生毛移植に関する研究第2編有毛移植皮膚片に関する実験,特に動物実験における組織学的所見岡山大学医学部皮膚科泌尿器科敎室(主任:根岸博敎授) 岡山大学医学部病理学敎室(主任:浜崎幸雄敎授) 助手安藤智〔昭和29年8月20日恵子受稿〕学的影響を時間を追つて組織学的に検査した. 第1章緒言すなわち有毛移植皮膚片は生体から採取せられて被移植地に挿入するまでNaClに生毛移植についてはSchweninger1)(1875), Tiffenbach2)(1882), Kapp3)(1906), Krusius4) しめ,被浮遊せ移植地に挿入のための処理(術式に (1913),等の報告があり,本邦では田村一5) よつて相異がある)がほどこされる.手術に (1937),奥田6)(1937),大要する時間はおよそ30分 (1952),加生,浦森7)(1947),川橋9)(1953)氏淵8) 等がその成績稀に2時 ∼90分にわたり, 間を要する場合がある.しかして手を発表している.しかし組織学的研究報告は術時間の大半はNaCl中奥田氏の他にない,氏膚片の処理に要する.この長時間に組織細胞は人体における第2次における有毛移植皮瘢痕部および硬毛稀粗部ないし無毛部にたいに直接 Ⅴを活用せしめんと考え, V.A, して自家生毛移植試験を行い,さ B2, B6, C, Dをらに同種他各別にNaClに B1, 加えた液中家移植試験を各種血液型について諸条件の下に有毛皮膚片を浮遊せしめ1時に試み,移の間にわたり一定時間後の各期に液中より取り出した皮膚片に植片の母地に対すついて毛根鞘上皮,表植後2∼100日時期に皮膚を切除して,移る関係を組織学的に研究した.氏海〓の他に1頭はまた家兎, の乳牛を使用して,人体にお皮,結間, 90分, 3 合織細胞および膠原繊維の変化を組織学的に検査したので成績を報告する. けると同様の実験を行つてその成績を報告し第2章ている.著者はまず移植せしめる有毛皮膚片について実験的研究を行つた. 実験方法及び検査材料実験は室温摂氏30度,水生毛移植は毛根を損じないで移植すれば成功する.しかし移植された毛髪はすべて移植温摂氏27.5度の下で行つた. 実験には雪花菜,新鮮な野菜および藁で飼地にとゞまつて生長を続けてゆくものではな育した体重2.0kgのく,その大半は一旦脱落して再び発芽する. その側背部皮膚から検査材料を採取した .皮この一旦脱落する毛髪もそのまゝ移植地にと膚小片を採取する側背部の毛髪は短く鋏切し, ゞまつて生長を続ける毛髪と同様に発育せしベンヂンで清拭した後, 70%酒めるか,あた.口るいは再生発育を刺戟することが径3mmの成熟白家兎を使用し, 精で消毒し金属円鋸で毛乳頭を含む皮できるならば生活毛の移植は一歩前進したと膚小片を揉抜いて,こ云えよう.著者はこの点の改良を希い,皮膚出し,皮下組織と切り離して小皮膚柱を作組織細胞に関係深いVitamin(以る. 下V)を, 生毛移植の前処置に用いる生理的食塩水(以下NaCl)に加え有毛移植皮膚片,殊に毛嚢皮脂腺に直接作用せしめ,組織細胞に及ぼす化れをピンセットで〓み他方滅菌シヤーレにNaCl ものを7個中10万用意し,そ 50c.c.入れたの各々にV.A(1c.c. 国際単位含有)V.B1(1c.c.中10mg 1812 安含有)V.B2(1c.c.中10mg含中20mg含藤有)V.C(1c.c.中100mg含のV加NaCl(以 V.B1, V.B2, る1個のシヤーレはNaClのかつた.採有) 国際単位含有)を別に加えて6種 V.B6, V.C, 各作る .残みでVを子加えな取した皮膚片は直ちに各液に浮遊色:核に著変を認めないが,膠原繊維の膨化が起りエオジンにやゝ濃く染つている.第2図 V.B1) 下V.A, V.D)を恵 H.E染有)VB6(1c.c, V.D2(0.5c.c.中10万智参照. F反応:表皮細胞核は一般に核濃縮を起し,その程度はやゝ強いために核内構造は不鮮明に見える,染色の程度は対照より濃染している.(本標本は表皮細胞の大部分 3時間後の各期に液を欠損しているために極く一部の表皮細胞に中から取り出したものについて組織染色を行ついて観察した.)毛根鞘細胞核の表層に近いつた.対ものは核濃縮の傾向を示し濃染しているせしめ, 1時間, 90分, 照には採取直後の皮膚片を用いた. 組織染色はヘマトキシリン・エオジン二重染色法(以下H. E染色)とFeulgenのキシリボヌクレイン酸染色法(以デソ下F反応) 部のものは比較的染色の程度が弱いために核内の構造は認められない.