発電用原子力設備における破壊を引き起こすき裂その他の - 経済産業省

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済
産
業
省
平成15・11・14原院第10号
平 成 1 5 年 1 2 月 3 日
発電用原子力設備における破壊を引き起こすき裂その他の欠陥の解釈について
原子力安全・保安院
NISA-322c-03-2
NISA-163c-03-2
原子力安全・保安院(以下「当院」という。)は、平成15年10月1日に改正施行され
た「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令」(昭和40年通商産業省令第62
号)において、新たな条文として追加された第9条の2第1項(破壊を引き起こすき裂等の
規定)に関する当院の解釈を電気事業者及び独立行政法人原子力安全基盤機構に対し周知す
ることとし、別添のとおり通知する。
(別添)
発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和40年通商産業省令第62号。以
下「省令」という。)第9条の2第1項の「破壊を引き起こすき裂その他の欠陥(以下「省
令不適合欠陥」という。
)
」については、次のとおり解釈する。
1.機器及び構造物一般の場合
原子炉施設に属する機器及び構造物のうち、「日本機械学会 発電用原子力設備規格 維持
規格(2002 年改訂版)JSME S NA1-2002」
(以下「維持規格」という。)に規定するクラス1
機器、クラス2機器、クラス3機器、クラスMC容器(鋼製)、支持構造物及び炉内構造物
(炉心シュラウド及びシュラウドサポートリング(以下「シュラウド等」という。)を除
く。)については、維持規格の規定に別紙1の規定を補足した方法で非破壊試験を行って、
き裂、孔その他の損傷(以下「き裂等」という。)が検出され、その形状及び大きさが特定
されたとき、そのき裂等について維持規格の評価方法(*)の規定に別紙2の規定を補足した方
法で評価を行って維持規格の許容基準(*)を満足する場合には、そのき裂等は省令不適合欠陥
に該当しないものとする。
注(*)
維持規格では、「E 評価」の項において、機器及び構造物の種類ごとに細目を設け
て、評価方法及び許容基準を規定している。
なお、上記のクラス1機器のうち、沸騰水型軽水炉の原子力用オーステナイト系低炭素ス
テンレス鋼(炭素含有量 0.02%以下であって、かつ、引張強さが 520N/mm2 以上のものに限
る。)を用いた配管類であって次表に掲げる維持規格に規定する試験カテゴリ、項目番号及
び試験部位で特定される部位については、当院がき裂等のサイジングの方法及び欠陥評価に
おけるサイジング精度の取扱いに関する基準を別途指示するまでの間、維持規格の規定に別
紙1の規定を補足した方法で超音波探傷試験を行って欠陥エコーが検出された場合には、そ
の欠陥エコーをもって省令不適合欠陥に該当するものとする。
試験カテゴリ
B-F 耐圧部分の異種金属の溶接継手
項目番号
B5.10
B5.130
B-J 管台とセーフエンド、配管の耐圧部 B9.11
分の同種金属の溶接継手
B9.12
B9.31
B9.110
試験部位
原子炉圧力容器における
呼び径 100mm 以上の管台とセーフエ
ンドの溶接継手
管における
呼び径 100mm 以上の溶接継手
配管の同種金属溶接継手(呼び径
100mm 以上)の周継手
配管の同種金属溶接継手(呼び径
100mm 以上)の長手継手
母管と管台との溶接継手(呼び径
100mm 以上)
管台とセーフエンドの同種金属溶接
継手(呼び径 100mm 以上)
2. シュラウド等の場合
シュラウド等については、維持規格の規定に別紙1の規定を補足した方法で非破壊試験を
行って、周方向溶接継手及びその近傍(以下「周溶接継手部」という。)に応力腐食割れに
よるき裂が検出され、その形状及び大きさが特定されたとき、そのき裂について別紙3の1.
