─シリーズ─ NHK広島放送局が8Kコンテンツ『ヒロシマ 被爆遺品が語る』 (10分) を制作し、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)の4K/8K制作者・ 技術者セミナー(3月5日開催)で発表した。8Kで撮影したのは広島 平和記念資料館に展示・収蔵されている被爆遺品で、確実に経年劣 化する有機物の記録という意味でも意義深いものとなった。広島放 送局初の8K映像制作の挑戦を取材した。 2016年の8K試験放送開始に向け 突き進む技術開発等の 最新動向をシリーズで追う。 聞き手:吉井勇・本誌編集長、構成:古山智恵・編集部 NHK広島放送局放 送部(番組制作)の 森田哲平氏 70年の時を超えて 8Kで魅せる被爆遺品の真実 で記録し、後世に伝えたいという思いか 作技術のカメラマンと、東京の報道局映 8Kだから 事実だけを伝えられる、伝えたい らスタートしている。しかしこの時、森 像取材部のカメラマンが参加して、共同 田ディレクターの8Kの知識は一般の域 で制作する形で進められた。 1945年8月6日朝8時15分、広島市に を出るものではなかったという。 使われた機材は、動 画用カメラに 原爆が落とされた。12歳の少女は母親が 制作にあたって考えたのは、「事実を F65、スチールにE810を、レンズ* は 作ってくれた弁当を食べることなく亡くな 伝えるために モノ にこだわろうと思いま ZeissのMACRO 100mmを含む4種とフ り、被爆した弁当だけが今も残っている。 した。残酷な遺品を扱うことで情緒的な ジノンを2 種、P2収録機、4Kの小型モ その弁当箱からは少女の姉が針で彫った 伝え方になりがちになるのを避けたかった ニター、オフライン編集はPRUNUSで行 という「渡辺」という文字が8K撮影によ ことがあります」。撮影は被爆遺品を愚 っている。 って浮き彫りにされた。これを映像でと 直にさまざまな角度から撮ったという。弁 らえるのは初めてのことだ。 当箱の8K撮影映像はその象徴であろう。 「名前は弁当箱の裏にありましたから、 チャレンジが難しかったのだと思います。 8Kの威力に「すげぇ !」を連呼 8Kで撮った映像の感想を聞くと、「ロ 制限のある中での8K制作 ケ中は4Kモニターでの確認でしたから、 撮影ではイントレを組んで、2mの位置 資料館内での撮影は暗い上、遺品保 8Kでどんな映像が撮れているのか、わ にアクリル板を設置し、その上に弁当箱 護の観点から照明が制限された。森田デ からないままやっていました。だから、 を置いて下から撮りました」と、今回の ィレクターらは事前にLED照明の数値デ 初めてNHKメディアテクノロジー(東京・ 作品のディレクターであるNHK広島放送 ータを資料館側に示している。「十分な 渋谷)のオンライン編集室で85インチの 局放送部(番組制作)の森田哲平氏は撮 照度のない中での8K撮影はフォーカスを 大画面で8K映像を見た時、想像以上に 影時を振り返る。 合わせるのに苦労しました」。4時間1遺 感動しました。大画面で見ることで8Kの そもそもこの企画は、被爆70年という 品のペースでの撮影となった。中には4 精細度の威力がわかったからです。被 節目の年に、原爆ドームなどの被爆建物 カットしか撮れないものもあったという。 写体の存在感を引き出す力がありまし や被爆遺品、原爆の絵などを超高精細 撮影には広島放送局の映像取材・制 た」。森田ディレクターはその日一日興 12 7-2015 *:Zeiss MASTER PRIME 12mm/27mm/100mm、Zeiss MASTER MACRO 100mm FUJINO HK 14.5mm−45mm/24mm−180mm レンズコントロール:ARRI WCU−3
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