結使用せる製剤はチヨコラA10万 (V.A),アペリー10mg,(V.B1),チ 10mg(V.B2),ビ国際単位(V.D2)を国際単位ヨコラロックス20mg(V ビスコリン100mg(V.C),チても一般に核濃縮をおこし,対照と比較する .B6), ヨコラD10万 H. E染実 1) 各溶液に1時績(第1図験成績間浮遊せしめた場合の成核では対照と比較するに差を認めがたい.皮下結合織の膠原繊維はやゝ著明に瀰漫性に混 F反応:表皮細胞核は軽度核濃縮におちいるが核内構造は比較的によく保たれ, 部分的に軽度め変化を認める以外は著変を認めない.毛根鞘上皮細胞の表層に近い部分は参照). F反皮細胞および表層に近い毛濁腫脹が認められる. 使用した. 第3章色:表根鞘上皮細胞核はやゝ核濃縮を起しその他の V.B2) NaCl) 合織細胞においにやゝ濃染している. を用いた. BB 応:表皮細胞核の呈色は一般にやゝ鮮明を欠き核染色質は瀰漫性に染り, 対照の核色質に比べると緻細な核染色質顆粒を認めがたい.核の大きさはやゝ小さく,核核濃縮を起し濃染している.結合織細胞核には著変を認めない. H. E染色:表皮細胞核の一部に軽度の核濃縮を認める以外に著変がない.皮下結合織濃縮を起している部分がかなり散在している. の膠原繊維の変化は軽度であつてNaClと毛根鞘上皮細胞核も一般に呈色は不鮮明になる. り,色深調がやゝ薄く見えるが核濃縮の傾向が V.B6) F反応:毛似根鞘上皮細胞は対照と少い.真皮の結合織細胞もまた同様の変化を比較して腫大している.全般的にF反応は弱呈し,一般に色調は対照に比較して薄い. まつているが核網結節は境界が明瞭である. 皮細胞核では核濃縮に陥つ反応は毛根鞘上皮細胞の表皮に近いものおよたものが注目を惹くがその他の部分では対照び深部に近いものはやゝ不明瞭である.結合と大差を認めない.皮織細胞は対照に等しい. H. E染色:表下結合織の膠原繊維は多少混濁して瀰漫性にやゝ汚ない紅色に染る. V.A) H. E染色:表皮細胞核はNaClに比べて核濃縮が少なく,むしろ膨化した感じがする. F反を起し,核応:表内構造も幾分混濁して不明瞭に見えるものがある.毛認めない.皮皮細胞核は多少核濃縮根鞘の核はあまり変化を下結合織の核は多少混濁しているが他に著しい変化を認めない. 毛根鞘上皮細胞においても核濃縮は軽度であつて多数のものはやゝ水腫にかたむき,周りに核分裂が見られる.膠原繊維も軽度に膨化しているのが認められる.第3図 V.C) F反応:表参照 . 皮細胞核は多少核濃縮生毛移植に関する研究第1表各溶液中で1時間処理した場合の組織像(Feulgen反を起したものを認めるが,核内構造は明瞭であつて対照の所見に近い.毛根鞘上皮細胞核 1813 応およびH. E染色所見) 織細胞においても同様である. H. E染色:核の一般的性状は対照と大差も同様に反応が著明で対照の所見とよく似る. を認めがたい結合織細胞核には殆ど変化を認めない. に比べると多少混濁している. H. E染色:一般に変化を認めない .皮下 V.A) 皮下膠原繊維は1時 F反応:表間のもの皮細胞核の内容がやゝ結合織の膠原繊維は一部において軽度の混濁瀰漫性に混濁して現われる,または明瞭な空腫脹を認めるが, NaClの胞を生じているものがある.毛根鞘上皮細胞似る.第4図場合の所見によく参照. V.D) F反応:表も同様であつて核は幾分混濁腫脹し,核染色皮細胞核は一般に中等質の構造がやゝ不明瞭に瀰漫性に現われ,軽度に核濃縮を起し,核の内容はやゝ濃染して度に反応を減じている.皮下結合織の核もや構造を認めがたい.毛ゝ混濁して反応を減じ一部の核には膨化を認根鞘細胞核は一般に軽度に反応が不鮮明になつているが核濃縮はあまり認められない.結合織細胞は表在性の一める. H. E染色:表皮細胞核の染色性を幾分減部は核濃縮に陥り,濃染するが深部のものはじたものが認められ,一変化に乏しい. している.毛根鞘上皮細胞核にはあまり変化 H. E染色:表皮細胞核はやゝ著しい核濃般に軽度に混濁を示を認めないが軽度に膨化している.皮下結合縮に陥つて濃染している.表層に近い結合織織の膠原繊維は混濁腫脹してエオジンにやゝ細胞は部分的に核濃縮をまぬがれ,皮汚ない色に染まる. 下結合織の膠原繊維は軽度に混濁腫脹して瀰漫性に紅色に染まる.(第1表参照). 2) 各溶液中に90分間浮遊せしめた場合の成績 NaCl) F反応:表に減弱しているが, と大差を認めない.毛 V.B1) F反応:表核濃縮に陥るが1時皮細胞は一般に軽度の間のものと大差を認めない.毛根鞘上皮細胞および結合織にあつてもまた同様である. 