2014年 12月号 【特集】増加する「海外M&A」 - 国際協力銀行

トルコの石油精製プロジェクトに
バイヤーズ・クレジット
JBICは、2014年5月、トルコ共和国法人STAR R AFİNER İ A NONİM ŞİR K ETİ(STAR)と、約291百万米ドル(JBIC分)限度のプロ
ジェクトファイナンス(PF)によるバイヤーズ・クレジット(輸出金融)の貸付契約を結びました。本融資は、
(株)三菱東京UFJ銀行をはじめ
とする民間金融機関との協調融資(総額約485百万米ドル相当)で、伊藤忠商事(株)が参画する共同事業体が一括受注した石油精製プラント
の設 計・工務・調達・建設を行う資 金の一部をSTARに融資するものです。JBICとして、トルコにおける石油精製セクターでの初の輸出PF
案件であり、石油精製プラントは、2018年に完成の予定です。
ファイナンス組成にあたって極めて厳しい条件を課してきたことから、
Company of the Azerbaijan Republic
(SOCAR)
とアゼルバイジャン経済
チャレンジングなタームシート交渉になりました」
と、当時案件を担当して
産業省が出資するSTARが、
トルコのイズミール郊外に原油精製能力日
いた小林副調査役は振り返ります。
量21万4,000バレルの石油精製プラントを建設し、主にSOCARの子会
「しかし、ここで断れば日本企業のビジネス支援
社であるPetkim Petrokimya Holding A.S.等のトルコの石油化学
につながらないので、プロジェクトに潜在するリス
企業をはじめ国内供給先に石油精製品を販売する事業です。
クを踏まえた複数のストレスシナリオを分析した
経済成長が続くトルコでは、
ナフサ
(ガソリン原料)
、
ジェット燃料、
ディー
上で、
事業者側と合意可能なセキュリティパッケー
ゼル油などの石油精製品の需要が急拡大しています。しかし、国内生産・
ジを構築すべく、ロンドンやアゼルバイジャン等で
供給が追い付かず、不足分を輸入に頼っており貿易収支赤字の主因と
数年に亘って交渉を行いました」
(小林副調査役)
。
なっていました。本プロジェクトを通じて、貿易収支と国内供給不足が
ハードな交渉が続く中、2012年12月に伊藤
改善されることが期待されています。
忠商事が参画する共同事業体がプラントの設計・
「本プロジェクトの資金調達を行うため、STAR
調達・建設の一括受注に成功したことで、ターム
は世界の ECA(公的輸出信用機関)に長期融資・
シート交渉に前向きに臨むことができました。
産業ファイナンス部門
産業投資・貿易部第2ユニット
(当時)
小林 祐馬 副調査役
保証を求めました。プラント建設の入札に日本
企業が参画する企業共同体が参加したことで、
産業ファイナンス部門
産業投資・貿易部第2ユニット
植松 義裕 調査役
▶石油精製・石油化学セクターにおける日本企業のさらなる支援へ
JBICに対しても PF組成の依頼がありました。
受注が決まった後も、1年以上をかけて正式契約に向けた交渉が続き
JBICにおけるこれまでの PFによる支援実績を
ました。
「ECAが参画する中東地域における大型石油精製・石油化学セク
見ると、
日本企業が出資するIPP
(独立発電事業者)
ターPF案件においては、タームシート交渉は通常ECAとスポンサー・
プロジェクトに対しての、投資金融の枠組みを
プロジェクト実施主体と行い、タームシート妥結後の融資契約のドキュ
利用した支援が中心でした。一方、石油精製・石油
メンテーションの段階は民間金融機関が交渉に参加します。本件でも、
化学セクターにおける PFによる支援実績は電力セクターに比べても
同様の手続きが取られ、タームシートとファイナンス・ドキュメントそれ
まだ少なく、また、地域別に見ても、中東・アフリカ地域では、2012年6月
ぞれにつき、最初に ECA等が精査を行った後で民間金融機関に提示し、
