!特集:技術者の知りたい構造物と基礎工! 日本の構造物とプロジェクト 報文 羽田空港D滑走路の事業概要について ―埋立・桟橋組合せ工法による海上空港― 宮田 正史*/野口 孝俊**/福本 裕哉***/相河 清実**** 1.は じ め に 羽田空港は,国内航空ネットワークの基幹空港であり, 増加する航空需要に対してその空港処理能力は既に限界 に達している状況にある。このため,新たに4本目の滑 走路(以下,「D滑走路」という)等を整備し,羽田空 港の空港処理容量を大幅に増加させる事業が羽田再拡張 事業である(写真―1) 。本事業により,現在の羽田空港 の年間発着能力を約2 9. 6万回から約4 0. 7万回へと増加さ せることができる。 D滑走路の建設工法の選定および工事契約方式につい ては,「羽田空港再拡張事業工法評価選定会議」の提案 を受け,桟橋工法,埋立・桟橋組合せ工法および浮体工 法という3工法の提案を可能とし,かつ設計段階におけ る工費・工期を施工段階および維持管理段階においても 保証させることのできるよう,設計と施工を一体的に発 注する設計・施工一括発注方式を採用した。本工事は, 表―1に示すとおり,平成1 7年3月に鹿島建設を代表者 とする1 5社JVと契約を締結しており,埋立・桟橋組合 わせ工法による基本設計提案に基づき,実施設計を現在 進めているところである。 本稿では,D滑走路の事業概要として,計画概要,建 設予定地点周辺の地盤概要および主要施設の構造概要に ついて紹介する。 なお,本報告では紙面の都合上,契約方式や施工条件 等に関する詳細説明は割愛するが,以下に本工事の主な 特徴を示す。 ¸ 入札参加者が構造形式の選定も含め,基本設計を実 施して技術提案を行う ¹ 契約後は請負者が基本設計に基づき実施設計および 施工を実施し,原則として設計に起因するリスクは請 負者が負担 º 厳しい施工条件下における大規模・急速工事 ・履行期間(設計・施工)がきわめて短い ・供用中の空港周辺での工事のため厳しい制限表面等 による制約 ・船舶が輻輳する東京港第一航路に近接した工事 » 技術的難易度が非常に高い ・軟弱な粘性土層が厚く堆積した大水深(最大約2 0m) の海域に,非常に高い盛土(最大約3 7m)による埋 立地盤を短期間で施工(海面からの埋立高さ:最大 約1 8m,埋立荷重:最大約5 7 0kN/m2) ・桟橋および床版構造による広大な空港基盤施設(滑 走路・誘導路等の約6 0ha)の国内初適用 ・埋立部と桟橋部の接続部における護岸構造(抗土圧 構造物)として鋼管矢板井筒構造の初適用(水深約 1 8m,海面上の護岸高さ約1 4m) ¼ 基本設計段階(技術提案の段階)で,設計供用期間 (1 0 0年)に対応した維持管理を考慮した断面設定・ 材料選定および維持管理計画が必要とされる。 2.計画概要および地盤概要 東 京 湾 D滑走路整備事業 ( ) 60m m× ,500 (2 走路 B滑 C滑走路(3,000m×60m) ( 平成9年3月供用開始) 埋立部 埋立/桟橋 接続部 桟橋部 ) 開始 供用 3月 12年 平成 A滑走路(3,000m×60m) (昭和63年7月供用開始)連絡誘導路部 2. 1 計画概要 本事業で整備するD滑走路の計画図を図―1に示す。 D滑走路を支持する基盤施設は,埋立工法と桟橋工法を 組合わせた構造である。