皮細胞核の反応は軽度 1時間浮遊せしめた場合根鞘上皮ならびに結合 H. E染色:一部分において核濃縮に陥つた表皮細胞の濃染しているのを認め,その部分では大体正常の構造を示す.膠の他原繊維 1814 安の混濁腫脹は1時藤間浮遊した場合と大差を認めない. V.B2) 智恵子胞核も同様にほとんど前項に等しい.膠原繊維の変化も認めがたい. F反応:表皮細胞核は1時間処理 H. E染色:表皮の一部に核濃縮に陥つたしたものに比較して多少核濃縮の進んだもの細胞が増加している以外に1時が認められる.毛根鞘上皮細胞は1時間の場しい変化を認めない.膠原繊維の腫脹は1時合に比べてあまり変化を認めない.結合織細間の場合と比較して多少進んでいる. 第2表 V.B6) 各溶液中で90分処理した場合の組織像(Feulgen反 F反応:表皮細胞核は対照に比較して大きく,核染色質をかなり明瞭に認めるが,少数のものは核濃縮をおこしている.毛 H. E染こしたものが多く,中間部ではむしろ細胞はる. 間の場合に比べて不明瞭である.深部において核質は瀰漫性の反応を示すようで核内構造を明瞭に認めない.結合織細胞は核濃縮をおこしたものとやゝ膨化したものが見られる. H. E染色:核の染色状態は1時 V.D) 間のものより多少混濁腫脹してい F反応:一皮細核は1時べてやゝ小形で,核 H. E染色:H. E染間色の場合も同様である. たゞ膠原繊維において1時混濁が進んでいる.(第2表間の場合に比濃縮におちいつたものが般に核の状態は1時の場合と大差を認めない . 3) 各溶液中に3時色:表間の場合に比較して相互の間に差異を認めない .膠原繊維は1時が1時 E染色所見) る. 根鞘上皮細胞は表皮直下ではやゝ核濃縮をお膨化している.核染色質はかなり明瞭である応およびH. 間の所見と著間のものより多少参照). 間浮遊させた場合の成績 NaCl) F反応:表皮細胞核殊に表層のも現われはじめている.毛根鞘上皮細胞も同様のは膨化して淡染し,核染色質の融解をしめの傾向を示す.皮すものが多い.毛根鞘上皮細胞核はやゝ膨化下膠原繊維は著明に膨化している. V.C) して核内構造が不明瞭に傾くが,上 F反応:1時皮細胞の間処理した場合の組変化は軽度である.結合織細胞核は変化に乏織像と比較してごく表層の表皮細胞核が多少しいが核内に空胞を形成したものを少数に認腫大し,核の内容がやゝ水様に傾いたものをめる. 認める.しかしそれ等少数の核を除くと1時間の場合と同様に反応は明瞭におこつてい H. E染色:表皮細胞核は一般にやゝ淡染し,一部分は核濃縮におちいつて濃染してい生毛移植に関する研究 1815 るものを認める.毛根鞘の核は一般に淡染しに空胞形成を見る.表層の核の一部では水腫て核内構造がやゝ不明瞭になつている.真皮状の膨化を認めるものがあるが多くは正常にの結合織は膨化して結合織繊維は境界不明瞭近い所見を保つている.毛根鞘上皮細胞核のになり,や膨化はほとんど認められない,一ゝ瀰漫性にエオジンに淡染してい部軽度に核る.結合織繊維の核も多少膨化しているが, 濃縮がおこつている.膠原繊維の核は稀に小核内構造は比較的よく保たれている. さい空胞を入れているが著変は認め得ない. V.A) F反応:表皮細胞核は膨化したも H. E染色:表皮細胞核の膨化は軽度であのと核濃縮におちいつたものが混在して認めつてほゞ正常に近い像を有し,一部細胞は核られる.膨化は核膜であつて核の内容は淡明濃縮におちいつている.毛根鞘の核も多少膨に認められる.毛根鞘上皮細胞核は一般に反化したものが認あられるが多くのものは正常応がやゝ不明瞭で核内の構造も幾分不明瞭にに近い構造を現わしている.真皮の結合繊維なつているは一部膨化してエオジンに等質性に染つてい膠原繊維細胞は核濃縮をおこしやゝ濃染したものが多いが,少数のものは中るも,多等度膨化している. る. H. E染色:表皮細胞核は膨化して淡明に V.B6) くの部分はなお繊維構造が認められ F反応:表皮細胞核は膨化におち見えるものと核濃縮におちいつて濃染したもいつたものをやゝ明瞭に認める.その他は一のが混在している.毛根鞘の核は中等度に膨般に核濃縮をおこしている.膨化におちいつ化して核内構造はやゝ不明瞭に見える.真皮た核は淡明であるが核の内部構造はなおかなの結合織は膨化してやゝ等質性に認められるりの正常像を示している.毛根鞘の核には膨がエオジンに染まり方が濃淡に染まり,かな化あるいは濃縮はいちじるしくないが,一りいちぢるしい変動を認める.膠原繊維細胞の核に空胞を認める.真皮の結合繊維細胞核は軽度に膨化して核内構造もやゝ不明瞭であには内部構造のやゝ不明瞭のものがある.