に融資契約に調印したモロッコのIPP案件以来の PF案件となります。
コメント入手、ECAへのフィードバックと言う手順が取られ、最終的に
中東地域における大型石油精製・石油化学セクターの場合、発注者はプラ
手続きは 2014年5月に完了しました」
と植松調査役。
ント建設に係るEPC契約の受注と並行して PF組成を行うのが一般的で
こうした取り組みにより、2014年5月に正式調印に至りました。
「本件
あり、JBICは日本企業(含む共同事業体 )の受注が決まる前から融資の
はプレイヤーが多いので、今後の案件管理も重要です。計画通り完工で
可能性について発注者と交渉を行うことが求められます。政府系金融機
きるか、その後、融資の完済まで、持続的な案件管理が可能となるよう体
関であるJBICがプロジェクトの初期段階からPF組成に参加することは、
制整備を進めています。今回、SOCAR 、STARは自らの足で世界中の
日本企業の受注獲得の側面支援となります」
と植松調査役は説明します。
ECAの参画を促しPF組成に成功したことで大きな自信を得たと思い
ます。石油精製・石油化学プロジェクトにおける受注実績は、価格競争力
▶厳しい条件をクリアして、融資条件をまとめる
があるとされている韓国企業が強いセクターですが、JBICとしても
今回のプロジェクトでは、2010年に STARから JBICに輸出PFの
SOCARなどとのパートナーシップの強化を図り、日本企業の受注獲得
依頼がありました。スポンサーにアゼルバイジャンの石油公社である
の 機 会を増やすべく次なる案 件 形 成につなげていきたいと考えて
SOCARが控えているとはいえ、
トルコでは初の石油精製セクターでの
います」
と植松調査役は語ります。
投資・輸出支援に注力し、日本企業の輸出機会の創出と国際競争力の
知見を活かし、他の ECAと共に案件検討の初期から参画し、円滑なファ
維持、向上に貢献していきたいと思っています」
と語っています。
イナンス組成に貢献してきました。
「日本企業が参画する共同事業体の落札支援として、積極的に交渉に
この印刷物は、大豆油インキを包含した
植物油インキを使用しています。
国際協力銀行では、本誌を季刊で発行しています。
本誌に掲載されている画像、文章の無断転用・無断転載はお断りします。
JBICToday
国際協力銀行の広報誌
December 2014
「海外 M&A」から紐解く
特 集 増加する
る 日本企業 の成長戦略
∼加速するグローバル化とJBIC の取り組み∼
[わが社のグローバル戦略]
ヤマモリ株式会社 三林憲司 取締役専務執行役員
醤油事業通じ、
日本とタイの食文化交流を図る
̶現地の文化を尊重し、独自の戦略で商圏を拡大
[ニュースを読む]
ホームページ:http://www.jbic.go.jp
小林副調査役も、
「 今回の実績を生かして、インフラプロジェクトの
Facebook:http://www.facebook.com/JBIC.Japan
輸出PF案件であり、リーマンショック後の厳しい金融状況にあって民間
金融機関の参画が懸念される状況でした。JBICは、PFの豊富な経験・
JBIC Today(ジェービック トゥデイ)2014年12月号 2014年12月発行
臨みました。今回の交渉相手であるSOCARにはPFの経験があまりなく、
今回のプロジェクトは、アゼルバイジャン共和国の石油公社State Oil
〒100-8144 東京都千代田区大手町1丁目4番1号 Tel.03-5218-3100 株式会社国際協力銀行 企画・管理部門 経営企画部 報道課
▶受注獲得の側面支援として、早期ファイナンス交渉
December 2014
プロジェクトファイナンスによる輸出支援
国際協力銀行の広報誌
JBIC Today
SPOTLIGHT
わが国初の広域型総合水事業会社向け出資
[SPOTLIGHT]
トルコの石油精製プロジェクトを支援
日本企業による海外M&Aの動向と