多摩川河口域については,通水 表―1 工事件名 東京国際空港D滑走路建設外工事 請 負 「鹿島・大林・五洋・佐伯・清水・新日鉄エンジ・JFEエ ンジ・大成・東亜・東洋・西松・前田・三菱重工・みらい・ 若築」異工種建設工事共同企業体(代表者:鹿島建設) 者 国際線地区整備等事業 写真―1 羽田再拡張事業の全体概要 東京国際空港D滑走路建設外工事の工事契約概要 請負代金額 5, 9 8 5億円(消費税込み) 建設工法 埋立・桟橋組合せ工法 7 横浜第2合同庁舎 *MIYATA Masafumi 国土交通省 関東地方整理局 港湾空港部 東京国際空港再拡張プロジェクト推進室 横浜市中区北仲通5―5 **NOGUCHI Takatoshi 同 上 同 上 ***FUKUMOTO Hiroya 同 上 同 上 ****AIKAWA Kiyomi 羽田再拡張D滑走路建設工事共同企業体 工事管理グループ グループ長 (設計担当) 東京都江東区青梅2丁目地先 064 ● 基礎工/2007. 1 ▲ 報文 羽田空港D滑走路の事業概要について 表―2 工学的な地層区分 測線Ⅰ 海底面∼AP−3 5m程度に分布する地層であり,軟弱な粘性 【A層】 土主体の地盤である。含水比は1 0 0%以上程度,塑性指数は 6 0%以上程度,間隙比は3以上程度である。 新設滑走路 (D滑走路) N (第一航路側) 424m m 3,120 m 2,020 岸部 ・護 埋立 新滑走路 2,500m 東京国際空港 (羽田空港) AP−3 5m∼−6 0m程度に分布する地層であり,粘性土主体 であるが,B層の下半分に一部砂質土が挟在する。上部の粘 【B層】 土層については,A層に比較すると粗粒で低塑性であり,含 水比は2 5∼6 0%程度,塑性 指 数 は1 0∼4 0%程 度,間 隙 比 は 1. 3程度である。 線 法 口 河 川 摩 多 AP−5 0m∼−7 5m程度に分布する地層であり,砂礫・粘性 【C層】 土・砂質土の互層地盤である。N 値5 0以上の箇所もあり,小 規模構造物の支持層となりうる層である。 続部 橋接 桟 立/ 測線Ⅱ 埋 m 1,100 部 桟橋 連絡誘導路部 現空港/連絡 誘導路接続部 :土質調査地点 AP−8 0m程度以深に分布する地層であり,N 値5 0以上の連 【E層】 続した層が存在し,大規模構造物の支持層となりうる層であ る。せん断波速度はおおむね4 0 0m/s以上である。 線 524m 法 河口 川 多摩 多摩川 0 _ D―RWY23端 500 1,000 +10.0m AP±0.0m (埋立・桟橋接続部)D―RWY05端 滑走路長 2,500m 0.328% 勾配 2,000 m 平面図 790m (桟橋部) 1,710m (埋立部) AP+17.1m 計画高 AP+13.092m (護岸部) AP+6.858m +20.0m ` AP+15.0m AP+13.585m 0.041% 0.160% 滑走路線形図(測線¿) (現空港側) T1 +20.0m 始点 +15.0m AP+7.3m +10.0m (桟橋側) T1 始点 連絡誘導路長 718m 計画高 AP+13.425m +5.0m AP±0.0m 勾配 LEVEL 1.2% a 連絡誘導路線形図(測線À) 図―1 D滑走路計画図 進入灯 計画高 橋梁部 AP17.1m (553m) 埋立部 AP15.0m 桟橋部 連絡誘導路部 計画高 標高AP(m) 標高AP(m) (718m) AP13.425m 15 20 AP7.3m 0 (2,020m) (1,100m) ① ② −75 ④ 距離(m) 0 1,000 _ 図―2 ⑤ 2,000 (第一航路側) 3,000 4,000 新滑走路(測線¿) 桟橋部側 ① ② ③ ④ ⑤ −50 ③ (多摩川側) 現空港側 −25 −100 連絡誘導路の縦断線形は,新滑走路島から現空港側に向 けて下り勾配とし,現空港側の地盤高さAP+7. 3mに擦 りつける線形とした。 2. 2 地盤概要 本節では,本工事の入札公告前に発注者が実施した土 質調査結果の概要を紹介する。土質調査は,図―1に示 すとおり5 0 0m程度の間隔で全1 7ヵ所実施した。 