しる. かしほゞ正常に近い構造を保つている. V.B1) F反応.表皮細胞核は一般に正常 H. E染色:表部皮細胞核の膨化はいちじる膚の核の一部分しくない.一般に核濃縮にかたむき核の内容は膨化して淡明に現われている.毛根鞘の核が瀰漫性に染まるものを認める.毛根鞘上皮は内容が多少瀰漫性に現われる傾向を認める細胞核の変化はやゝ軽度であるが,表他はほゞ正常の反応を示す.膠原繊維の核は核に類似した変化を示している.真多少膨化したものもあるが,ほゞ尋常の反応織は一般に膨化して等質性に見えるが一部はゞし少数のものは核濃縮に傾いなお繊維構造がみとめられる.膠原繊維の核に近い像を有しているが,表を認める.た皮の結合も膨化はあまりみとめられないが核内構造はている. H. E染皮細胞色:表皮細胞核の少数のものは膨化してやゝ淡明に見えるが多くは正常に近い不明瞭である. V.C) F反応:表皮細胞核の膨化はいち所見を保つている.比較的少数ではあるが核じるしくないが核の反応がやゝ鮮明を欠いて濃縮におちいつた細胞を認める.毛根鞘上皮いるために内部の構造をみとめがたい.毛根細胞もやゝ構造が不明瞭になつたものを認め鞘上皮細胞核はやゝ淡染し,一部の核内にはるが多くは正常に近い染色を保つている.真小さい空胞を2∼3み皮の細胞は中等度膨化して一部は等質性に見は内部構造をみとめがたい.繊えるがなお核内構造を明かに示しているのを染して内部構造が失われている. 認める.膠原繊維の核は少数膨化し多くは正常に近い所見を現わしている. V.B2) F反応:表皮細胞核は少数のもの H. E染色:毛とめる.その他の核で維細胞核は淡根鞘の核はやゝ膨化しているが核内構造は比較的明瞭にみとめられる. 結合織は一般に膨化してエオジンに淡染して 1816 安第3表各溶液中で3時藤智恵子間処理した場合の組織像(Feulgen反応およびH. E染色所見) いる.一部結合織繊維はなお境界を明瞭に認において助酵素として生体酸化に密接な関係める.繊維細胞核は一般に染色がやゝ不明瞭があり,殊にB2, で核濃縮におちいつたものがみとめられる. る事は毛髪と関連が深い.竹 V.D) F反応:毛根鞘細胞核は形が不規でB6の B6は蛋白代謝に重要であ内氏は動物実験欠乏は脱毛を起す事を認めている. 則になつて核膜に皺襞を生じている.また一鼠に見られるB2欠部の核はやゝ著明に内部は平等淡明に現われ, 屑を来す.B1にあるいは大小不同の空胞を認める.繊維細胞新陳代謝に一定の関係が深く,これの欠乏はの核は一般に淡明化して不規則な空胞をいれ組織蛋白の著しい分解をまねき窒素の損失をているものがある.(第3表来す. C11)は最近結合織の新生増殖をうなが H.E染色:毛るしくないが,核参照). 乏皮膚障碍は脱毛10)と鱗おいてもB2に次いで蛋白の根鞘細胞核の膨化はいちじす事が知られ,創染色質がやゝ瀰漫性に染ま用される. Dの生理作用は燐,カ傷治癒あるいは植皮術に応ルシウム代り核内構造が不明瞭になつたものを多く認め謝の調整,生物の酸化促進,腸細胞透過性のる.皮下結合織は中等度に膨化して等質性に亢進,植物神経機能の調節,血液凝固促進作エオジンに淡染している.繊維細胞核は膨化用及び網状赤血球の増多作用などがあげられ, して核内構造が不明瞭になつている. 臨床的にRhachitisの年Lumisterinか第4章総括ならびに考案るいは局所の刺戟を加えるものについては多くの研究がなされ,最らD2が分離されて肺結核, 皮膚結核の治療に用いられるようになり,最いわゆる発毛剤に毛髪の発生に入用な成分の内用,あ治療に使用された. 1931 近Vitamin 近は毛髪の再生,頭部脱毛予防に使用して有効なる成績の報告がある(Beutnagel, rich, Giger. Thomascheckお Fried よび蔭山氏12)). と密接な関係が知られてその研究報告は少く此等Vitaminをない. 有毛移植皮膚片に及ぼす影響を組織学的に検 V.Aは表皮,毛嚢,脂腺の角化と関係が深く,これの過剰は脱毛を来す.B群は生体生毛移植の前処置に加え, 査した. 組織細胞の染色はH. E染色とF反応を用生毛移植に関すいた.F反応は核染色質の成分であるデソキシリボヌクレイン酸の特異呈色反応を応用し, る研究 1817 にみとめる. V.B1:1時間後,表皮,毛根鞘上皮およ弱い加水分解によつて核酸と結合したプリンび結合織細胞核はやゝ強度に核濃縮を起しF 体を引離し,これによつて遊離されたアルデ反応は濃染する.