JBICの取り組み
産業投資・貿易部
第1ユニット長に聞く
積極的にリスクテイクすることが求められています。
JBIC が 行った海 外 M&Aに対 する支 援 実 績は、融 資
が 2 0 1 1 年 度 約 1 5 億米ドル、2 0 1 2 年 度 約 1 1 8 億米ドル、
2013年度約66億米ドル、2014年度( 10月末現在 )約39億
米ドル、となっています。
産業ファイナンス部門
産業投資・貿易部 第1ユニット長
小松 正直
特集
M&Aの成否の鍵と言われるのが PMI 注1です。一般的
に欧米企業による PMIでは、不採算と定めた事業を切って
成長事業に特化するといった積極的なリストラを行うのに対
して、日本企業はそうした荒療治は行わず、時間をかけて
日本 企業の成長戦略
増加する「海外
か
M&A」から紐解く
∼加速するグローバル化とJBIC の取り組み∼
リーマンショック後から 2012年にかけ、企業体力の回復
着 実に一 体 化を進める傾 向 が 強いといえます。こうした
基調や超円高もある中、日本企業による海外企業の M&A
日本 型の PMI の実 行にとっても、JBIC が提 供 する長 期・
( 以下、海外 M&A )は増加の一途を辿りましたが、その後、
安定的な資金サポートでご支援ができると思います。
円安に転じた 2013年 以 降も、日本 企 業の海 外 M&Aに対
PMIとともに今後、重要性を増すものの一つがディール
する積極的な姿勢は衰えていません。その目的としてもっと
ソーシング業務 注2の内製化です。すなわち、これまでのよう
も多いのが販路の獲得・拡大です。日本国内の需要に応え
にソーシングを外部の専門家に依存するのではなく、M&A
ると共に、更なる成長を目指す日本企業にとってはアジアや
の意思決定を的確に行い、投資効率を高めるために、自社
新興国を含む海外の需要を取り込んでいくことは至上命題
のコア・コンピタンスを見 極め、それとシナジーがあり得る
であり、製造業・非製造業を問わず、海外 M&Aは日本企業
相 手はどこなのかを見 極め、スピーディに意 思 決 定をして
の成長に欠くことの出来ないツールといえます。
いくノウハウを企業の内部で持つことです。戦略性が高まる
こうした海外 M&Aには日本政府も一貫して支援を行っ
海外M&Aでは成功確率を高めることが急務です。ディール
てきており、その具体策の 1つとして JBICの活用が図られ
ソーシング業 務を内 製 化 することを通じて、P M I自体も
ています。特に2013年6月に策定された日本再興戦略(「グ
スムーズに進むようになると思います。
ローバルトップ企業を目指した海外展開支援促進 」)におい
ては、日本企業による海外 M&A 等の海外展開を幅広く支
( 注1 )PMI : Post Merger Integrationの略で、M&A成立後の統合プロセスのこと。
( 注2 )ディールソーシング業務 : M&Aのターゲットとなる企業を選定し、交渉を行うこと。
援することを目的として、JBICが金融面での支援を行うとい
うことが明記されています。
こうした動きに合わせて、JBICでは 2011年 度から日本
強化される企業財務力と資金調達環境の整備を背景に、日本企業による海外企業の M&A( 合併・買収 )ニーズ
企業による M&A 等の海外展開支援に向けて「 円高対応
が高まり、近年では大型案件も増えている。海外 M&A の目的は、グローバル競争に不可欠な販路の獲得や事業
緊急ファシリティ」を創設、その後「 海外展開支援融資ファ
規模・シェア拡大、経営ノウハウ・技術・人材の獲得などで、今後も多少のトレンド変化はあるにしても、日本企業の
シリティ」へと改編(2013年4月)
したほか、
「 海外展開支援
成長戦略に不可欠なツールの1つとして定着していくと思われる。日本政府も海外 M&Aを通じて、日本企業を
出資ファシリティ」も創設( 2013年2月)
し、
