648 - 日本機械学会

648 閉空間領域内に吸音体を有する三次元音場の減衰特性の有限要素解析
Damping Analysis of 3D Acoustic Fields Involving Sound Absorption Materials Using FEA
○ 正 山 口 誉 夫 (群 馬 大 )
Takao YAMAGUCHI ,Gunma University,Tenjin-cho1-5-1,Kiryu,Gunma
This paper deals with analysis for acoustic properties of three-dimensional closed sound fields having sound absorption materials. In
this analysis, the sound absorbers can have arbitrary shapes and can be located anywhere in the fields. The fields involve gas and
sound absorbers which are modeled using finite element. A new three-dimensional element are developed for the absorbers. This
element has two damping parameters which are complex density and complex volume elasticity. A new expression is also derived to
get distribution of contribution to modal damping for each element. These approachs are applied to three-dimensional rooms.The
results are compared with the privious experiments carried out by Utsuno and are discussed.
Key Words : Damping, Damping Material,Noise,Computer Aided Analysis, Porous Material
(n)
(n)
(n)
η tot
= η ke
– η se
e max
η ke(n) =
η e S ke(n)
e=1
Σ (
e max
), η se(n) = eΣ= 1 (χe S se(n) ) – – – –(A1)
)
上式 から モ ード損失係数η (n
tot は,実効密度に関連する材
料減衰η e と運動エネルギー分 担率S ke(n) との積の全要素に
わたる 和η ke(n) および体積弾性 率に関連する材料減衰– χ e
Ce = (η e S (nke )– χ e S (nse )) / η (ntot) – – – – – – – – – – (A2)
したがって ,実効密度に関連する材料減衰η e と運動エネ
)
ルギ ー 分担率S (n
ke との 積 が 大きい 要素 または,体積弾性率
)
に 関連する材料減衰– χ e と歪みエ ネルギー分担率S (n
se と
)
の 積 が 大 きい要素が, モ ード減衰η (n
tot に対する寄与が大き
いと 言える.この寄与率C e が大き い位置の多 孔質材を残し,
C e が小さい位置の多孔質材を削除していけば音響モードに
対する減衰を最適化できると考えられる.
吸音体 を 異 なる 位置 に配置した室空間に本手法を適用し
減衰特性を計算した.室空間を一定の体積速度Vで加振した
場合の室内点の音圧Pを求めた.図A1に両者の伝達関数P/Vを
示す.図中の実験値はUtsunoらによりなされた結果である.
計算値 と 実験値 はよく一致しており,解析方法および開発プ
ログラム の 妥当性が検証できた.ついで吸音体を室の全 領域
に 詰 めた 条件 のもとで ,式(A2)により モード減衰への 各要
素 の 寄与率 を求めた.寄与が高い位置の吸音体を残し,寄与
が 低 い 位置 の 吸音体 を削除した最適パターンモデルを作成
した .比較 のために 寄与が高い位置の吸音体を削除し,寄与
が 低 い 位置 の 吸音体 を残したワーストパターンモデルを作
成 した .両者 の 周波数応答 を 計算して比較すると,最適パ
タ ー ンモデル の 方 が ワーストパターンモデルに比べ該当す
る 周波数領域 における 振幅 が 小 さく な っ た . こ れ よ り 式
(A2)を用いた吸音体の配置最適化法の妥当性が示された.
100
20 log(P/V) [dB]
要 約
自動車 など 輸送機械 では ,乗員 の疲労軽減や緊急時の各
種警報 の 認知 のために ,低騒音 が要求される.一方,車両
には 低燃費 が 求 められ ,車体としては軽量化が必要となっ
ている . しかし ,低騒音 と 軽量は一般に相反するので両者
を両立させることが重要課題となっている.
自動車 の 車室 は 閉空間 をなしており,走行時に定在波が
生 じ 騒音を生じる.定在波を抑制する方法の一つに,多孔質
材 などを用いた吸音が挙げられる.この時,低騒音 と軽量を
両立 するような 最適仕様 が 求 められる .そのためには, 減 衰
要素 を 含む音場の特性を明らかにする必要がある.そこで,
数値計算の援用が手段の一つとして考えられる. 自動車の 車
室内 の 音場 は ,問題 となる音の波長に比べ狭く,数値計算
法 としては 定在波を考慮できる吸音解析手法が必要である.