膠原繊維は著明に混濁腫脹ヒド群をフクシン・亜硫酸に結合させて濃いを認め一般に他の例に比べて変化が強い. 90 赤紫色の反応を見るにある. 分後,表全く健康な細胞核内では核酸は核蛋白体としてのみ存在して,核酸及びプリン塩基が遊離して存することはない.したがつてこの場合にはF反応は強陽性であるが,核に変化が起ると核蛋白の分解が起るためにF反応は減皮細胞はむしろ膨化に傾きF反応をやゝ減弱する.その他の細胞には1時差を認めない. 3時間後,細間と大胞のF反応は一般に前項よりやゝ減弱する. V.B2:1時間後,表皮細胞は軽度に核濃縮を起しF反応は軽度減弱する.毛根鞘上皮退する.核が進行性変化を起す場合には核蛋細胞のF反白体の増加が起るためにF反応が亢進する. 認める,核色素融解を起し核内構造はやゝ不したがつて本反応によつて核の変化を実証す鮮明に見える.結ることができる. 90分後,一成績総括NaCl:1時間後,表皮,毛皮および結合織細胞のF反根鞘上応は一様にやゝ減弱し,軽度に核濃縮を示す.結合織細胞はむしろ膨化に傾くものを多数認めた.しかしいずれの細胞も核内構造は比較的明瞭に保たれかは1時応は表層は濃染し,軽度核濃縮を合織には著変を認めない. 部の表皮細胞に核濃縮を認めるほ間と大差がない. 3時間後,少細胞に軽度の膨化を認ある他は1時数の間と大差を認めず組織細胞の変性は一般に軽度で NaClに比べて染色性可良である. V.B6:1時間後,他の例と異つて表皮, 著変を認めない.膠原繊維は混濁腫脹して瀰毛根鞘上皮および結合織細胞は一般に膨化に漫性にエオジンに染まる. 90分後表皮細胞の傾く,F反 F反応が1時瞭に認められる. 90分後.前間より軽度に減弱し,膠原繊維の混濁がやゝ進行する他には1時認めなかつた.3時応はやゝ減弱するが核内構造は明項では膨化して間と大差をいた表皮細胞は少数のものは核濃縮をおこし間後一般に細胞は膨化し, 核内構造がやゝ不鮮明になる.毛根鞘上皮細 F反応を減じ核内構造も不鮮明になる,結合胞は表皮直下ではやゝ核濃縮が見られ.中織細胞のみ変化に乏しく1時間と大差を認めでは膨化に傾き,核内構造も1時間より不明ない. 瞭になる.結合織細胞は1時 V.A.1時間後,表よりわずかに勝れ,毛皮細胞のF反応はNaCl 根鞘上皮および結合織細胞は対照に似て著変を認めない.膠原繊維間間と大差を認めない,膠原繊維は著明に膨化を認める3時間後,多数の表皮細胞に軽度核濃縮を認める. 毛根鞘上皮は前項と大差がない.結合織細胞が膨化しエオジンに濃染して核内構造がやゝ核は濃縮あるいは膨化し,核不鮮明に現われた. 90分後,表に不明瞭となる.膠原繊維は中等度膨化を認皮細胞のF反応が部分的にやゝ減弱し,軽度核濃縮を見る. 核内に空胞を入れるものが現れ構造はやゝ不内構造は部分的ある.一般に細胞の膨化を来す. V.C:1時間後,膠原繊維の一部が軽度に明瞭になる.毛根鞘および結合織細胞は軽度混濁腫脹しているのを認める他に表皮,毛根腫脹してF反応を減ずる. 3時間後,表鞘上皮および結合織に著変を認めない.本例胞核の膨化あるいは濃縮を認め,F反皮細応は中は対照に最も近似して他の例に比べて成績は等度減弱し核内構造はやゝ不鮮明になる.毛可良と云える. 90分後,表根鞘上皮細胞核は中等度膨化してF反軽度膨化を認め,毛応を減弱する.膠原繊維はエオジンに濃淡に染る. 一般にV .Aより組織細胞の変性をやゝ著明皮細胞の表層核に根鞘上皮細胞は一部に濃縮と膨化を来し核内構造はやゝ不鮮明となる.結合織には著変を認めないがさきに部分 1818 安藤智恵子的にみとめた膠原繊維の軽度の混濁腫脹が一般的に見られるようになる. 3時間後, 間に比べて一般に細胞の軽度膨化を認める. V.D:1時間後,本第5章 1時例は他に劣り,表皮な結語 1. 移植された毛髪の多数は一旦脱落して再び発芽してくる.この脱落を最小限度に食らびこ結合織細胞は軽度あるいは中等度に核い止め,脱濃縮を起しF反応に濃染する.核内構造も不て再生を促すことが植毛術の要提である.著鮮明に見える.毛根鞘上皮には著変を認めな者はこの観点に立つて移植皮膚片(家兎皮膚) い. 90分後,膠を浮遊せしめたNaClにVitamin(A, る.そ原繊維の混濁がやゝ進行すの他は1時間後.一間と大差を認めない. 3時部の毛根鞘上皮および結合織細胞は著明ないし中等度膨化して核内には大小の空胞を入れる.核内構造は不鮮明にしてF反応落したものには適当な刺戟を与え B2, B6, C, D)を加え1時間, 90分, 3時間後の各期に有毛移植片を組織学的に検査してこの影響を見た. 2. V.C溶液で処理した移植片は組織細を減弱する.