タイタンパ等による道床つき固め効果の確認試験 - 土木学会

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)
Ⅳ-067
タイタンパ等による道床つき固め効果の確認試験
仙建工業(株) 正会員 ○小野寺 孝行
1.はじめに
タイタンパ(以下、「TT」という。)による道床つき固め効
果に関する知見は、筆者が調査した限りでは、1950 年代
に旧国鉄の鉄道技術研究所の論文1)が存在するのみであ
る。また、バックホウに装着した四頭式スーパータイタンパ
アタッチメント(以下、「四頭」という。)による効果について
も、数値的な評価がほとんど存在しない。
このような状況の中で、新たな評価手法を探求していた
ところ、財団法人鉄道総合研究所が所有するマクラギ下
面圧力測定器(以下、「センシングまくらぎ」という。)を活
用できる可能性が高いことがわかった。「センシングまくら
ぎ」とは、8cm 四方の受圧板のついた荷重センサーを、25
個×3列マクラギ下面に隙間なく貼り付けたものである。
詳細は、論文 2)を参照されたい。
本稿では、センシングまくらぎを使用した試験の内容と、
測定したデータにより得られた知見を報告する。
2.試験概要
測定試験は、2011 年1月中旬に当社内の訓練線で実施
した。軌道構造は、50N レール、3号 PC マクラギ5型締結
装置、マクラギ間隔約 600mm、道床厚約 250mm である。
試験手順は次のとおりである。
(1)準備作業
マクラギ交換作業時の道床つき固め作業開始前の状
態を再現するために、センシングまくらぎ及びその前後1
本づつのマクラギ下面の道床バラストを、マクラギ下約
100mm まですき取り、かき均した状態とし、その後、スコッ
プによりマクラギ上面までバラストをかき込んだ。なお、マ
クラギ下面には空隙がある状態である。(図―1参照)
PC
3号
センシング
まくらぎ
PC
3号
マクラギ下面約 100mm まですき取り
らスクイーズまで1秒程度操作を、左レールを跨いで8回、
次に右レールを跨いで8回行なった。作業時間は、1本あ
たり約4分であった。
4頭式スーパータイタンパ
タイタンパ(2人づき)
図-2:道床つき固め方法
(3)輪重載荷試験
道床つき固め試験終了後、輪重が作用した場合のセン
シングまくらぎ下面の圧力分布を測定した。輪重は、軌陸
バックホウを鉄輪で走行させることにより発生させ、列車の
輪重の半分程度(約2t)を作用させた。
3.試験結果
(1)マクラギ下面に伝播した振動周波数
図―3は、TTによる道床つき固めを行なった際に、ある
センサーが検知した振動の推移である。グラフは、0.6 秒
間のデータであるが、TTからの振動を検知したセンサー
は、荷重の大小はあるものの波形やピークの現れる周期
は全て同様の波形を示していた。ピークの数から周期を
計算すると約48Hz となっていた。 なお、過去の研究3)に
よると、道床がある程度密な状態になると振動回数が半分
となる2次振動が発生するとあるが、今回の試験では、2
次振動は検知されなかった。
0.6
0.5
荷重[kN]
スコップでかき込み
図―1:準備作業の内容
(2)道床つき固め作業
センシングまくらぎでマクラギ下面に作用する力を測定
しながら道床つき固め作業を行なった。TT の扱いと四頭
のオペレータは作業経験が豊富なベテラン社員を選定し
た。具体的な作業手順は、彼らが通常の作業で行なって
いる方法とした。TT の場合には、2人づきとし、作業時間
は1本あたり約5分30秒、四頭の場合には、タンピングか
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
0
0.2
時刻[S]
0.4
0.6
図-3:荷重の推移(TT)
図-4は、四頭による道床つき固めを行なった際の振
動の推移である。TTの場合と同様に振動を検知したセン
サーは、荷重の大小はあるものの波形やピークの現れる
キーワード:道床つき固め、センシングまくらぎ、タイタンパ、四頭式スーパータイタンパ、つき固め振動数