の方法により評価を行い、別紙3の2.の許容基準を満足する場合には、省令不適合欠陥に
該当しないものとする。
なお、周溶接継手部以外の部位(軸方向溶接継手、胴部等)に、き裂等が検出された場合
には、個々の事例ごとに省令への適合を判断するものとする。
(別紙1)
非破壊試験の方法について
維持規格のクラス1機器、クラス2機器、クラス3機器、クラスMC容器(鋼製)、支持
構造物及び炉内構造物に係る非破壊試験の方法は、次の条件を課した上で、維持規格に従い
実施すること。
また、維持規格において供用期間中検査の対象外となっている機器の非破壊試験の方法に
ついては、設置者が、関係法令及びそれに基づく許認可若しくは届出された事項、当院の指
示、運転経験、使用・設置環境、劣化・故障モード、機器の構造等の設計的知見並びに各種
科学的知見に照らし、き裂等を検出し、又はき裂等の大きさを特定するために十分なもので
なければならない。
なお、当院が別途指示した場合には、この規定にかかわらず、当該指示に従って非破壊試
験を実施しなければならない。
1.非破壊試験の実施に当たっては、き裂等の検出に適した方法を選択するとともに、き裂
等の検出精度を予め確認し記録しておくこと。また、き裂等の大きさの特定(以下「サイ
ジング」という。)を実施する場合には、サイジングに適した方法を選択するとともに、
サイジング誤差を予め確認し記録しておくこと。
2.維持規格において試験程度が溶接継手数で規定される周方向溶接継手に対する超音波探
傷試験については、探傷不可能な範囲を除き、全周にわたって探傷を行うこと。
3.超音波探傷試験(維持規格の試験カテゴリB−G−1、B−L−1、B−M−1、C−
Dに係るものを除く。
)を行って検出された 20%DAC を超えた指示エコー(明らかに欠陥エ
コー又は欠陥エコーでないと判別できるものを除く。)については、製造時検査、供用前
検査又は至近の供用期間中検査の記録と比較するとともに、試験部位の幾何学的形状等に
より十分な探傷が困難な場合その他必要な場合には、他の屈折角若しくは他のモード波に
よる超音波探傷、超音波探傷試験による再循環系配管サイジング精度向上に関する確性試
験報告書(平成 15 年 7 月 財団法人発電設備技術検査協会)に記載された2次クリーピ
ング波法による探傷又は放射線透過試験その他の非破壊試験を行うことにより、欠陥エ
コーか否かを判別すること。
4. 超音波探傷試験により検出された指示エコーについては、次に掲げるところにより、社
団法人日本電気協会電気技術指針 JEAG4207-2000「軽水型原子力発電所用機器の供用期間
中検査における超音波探傷試験指針」の 2611(1)のa.からf.までに掲げる要領で記録
されなければならない。
(1)欠陥エコーは、エコー高さに関係なく、基準感度で探傷し、記録されなければならな
い。
(2)その他のエコーは、エコー高さが 20%DAC を超える場合、基準感度で探傷し、記録さ
れなければならない。ただし、エコーの出現に再現性がなく、雑エコーと特定ができる
ものについてはこの限りでない。
5. 超音波探傷試験によるき裂等のサイジングは、当院がサイジングの方法に関する基準を
別途指示するまでの間、平成 14 年度原子力発電施設検査技術調査等に関する事業報告書
(非破壊的統一評価指標・基準の確立に関するもの)(その1)(平成 15 年 3 月 財団法
人発電設備技術検査協会)の「欠陥深さサイジング試験要領指針(暫定案)」及び「欠陥
長さサイジング試験要領指針(暫定案)」の方法、又は欠陥評価の保守性を考慮して十分
な精度を有すると認められた方法で行うこと。
6. 加圧水型軽水炉において、原子炉格納容器内の呼び径が 40mm を超えるクラス2配管
(再生熱交換器連絡配管を含む。)であって、原子炉運転中のクラス1配管内と同温・同
圧の1次冷却材が流れる範囲の突き合わせ溶接継手については、維持規格の IC-1220 及び
表 IC-2500-5 によらず、検査間隔中全ての溶接継手数の 25%について、溶接部に対し超
音波探傷試験を行うこと。
7.沸騰水型軽水炉において、オーステナイト系ステンレス鋼を用いた原子炉冷却材圧力バ
ウンダリを構成する配管類(供用開始後の実効運転年数(注)が 5 年以上経過していないも
の、内面肉盛工法、水冷溶接、高周波誘導加熱応力改善法若しくは固溶化熱処理法その他
の応力腐食割れ防止の有効性が実証された対策を施した部位又は使用温度が 100℃以下の
ものは除く。以下「特定配管類」という。)に関する本文1.の表で特定される部位の体