膠原繊維も膨化が中等度進行し胞の変性が最も軽度で,対ている. 鮮組織)に以上7例のうちV.Cには細胞の変化が B1, 照(採取直後の新近似する成績を得た. B6, B2の成績も比較的可良であつた.最最も軽度で成績は可良と云えよう. V.B6, つたDを V.B2は細胞の変性はほとんど等しくて優劣を認めが V.Dを比較的可良で最も変化の大きかつた除いてNaCl, V.A, V.B1の成績はほとんど等しく,相互の間に差が認められなかつた. 除くとNaCl, A, も変性の強か B1における組織たい. 3. 表皮,毛根鞘上皮および結合織細胞の F反応は.一般に時間の経過と共に減弱し, F 本実験のみで成績を論ずる事は尚早の感が反応に濃染した一部少数の表皮事よび結合織ある.しかし明かに組織細胞の変化が軽度に細胞においても漸次に反応を減弱した.細とゞまつたV.Cに細胞の核は初期に多くは濃縮に陥り時間を経るに従必要に応じて酵素と結合して可逆性の酸化型つて膨化に傾き,,核内構造は鮮明の度を減弱となり,細胞内の順調な呼吸作用を助ける触する.膠原繊維においてもすべて1時媒の作用を司るためと考える. V.Dのやゝ膨化し,その程度は各例の間に軽重の差おいては, V.Cがが劣ることはV.DのこれはV.Dが成績生理作用に相反する. 移植片組織に吸收されて生じた影響ではなく, V.Dの製剤に溶媒として胞間ではがあるも時間の経過とともに膨化の進行を見た.一部に混濁を認めた繊維があつた. 4. 表皮細胞は,毛根鞘上皮および結合用いた油による変化と考える. 1時間後より織細胞に比べて一般に変性の程度がやゝ強も90分後の組織細胞の変性が軽度であつたのい. は,この油性溶媒が水になじまないために起つたものであろう.事実NaClに加えたV.D (本研究は第6回連合地方会および日本皮膚科泌尿器科学会山は油滴状にシヤーレの液面上に浮んでおり, 陰第6回,四度々攪伴して均等に移植皮膚片と接触するよ第86回うにつとめたが,液中に浮遊させた皮膚片との接触を均等にはかることはむつかしかつた. 西日本皮膚科泌尿器科学会国第11回,広島第16回,岡山連合地方会において発表した.) 稿を終るに臨み終始かわらぬ御指導をたまわり, かつ御校閲の労をわずらわした恩師根岸敎授に深甚従つて個々の移植片は種々な程度に油滴を吸なる謝意を捧げると共に,本研究について種々なる着することになり,このような奇異な結果を御指導御〓撻をたまわつた本学病理学敎室浜崎敎授生じたものと思われる.この事は移植術後のおよび佐藤助敎授に感謝いたします. 経過観察においても推察せられた. 生毛移植に関する研究文 1) Schweninger 2) 笹川:皮 3) J. 尿誌, Kapp: f. Biol. 30巻, 5号, Monatsh. S. 169, 4) Ztschr. Bd. 11, 献 1875. Bd. 43, Wschr. 性誌. 1913, 6) 奥田皮泌誌. 64巻, 7) 大森淸一:整容皮膚外科学.手 55巻, 2号, 6号, 川淵:皮膚科紀要. 48巻, 76頁(昭18) 22) 皆見:皮加生・浦橋皮と泌. 15巻, Biochem. J. 1, 471. 24頁, 2号, 29. 3号 91頁(昭28) 741 (1935) 30. 安田:治療. 33巻, 12) 蔭山:いずみ. 2巻, 1号, ビタミンB 鈴木.ビ 15) Avery: 16) Chevallier 編,昭26)に 17) 西野 18) 大塚:実 37頁(昭27) 膚病徴毒学.治療学. 24) Krause 25) Kromayer 26) 三船岡山医学会誌. 50年(昭13) 27) 浜崎岡山医学会誌. 61年, Zfl. f. Chir. Dtsch. 24巻(昭10). med, 1905. N. 5. 3号(昭24).日新 25巻(昭11) 4頁(昭29) 20) 尼ケ崎:皮 31) 石田:東 32) 竹内臨皮泌. 33) 津崎:実験用動物解剖学 . 2巻,家 (1928) 34) 今北:皮膚科紀要. 20巻, 沼内科 35) 高橋・宮田:日 36) 木下臨床病理.病 368 Vitamin上(柿よる. 皮泌. Wschr. 藤野岡山医学会誌. 192, 12号, 1896. 29) Zeitschr. 4巻, 理組織標本の見方及鑑別診断. 127頁(昭26) タミン. Beat: 2号, 34巻, 浜崎:病医学. 学術会議ビタミン研究特別委員 et 療. 岡野:臨 2号, Biochem. 