
ス場面」で 2
3.7%増. 1
ボールキープ場面 Jで
などと大声で後押しをする場面や「今のプレーは,
5
9
.
0
%増とゲーム場面におけるボール保持者の
今
状況判断はできていた(プレー不成功時)J. I
状況判断力が向上した。
のプレーは,シュートだよ」とプレーに対する反
本研究では.ボール保持者の状況判断力に着目
省やアドバイスを送る生徒の姿が,授業実践者及
し,それをシュート・パス・ボールキープの 3種
び観察者から見取れた。つまり,生徒はプレーの
類とした。しかし「実際のゲームにおけるボー
成功・不成功よりも適切な状況判断を行うことに
ル保持の時間は非常に短く,むしろボールを持っ
注意を向けるようになっていたと考えられる。こ
(
藤
ていないときの動きがゲームの大半を占める J
のことが,適切なプレーの割合の増加に影響を与
井ら. 2
0
0
3
) ため,その視点からの学習が必要に
えたのではないかと推察できる。
なってくる。よって,ボール非保持者の状況判断
の定義づけ及びその能力の向上を目指した授業実
5
. まとめ
践の蓄積が必要となる。
また,本研究は,比較の対象として統制群を設
本研究では,中学 1年生男子 3
9名を対象にパ
けていない。したがって,他の経験や学習の発達,
フォーマンスを向上させる要因の Iつである状況
同じテストを繰り返し行うことなどにより得点が
- 16-
バスケットボール授業における認知的トレーニングの有用性
伸びたという可能性を含んでいる。つまり,得点
5 文部科学省 (
2
0
0
8
) 中学校学宵指導要領解説
香保健体育編.東山書房.
の伸びをすべて授業に帰属することはできない。
今後,さらに様々な視点からの事例を積み重ねる
6
.鬼津陽子・高橋健夫・岡出美則・吉永武史 (
2
0
0
4
)
中でより広範聞に適応できる結果を得たいと考え
バスケットボールの攻撃の映像を用いた戦術
ている。
的状況判断テスト作成の試み.体育科教育学
研究, 2
0(
2
) :1
1
1
くj
主〉
7
. 鬼浮陽子・高橋健夫・岡出美則 ・吉永武史・
2
0
0
6
) 小学校体育授業のバスケット
高谷昌 (
1)本研究では,全体に映像を表示し戦術的状況
ボールにおける状況判断力向ヒに関する検討
判断のための判断材料とプレー選択の原則(鬼
ーシュートに関する戦術的知識の学背を通し
津
, 2
0
0
4
) に則った状況判断させ正解をフィー
てー.スポーツ教育学研究, 2
6(
l
) :1
1
2
3
.
ドバックするトレーニングを「認知的トレーニ
8 鬼津陽子・岡出美則・小松崎敏・高橋健夫
(
2
0
0
7
a
) アウトナンバーゲームを取り入れた
ング」とした。
バスケットボール授業における状況判断力
引用参考文献
の向上
日本スポーツ教育学研究, 2
6(
2
):
5
9
7
4
.
1 藤井喜一・岩田靖・佐藤靖 (
2
0
0
3
) 特集「み
9
. 鬼津陽子・小松崎敏・岡出美則・高橋健夫・
んなが併1びる I
ボール運動H球技jの授業 J
i球
斉藤勝史・篠田淳志 (
2
0
0
7
b
) 小学校高学年
技の分類と学習内容を考えるーハンドボール
のアウトナンバーゲームを取り入れたパスッ
を素材として
J 体育科教育:10-17
ケトボール授業における状況判断力の向上.
2・2
8
9
3
0
2
.
体育学研究, 5
2
.G
r
i
f
f
i
n,
L
.
,S
.
M
i
t
c
h
e
l
,
l and,
JOslon (
19
9
7
)
TeachingSportConceptsandS
k
i
l
l
s
1
0
. 鬼津陽子・小松崎敏・吉永武史・岡出美則・
AT
a
c
t
i
c
a
lGamesApproach- HUMAN
高橋健夫 (
2
0
0
8
) 小学校 6年生のバスケット
KINETICS.
ボール授業における 3対 2アウトナンバー
3
.G
r
i
f
f
i
n,
L
.
,S
.
M
i
t
c
h
e
l
,land,
JO
slon [著]・高橋
ゲームと 3対 3イーブンナンバーゲームの比
1
9
9
9
) ボール運動
健夫・岡出美則[監訳] (
較ーゲーム中の状況判断力及びサポート行動
の指導プログラム
3
9
4
6
2
.
に着目してー.体育学研究, 53:4
楽しい戦術学習の進め方
2
0
0
8
)
1
1 鈴木理・庚瀬勝弘・士田了輔・鈴木直樹 (
一.大修館書!占.
4
.勝田隆・栗本一博 (
1
9
9
7
)大学生ラグビープレー
ヤーに対する認知的トレーニングの効果.仙
台大学紀要, 2
9(
1
) :1
11
.
- 1
7一
ボールゲームの課題解決過程の基礎的検討.
4(
1
) :1
11
.
体育科教育学研究, 2