開く - 横浜市

Vol.35・2008年
春号
今号のメニュー
・検査結果
1~3月分 ·················· 2p
19年度分 ·················· 3p
・ 平成 19年度細菌検査年間ランキング
・・・・・・・4p
・ トピックス
ある食中毒事件の教訓 ・・・・・・6p
・ 特集
19年度食中毒発生状況
········ 7p
横浜市健康福祉局中央卸売市場
本場食品衛生検査所
TEL 045-441-1153
FAX 045-441-8009
http://www.city.yokohama.jp/me/eisei/kensajo/
春です‼ 新年度になりました。
春を迎え、年度も平成20年度に切り替わりました。
昨年度は9月の塩辛による腸炎ビブリオ食中毒事件をはじめ、食品消費期限の偽造事件、製品品質偽
装、中国産冷凍ギョウザにおける有機リン系農薬の残留など食品業界を震えさす事件が多発しました。
我々にとっても、「衣」
・「食」・
「住」の「食」とは何か、改めて考えさせられた年でもありました。
市場におきましては、平成18年9月、横浜市中央卸売市場開設運営協議会に市長から「横浜市中央卸
売市場のあり方検討」について諮問がありましたが、20年3月に「中央卸売市場開設の継続」「市場機
能の強化」「三市場体制の見直し」の答申がされました。
今年度も、「保存温度の管理」・「適正表示」などお願いすることと思いますが、市民にとって“安全で
安心”できる市場を維持するため、ご協力お願いします。
今後も食品の保存基準である10℃以下を順守し,食中毒0を目指します。
検 査 結 果 ( 1 ~ 3 月 ・ 19年 度 )
1月から3月の間に,349検体の細菌検査を行いました。内訳は1月が103検体,2月が136検体,
3月が110検体でした。また、1月から3月および19年度の検査結果は,次のページの表に記載しま
した。(表の見方については,下の表を参照してください。
)
◎表の見方
検査検体数以外の数字は,陽性検体数を示します。
生食用魚介類については個々の結果を示し,加工食品については加熱の必要性で分類しました。
生食用魚介類
検査検体数
小柱
舌切
ホタテ柱
8
3
2
生菌数
100万以上
1
10万~100万
7
1
大腸菌群
2
1
2
1
2
大腸菌
セレウス菌
加工食品
加熱しないで 加熱が必要な
食べる食品
食品
生野菜
合計
9
117
5
5
3
4
7
11
9
23
1
1
5
72
24
見本
1gあたりの生菌数:異常に多い場合は品質が悪いといえます。
(一般に1,000万以上は腐敗状態)
大腸菌群: 主に加工食品において,加工工程や取扱い,
保管状態の良否を推測する指標菌です。
検出された食中毒菌:
大 腸 菌: ヒトや動物の糞便由来の汚染を推測する指
この他に,黄色ブドウ球菌,
標菌です。陽性の場合は,食品の不適切な
腸炎ビブリオ等があります。
取扱いが推察されます。
-1-
1~3月分検査結果
生食用鮮魚介類
加工食品
小
柱
検査検体数
生
菌
数
舌
切
生
食
用
生
か
き
そ
の
他
6
19
2
5
4
生
ウ
ニ
ネ
ギ
ト
ロ
10
1
ホ
タ
テ
貝
柱
加熱しないで食べ 加熱が必要な食品
※2
る食品
※1
ゆゆ
でで
だが
こに
※3
め
ん
類
弁惣
当菜
加
熱
非
加
熱
ま
ぐ
ろ
生
め
ん
ゆ
で
め
ん
90
90
14
11
30
10
5
54
24
3
2
23
3
1
1~10,000未満
1
1
2
BGLB法
2
魚
肉
練
り
製
品
活
魚
水
・
海
水
42
11
9
349
6
1
127
そ
の
他
の
食
品
合 計
100万以上
300~100万未満
10,000以上
- 2 -
汚
染
指
標
菌
大
腸
菌
群
4(129)※4
2
大腸菌(E.coli)
1
1
病原大腸菌
黄色ブドウ球菌
1
1
腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオ(MPN)
エロモナス
セレウス
5
2
1
※1
加熱しないで食べる食品:魚介類加工品、食肉製品、和生菓子、シラス干し、魚卵類
※2
加熱が必要な食品:魚の切身、開干、惣菜半製品、魚練りのすり身、ボイルほたて
※3