185, 141 (1920); 28) 会編纂. 14) Arch. 23) 304 (1936) 11) Anatomie. 1413頁(昭9) 術. 1号, der 80. 大森憲太:治 (昭27) Gyorgy: Pflugers 21) 537頁(昭14) Lehrbuch Auflage. 1914. 1947. 13) Abderhalden: 187, Med. 一:皮 9) 20) 1906. Krusius: 田村 10) Rauber-Kopsch: XI. Derm. 5) 8) 19) 1930. f. prak. 1819 8巻, 尿誌. 2号, 48巻, 44巻, 京医事新誌. 3巻 85頁(昭29) 1577頁(昭11) 13頁(昭13) 70巻, 421頁(昭28) 9号(昭24) 6号, 本外科学会誌. 兎(昭10) 441頁(昭7) 19回, 127頁 (大7) 日本内科学会誌. 験消化器. UNE 16巻, 23巻, 330(昭10) 材料検査法. 281頁,(昭16) ETUDE SUR DES LA TRANSPLANTATION POILS VIVANTS Chapitre II Les experimentations sur des morceaux transplantes de la peau chevelue; surtout les observation histologiques dans les experimentations aux animaux. par Mme. CHIEKO ANDO (Clinique de Dermatologie et Urologie, Universite d'Okayama) On ne peut dire qu'iln'y a guerede rapportsdes experimentations sur la relation intimequ'ona remarqueerecemmententrela croissance des poilset des vitamines . Quant a la transplantation des cheveuxvivants, on auradu succession lestransplante sansen gaterla racine , et en general,des cheveuxtransplantes sur la peau ne peuvent entierement continuerde subsister et de croitre , mais au contraire, dont le plusgrand 1820 安 nombre renaitront ayant Alors, si on pouvait ressuciter et les croitre, 藤智恵子 deplie une fois apres la transplantation. empecher de deplier des cheveux transplantes on pourrait en avant d'un pas. Et donc, pour ameliorer dire que la transplantation la transplantation en question, ou stimuler des cheveux vivants nous avons examine de les se portat histologi- quement en suivant du cours d'heure, les influences sur des cheveux et aussi sur des cellules organiques environnantes, que demontraient les operation de la transplantation sous l'emploi du serum artificiel contenante des vitamines, de laquelle on se sert ordinairement a la dis position precedente dans la transplantation des cheveux vivants. La methode d'experimentation, voici comme dessous; d'abord, apres avoir choisi des morceaux prepares pour faire la