これについて有限要素法や境界要素法などの手 法 が 提 案 さ
れてきている .しかし,従来法 では 応答 の 計算法 が 主 に提案
されおり ,モード減衰や吸音体の最適配置につ いての情報が
求 められていない .これについて著者は先に,多孔質吸音体を
充填 した 二次 元閉空間内 の モ ード減衰と減衰応答とを一連
の 手順 で同時に求め,かつ計算時間を短縮できる近似法を導
いた .さらにモード減衰に対する各減衰要素 の寄与率から最
適に吸音要素を二次元空間内に配置する方法をも提案した.
本報告では ,著者が二次元問題用に提案したこれらの手法
を 三次元問題 に 拡張 する .具体的には三次元閉空間領域内
に 吸音体 を 任意 の 位置,任意の形状で配置する問題の音響
特性 を 取 り 扱 う.吸音体と気体との混合体の減衰特性を有
限要素法 で 解析 した .複素実効密度 と複素体積弾性率とを
パラメ ー タとする吸音体の三次元有限要素を定式化した.こ
れより , 離 散化 された 運動方程式 を求め, 関 連する複素連立
方程式を解き周波数応答を求めた.
さらに ,三次元空間 の モ ード減衰に対する各吸音要素の
寄与率分布 を 求 める 式 を導いた.具体的には減衰パラメー
タ を 漸近展開 し ,複素固有値問題の第一近似式を導 出 し た .
これより以下のモード減衰の近似式が得られた.
と歪 み エネルギ ー 分担率S se(n) との 積 の 全要素 にわたる 和
–η se(n) から 近似計算 できる .また,多孔質材 の 挿入位置 (=該
)
当 する 位置 にある 要素) の モ ー ド損失係数η (n
tot への寄与率
C e は,式(A1)を変形した次式から求められる.
without GW using FEA
using Experiment by Utsuno
with GW using FEA
using Experiment by Utsuno
80
60
40
20
500
600
700
800
900
1000
Frequency [Hz]
Fig.A1 Calculated results of frequency response
日本機械学会〔№01-5〕 Dynamics and Design Conference 2001 CD-ROM論文集〔2001.8.6-9,東京〕 1. 緒 言
自動車 などの 輸送機械 では ,乗員の疲労軽減や緊急時の
各種警報 の 認知 のために ,低騒音 が要求される.一方,化
石燃料の枯渇やCO2の排出量抑制の観点から車両が低燃費で
あることが 求 められ ,車体 としては 軽量化が必要となって
いる . しかし ,低騒音 と 軽量は一般に相反することが知ら
れており,両者を両立させることが重要課題となっている.
自動車 の 車室 は 閉空間をなしており,走行時に定在波が
生 じ 騒音を生じる.定在波を抑制する方法の一つに,多孔質
材 などを 用 いた 吸音 が挙げられる.空間内に吸音材が充填
されると ,定在波 の 音響 エネルギ ー が 減衰 する.この時,低
騒音と軽量を両立するような最適仕様が求められる. そ のた
めには ,減衰要 素を含む音場の特性を明らかにする必要があ
る.そこで,数値計算の援用が手段の一つとして考えられる.
建築構造 の 吸音設計 には ,主に拡散音場を仮定した幾何
音響 の アプロ ー チ が古くから研究されており,確立されて
きている(1).しかし,自動車の車室内の音場は,問題となる
音 の 波長 に 比 べ狭く,拡散場とはみなせないことが多い.
したがって 数値計算法 としては 定在波 を 考慮できる吸音解
析手法 が 必要である.これについて有限要素法や境界要素法
などの 手法 が提案されてきている(2)∼(13).これらは応答の計算
法 が主に提案されおり,モード減衰や吸音体 の最適配置につ
いての 情報 が 求 められていない .著者は多孔質吸音体を充填
した 二次元閉空間内 の モ ー ド減衰と減衰応答とを一連の手
順 で 同時に求め,かつ計算時間を短縮できる近似法を導いた
(14)
.さらにモード減衰に対する各減衰要素の寄 与率 から 最適
に吸音要素を二次元空間内に配置する方法をも提案した(15).