図―2にD滑走路および連絡誘導路部における工学的 な観点から整理した土層構成を示す。また,図中に示す A∼Eの各土層の主な特徴を表―2に示す。工学的な観 点から建設予定地の地盤特性を概観すると,水平方向の 地盤物性のばらつきが比較的小さく,比較的均質な地盤 である。 設計・施工上の留意点としては,埋立部については, 海 底 面(AP−1 2. 0m∼−2 0. 0m程 度)∼深 度AP−3 5m に非常に軟弱な粘土層(A層)が堆積しているため,こ の粘土層部分の地盤改良設計がポイントとなる。また, 桟橋部および連絡誘導路部については,C∼E層にかけ て杭基礎の支持層となり得る層が存在しているため,構 造規模(杭反力)や構造位置に対応した支持層の設定が ポイントとなる。 3.構 造 概 要 0 −25 −50 −75 −100 距離(m)0 500 1,000 1,300 ` AP−7 0m∼−9 5m程度に分布する地層であり,一部小さなN 【D層】 値を有する粘土が挟在しているが,N 値5 0以上の連続した層 が存在し中規模∼大規模構造物の支持層となりうる層である。 連絡誘導路(測線À) 工学的な土層構成(新滑走路および連絡誘導路) 性を確保するため桟橋構造としている。滑走路の延長は 2, 5 0 0m(空港島の延長は3, 1 2 0m) ,計画地盤高は航行 船舶との干渉を避けるために第一航路側端部でAP+ 1 7. 1m(最高点) ,多摩川側端部でAP+1 5. 0mとしてい る。既往の海上空港と比較すると,計画高さが非常に高 いことが特徴である。また,D滑走路と現空港をつなぐ 本章では,本工事で建設する主な基盤施設の構造概要 を紹介する。 3. 1 埋立・護岸部 埋立・護岸部は,軟弱な粘性土層が厚く堆積した大水 深の海域に,非常に高い盛土を短期間(約3 5ヶ月)で施 工するというきわめて厳しい条件下で,構造断面の設定 を行う必要がある。通常,このような条件下の護岸であ れば,軟弱粘土層を完全に改良し,改良地盤上に護岸等 を構築することが一般的である。しかしながら,当該地 点の粘性土層は非常に厚く堆積しているため,完全に改 良することは工期・工費の面から合理的ではない。この ため,護岸断面は,沈下に対して追従性の高い傾斜堤構 造を採用している。図―3に滑走路中央部付近の護岸構 基礎工/2007. 1 ● 065 界 KEYPLAN 境 地 用 線 岸 パラペット 上部ブロック 護 CL 設 法 施 港 空 舗装 路 走 滑 185.0 25.0 AP+13.81 AP+8.36 消波ブロック 管中混合固化処理土1 被覆石 HWL AP+2.10 揚土2 捨石2 捨石1 管中混合固化処理土2 中仕切堤2 ①―H サンドマット 原地盤 AP−19.50 保護砂 中仕切堤1 保護砂 築堤材1 築堤材2 AP−20.0 床掘置換AP−27.50 床堀置換AP−27.50 (カウンター) ①―C―1 AP−30.0 SD改良 ①―C―2 SCP30%改良 AP−36.0 ②―C AP−44.0 ②―S AP−46.0 ②―C SCP60%改良 床版 上部桁 80.0 チタンカバープレート AP+18.0 揚土2 直投2 揚土1 直投1 (単位:m) 電気防食(アルミニウム陽極) 図―3 護岸構造の標準断面図(滑走路中央部付近) 耐海水性ステンレス鋼 ライニング 鋼管杭基礎 写真―2 桟橋部ジャケット構造のイメージ図 KEYPLAN 工事における地盤改良は厳しい空域制限下で の施工となることから,夜間のみの作業区域 空港法線 多摩川河口域 護岸法線 は全体の約5割を占め,その他は2 4時間体制 1,100.0 で施工を行なう予定としている。なお,埋立 渡り桁 AP+13.736 AP+13.585 床版 舗装 荷重は場所により異なり,約2 5 0∼5 7 0kN/m2 である。 