transplantation de la peau du lapin, nous faisons on flotter chaqu'un dans les verres pleins du serum artificiel dans lesquels nous avons jete separement au prealable les vitamines, A, B1, B2, C, et, D. Apres cela, ayant fait en sortir chaque morceau apres une heure, une heure et demie, et trois heures. Nous y donnons la stimulation en excutant la methode de la coloration de doublement d'hematoxyline-eosine, celle de la coloration de l'acide de l'action de Feulgen pour observer des changements des cellules de la gaine epitheriale Pour l'objet C'est ainsi de cheveu, des celles conjonctives et des fibres collagenes. normal, nous adoptons de neufs morceuax enleves de la peau chevelue. de ces experimentations que nous avons obtenu ces resultats-ci; le change ment le plus leger aux cellules organiques est observe au morceau contenant de la vitamine C, celui plus fort que le cas precedent au morceau contenant de la vitamine B6 et B2, et celui le plus fort au morceau contenant de la vitamine D. Et encore nous n'avons pu guere observer du changement, aux morceaux contenants, separement, La reaction de Feulgen aux cellules organiques diminuent de la vitamine A et B. en general en cours d'heure aussi que la clarte de l'organisation aux noyaux des cellules. Nous avons remarque des fibres collagenes montrer apres une bilite, et encore celle-ei augmenter avec le cours d'heure. heure un peu de delata- Les cellules epitheliales indiquent un changement tres eleve. en comparaison de la gaine epitheriale de cheveu et de celles conjonctives. de celles 生毛移植に関する研究 1821 第1図 NaClに1時間浮游せしめた移植片.表皮細胞核は正常のものよりやゝ小さく,F反応は呈色不鮮明である.毛根鞘上皮細胞および結合織細胞は核濃縮の傾向が極めて軽度で,一般にF反応はやゝ淡染して見える. 第2図 VB2に1時間浮游せしめた有毛移植片. 表皮細胞核は部分的に軽度の変化を示しているが著変は認められない.表層に近い毛根鞘上皮細胞が核濃縮を起してF反応に濃染する.結合織細胞は変化を認めない. 第3図 VCに1時間浮游せしめた有毛移植片. 表皮細胞,毛根鞘上皮細胞および結合織細胞はF反応が著明であつて細胞核は殆んど変化が見られない. 第4図 VDに1時間浮游せしめた有毛移植片. 表皮細胞は中等度核濃縮を起し,F反応に濃染し核内構造を認めがたい,毛根鞘上皮細胞は著変は認められないがF反応は不鮮明になつている.結合織細胞はF反応に濃染しているが深部の細胞は正常像に似て変化に乏しい.