本報告では ,著者が二次元問題用に提案したこれらの手法
を 三次元問題 に 拡張 する .具体的には三次元閉空間領域内
に 吸音体 を 任意 の 位置,任意の形状で配置する問題の音響
特性 を 取 り 扱 う.吸音体と気体との混合体の減衰特性を有
限要素法 で 解析 した .複素実効密度 と複素体積弾性率とを
パラメ ー タ とする 吸音体 の三次元有限要素を定式化し,複
素連立方程式を解き周波数応答を求めた.さらに,空間のモー
ド 減衰 に 対 する 各吸音要素 の寄与率分 布を求める式を
導いた .吸音体 を異 なる 位置 に配置 した室空間に本
手法 を適用し減衰特性を計算した.結果を既報の
Utsunoらの実験結果(11)と比較し考察した.
2.解析内容
2.1 吸音体を有する三次元閉音場の離散化
吸音体を有する三次元閉空間を有限要素で離散化する.通
常の音場解析で用いられるHelmholtzの式は均質場に対応す
る式である.本問題の場合,吸音体と気体とが混在する系
であるので,Helmholtzの式から出発せずに次に示すアプロー
チを行う.
微少な振幅で調和励振を受ける非粘性の圧縮性完全流体
の三次元空間での運動方程式は次式となる(3),(16),(17),(14).
∂p
= – ρ ω 2 u x,
∂x
∂p
–
= – ρ ω 2 uy ,
∂y
∂p
–
= – ρ ω 2 uz – – – – – – – – – – – – – – – – – – – (1)
∂z
一方,連続の式は次のようになる.
∂ ux ∂ uy ∂ uz
+
+
) – – – – – – – – – – – – – (2)
∂x ∂y ∂z
ここで, ω は角周波数である. p は圧力, ux , uy , u zはそれ
ぞれ粒子変位のx,y,z方向成分である. E とρ はそれぞれ体積
p = – E(
弾性率と実効密度である.
要素内の音圧 p と節点の音圧{p e} との関係を適当な内
挿関数N i , (i = 1,2,...) を用いて次式のように近似する.
p = [N] t {p e} , [N]t= [N1, N 2, N 3 ,.....]– – – – – – – – – – – – – – – – – (3)
添字t は転置を表す.
式(1)から式(3)より三次元問題の運動エネルギーT ,歪み
エネルギーU ,ポテンシャルエネルギーV を求める.
2
2
2
1
2
T = ρω
2
e
(|u x| + |u y| + |u z| )dxdydz
( ∂∂px ∂∂px + ∂∂py ∂∂py + ∂∂pz ∂∂pz )dxdydz
e
2ρω 2
∂[N] ∂[N] t
∂[N] ∂[N] t
= 1 2
{ p e} t(
+
∂x
∂x
∂y
∂y
e
2ρω
∂[N] ∂[N] t
+
){ p e}dxdydz – – – – – – – – – – – (4)
∂z
∂z
∂u y
∂u
∂u
U= 1
E( x +
+ z ) 2dxdydz
2
∂x
∂y
∂z
e
t
t
1
=
({ p e} [N][N] { p e})dxdydz – – – – – – (5)
2E
e
= 1
V=
Γ
p U⊥ dΓ – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – (6)
ただし,積分範囲でeは要素空間領域を表し, Γ は要素境界
を意味する. U ⊥ は要素境界の法線方向に作用する粒子変位
である.
式(4)から式(6)に,エネルギー最小原理δ(U –T –V )=0
を用いると次式を得る.
([K ] – ω 2[ M] ){ p } = – ω 2{u } – – – – – – – – – (7)
e
e
e
e
ρe とEe はそれぞれ要素内部に充填された媒質の実効密
度と体積弾性率である. {u e} は要素の節点粒子変位ベクト
ルである.マトリックス[K] e および[M] e のi 行 j 列成分はそ
れぞれ式(8)のK eij と式(9)のM eij となる.
∂ Ni ∂ N j ∂ Ni ∂ N j ∂ Ni ∂ N j
K eij = 1
+
+
)dxdydz
(
ρe
∂x ∂x ∂y ∂y ∂z ∂z
e
– – – – – – – – – – – (8)
Closed sound field
3D Finite element
–
Gas (ex. Air)
Sound absorbing material
Fig.1 Sound absorber in a 3D acoustic field
M eij = 1
Ee
e
(N iN j)dxdydz – – – – – – – – – – – – – (9)
式(7)から式(9)は線形の圧縮性完全流体の要素の運動方程
式となる.以降,式(7)中の[K] e を要素剛性マトリックス,
[M] e を要素質量マトリックスと呼ぶ.