AP−8.0 AP−16.8 AP−18.0 3 . 2 桟 橋 部 AP−18.0 SCP 桟橋部については,厳しい空域制限下の短 鋼管杭 鋼管杭 鋼管杭 φ1,320.8 φ1,600 φ1,600 工期施工を実現するため,先行打設した鋼管 (単位:m) 31.5 15.75 26.5 31.5 23.05 31.5 鋼管杭 杭基礎(直杭)に,別途工場で製作した約2 0 0 AP−79.0 AP−83.0 φ1,600 基のジャケット(鋼管トラス構造)をかぶせ _ 縦断図 るように据付けて桟橋構造を構築するジャ (滑走路方向) (滑走路直角方向) ケット式桟橋構造を採用している(写真―2) 。 滑走路方向 A B 1 2 3 各ジャケットは,基盤施設の連続性を確保す A B 63,000 AP+15.0 31,500 31,500 31,500 る観点から,上部の鋼桁同士(I桁)を現地 カバープレート BH−2,500 鋼桁 で結合(溶接) ・一体化し,約5 0haに及ぶ広 AP−4.5 1 大な桟橋構造を構築する。また,上部鋼桁上 鋼管杭 ①―C―1 φ1,600 AP−30.0 には,プレキャスト床版が設置され,その上 AP−36.0 ①―C―2 ②―CA AP−45.0 2 層にアスファルト舗装が施工される。図―4 ②―CB AP−52.0 ③―S AP−66.0 にジャケット桟橋の縦断面図および標準断面 ③―C―1 3 ④―S AP−79.0 図を示す。ジャケット構造については,海洋 (単位:㎜) ⑤ 工学的基盤層 (単位:m) エネルギー施設や港湾施設での適用実績はあ ` 平面図 a 標準断面図 るものの,広大な空港基盤施設としてははじ 図―4 ジャケット構造の縦断面図および標準断面図 めての適用となる。また,床版上に空港施設 の主要部分が直接設置されるのは国内では初 の試みである。 造の標準断面図を示す。 ジャケット構造の断面設定については,以下に示す事 傾斜護岸の断面設定は,以下に示す事項などを考慮し 項等を考慮して決定している。 て決定している。 ¸ 多摩川河口域の通水性確保のために必要な杭間隔を ¸ 基礎地盤の安定性の確保および圧密沈下の促進を目 確保 的とした低置換サンドコンパクションパイル改良(改 ¹ 支持層は,所要の支持力を確保するため,AP−8 0 良率:3 0%)の採用 m付近のE層とし,大口径杭(径:1, 6 0 0Ù,肉厚1 8 ¹ 護岸前面の粘土地盤を床堀・置換し,掘削した粘土 ∼5 7Ù)を採用 を護岸背面に軽量盛土材(セメント固化処理土)とし º 上部ジャケット構造については,通水性の確保,製 て使用することにより護岸安定性を確保 作性,飛沫帯・干潮帯・海上大気部の防食面積の削減 埋立部の地盤改良は,羽田空港や関西国際空港などで および温度応力(高次の不静定構造物)や地震時発生 実績のあるサンドドレーン工法を採用している。地盤改 応力の軽減を考慮し,海水面付近(L.W.L±0. 0m)か 良深度は,必要最小限の深度とし,表層の軟弱粘土層で ら上部桁までトラス補剛材がないラーメン構造を採用 あるA層下端としている。これは,B層の圧密速度(cv 鋼部材の防食対策については,広大な防食面積と維持 =1, 0 0 0Ú2/day程度)が速いため供用開始時には圧密が 管理時の海上高所作業(塗装等の塗替えなど)の困難性 ほぼ終了し,B層を地盤改良することによる供用開始後 を考慮し,長期的な維持管理コストの低減が可能であり, の沈下抑制効果がほとんど期待できないためである。