積試験については、当院がき裂等のサイジングの方法及び欠陥評価におけるサイジング精
度の取扱いに関する基準を別途指示するまでの間、維持規格の表 IB-2500-5 及び IB2500-9 によらず、全ての溶接継手の試験可能範囲を運転年数(注)で 5 年以内の頻度で行う
ものとすること。その際、1回の定期事業者検査において試験箇所数が極端に偏らないよ
うに計画的に行うとともに、各回の検査においてき裂等が発見された場合には、前回検査
後の経過年数が運転年数で 5 年を超える部位について、維持規格 IA-2330 の考え方に沿っ
て追加試験を行うこと。
この場合において、特定配管類以外の原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する配管類の
本文1.の表で特定される部位の体積試験の範囲及び程度については、特定配管類の溶接
継手を除いた残りの溶接継手の数を基準として、該当する表 IB-2500-5 及び IB-2500-9 に
規定する範囲及び程度とすること。
(注)
「実効運転年数」及び「運転年数」は、次の式から求められる年数をいう。
実効運転年数=供用開始後の経過年数×設備利用率
運転年数=原子炉臨界時間÷8760
8.沸騰水型軽水炉の炉心シュラウド(シュラウドサポートとの接合部を含む。以下同
じ。)の試験方法、試験範囲、試験程度及び試験実施時期は、当院が炉心シュラウドの供
用期間中検査に関する基準を別途指示するまでの間、維持規格の表 JG-2500-1 及び JG2500-2 によらず、当院の指示文書「炉心シュラウド及び原子炉再循環系配管等のひび割
れに関する点検について」(平成 15 年 4 月 17 日付け平成 15・04・09 原院第 4 号)による
ものとすること。
なお、同指示文書により、平成 15 年 4 月 17 日時点における至近の2回の定期検査期間
に目視試験(MVT-1)を試験可能な全ての周方向溶接継手及びその近傍に実施しなくてよ
いとされている場合については、目視試験(MVT-1)を試験可能な全ての周方向溶接継手
及びその近傍について、100%/10 年で完了するものとすること。ただし、その間にき裂
等が発見された場合には、同指示文書1.
(2)に従って追加試験を行うこと。
9. 上記1.から8.までに掲げる条件に規定する措置については、維持規格の添付 I-2
「検査プログラム適用にあたっての移行措置」によらず、この文書が公布された後速やか
に適用すること。
(別紙2)
維持規格による欠陥評価を行うに当たっての補足規定
非破壊試験において検出されたき裂等について、維持規格による欠陥評価を行うに当たっ
ては、維持規格の規定に次の規定を補足して行わなければならない。
1.評価不要欠陥に対する監視
検出されたき裂等が、維持規格に規定される方法により評価不要欠陥と判定された場
合であっても、近傍にある複数のき裂等が合体し進展するおそれがある場合などについ
ては、ある一定の期間内において技術的に妥当と認められる頻度で当該箇所を繰り返し
監視する定点サンプリングを実施すること。
2.応力腐食割れ(SCC)によるき裂の評価
SCC によるき裂に対しては、維持規格においては評価不要欠陥の適用は認められてい
ないため、検出されたき裂を評価不要欠陥と評価する際には、当該き裂が SCC によるも
のでないとする技術的根拠を明確にし、その根拠及び結果を記録して保存すること。
3.評価の再実施
維持規格では、進展予測に際しての荷重の発生回数を、運転実績に基づいて設定する
としている。この場合、き裂等の進展予測結果が運転実績に影響されることとなるが、
必ずしも将来予測を行う条件として十分であるとは限らない。このため、荷重の発生回
数は運転実績だけに限らず、設計時の条件と運転期間を基に設定する考え方を考慮して
定めること。
設定した荷重の発生回数を超えたり、進展予測の評価の前提として想定していた以外
の荷重が発生するなど、進展予測の保守性を小さくする影響を被った場合、その影響に
即した再評価を行うとともに、必要に応じて当該欠陥寸法を再度計測すること。また、
原子炉が自動停止する加速度の地震を経験した場合、発電所の再起動に先だって、その
き裂等に作用する地震荷重が進展予測の評価の前提として想定していた荷重未満であっ
たことを確認するとともに、巡視点検によってき裂等の生じている機器又は構造物に起
因する異常がないことを保安規定に基づく方法によって確認すること。
4.想定外き裂等の取扱い
検出されたき裂等が、維持規格において想定するき裂等の進展機構(EB-3330、EB4330 及び EB-5330)に該当しない機構で進展するものであることが判明した場合又はそ