その他の食品として、氷雪、生ホタルイカ検査を行いました。
※4
加熱食品を中心に大腸菌群(Deso法)をおこないました。( ) 内は検査数です。魚肉練り製品のすり身2検体から、BGLB法で大腸菌群が陽性になりました。
1
9
19年度4~3月分検査結果
カ
加工食品
め
ん
類
弁惣
当菜
検査検体数
生
菌
数
小
柱
舌
切
生
ウ
ニ
ネ
ギ
ト
ロ
ホ
タ
テ
貝
柱
生
食
用
生
か
き
そ
の
他
18
27
50
11
11
61
30
768
248
1
4
2
13
203
78
19
8
43
20
1
1
5
5
100万以上
300~100万未満
18
27
20
9
7
23
加熱しないで食べ 加熱が必要な食品
※2
る食品
※1
ゆゆ
でで
だが
こに
24
ッ
生食用鮮魚介類
加
熱
非
加
熱
120
101
ま
ぐ
ろ
61
生
め
ん
ゆ
で
め
ん
活
魚
水
・
海
水
12
9
35
81
1
49
※3
ト
野
菜
・
水
耕
野
菜
7
4
1
26
そ
の
他
の
食
品
84
合 計
1751
1
68
30
646
10,000以上
- 3 -
汚
染
指
標
菌
大
腸
菌
群
1~10,000未満
BGLB法
10(248)※4
6 ※5
大腸菌(E.coli)
1
6
1
2
1
病原大腸菌
黄色ブドウ球菌
1
腸炎ビブリオ
1
1
腸炎ビブリオ(MPN)
5
2
エロモナス
1
3
セレウス
2
2
3
3
1
(35)
1
1
1
2
1
5
10
1
1
5
17
27
33
1
8
1
2
1
19
15
※1
加熱しないで食べる食品:魚肉練り製品、魚介類加工品、食肉製品、和生菓子、シラス干し、魚卵類
※2
加熱が必要な食品:魚の切身、開干、惣菜半製品、魚練りのすり身、ボイルほたて
※3
その他の食品として、氷雪、生ホタルイカ検査を行いました。
※4
加熱食品を中心に大腸菌群(Deso法)をおこないました。( ) 内は検査数です。
※5
魚肉練り製品のすり身2検体から、BGLB法で大腸菌群が陽性になりました。
2
1
2
2
3
2
3
1
1
4
12
4
57
平成19年度
細菌検査 年間
ランキング
今年度は低温せり場など、
食品を低温に維持し新鮮で清潔な食品流通の考えが浸透してきた事もあり、
検査結果においては非常に良好でした。
汚染指標菌である細菌数や大腸菌群、大腸菌については菌数が多かった食品順に、また、食中毒菌に
ついては陽性数の高かった食品順に掲載しました。
この集計結果は、本場市場で収去し、当食品衛生検査所で検査を行ったすべての数値です。
汚染指標菌
1.一般生菌数
通常、好気的(酸素を必要とする状態)、35℃で培
養して発育する細菌のことをいい、食品1gあたり菌
数で表します。細菌(食中毒菌を含む)の多くはこの
条件下で一番発育するため、
食品の安全性、
保存性、
衛生的取扱の適否を総合的に評価する際にきわめて
有力な指標となります。
昨年と比較し、100万個以上の汚染された食品が激
減しました。食品の表示偽造や、残留農薬など改め
て「衛生的な食品」と言うことに注目が集まり製造
工場や流通過程で各自が注意した結果と考えられま
す。
一般生菌数(/g)
食 品
食品数
1000(107)
万個以上
調理パン、シラス
ボイルシャコ
ボイルトリ貝
4
6
100(10 )万個~
1000万個未満
マグロ、カット野菜、
魚卵、ボイルホタテ
弁当、惣菜半製品等
14
2.大腸菌群
大腸菌群の中には畑の土壌や沿岸海水など自然界に広く分布するものもあり、汚染の指標としては生
野菜や貝類のような未加熱の食品よりも、加熱処理された食品に適用します。
この検査は「規格食品・衛生規範対象食品」の検査および加熱処理された食品についてのみ行ってい
るもので、今年度はDeso法では419検体の検査を行い、11検体が大腸菌群陽性となりました。加熱食品か
らは2検体で、後はすべて非加熱食品でした。また、LB法では清涼飲料水1検体が規格基準違反にな
りました。
3.大腸菌
大腸菌は、ヒト及び動物の糞便に存在し、直接ま
たは間接的に糞便汚染があったことを意味します。
魚介類や魚介類加工品などについての検査を1176
検体行い15検体のみが陽性となりました。
生かきや惣菜の基準のある食品についてはE.coli