吸音体の内部の音場を表すモデルの1つに,密度と音速
あるいは体積弾性率とを複素数とするモデルが提案されて
おり,有効性が検証されている(9)(10)(11)(13) (14)(15).すなわち,
ρ e ⇒ ρ *e = ρ eR + j ρ eI – – – – – – – – – – – – – – (10)
E e ⇒ E *e =E eR + j E eI – – – – – – – – – – – – – – (11)
を得る.
これらを式(8)と式(9)で使われている密度ρe と体積弾性
率Ee に代入する.
式(10)を式(8)へ代入すると,要素剛性マトリックス[K] e
は次式となる.
[K]e = [K R]e (1 + j ηe) – – – – – – – – – – – – – – – (12)
ηe = – ρ I /ρ R – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – (13)
上式で[K R] e は[K] e の実部であり,そのi 行 j 列成分K Reij
は次式となる.
K Reij =
ρ eR
∂ Ni ∂ N j ∂ Ni ∂ N j
+
(
2
∂x ∂x ∂y ∂y
+ ρ eI
e
∂ Ni ∂ N j
+
) dxdydz – – – – – – – – – – – – (14)
∂z ∂z
ρ 2eR
同様に式(11)を式(9)へ代入すると,次の要素質量マトリッ
クス[M] e を得る.
[M]e = [MR]e (1 + j χ e ) – – – – – – – – – – – – – – (15)
χe = –E I /E R – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – (16)
[M]e の実部 [M R]e のi 行 j 列成分M Reij は,
E
MReij = 2 eR 2
(N iN j) dxdydz – – – – – – (17)
e
EeR + EeI
となる.
以上から,多孔質材内部の音場を表す要素では,要素剛
性マトリックス[K] e と要素質量マトリックス[M] e がとも
に複素数で表現されることとなる.なお,この要素の減衰パ
ラメータ χ e , η e を小さくすることで,気体も表現できる.
式(7)から式(17)を対象とする場(気体と多孔質材の複合
空間)の全要素について重ね合わせることにより,次の全系
の離散化方程式を得る.
(xi , yi , zi), i = 1,2,3,4 の関数となる.式(20)と式(12)式(13)式
(14)から要素剛性行列[K] e が求められる.また,式(20)式
(15)式(16)式(17)から要素質量行列[M] e が得られる.
2.3 モード減衰への吸音体の寄与率と最適化法
漸近法(18)(14)(15)を応用して,多孔質吸音体を含む三次元
閉音場のモード減衰に対する各要素の寄与率を導く.さらに
その寄与率を利用した吸音体の空間内への最適配置法を示
す.
式(18)の斉次方程式は次式となる.これは複素固有値問題
となる.
e max
Σ ([K R] e(1+ j η e ) – (ω
e=1
(n) )
2 (1+ j η
× [M R]e (1+ j χ e )){ φ (n)* }={0} – – – – – – – (21)
添え字(n) はn次音響モードを表す. ω (n) は複素固有値の
実部, {φ (n)* } は複素固有モード, η (n)
tot はモード損失係数で
ある.emax は要素数である.材料減衰η e , χ e ,(e=1,2,3, ...emax)
に関して全要素の中で最大のものをη max とし,以下の量を
定義し導入する.
β ke = η e / η max ,β ke ≤1, β se = χ e / η max , β se ≤1 – – – (22)
ここでη max <<1 と仮定し,微小量µ = j η
式(21)の解を漸近展開すると,
Σ ([K R] e(1+ j η e )–ω 2([M R] e (1+ j χ e )){p e}
= – ω 2{u} – – – – – – – – – – – – – – – – – – – (18)
{u} は節点粒子変位ベクトルである.
max
を導入し,
{φ (n)* } ={φ (n) }0+µ {φ (n) }1+µ 2{φ (n) } 2 +,...– – – – – (23)
(n) 2
(n) 2
2
(n) 2
4
(n) 2
(ω
) =( ω
(ω 2 ) + µ (ω 4 ) +,...
– – – – – – (24)
(n) =µη (n) +µ 3η (n)+µ 5η (n)+µ 7η (n)+,...
j η tot
1
3
5
7
– – – – – – (25)
ただし, β s e ≤1 およびβ k e ≤1 であるのでη max <<1 な
らばη max β s e <<1 およびη max β k e <<1 が成立し, µ β s e
およびµ β k e もµ と同様に微少量となる.また,
2
(n) 2
(n) 2
{φ (n) } 0,{φ (n) } 1, {φ (n) } 2,... と(ω (n)
0 ) ,(ω 2 ) , (ω 4 )
(n)
(n)
(n)
,... およびη 1 , η 3 , η 5 ,... は実数とする.
