4 砂地圃場でのパセリの立枯性病害対策 ■ JA香川県大内パセリ部会 ■ 定植後に薬剤散布で疫病の発生を止めようとす る生産者もいたが、そもそも定植前に (東讃農業改良普及センター 清田隆治) 肥料やりすぎ ●対象の概要 ●普及活動の経過 東かがわ市大内地域のパセリ栽培は昭和41年 に生産者約20名、栽培面積3.2haの採種と青果栽 培から始まり、平成7年には初夏どり栽培が87名、 7ha、秋冬どり栽培が111名、栽培面積17haで両 作型をあわせた販売金額が8億円を突破した。そ の後、生産者の高齢化、農薬取締法の強化、食品 衛生法の改正によるポジティブリスト制度の導 入、価格低迷などにより、平成23年には生産者数 47名、販売金額が1.7億円まで減少している。 1 立枯性病害の発生原因の調査・把握 JA香川県大川集荷場の担当者とパセリ圃場を 巡回し、生産者と土壌消毒の実施の有無、元肥の 施肥量、育苗、定植から定植後の管理について聞 き取りを行った。結果は次のとおりである。 ○粘土質の圃場では太陽熱消毒だけで疫病の 発生はほとんど見られない。 ○砂地の圃場では、土壌消毒できていないか、 実施していてもハウスの天ビニールを取り 除いた状態でクロルピクリン(以下、「クロ ピク」という。)やダゾメット剤による消毒 を行っている。 ○土壌消毒をしない理由は、クロピクの注入器 やトラクターのアタッチメントがない、作業 中に揮発して臭う、以前使ったが効かなかっ たなど。 ○コーン堆肥などで土づくりを行っているも のの、元肥の施肥量は多い傾向にあり、10a 当り窒素成分が40kg程度投入されるケース もあった。 ○育苗トレーは使用前に消毒、新しい培地を充 填して播種、地面から浮かして管理している。 ○定植時には高温対策としてハウスに寒冷紗 のみ被覆して、11月頃ビニールを展張してい る。 聞き取りを進めていく中で、見えてきた改善の ポイントは、土壌消毒と元肥の施肥量である。 2 クロルピクリン錠剤の登録と土壌消毒 平成22年9月22日にクロルピクリン錠剤(以下、 「錠剤」という。)が農薬登録され、製造メーカ ーの南海化学株式会社から営業があった。このと きは、平成22年度産(22年7月~23年6月)の作 付けが始まっていたため、錠剤の現地試験は秋冬 どり栽培終了後となった。 南海化学から現地試験用に錠剤の無償提供を 受け、平成22年度産で立枯性病害の発生が多かっ た砂地の圃場を選定し、土壌消毒の試験を行った。 平成23年6月1日にAPタイプの連棟ハウス(天 ビニールを展張した状態)内で①クロピク注入区、 ●課題を取り上げた理由 パセリの出荷量は主に10月から7月まで行わ れるが、近年、高単価を狙える10月出荷に間に合 わない生産者が多く、販売高が上がっていない。 出荷量がまとまらないため、市場にとっても売り 込みにくい状況にあった。10月出荷に間に合わな い原因は様々あるが、砂地の圃場では連作で立枯 病や疫病などの立枯性病害が問題になっていた。 10月出荷に間に合わすためには7月上中旬に苗 を定植するが、1ヶ月以内に疫病で枯死する株が 多く見られたことから、疫病の発生原因の把握と 対策を行うこととなった。 疫病で萎れたパセリの様子 7 2 元肥削減と土壌分析の取組み 初夏どりトンネル栽培で減肥栽培を行った圃 場では、前年は立枯性病害が多発していたが、本 作ではほとんど発生しなかった。葉色が薄かった ことから、追肥のタイミングと施肥量に課題が残 った。また、パセリ生産者47名のうち、30名が土 壌分析に取り組み、土壌分析結果を基に肥料設計 が行われた。 ②錠剤区、③錠剤畝下区の3試験区を設けた。錠 剤区は、1㎡当り10錠施用する全面処理で、費用 は10a当り10万円。錠剤畝下区は、畝を立てる土 壌面にのみ施用する方法で、1㎡当り6~7錠施 用した。クロピクや錠剤施用後、0.1㎜厚の農ビ ニールで土壌表面を被覆し、約2週間ハウスを閉 めこんだ。 ●今後の普及活動の課題 今回の試験では、極端な降雨で立枯れ症状が発 生したものの、砂地圃場における生育初期の「錠 剤処理+太陽熱消毒」の効果は確認できた。短期 間で土壌消毒を行いたい場合は、「錠剤処理+太 陽熱消毒」は有効と考えられる。 砂地の圃場では、骨材強度が弱い単棟ハウスが 多く、夏の台風対策として、栽培終了後に天ビニ ールを取り除く作業が行われている。そのため、 土壌消毒はクロピクやダゾメット剤の単独処理 となり、立枯性病害の抑制効果が不安定になって いた。土壌消毒の効果を安定させるには太陽熱消 毒を組み合わせる必要があり、栽培終了後も天ビ ニールを取り除かずに薬剤消毒を行うこと、また 短期間で消毒できる旨を生産者に十分に説明す ることが重要であろう。 錠剤処理のコストは畝下処理でも6~7万円 と高く、錠剤の取り扱いや処理作業にも注意が必 要なため、取り組みにくい可能性はある。生産者 が高齢化しているため、できるだけ手間と経費が かからない土壌消毒の方法が望まれている。例え ば、太陽熱消毒単独の効果を検証してもいいかも しれない。栽培終了後すぐに太陽熱消毒を行い、 台風が接近する予報が出れば、天と地表面のビニ ール等を取り除き、台風通過後に土壌表面をビニ ール等で2重被覆にして消毒を継続するといっ た方法も考えられる。 土壌分析に基づいた施肥設計は、毎年継続する ことが望まれる。元肥と施肥総量の削減は、肥料 コスト削減、パセリの初期生育の健全化、地下水 への肥料成分の流亡軽減にもつながる。 生産者が長年行ってきた栽培管理を急に変更 することは非常に難しいが、根気良く成功例を増 やし、立枯性病害の被害軽減とパセリの安定生産 につなげていきたい。 全面散布した錠剤をトラクターで混和 処理作業をした生産者の意見は次のとおり。 ○アタッチメントがなくても作業ができて楽。 ○土壌と混和したら、少しは刺激臭がするがク ロピク注入よりはまし。 ○畝下処理で効果が出れば、経費的にも取り組 みやすい。 処理後は、土壌表面のビニールを除去してガス 抜き作業を行い、7月中旬にパセリのプラグ苗を 定植した。 3 元肥の減肥と土壌分析の提案 平成22年11月2日に初夏どり栽培生産者、3 月25日には全生産者を対象に栽培講習会を開 催し、立枯性病害の発生のしくみと元肥削減の 必要性について説明、追肥型の栽培管理、毎年 の土壌分析の提案を行った。大内パセリ部会の 役員の方々からも部会員に対して積極的に取 り組むようご指導いただいた。 ●普及活動の成果 1 土壌消毒の効果 クロピク注入区、錠剤区、錠剤畝下区ともに、 8月までは立枯性病害は発生せず、生育は順調で あった。しかし、9月の台風と豪雨の影響で排水 が追いつかず、大量の雨水がハウス内に侵入し、 部分的に立枯れ症状が発生する結果となった。 8
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