の検査として135検体を行い、4検体がE.coli 陽性
となりました。基準違反はありませんでした。
大腸菌陽性食品
食品数
ボイル魚介類
2
カツト野菜
1
調理パン
2
惣菜半製品
1
活魚水・海水
8
その他
1
-4-
食中毒菌
4.黄色ブドウ球菌
自然界に広く分布し、人の皮膚、のど、耳や鼻の中にも常在し、
特に化膿巣に多く存在しています。食品中で熱に強いエンテロト
キシンという毒素を作り食中毒を起こします。
19年度は1,643検体の検査を行い、18検体が陽性となりました。
6検体は活魚水からでした。
黄色ブドウ球菌はもともと人のキズ等に存在しているので、シ
ャコや貝をむく作業の際に手にキズがあると、そこから汚染され
てしまいます。キズがある場合はポリエチレン製の手袋などを使
用し、汚染を防止しましょう。
順位
食品名
食品数
1
生食用魚介類
7
2
惣菜類
3
3
菓子
1
4
カット野菜
1
5.セレウス菌
セレウス菌は土壌細菌の一種で、自然界に広く分布しています。 順位
食品名
食品数
腸管内で本菌が増殖した際や、食物内で本菌が増殖した際に産生
1
生食用かき
19
された毒素により食中毒が起こります。下痢型と嘔吐型があり、
わが国での食中毒のほとんどがこの嘔吐型です。
2
魚介類加工品
9
18年度は1,592検体の検査を行い、55検体が陽性でした。その順
3
惣菜類
6
位は右図の表のとおりです。
セレウス菌による食中毒はあまり多くはありません。しかし、
4
菓子類
5
保存状態が悪くなると急激に増殖して腐敗(悪臭等)や食中毒を発
生させる可能性が増しますので10℃以下での保存を徹底し、長期の保存は避ける事が必要です。
6.腸炎ビブリオ
この菌は海水や海の泥の中に常在しており、夏に海水温が上昇
順位
食品名
食品数
すると増殖し、
主に海産物を原因として食中毒を引き起こします。
1
生食貝
2
平成13年度に規格ができ、保存温度は10℃以下、腸炎ビブリオの
菌数の上限が定められました。
2
生食用かき
3
19年度は、定性検査(通常の検査)で495検体を行い、33検体が陽
3
ホタテ貝柱等
5
性、また規格検査では111検体中15検体が陽性となりました。
規格違反(食品1g中100個以上)については、平成14年度が11件で
4
活魚水・海水
27
あったのに比べ、平成15年度では7検体、16年度は9検体、17年
5
海水
3
度が4検体、18年度が1検体、19年度も2検体と減少傾向です。
今年度も7月~10月にかけて、生食用鮮魚介類を中心に規格検査を行う予定です。
市場内では「食品の温度管理は10℃以下に」とお願いして来ました。 近年は、衛生面についてもずい
ぶん神経を使っていただき、良くなってきました。引き続きご協力お願いします。
7.ノロウイルス
ノロウイルス陽性
食品数
ノロウイルスは、直径30nm(1nmは1mmの百分の一)前後の小
生食用生カキ
0
型のウイルスです。今年度もノロウイルスによる食中毒が全国各
地で発生しましたが、当市場での生食用かきの検査結果は39検体中、陽性は0検体でした。
しかし、区福祉保健センターからの検査依頼では10検体中、4検体からノロウイルスが検出されまし
た。市場で収去した製品と市内に出回っている製品との検査結果の違いについては、不明でした。
-5-
トピックス
ある食中毒事件の教訓
横浜市内で「つみれ汁」によるヒスタミン食中毒が発生しました。
原因施設では、
「冷凍すり身」
(A社製造)を購入し、これに野菜や調味料を加え「つみれ汁」作って
いました。原因を調査したところ、A社が製造した「冷凍すり身」から高濃度のヒスタミンが検出され
ました。
更にその後の調査で、A社は「冷凍イワシ」をB社から購入し、調味料などを加え加工し「冷凍すり
身」を製造していましたが、この「冷凍イワシ」
(B社加工)からも高濃度のヒスタミンが含まれている
ことがわかりました。
A社は「冷凍イワシ」を使用する際、事前に十分な検査を行わず、またB社から検査成績書の添付を
求めていませんでした。
今回の食中毒事件は、
「使用する原材料の安全性の確認」を怠っていたことも、一つの要因となってい
ます。
確認
食品取扱者の責務は言うまでも無く、安全な食品の提供です。自主検査の実施や原材料の検査成績書
の確認などにより販売する食品の安全性を確保しましょう!