日本企業の海外
グローバルトップ企業やグローバルニッチトップ企業に成長させようと積極的な支援を行っており、その一環と
展 開 支 援を強 力に推 進しています。さらに、2014年6月の
して JBICも金融面からの支援を強化している。
日本 再 興 戦 略 改 訂 版では、新たな融 資 手 段として「 劣 後
ローン」や「 LBO( Leveraged Buyout )ファイナンス」が
■ JBICが行った海外M&A支援実績(融資)
2011年度
3件
2012年度
23件
2013年度
30件
2014年度
(10月末現在)
8件
加えられ、日本 企 業 の 収 益 力 向 上に向けて J B I C がより
2
JBIC Today December 2014
JBIC Today December 2014
3
増加する「海外M&A」から紐解く日本企業の成長戦略
レギュラートウ
( 注1 )
●近年の取り組み事例(1 )
( 注2 )ラージトウ
インド産業ガスメーカーの買収資金融資
JBICは 2014年3月、エア・ウォーター(株)
との間で、
インド
法人 Ellenbarrie Industrial Gases Limited( EIGL )
を買 収 するために必 要な資 金の一 部に係る貸 付 契 約を
締結しました。
エア・ウォーターは、VSU( 小型液化ガス製造装置 )
をは
■ 対外M&Aを促進するために必要とされる事項
: フィラメント数が 24 K( 24 , 000本 )
までの炭素繊維で、専用設計されたプロセスに
より製造され、航空機等、高性能・高品位分野で使用される。
: フィラメント数が 40 K( 40 , 000本 )以上の炭素繊維で、衣料用アクリルトウ設備転用に
より製造され、比較的安価な製品として風力発電機翼、樹脂コンパウンド強化剤等に使用される。
●近年の取り組み事例(3)
双日によるブラジル農業・穀物集荷輸出会社
の買収資金融資
▼ 担当者に聞く
0
20
40
60
市場や企業の
情報の確保
専門人材の確保
JBICは 2014年3月、双日
( 株 )のブラジル連邦共和国に
産業ファイナンス部門
産業投資・貿易部 第2ユニット
前川 拓美
資金の確保
おける 100 % 出資法人2社が、それぞれ農業・穀物集荷輸
出事 業を行うブラジル法 人 CANTAGALO GENERAL
社内の意識改革
全体
製造業
非製造業
GRAINS S.A. 及び CGG TRADING S.A.の 株 式を取
じめとする同社 固 有のガス製 造 技 術やガスアプリケーショ
税制面の整備
得するために必要な資金の一部を対象に、9 , 400万米ドル
ン技術を活かした海外展開を目指しています。そうした中、
「 独自技術の開発で成長してきた東レにとって、本件は
( JBIC 分 )の貸付契約を双日との間で締結しました。本融
インド東部を中心に液化ガスならびにシリンダーガス供給を
非常に重要な大型買収案件。その成功は至上命題であり、
資は、
( 株 )三菱東京 UFJ 銀行、
(株)
みずほ銀行及び日本
担うE I G Lを買 収 することにより、ガス製 造 技 術をはじめ
ディールのクローズまでハードな時間が続きました。その中
生命保険相互会社との協調によるものです。
エア・ウォーターグループが有する高度な技術や様々な商材
で、担当者として一番意識したのはスピードです。M&A は
双日は、本件株式取得により、
ブラジル産穀物( 大豆・とう
を、EIGLが有する事業インフラやネットワークを通じ効果的
通常の案件以上にタイムリーな資金提供が求められます。
もろこし・小麦等 )を優先的に買い取る権利を獲得するとと
に提供することで、現地に密着したビジネスモデルを構築・
また本件は、所要資金の一部を借入金で賄うM&A であった
もに、農業・穀物集荷輸出事業におけるグローバルな仕入・
展開することを目指しています。
こともあり、M&A の投資リターンを想定どおり確保するとい