本 17.2 26.675 55.275 63.0 58.15 HWL+2.1 LWL±0.0 45,000 15,000 15,000 15,000 63m(ブロック割付寸法) 31.5m 31.5m 31.5m AP+3.0 HWL+2.1 LWL±0.0 15,000 AP−70.0 066 ● 基礎工/2007. 1 AP−83.0 AP−87.8 43m(ブロック割付寸法) 15.0m 15.0m 15.0m 15.0m ▲ 報文 羽田空港D滑走路の事業概要について KEYPLAN a 埋立部 a’ 桟橋部 30.0 桟橋部 PCスリット柱 b 渡り桁 (ローリングリーフタイプ) 舗装・覆土 線 法 岸 護 軽量混合処理土2 γt=10.0kN/m 上部構造 HWL AP+2.1 伸縮装置 14.4 14.9 0.16% 軽量混合処理土1 γt=11.5kN/m LWL AP±0.0 被覆石 AP−18.0 AP−20.0 AP−30.0 AP−36.0 ①―H ①―C―1 管中混合固化処理土2 γt=14.0kN/m 3 管中混合固化処理土1 γt=14.0kN/m 1:8 前面マウンド (捨石) 2 1: 保護砂 AP−19.0 保護砂 サンドマット SCP60% SCP30% SCP78% ①―C―2 AP−36.0 頂版コンクリート ②―C―1 3 3 AP−8.0 SCP30% ①―C―1 AP−38.0 ①―C―2 埋立部 PCスリット柱 3 2 1: 1: 2 中仕切堤2′ b’ ①―H 捨石マウンド 外壁鋼管矢板 φ1,600㎜,t=18∼24㎜ 隔壁鋼管矢板 背面マウンド 写真―3 ②―C―1 φ1,600㎜,t=18∼22㎜ AP−60.0 AP−62.0 AP−70.0 ③―S 鋼管矢板井筒 中仕切堤1 埋立/桟橋接続部の護岸構造の イメージ図 ③―S 1 8m,海面上の護岸高さ約1 4mという 厳しい条件下において,側方変位に対 抗する護岸構造(抗土圧構造)として _ 滑走路断面(a―a′ ) 採用した事例は存在しない。このため, 鋼管矢板井筒護岸 埋立部 接続部の構造検討においては,あらゆ 424.0(空港施設用地) 鋼管矢板井筒 428.4 る観点からの技術検討を実施している。 22×18.0=396.0 16.20 16.2 本護岸構造の断面設定に関して最も 重視した点は,護岸の側方変形の抑制 外壁部 桟橋部 である。これは,護岸の過大な側方変 隔壁部 形は護岸本体のみならず,護岸前面の (単位:m) 桟橋構造や護岸背後地盤等の周辺構造 ` 平面図(b―b′ ) 物の安全性に加え,航空機が接続部を 図―5 埋立/桟橋接続部の構造断面図 通過する際の安全性・使用性にも大き な影響を及ぼすためである。 維持管理性が優れる以下に示す対策を適用した。 以上のことから,接続部の護岸構造の断面設定につい ¸ 上部鋼桁部は,耐腐食性に優れるチタンカバープ ては側方変形を抑制するために,以下に示す事項等を考 レートにより桁全体を覆い,内部空間を湿度管理(相 慮して決定している。 対湿度5 0%以下)することによる腐食環境の改善 ¸ 護岸背面に軽量混合処理土および管中混合処理土を ¹ カバープレートから海面付近までのジャケットのレ 投入し,土圧軽減を図る グ(柱部材)は,鋼部材の表面を海洋環境下の耐食性 ¹ 護岸前面に,変形抑制を目的として捨石マウンドを に優れた耐海水性ステンレス鋼で覆うライニング工法 設置するとともに,マウンド直下の軟弱粘性土層(A による対策 層)を高置換(7 8%)のサンドコンパクション工法で º 海中部および土中部は,流電陽極方式の電気防食工 改良 法による対策 º 護岸本体の沈下・変形抑制の観点から,鋼管矢板 床版構造については,日常的に航空機荷重が作用する (径1, 6 0 0Ù)基礎を砂質土で構成される支持層(C 範囲(滑走路,誘導路等の約3 0ha)は,施工実績が豊 層)に根入れ 富で現場打ちコンクリートの施工を低減可能なプレキャ » 護岸本体の全体剛性を高めるために,隔壁部の鋼管 ストPC床版構造とし,それ以外の着陸帯等(約2 0ha) 矢板の継手にはせん断耐力の大きい高耐力継手を適用 については超高強度繊維補強コンクリートによる床版構 するとともに,鋼管矢板の頂部を頂版コンクリートで 造を採用した。 