の可能性がある場合には、維持規格を適用することはできない。
(別紙3)
炉心シュラウド及びシュラウドサポートリングの欠陥評価方法及び許容基準について
炉心シュラウド及びシュラウドサポートリング(以下「シュラウド等」という。)の周方
向溶接継手及びその近傍(以下「周溶接継手部」という。)に検出された応力腐食割れによ
るき裂の欠陥評価方法及び許容基準は、維持規格において具体的方法が規定されていないた
め、当面、維持規格の「EB-4000 オーステナイト系ステンレス鋼管の欠陥評価」を準用する
ものとし、その規定に次の規定を補足して適用するものとする。
なお、き裂の進展予測の保守性を小さくする影響を被った場合には、別紙2の3.を適用
する。
1.評価方法
(1) き裂のモデル化
①目視検査による場合
目視検査により測定したき裂の長さを評価に用いる場合は、き裂が内部で表面より広
がっている可能性を考慮して保守性を確保するために、確認されたき裂の両端に板厚分を
それぞれ加えたものをき裂の長さとして設定し、板厚方向の貫通き裂として想定する。
②体積検査(超音波探傷法)による場合
体積試験(超音波探傷法)により測定したき裂の大きさ(長さ、深さ)を評価に用いる
場合は、その測定結果に基づいて、維持規格の EB-4200[欠陥形状のモデル化]及び同添
付 E-1[欠陥形状のモデル化]に従いき裂のモデル化を行う。ただし、全周にわたって連
続的にき裂が点在している場合は、全周に測定したき裂の平均の深さのき裂が一様に存在
するものとして想定する。
③検査を行えない部位
体積検査又は目視検査の対象とした周溶接継手部のうち、接近性等の制約から検査を行
えない部位については、当該検査の実施可能範囲におけるき裂検出割合に準じてき裂を想
定する。
(2) 進展予測
①負荷条件
シュラウド等の応力腐食割れの進展評価に用いる負荷条件は、維持規格の EB-4320[負
荷条件]及び添付 E-7[欠陥評価に用いる荷重]に従い設定するものとする。なお、き裂
の進展速度は溶接残留応力に依存することから、有限要素法を用いた解析(FEM 解析)等
の妥当な方法により求めた残留応力分布により評価を行う。
②き裂の進展モデル
維持規格に従ってモデル化したき裂については、維持規格の EB-4352[SCC によるき裂
進展]に従い、き裂の長さ及び深さ方向についてき裂の進展を予測する。全周き裂を想定
した場合には、板厚方向にき裂の進展を予測する。貫通き裂を想定した場合は、そのき裂
の両端から周方向へき裂の進展を予測する。
き裂の進展評価に際しては、維持規格の EB-4310[評価期間]に従い、評価期間を設定
する。
③き裂進展速度
シュラウド等のき裂進展は、維持規格の EB-4340 の[(2) SCC によるき裂進展]に基づ
いて算出することとするが、炉内水質環境下での応力腐食割れの進展として評価する必要
があることから、き裂の進展速度は、炉内水質環境中の応力腐食割れの進展速度として、
維持規格の添付 J-2 の「表 添付 J-2-1 応力腐食割れき裂進展速度式」に定めるものを適
用する。
なお、中性子の一定以上の照射領域(5×1024 n/m2 以上)では、保守的に鋭敏化 SUS304
材のき裂進展速度図の上限値(9.2×10-7 mm/s = 30 mm/年)を適用する。
④応力拡大係数
応力拡大係数は、維持規格の EB-4360[応力拡大係数]及び添付 E-5[応力拡大係数の
算出]による方法を適用する。なお、全周き裂の場合は、米国石油協会規格の API 579 の
評価式(1)を用いて応力拡大係数を算出する。
注 (1) “API Recommended Practice 579 First Edition, Appendix C, C5. 8 Cylinder
Surface
Crack,
Circumferential
Direction-360
Degrees,
Through-Wall
Forth Order Polynominal Stress Distribution, p. C-30, Jan. 2000” に示
されている。
(3) 破壊評価
①負荷条件
維持規格の EB-4410[負荷条件]及び添付 E-7[欠陥評価に用いる荷重]に従い、考慮
すべき負荷荷重及びその組合せにより評価する。具体的には、シュラウド等に加わる差圧、
自重及び地震荷重(S1*、S2)(2)を考慮して評価する。
注(2) S1*:
発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和 56 年 7 月 20 日原子力