式(21)に式(22)から式(25)を代入し, µ 0 とµ 1 のオー
0
) +µ
ダーまでをまとめ次式をえる.
µ 0 の量:
e max
Σ
e=1
([K
R ] e–
(ω
(n)
0 )
2 [M ]
R e
){φ
e max
e=1
(n) )
tot
Σ
e=1
(µ β
0
= {0}
– – – – – – (26)
µ 1 の量:
e max
(n) }
ke [K R] e
– µη
(n)
(n)
1 (ω 0 )
2[M ]
R e
2.2 形状関数
吸音体の三次元有限要素を具体的に検討する.ここで
は,一例として,一次試験関数を持つ四面体要素を考える
(16),(17)
.図2のような頂点に四つの節点を有する四面体を考
える.節点座標を(xi , yi , zi), i = 1,2,3,4 とし,節点上での
圧力を p 1 , p 2 , p 3 , p 4とする.この時,要素内部の圧力 p を
座標x, y, z の関数で次式のように近似する.
p = a 0 + a 1x +a 2y +a 3z – – – – – – – – – – – – – – (19) ここで,a 0 , a 1 , a 2 , a 3は未定係数である.
式(19)に節点座標(xi , yi , zi)を入れ整理すると次式を得る.
p = [N]t { p e} – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – (20)
ただし, { p e} ≡ { p 1 , p 2 , p 3 , p 4} ,[N]は節点座標
Fig.2 Tetra element for sound absorber
– µβ
e max
(n)
se (ω 0 )
2[M ] {φ
R e
)
+ Σ µ[K R] e– µ(ω
e=1
(
(n)
0 )
(n)
2[M ] {φ
R e
)
(n)
} 1 ={0}
– – – – – – (27)
さらに式(26),式(27)を整理すると式(26)を得る.
(n)
(n)
(n)
η tot
= η ke
– η se
– – – – – – – – – – – – – – – – – – (28)
e max
η ke(n) = Σ (η e S
e=1
S
)
,
e max
η se(n) = Σ (χ e S
e=1
(n)
se
(n) t
(n)
} 0 [K R] e{φ (n) } 0
ke ={φ
e max
{φ (n) } t0 [K R] e{φ (n) } 0
e=1
/Σ
S
(n)
ke
(
(
)
,
)
(n) t
(n)
} 0 [M R] e{φ (n) } 0
se ={φ
e max
{φ (n) } t0 [M R ] e{φ (n) } 0
e=1
/Σ
=0.5とした.体積弾性率はE R = 1.19×1 05
=0.1を用いた.空気にはρ R = 1.2(kg /m 3) ,
=0.001,E R = 1.4×1 05(N /m 2) ,
=0.001を用いた.
図中の点A(x , y,z) =(10,0,0)に既知の体積速度を持つ起振源
を設置する.その時の吸音体表面の近傍の2点間(点Bと点C)
の音圧の伝達関数を求めた.ここでは式(18)の複素連立一次
方程式をスカイライン法を用いて解いた.その伝達関数から
2点マイク法(19)を用いて,垂直入射吸音率を求めた.図4に三次
元有限要素法を用いて,吸音率を200Hzから5000Hzまで計
算した結果を示す.図中,伝達マトリックス法(19)による解析解
と比較してある.管の限界周波数( f c =c / (2b ) , b ;長方形断
面の長辺長さ, c ;空気中の音速)は14.2kHzである.この周波数
より充分に低い条件では,音場は平面波となり,1次元音響
管とみなせる.本計算範囲はこの限界周波数 f c よりも低い.
したがって,平面波を仮定した伝達マトリックス法による
解析解に対して,本報告の有限要素解は一致しなければなら
ない.図4より,両者は良く一致していることがわかる.