販売ネットワーク等の経営資源を獲得し、アグリビジネス事
う観点からも、長期安定的な資金をタイムリーに確保すると
業の基盤強化を狙っています。これは、食料・農業・農村基
いうことが極めて重要でした。従い、M&A 契約が成立した
本法(1999年制定 )等において促進するとされている海外
段階で即座に資金提供できる状態にしておかなければな
農業投資に当たり、日本の食料政策にも合致するものです。
らず、3メガバンクとのM&Aクレジットライン構築、その他の民間
本融資は、アグリビジネス事業において、農業・穀物集荷
金融機関との協調融資の準備に細心の注意を払いました。
から輸出までの穀物サプライチェーンを内製化し、アジアに
一方で、JBICとしては本件を重要と考える理由がもう一つ
おける食料供給の安定化に貢献する方針を掲げる双日の
51%
J B I C は 2014年 3月、東レ( 株 )による米国法人 Zo lt e k
ありました。近 年、日本 企 業が EPC 若しくは出資 者として
海外事業展開を支援するものであり、日本企業による海外
今後(も)
比較的重要な課題
として積極的に取り組みたい
Companies, Inc.(Zoltek社 )
の株式取得額約5億8,400万米
参画する風力発電事業が徐々に増加しています。本件が
M&Aに必要な長期外貨資金を供給することで、
日本企業
ドル等の一部について、
( 株 )三井住友銀行、
( 株 )三菱東京
成立すれば、かかる事業に用いられる風力発電設備に対し
の海外における事業拡大や新たな事業展開を支援するも
UFJ 銀行、
( 株 )みずほ銀行の各民間金融機関との間で、
て、日本企業の炭素繊維で作られた風力発電機用の翼を
のです( 7ページに関連インタビューを掲載 )。
融資金額計2億5,350万米ドル限度( JBIC分 )、東レとの間で、
提供する機会が生まれると考えていたところ、日本企業の国
融資金額9 , 750万米ドル( JBIC 分 )の貸付契約をそれぞれ
際競争力強化を支援するJBICとしては、炭素繊維業界で
締結しました。
のプレゼンスを高めるだけでなく、産業間の連携を強化する
本件は、JBICが各民間金融機関との間でそれぞれ締結済
ことで世界に通用するジャパンビジネスを作っていくという視
の M&Aクレジットライン設定のための一般協定に基づき、各民
点で、本件を非常に重要な案件と捉えていたのです。
間金融機関を通じて融資を行うと共に、その他の民間金融機
日本 企 業 が 新 たな 成 長 戦 略 の 一 環として 実 行 す る
関との協調融資により東レに対し直接融資を行うものです。
M&A は増加傾向にあります。それに伴い、ディールの難易
●近年の取り組み事例(2 )
東レによる米国法人Zoltek社の買収資金融資
注1
戦略に関するアンケート調査」)
をもとに作成
■ 日本企業による海外M&Aに対する姿勢
消極的であり
今後(も)取り組みは
慎重に考えたい
今後の取り組みは
全く考えていない
3%
3%
20%
23%
今後
(も)
ぜひ
優先的な課題
として取り組みたい
積極的という
わけではないが、
今後(も)取り組ま
ざるを得ない
プログラムの作成
(日本 CFO 協会との協同アンケートに基づきmaval 分析)
をもとに作成
■ 日本企業によるM&A(In・Out )案件数の推移と地域分布
●近年の取り組み事例(4)
アジア企業を投資対象とする
プライベート・エクイティファンドへ出資
度も高まり、JBIC にも産
JBIC は2014年3月、CVC Capital Partners Jersey
営資源を集中してきましたが、本融資の活用等により、より安価
業 や 金 融に関 する新た
Limited が 運 営し、CVC Asia Pacific Limited 及 び
なラージトウ 炭素繊維の製造販売を行うZoltek社を傘下に収
な知見やノウハウが求め