また新聞報道に見られるように、情報提供は以前にも増して迅速に行われるようになりました。販売
等を行った食品に関する危害情報は、積極的に販売先に伝達しましょう!
ミニ知識
ヒスタミン食中毒とは?
ヒスタミン食中毒とは、鮮度が低下し、ヒスタミンが多<蓄積された来た魚介類やその加工品を摂食
することにより引き起こされるアレルギー様食中毒です。ヒスタミン食中毒の多くは集団給食施投や飲
食店などで発生しています。ヒスタミンは魚肉中に多く含まれているアミノ酸の一種である遊離ヒスチ
ジンがヒスチジン脱炭酸酵素を有する徴生物(ヒスタミン産生菌)によって生成されます。
原因食品は?
ヒスタミンが生成される原料となる遊離ヒスチジンは、マグロ、イワシ、サンマなどの赤身の魚に多
く含まれていることから、本食中毒の原因食品のほとんどは鮮魚介類又は魚介類の加工品等です。
症状は?
ヒスタミン食中毒の多くは、喫食直後から1時間程度という短時間で発症します。その症状は舌のしび
れ、顔面の紅潮、発疹、吐き気、腹痛、下痢などですが、症状自体は比較的軽く、通常長くても1日で回
復します。
予防方法は?
ヒスタミンは熟で分解されにくいため、
一度産生、
蓄積されたヒスタミンを取り除くことは困難です。
またヒスタミンは、外観の変化や悪臭を伴わないため、食品を摂食する前に感知することは困難です。
ヒスタミンが手枕された食品を口に入れると、唇や舌先でピリピリと刺激を感じます。その場合は速や
かに食品を吐き出してください。ヒスタミン食中毒の予防は、購入した魚の長期保存を避けることが大
切です。冷蔵庫に入れたからと安心せず、早い時期に食べてください。
-6-
特集
19年食中毒発生状況
病原大腸菌 1.0%
ウェルシュ菌 2.1%
腸管出血性大腸菌 1.8%
図1
腸炎ビブリオ 2.8%
自然毒 8.6%
黄色ブドウ球菌 4.5%
カンピロバクター 34.8%
ノロウイルス 27.4%
左図は厚生労働省が集計した全国病因物
質別発生率の速報値ものです。
全国の食中毒の件数は1,023件で患者数
は23,541名で昨年より多少減少しました。
カンピロバクターについては、
発生件数は34.8%
と多くなっていますが、
患者数1名が発生件
数としてかなり入っています。患者数1名を
のぞけば22.1%になります。
サルモネラ 9.4%
セレウス0.6%
その他・不明 7.1%
2007年全国病因物質別発生率(速報値)
腸管出血性大腸菌 2.5%
病原大腸菌 2.7%
図2 3.7%
腸炎ビブリオ
ウェルシュ菌 9.11%
自然毒 1.3%
黄色ブドウ球菌 3.2%
カンピロバクター 7.9%
サルモネラ 7.1%
セレウス0.3%
ノロウイルス 57.8%
その他・不明 4.5%
2007年全国病因物質別患者率(速報値)
件数
左図は全国の病因物質別患者率を示した
ものです。1位はダントツでノロウイルスの
13,602名で、ついでウエルシュ菌の2,131名、カン
ピロバクターの1,860名となっています。
ウエルシュ菌は全国で発生し、広島県の1,559
名を筆頭に福島県の弁当による893名、
奈良
県の幕の内弁当での485名、千葉県での479
名が目に付きました。
この菌は芽胞という硬い殻を形成し、カレ
ーや煮物、チャーハンなどを原因食品とす
るため一度発生すると大きな事件になりま
す。
患者数
600
30000
図3
500
25000
件数
400
300
患者数
発生件数
20000
患者数
15000
200
10000
100
5000
0
10 11
12 13 14
15 16
0
17 18 19 年
ノロウイルスの発生件数と患者数の推移(全国)
-7-
左図は全国のノロウイルス発生状況を
検査開始した平成10年からを示したもの
です。
当初はまだ、SRSVと呼ばれていて、検査
法についても全国的に統一されたもので
はありませんでした。
年々感染性の胃腸炎と注目されつつ、
検査方法についても厚労省の通達により
統一され、また検査技術も向上したこと
により、
発生件数も倍増されてきました。
特に18年は発生件数、患者数ともに増大
しました。
サルモネラ属菌 1.8%
病原大腸菌 1.8%
左図は健康福祉局が集計したものです。
食中毒発生件数は27件で患者数は839名
その他 0.2%
カンピロバクター 9.4%
で、患者数については昨年の2倍近くに増
大しました。
順位は1位が昨年と同様ノロウ
イルスでしたが、