結合 3. 3 埋立/桟橋接続部 ¼ 上部構造は,反射波低減等を目的として,消波護岸 埋立・桟橋接続部(以下,接続部)は,埋立部と桟橋 構造を採用(PCスリット柱) 部を接続する埋立護岸兼渡り桁を支持する延長4 2 4mの 3. 4 連絡誘導路部 下部構造であり,本工事における最重要構造物の1つで 連絡誘導路部は,現空港とD滑走路を全長約6 2 0mで ある。接続部の護岸構造は,護岸背面の埋立土の施工 結ぶ連絡路であり,南北2本の連絡誘導路(航空機対応, 時・供用時の地盤の沈下や側方変形を抑制するために, 幅員約6 3m)と場周道路(車両対応,幅員約1 0m)によ 橋梁等の基礎,橋台として実績のある鋼管矢板井筒構造 り構成されている(図―6) を採用した(図―5,写真―3) 。 。以下,紙面の都合上,連絡 鋼管矢板井筒構造は,接続部護岸全長にわたって打設 誘導路についてのみ紹介する。 される2列の鋼管矢板(外壁部)と,それらと直交方向 連絡誘導路は,_緊急時の小型船舶通航のための2本 に打設される鋼管矢板(隔壁部)からなる2 4個の連続し の航路を跨ぐ“橋梁部”と,`現空港の地盤高さ(AP た矩形セルから形成される。鋼管矢板井筒構造を水深約 +7. 3m)に接続する“桟橋部”から構成される。 AP−78.0 AP−83.0 ③―C―1 ③―C―1 ⑤ ⑤ 37.0 14.4 16.05 (単位:m) 基礎工/2007. 1 ● 067 護岸法線 KEYPLAN 現空港 (緊急時小型船舶航路) 50.0 伸縮装置 50.0 新滑走路島 場周道路 T―2 340.0 291.55 A 22.1 63.0 10.8 A 連絡誘導路 伸縮装置 伸縮装置 228.8 37.0 63.0 22.1 10.8 伸縮装置 T―1 (単位:m) 620.9 _ 写真―4 連絡誘導路橋(橋梁部)の構造イメージ 震時における鉛直荷重・水平荷重を受けるトラス構 造とした。支持層は,所要の杭の支持力を確保する 継手部 +1.2%勾配区間 継手部 接続部 P3 P4 P1 P2 HWL AP+2.1 L1 L2 L3 L4 L5 L6 L7 L8 ため,AP−7 0m付近のD層とし,大口径杭(径: LWL AP±0.0 ― ― ― 地盤改良範囲 1 , 4 0 0 Ù)を採用した。 ― (単位:m) ― ― ― ` 連絡誘導路(桟橋部) ` 連絡誘導路の縦断図 連絡誘導路(桟橋部)は,現空港に接続するため (単位:㎜) (単位:㎜) 63,000 63,000 1,500 15,000 30,000 15,000 1,500 構造高さを低く設定する必要があるが,一方で現空 ショルダー 誘導路 ショルダー ショルダー 誘導路 ショルダー アスファルト舗装(200㎜) Pca床版 港付近は水深が浅くなり波高が大きくなる。このた 1.0% 1.0% 上部桁 め,桟橋部の上部構造は,カバープレートを設置す LWL±0.0 ジ ャ LWL ±0.0m ることができず,非常に厳しい塩害環境に長期間に ケ ッ ト 橋 わたり暴露されることになる。このため,上部工は 脚 塩害耐久性を確保するため,ひび割れ制御が可能な 6@10,000=60,000 PC梁スラブ構造を採用している。