(kg /m 3) ,
(N /m 2) ,
}0
)
)
上式からモード損失係数η (n
tot は,実効密度に関連する材
料減衰η e と運動エネルギー分担率S ke(n) との積の全要素に
わたる和η ke(n) および体積弾性率に関連する材料減衰– χ e
と歪みエネルギー分担率S se(n) との積の全要素にわたる和
–η se(n) から近似計算できる.式(28)のなかの固有モード
{φ (n) } 0 は実数であり,減衰項を全て無視して得られる式
(26)を通常の実固有値問題として解くことで容易に求めら
れる.また,多孔質材の挿入位置(=該当する位置にある要素)
)
のモード損失係数η (n
tot への寄与率C e は,式(28)を変形した
次式から求められる.
Ce = (η e S (nke )– χ e S (nse )) / η (ntot) – – – – – – – – – – (29)
したがって,実効密度に関連する材料減衰η e と運動エネ
)
ルギー分担率S (n
ke との積が大きい要素または,体積弾性率
)
に関連する材料減衰– χ e と歪みエネルギー分担率S (n
se と
(n
)
の積が大きい要素が,モード減衰η tot に対する寄与が大き
いと言える.この寄与率C e が大きい位置の多孔質材を残し,
C e が小さい位置の多孔質材を削除していけば音響モード
に対する減衰を最適化できると考えられる.
以上から多孔質材の配置を最適化する手順の概要は次の
ようになる.
最初に空間に許容される最大限の量の多孔質材を充填し
た有限要素モデルを作成する.着目する空間共鳴のモード減
)
衰η (n
tot への各要素の寄与率C e を式(29)により求める.つい
で寄与率C e が大きい位置の多孔質材を残し, C e が小さい
位置の多孔質材を削除したモデルへと改修する.モード減衰
と応答をそれぞれ式(28)と式(18)とから求め効果を確かめる.
以降,この方法を前報(14),(15)にならいModal Strain and Kinetic
Energy Method(略してMSKE法)と便宜上呼ぶこととする.
3.2 吸音体を挿入した三次元室空間の減衰解析
次に三次元の室空間に多孔質吸音体を設置し,音場の減衰
特性を解析した.Utsuno(11)らの実験条件に相当する解析モ
デルを構築した.図5に室空間の諸元と有限要素モデルを記
す.直方体形状(204mm×255mm×306mm)の閉空間をなす
主室に51mm×51mm×55mmの副室が接続されている.こ
こでも図では六面体として表示しているが,実際の計算では
六面体を四面体要素の組み合わせで表現して処理した.図の
ように副室の一面を一様な単位粒子速度V で加振させる.
その時の主室内の受音点での音圧P を求め,両者の伝達関数
P / V を評価する.吸音体の配置は図6に示すような2種類
(case1,case2)を考える.材質は発泡ウレタンとグラスウール
である.有限要素解析FEAで使用する材料特性にはUtsuno(11)
らが同定したパラメータ(複素実効密度ρ *e と複素音速c *e )を
用いた.ただし,本報告のFEAの計算ではρ *e のほか複体積弾
性率E * が必要である. E * はρ *e とc *e から次式で換算し求めた.
e
e
=ρ *e (c *e ) 2 – – – – – – – – – – – – – – – – – – – (30)
図7に発泡ウレタンを室に配置した時の伝達関数P / V の
E *e
実験値とFEAによる計算値を示す.計算値は,式(18)の複素
連立一次方程式を解いた結果である.発泡ウレタンの有無や配置の
違いによる伝達関数P /V の変化が計算と実験とで一致している.
図8はグラスウールを配置した結果であり,この場合も計算
3.提案計算法の検証
2章で多孔質吸音体を領域内に含む音場の三次元有限要
素法を定式化した.これにもとづき計算プログラムを作成し
た. 3章では計算精度を解析解や実験値と比較し検証する.