ついでカンピロバクター、
腸炎ビブリオの順になりました。
ウェルシュ菌 26.7%
ノロウイルス 49.5%
ノロウイルスについては昨年は4件と少
なかったのですが今年は7件、カンピロバ
クターでは2件から6件と増えました。
病因物質別患者数を見てみますと、ノロ
腸炎ビブリオ 9.2%
ウイルスでは昨年と比べ100名程度の増加
図4
でしたが、カンピロバクターでは7名から
19年横浜市病因物質別による患者数の割合
79名と10倍、ウェルシュ菌については9名
から224名と大幅に増加しました。ウェルシュ菌については神奈川区・戸塚区・泉区で野菜炒めやカレ
ーなどが原因食品となって事件となりました。
では、全国でも、横浜市でも今年度に限って目に付いたウェルシュ菌ってどんな細菌なのでしょう。
黄色ブドウ球菌 1.4%
☆ 特徴
1 人や動物の腸管、土壌、海水など自然界に広く分布しています。この菌は嫌気性(酸素を好まない)
の芽胞菌で、芽胞形成時にエンテロトキシンという毒素をつくります。この芽胞は100℃4時間以上
の加熱でも死滅しない菌もいます。
2 食品を大釜などで大量に加熱調理すると、
食品の中心部は無酸素状態となり嫌気度が高くなります。
加熱によって他の細菌が死滅してもウェルシュ菌の耐熱性の芽胞は生き残り、食品の温度が50℃
-55℃以下になると発芽して急速に増殖を始めます。
3 「加熱済みの食品は絶対安心」という誤った常識がウェルシュ菌による食中毒の発生原因となって
います。この食中毒は「給食病」の異名もあります。
☆ 原因食品
給食などで大量に加熱調理された食品。野菜の煮付け、カレー、シチュー、スープ、麺つゆなどです。
☆ 症状について
潜伏時間は約4時間から12時間で、下痢が主で稀に嘔吐あり、一般に症状は軽微です。
☆ 予防法
1 前日調理は避け、加熱調理したものはなるべく早く食べること。
2 一度に大量の食品を加熱調理したときは、
本菌の発育しやすい45℃前後の温度を長く保たないよう
に注意すること。
3 保管するときは、小分けしてから急激に冷却(15℃以下)すること。再加熱するときは、中心温が
75℃、1分以上を徹底すること。
全国ではこのウェルシュ菌による食中毒は21件、患者数2,131名でありました。
この中には横浜市の事件数も含まれています。
横浜市の事例
2/28 病院での給食
野菜炒め
34名
10/23 仕出し屋
炒め煮
92名
10/27 飲食店
カレー
89名
12/18 レストラン
不明
9名
-8-
件数
40
900
35
800
患者数
左図は過去10年間の食中毒発生件数と患
者数の年次推移を示したものです。
平成13年と19年は発生件数のわりに患者
数が多くなっています。その原因として、
平成13年は病原性大腸菌による患者数472
人の事件、また19年ではノロウイルスによ
る患者数227人の発生による事件がその理
由といっていいと思います。
また、患者数については家庭内などでの
小規模食中毒のため、
減少傾向にあります。
700
30
600
25
500
20
400
15
患者数
件数
300
10
200
100
0
0
10
年
11
年
12
年
13
年
1
4年
1
5年
1
6年
1
7年
1
8年
1
9年
5
横浜市食中毒発生件数・患者数の推移(10年間)
18
ノロウイルス
16
腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオ
14
サルモネラ属菌
カンビロバクター
12
黄色ブドウ球菌
10
腸管出血性大
腸菌
病原大腸菌
サルモネラ属菌
8
カンピロバクター・
ジェジュニ/コリ
ウエルシュ菌
6
4
セレウス菌
2
ノロウイルス
0
10年
11年
12年
13年
14年
15年
16年
17年
18年
19年
病因物質別にみた事件数の年次推移
上図は病因物質別にみた事件数の年次推移です。横浜市においてはノロウイルス、カンピロバクター
ともに減少しました。
ノロウイルスは冬場での二枚貝による生食をさけ、下痢等の症状がある人は調理等の業務をしない。
カャンピロバクターについては鶏肉などの生肉の取扱い、また調理時は十分な加熱を心がけ、注意する
事により共に防止できることです。
本年度の人事異動により、当検査所に衛生監視員が転入・転出しました。
転入者 : 加山 新太郎(栄区福祉保健センター)
転出者 : 山下 和幸 (西区福祉保健センター)
-9-
発行責任者 :前沢