(社)福岡市食品衛生協会FAX情報サービス 平成24年5月 151号 カンピロバクター食中毒はなぜ減らないのか? 昭和 50 年代頃、食中毒と言えば、「腸炎ビブリオ」「サルモネラ」「黄色ブドウ球 菌」の3つが多く発生し、三大食中毒菌などと呼ばれていました。 しかし現在は、サルモネラは相変わらず少数例発生していますが、腸炎ビブリオ、黄 色ブドウ球菌はほとんど発生しなくなりました。 現在、食中毒で注意が必要なのは冬季を中心に発生する「ノロウイルス」と、夏にや や多いがほぼ年中発生している「カンピロバクター」の2つです。 今回のFAX情報では、カンピロバクター食中毒の実態に迫ってみました。 1.カンピロバクターとはどんな菌ですか? ・らせん状をした細菌で、家畜や鶏・ペット・野生動物の腸管内に常在している 菌です(動物は腸内にこの菌がいても、症状は起こしません) ・1982 年(昭和 57 年)から食中毒原因菌に加えられ、調査を開始するようになり ました。Campylobacter jejuni と、Campylobavter coli の2菌が対象です ・一番の特徴は、酸素(O2)が 3∼15%程度の微好気条件でしか発育しないこと です(空気中や、酸素がまったくない嫌気状態では発育しません) ・発育温度は 34∼43℃と、一般の細菌より高い温度を好みます(動物の体温が人 より高いことと深い関係があります。牛 38∼39℃、豚 39∼40℃、鶏 40∼42℃) ・比較的少ない菌量(100 個 CFU 程度)で発症します ・潜伏期間(食べてから発症するまでの期間)は2∼7日(平均3∼4日)と、 他の細菌性食中毒に比べ、長い傾向があります ・まれに重篤なギランバレー症候群(神経麻痺など)を発症することがあります ・胃潰瘍の原因と言われる「ヘリコバクター」とは近縁の関係にある細菌です 2.原因食品は何ですか? 鶏関係:鶏肉、鶏レバー(肝臓)、砂ずり(筋胃)などを 「生」で食べたり、二次汚染で汚染された他の 食品を喫食した場合 (鶏の 60∼90%が同菌を保菌していたとする報 告もあります) 鶏刺し、鶏わさ、レバー刺し、ずり刺し等が原因 食品として多く報告されています 牛関係:牛レバーなどを「生」か加熱不十分で喫食した 場合 (牛レバーは 11∼25%、同菌を保菌していたとの報告あり) 水関係:同菌に汚染された井戸水、湧き水などを飲んだ場合 3.どうしたら発生を防げますか? カンピロバクターは健康な家畜や鶏の腸管内に広く分布しているので、食肉・ 食鳥肉の処理過程で注意して取り扱っても、防ぎきれないのが現状です。 そこで飲食店や家庭では、次のことを守りましょう。 ・生食を控える(生食で提供しない) 鶏刺し、牛レバー刺しなどはカンピロバクター以外にも、サルモネラ、腸管出血性 大腸菌(O157 等)に汚染されている場合もあり、注意が必要です ・二次汚染を防止する 肉類を調理後、使用した調理器具は熱湯等で消毒する 肉を触った手指は洗浄・消毒し、手を介した二次汚染を防止しましょう ・加熱調理の徹底 カンピロバクターは熱に弱く、75℃1分間の加熱で死滅します 焼く際は、生焼けに注意し、トングなどを用い箸と使い分けましょう ・井戸水などは、塩素で消毒する
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