連絡先:〒980-0811 仙台市青葉区一番町2丁目 2-13 仙建工業(株) Tel:022(225)8529 Fax:022(222)4677
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土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)
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周期は全て同様の波形を示していた。ピークの数から周
期を計算すると約21Hz となっていた。ピークの荷重はT
Tの3倍程度であり、定常的に 0.8KN 程度の押し上げ力
が作用する場合もあった。
ると、もう一方にツールがマクラギ中央から 150mm 付近を
つき固めることになり、必然的にマクラギ中央部にも振動
が伝播してしまうためである。
1.4
1.2
荷重[kN]
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
図-7:振動の分布状態(TT)
0.0
0
0.2
時刻[S]
0.4
0.6
図-4:荷重の推移(四頭)
(2)作業中にマクラギ下面に伝播した振動の範囲
図―5及び図―6は、作業時間内のある 0.1 秒間におけ
る最大荷重を図示したものである。TTの場合には、レー
ル直下へのつき固めを行なっているときのものであり、伝
播する範囲は小さいものの、確実にレール直下まで伝播
していることが確認できた。
一方、四頭の場合には、マクラギの半分近くのエリア全
体に振動が伝播していた。また、作用したピークの荷重を
合計すると約 7.85kN となり、3号マクラギの重量(160kg)を
大幅に上回る力が作用していたことが確認できた。これは、
「つき過ぎると線路が上がりすぎてしまう。」、「TTの場合
には、ジャッキを撤去する際に爪を下ろさなければならな
いが、4頭 TT の場合には、爪を下ろすことなくジャッキを
撤去することができる。」などの現場の声を裏付けるもので
ある。
図-8:振動の分布状態(四頭)
(4)輪重載荷試験結果
図―9及び図-10 は、作業終了後、第1回目の輪重載荷
試験時の加重分布である。分布状況は、前項の作業時に
作用した荷重の分布状態と類似しており、TTの場合には、
マクラギ中央部を除く部分に、四頭の場合には、マクラギ
全体のセンサーに荷重が作用していた。なお、加重試験
は、10往復実施したか、荷重分布に変化は見られなかっ
た。沈下量についても、簡易な沈下計を設置して測定し
たが計測できるような沈下は見られなかった。
図―9:輪重載荷時の荷重分布(TT)
図-5:振動の範囲(TT)
図―10:輪重載荷時の荷重分布(四頭)
図-6:振動の範囲(四頭)
(3)作業時に作用した荷重の分布状態
作業時に各センサーに作用した荷重の最大値の分布
を図―7、図―8に示す。TTの場合には、作業手順に「マ
クラギ中央部及び端部はつき固めない。」とあるように、中
央部にはほとんど荷重が作用しておらず、その他部分は
ほぼ均等に荷重が作用しており、良好な作業状態であっ
たと考えられる。
一方で、四頭の場合には、マクラギ下面全体に振動が
伝播していた。これは、タンピングツールの間隔が 470mm
であるので、軌間外側のツールでレール近傍をつき固め
謝辞
測定試験にご協力いただいた財団法人鉄道総合技術
研究所鉄道力学研究部相川氏・浦川氏、及び JR 東日本
研究開発センター・テクニカルセンター各位に感謝の意
を表します。
参考文献
1) 小野一良,タイタンパーによる道床つき固め(第3報),鉄
道業務資料,第10巻,第 17 号,P4~13,1953
2) 相川明,浦川文寛,河野明子,名村明,鷹尾良行:まくら
ぎ下面の動的荷重分布測定のためのセンシングまくらぎ
の開発と応用,鉄道力学論文集,12,P73~78,2008
3) 小野一良,タイタンパーによる道床つき固め(第4報),鉄
道業務資料,第10巻,第 17 号,P14~23,1953
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