3.1 音響管の減衰特性解析
図3に示すような音響管に多孔質吸音体を挿入した.図
では六面体で表示してあるが,計算では四面体要素を組み合
わせて六面体を表現した.管の断面は10mm×12mmの長方
形形状を有しており,管の長さは120mmである.吸音体と
終端部との間に背後空気層をd p =30mm設けてある.吸音体
の厚さはd air =20mmとする.多孔質体の実効密度はρ R = 1.4
Fig.3 FEM model for an accoustic pipe with an absorber
4.モード減衰への各要素の寄与率と最適化
グラスウールを室空間内全域に詰めた場合の各要素のモー
ド減衰η ke(n) に対する寄与率C e を式(29)のMSKE法で求め
た.(1,1,0)モードでの計算結果を図1 0に示す.音圧分布
{φ (n) } 0 ,粒子速度分布|ve| をも図中に併記した.図1 0から
モード減衰η ke(n) に対する寄与率C e は音圧分布とは一致し
ない.粒子速度分布に近い.したがって,通常,計測される
音圧からでは,最適位置を知ることが困難となる.本解析法に
よるモード減衰への寄与率C e は吸音体配置のために有用な
情報を与える.この図を参考にして,室体積の20%の容積を
持つ吸音体を,寄与が高い位置のみに詰めた.また,比較
のために,寄与が低い位置のみに同量だけ詰めた.前者を最
適ケース,後者をワーストケースと呼ぶこととする.有限要素
モデルを図1 1に示す.対応するモード付近の周波数応答を図
1 2に示す.最適ケースの共振振幅の方がワーストケースの
振幅に比べ小さいことがわかる.これより,提案の最適化
法が有効といえる.なお,上記の吸音体の配置最適化は自
動的に開発プログラム内で実行される.
100
20 log(P/V) [dB]
と実験は一致している.図9はcase2に対応するようにグラ
スウールを配置して,音場のモード損失係数を式(28)で計算し
た値と実験値とを比較したものである.計算と実験は良く一致し
ている. 以上から, 2章に定式化した計算法,すなわち,吸音体と気体
とが混合した系の三次元有限要素法,減衰解析法と計算プロ
グラムが妥当と言える.
without Urethane foam by FEA
(11)
by Experiment
with Urethane foam by FEA
(11)
by Experiment
80
60
40
case1
measurement point
=(0,51,102)
20
500
600
700
800
900
1000
Frequency [Hz]
(a)
Fig.4 Absorption ratio of the acoustic pipe with absorber
20 log(P/V) [dB]
100
without Urethane foam by FEA
(11)
by Experiment
with Urethane foam by FEA
(11)
by Experiment
80
60
40
measurement point
=(229.5,255,51)
case2
20
500
600
700
800
900
1000
Frequency [Hz]
(b)
Fig.7 Calculated results of frequency response
100
20 log(P/V) [dB]
Fig.5 3D room with sound absorbing material
without Glass wool by FEA
(11)
by Experiment
with Glass wool by FEA
(11)
by Experiment
80
60
40
case2
measurement point
=(229.5,255,51)
20
500
600
700
800
900
Frequency [Hz]
Fig.6 FEA model for a 3D room with an absorber
Fig.8 Calculated results of frequency response
1000
5.結 言
三次元閉空間領域内に吸音体を任意の位置,任意の形
状で配置する問題の音響減衰特性を有限要素法で解析する
方法を検討した.複素実効密度と複素体積弾性率とをパラ
メータとする吸音体の三次元有限要素を定式化し,複素連
1
8
Modal loss factor(-)
6
calculation using FEA
experiment by Utsuno(11)
4
2
0.1
8
6
4
2
glass wool, case2
0.01
8
6
500
600
700
800
900
1000
Resonant frequency(Hz)
Fig.9 Modal damping of the 3D room having the absorber
立方程式を解き周波数応答を求めた.さらに,三次元閉空間
のモード減衰に対する各吸音要素の寄与率分布を求める式
を導いた.これより吸音体の最適配置が可能となる.これ
らは著者が先に二次元音場で提案した手法を三次元問題に
拡張したものである.解析法を音響減衰を有する室空間に応
用し,有効性を既報の実験結果と比較し示した.
参 考 文 献
(1)子安勝,建築音響シリーズ<材料編>1吸音材料,(1976),
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(2)Kagawa,Y.,Yamabuchi,T.and Mori,A., J. of Sound Vib.,
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(15)山口誉夫,機論66-646C(2000),1842-1848
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用,(1981),倍風館.
(17)鷲津久一郎,宮本博,山田嘉昭,山本善之,川井忠彦,有限
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(18)MA,B.A. and HE,J. F.,J. of Sound Vib.,Vol.15,2(1992),
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(19)Utsuno,H.,Tanaka.T. and Fujikawa,T. ,J.Acoust.,Soc.
Am, 86 -2 (1989).
Fig.10 Eigenmode and contribution to modal damping
20 log(P/V) [dB]
80
60
worst pattern with GW
optimum pattern with GW
(1,1,0) mode
40
measurement point
=(306,0,204)
20
500
600
700
800
900
1000
Frequency [Hz]
Fig.11 Optimum pattern and worst pattern
Fig.12 Effect of the Optimization for the absorber