安全委員会決定。以下「耐震指針」という。)の設計用最強地震により敷
地の解放基盤表面に想定される基準地震動による地震荷重又は静的地震荷
重のどちらか大きい地震荷重。
S2 :
耐震指針の設計用限界地震により敷地の解放基盤表面に想定される基準地
震動による地震荷重。
②破壊評価の方法
シュラウド等の構造健全性を評価するための方法としては、簡便な方法である「極限荷
重評価法」、又は詳細な解析に基づく方法である「崩壊荷重に基づく最小必要断面積によ
る評価」の方法のいずれかを用いることとする。なお、これらのいずれかの方法によって
行う評価に加えて、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子力発電設備の健
全性評価等に関する小委員会(以下「健全性評価小委員会」という。)で認められた「1
次一般膜応力による許容応力限界から求める必要残存面積による評価」の方法(3)を用いて、
その妥当性を確認することとする。
また、中性子照射量が 3×1024 n/m2 以上となる場合には、線形破壊力学評価法による
評価を併せて行う。
以上の破壊評価を行う場合において、シュラウド等は耐圧部材ではないので、貫通き
裂を想定しうることから、き裂の長さ(き裂の角度)及び板厚方向の深さに関する制限は
適用しない。
注(3) 「原子力発電設備の健全性評価について−中間とりまとめ−(原子力安全・保安
院、2003 年 3 月 10 日)
」に示されている。
ア)極限荷重評価法による評価
維持規格の EB-4430[極限荷重評価法]及び添付 E-8[極限荷重評価法]に規定する破
壊評価法である極限荷重評価法を適用する。
イ)崩壊荷重に基づく最小必要断面積による評価
き裂がある状態での崩壊荷重(荷重−変位曲線と弾性勾配の 2 倍の傾きの直線との交
点における荷重)が負荷荷重の 1.5 倍となる断面積(以下「最小必要断面積」という。)
を求める。
ウ)1次一般膜応力による許容応力限界から求める必要残存面積による評価
上記ア)又はイ)の方法で行った評価結果を検証するために、想定される最も大きな地震
荷重が作用したときに、シュラウド等の残存断面積に発生する最も大きな応力強さが発電
用原子力設備に関する構造等の技術基準(昭和55年通商産業省告示第501号)に基づ
く許容応力強さと等しくなる断面積(以下「必要残存面積」という。)を求める。
③中性子の高照射領域での評価
ア)破壊靱性
中性子照射量が 3×1024 n/m2 以上となる部位については、上記の評価に加えて、線形破
壊力学基準を用いた評価を併せて行う。その際、中性子照射量に応じた材料の破壊靱性値
は、当該材料に適した技術的根拠の明らかなものを用いることとするが、健全性評価小委
員会で認められた以下の破壊靱性値を用いてもよいこととする。
・中性子照射量 3×1024 n/m2 以上 8×1024 n/m2 未満:破壊靱性値 KIC=165 MPa√m
・中性子照射量 8×1024 n/m2 以上:破壊靱性値 KIC=43.2 MPa√m
イ)応力拡大係数
応力拡大係数は、維持規格の EB-4360[応力拡大係数]及び添付 E-5[応力拡大係数の
算出]による方法を適用する。なお、貫通き裂の場合は、円筒周方向貫通き裂の応力拡大
係数の評価式(4)を用いて算出してもよい。
注 (4) “D. Rooke and D. J. Cartwright, Stress Intensity Factors, 5.Plates and
Shells, 5.2 Shells 5.2.2 Circumferential Crack in a Cylindrical Shell:
Uniform Membrane Stress, p.323, 1974” に示されている。
2.許容基準
シュラウド等のき裂等について、1.の方法で評価を行ったとき、評価期間中の運転
継続を可能とする許容基準は、以下のとおりとする。同基準を満たさない場合は、補修又
は取替が必要となる。
①極限荷重評価法による評価を行う場合には、維持規格の EB-4500[許容基準]に従い、
「欠陥寸法に基づく許容基準」又は「負荷応力に基づく許容基準」を満たすこと。
②最小必要断面積又は必要残存面積による評価を行う場合には、進展予測したき裂部
分を除いた残存断面積が最小必要断面積又は必要残存面積より小さくならないこと。
③中性子の高照射領域について線形破壊力学を用いた評価を行う場合には、破壊靱性値か
ら求められる許容き裂長さより、進展後の最も長いき裂長さが大きくならないこと。