CVC Asia Pacific( Japan)Kabushiki Kaisha(以下
め、今後、世界的に需要拡大が見込まれる炭素繊維の製品を
られますが、今 後も日本
総称して「CVC グループ」)が投資助言を行う、主にアジア
拡充することにより、風力発電関連用途や自動車構造体用途
企業のニーズに応えるべ
地域で事業展開する企業を投資対象とするプライベート・
等のより汎用性の高い分野の成長を取り込み、炭素繊維複合
く不断の努力を続けたい
エクイティ
(PE)ファンド(CVC Capital Partners Asia
と考えています」
Pacific IV、以下「本ファンド」)
に関して最大5,000万米ドル
材料事業を戦略的に拡大することを目指しています。
出所:経済産業省 通商白書2012 第3章
(三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング「我が国企業の海外事業
出所:経済産業省 買収後の統合作業を見据えたM&A業務プロセスの調査・研究とM&A疑似体験研修
東レは、従来、高機能・高品質レギュラートウ 炭素繊維に経
注2
80(%)
北米とヨーロッパ
の占める割合(%)
100
件数
500
450
90
400
80
350
70
300
60
250
50
200
40
150
30
100
20
50
10
0
0
1985
1990
北米
1995
ヨーロッパ
2000
東南アジア
2005
2010 2013
その他
* 自己株、
不動産取得を含まない。
** 1985/1/1 ∼ 2013/12/31
(JBIC 分)の出資契約書を締結しました。
出所:経済産業省 買収後の統合作業を見据えたM&A業務プロセスの調査・研究とM&A疑似体験研修
本ファンドでは、C V C グループが 有 するネットワークを
4
JBIC Today December 2014
プログラムの作成
(Thomson Reuters 2014/2/13データ取得)
をもとに作成
JBIC Today December 2014
5
増加する「海外M&A」から紐解く日本企業の成長戦略
世界の食料
安定確保に向け、
ブラジル企業へ出資
活用して案件発掘を行い、主にアジア地域(インドネシア、マ
図ること)の際に、資金力のある日本企業への売却の可能
レーシア、フィリピン、中国、香港等)
で事業展開する企業へ
性を高めたいと考えていました。また、SMTB は CVC の PE
の投資を行います。本ファンドの募集額は35億米ドルです。
ファンドへの継続的な出資実績があり、CVC の投資先や日
日本からは JBIC のほか、三井住友信託銀行(株)
( SMTB)
本の顧客企業に対する M&A ファイナンスの機会を拡大・
双日株式会社は 2013年10月、アジアにおける食料資源
も最大5,000万米ドルの出資契約書を締結しました。
強化していきたいとのニーズを持っていました。
の確保と安定供給に向けて、ブラジルの農業・穀物集荷輸出
近年の日本企業の海外 M&A においては、PEファンドが
今回、こうした3者の思惑が一致する形で新たな協働の
事業を行う 2社( CGG 社 )に出資した( 本誌5頁・事例3 )。
M&A 対象企業の売り手となるケースが増加傾向にありま
フレームワークが構築されたのです。これによって、本ファン
ブラジルでの農業・穀物分野では同社初となる出資を、JBIC
す。本ファンドに JBICと共に日本側出資者として参画して
ドの投資の初期段階から、SMTB の取引先を含めた日本
は株式取得資金への融資を通じて支援した。
いるSMTB には、運営において取引先企業の紹介やファイ
ナンス面での役割が期待されており、JBIC は、大手 PEファ
ンドの1つである本ファンドへ出資参画することを契機として、
介でき、日本企業はこれらの M&A 候補先企業の情報にア
クセスすることができるようになります。日本企業の M&A の