下部構造につい a 連絡誘導路(橋梁部)の標準断面図(P2) b 連絡誘導路(桟橋部)の標準断面図(L2) ては,地震時の現空港側護岸の地盤変位の影響が懸 図―6 連絡誘導路の構造断面 念される部分は直杭式桟橋部(L1)とし,L1以外 の部分はジャケット構造(L2∼L8)としている。 KEYPLAN なお支持層は,連絡誘導路(橋梁部)と同じD層で 現空港 既設護 ある(杭径:約φ1, 2 0 0Ù) 。 岸法線 20,0 3 . 5 現空港/連絡誘導路接続部 AP+7.42 伸縮継手 スベリ支承 AP+7.3m 1.2% 現空港・連絡誘導路接続部は,連絡誘導路と現空 人工軽量盛土 舗装 AP+3.7 .5 1 HWL AP+2.1 埋立砂 1: 港を接続する護岸構造であり,主に護岸と橋台で構 .5 岩ズリ 1 捨石 t=1,000 腹付け砂 ケーソン AP−5.0m : 1 AP−12.0m 成される(図―7) 。 SCP改良 CPG改良 盛 砂 (as=13%) 盛 砂 (as=13%) 護岸構造の断面設定については,抗土圧構造物と 9,000 64,000 AP−23.5m SCP(施工済) SCP(施工済) SCP(施工済) SCP(施工済) AP−30.0m as=80% as=30% as=80% して常時・地震時における地盤の変形抑制機能が求 as=30% AP−36.0m AP−38.0m められることから,以下に示す事項等を考慮して決 鋼管杭 φ900 鋼管矢板 φ2,000 ②―C―1 AP−45.0m AP−46.0m ②―S AP−48.0m 定している。 AP−52.0m ②―C―2 AP−55.0m AP−57.0m ③―S ¸ 高剛性の自立式鋼管矢板護岸(径:2, 0 0 0Ù) ③―C―1 AP−64.0m AP−66.0m ③―S AP−70.0m ③―C―1 AP−71.0m を採用(現空港の護岸法線から海側へ約2 0m,護 AP−76.2m ④―S AP−79.0m AP−79.0m 岸を前出し) ⑤ 工学基盤層 (単位:m) ¹ 護岸の背面および前面地盤の液状化対策を目的 図―7 現空港・連絡誘導路接続部 とした地盤改良(サンドコンパクション)を採用 º 橋台については,基礎構造として連絡誘導路桟橋部 _ 連絡誘導路(橋梁部) の反力を支持する機能が求められることから杭基礎構 連絡誘導路(橋梁部)の上部構造は, “4径間連続桁” 造(径:9 0 0Ù)とし,所要の支持力を確保するため と“渡り桁”により構成され,幅約6 3mの床版を1 7本の にD層を支持層としている 鋼桁(I断面)で支持する構造である。活荷重を直接支 える床版は,鋼・コンクリート合成床版を採用した。な 4.あ と が き お,鋼桁は,桟橋部と同様にカバープレートと除湿によ り防食する。 羽田空港再拡張事業は,国民の期待が非常に高い事業 下部構造は,厳しい空域制限下における短工期施工を であることから,本事業を1日も早く完成させ,わが国 実現するため,4基のジャケット橋脚を配置している の経済や国際競争力の向上に寄与できるよう,関係者と (図―6,写真―4) ともに最大限努力していきたいと考えている。 。ジャケット橋脚は,常時および地 平面図 桟橋部 350.460 11.720 橋梁部 258.720 445.454(427.487) 130.0VCL〈130.0〉 (138.0) レベル区間 ① H ① 1 ① 3 ② 1 ③ S ④ C ④ S 1,500 15,000 30,000 15,000 1,500 アスファルト舗装 t=200㎜ 合成床版 1.0% 1.0% 16@3,750=60,000 5,9 7,1 7,0 LWL AP±0.0 基礎捨石 AP−58.0m 068 ● 基礎工/2007. 1
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