の入手が可能になることで時間的に余裕のあるM&A の検
2,500
50
41
金額
(10 億円)
2,000
42
1,936
40
案件数
1,415
31
1,500
19
討が可能になります。
もともと、CVC はディールソーシング( 投資案件発掘 )能
力が高いという特徴があります。例えば、アジアの新興企業
30
1,214
双日株式会社
生活産業部門 食料・アグリビジネス本部
アグリビジネス部 部長
岡田 哲人氏
梅田 毅氏
企業に本ファンドを含む CVC のファンドの投資先企業を紹
意思決定には相応の時間を要しますが、早期の企業情報
■ 日本企業による海外企業の M&A案件数
双日株式会社
生活産業部門 食料・アグリビジネス本部
アグリビジネス部 CGG課 課長
には創業者が保有しているケースがありますが、CVC はそ
日本にとって戦略性の高いブラジル北部の開発
物流インフラが未整備
イタキ港
サンルイス
のため、輸出の最盛期
梅田 世界人口の増加に伴い食料確保が難しくなる中、商
には長期滞船が恒常化
社も従来の穀物トレード事業に加え、生産・集荷という上流
して い ました。イタ キ
段階から事業に参画し、プレゼンスを高めています。今回は
港 の 活 用 によって、物
出資という形で CGG社が持つ商材を確保し、アジアにおけ
流 のボトル ネック解 消
る食料の安定供給という当部のミッションを遂行することが
による船積み期間短縮
ブラジル
サンパウロ
集荷予定地域
サントス港
鉄道
20
うした創業者と信頼関係を築いているため、買収価格が高
狙いです。
と、パナマ 運 河との 組
10
くなりがちなオークション
(他の投資家との競売)によらない
世界的に耕作地の拡大が難しい中、ブラジルはその余力
み合わせによるアジアまでの航行距離短縮が可能となり、
独自のルートにより投資発掘できる体制を擁しているのです。
がある数少ない国です。また、農業大国のアルゼンチンに
輸送日数やコスト面での競争力確保が見込まれています。
また、CVC は成長するアジア市場を牽引する小売、サービ
比べて土地の価格が安く、土地の保有を前提として、事業
岡田 世界の耕作可能面積6億haの 36%にあたる 2億ha
ス、通信等のセクターを得意分野としている点も特徴的で
へ参入することが可能です。そのようなブラジルにおいて、
がブラジルにあるとされています。かかる中、ブラジルの農
CVC グル ープ 及 び SMTB との 間 で、日本 企 業 の 海 外
す。加えて、CVC は投資先企業の経営効率化等に直接関
これまで農業開発・穀物輸出の中心だった南部ではなく、中
地開発は南部地域から北上し、穀物の生産量は南緯16度線
M&A 支援に向けて協働するフレームワークを構築します。
与することで企業価値の向上を図るので、
日本企業にとって
部から北部にかけて生産・集荷を伸ばしている成長企業が
を境に北と南で半々の状態にある一方、輸出の比率は南部
本出資を通じて、JBIC は従来から行ってきた買い手であ
より魅力ある投資先になることが期待できます。
CGG社 で、同 社 は現 在 約15万haの 農 地を保 有し、年 間
港が 8割、北部港が 2割という現状です。今後は生産地から
る日本企業へのファイナンス支援に加え、売り手であるPEフ
今後、日本企業が PE ファンドを通じてアジア企業を買収
200万トン の 穀 物 集 荷 事 業 を 展 開して い ま す。今 後 は
効率的に集荷・輸出していくことが不可欠であり、現在、北部
ァンドとの連携により、日本企業の海外 M&A 支援を強化し
するケースは増えていくと思います。担当者として、本フレー
2020年には、保有農地を 20万ha 、穀物取扱量を 600万
地域で進められている穀物輸送のインフラ整備は、アジアの
ていく方針です。
ムワークが活用されることを願って止みません」
トンまで拡大させる計画です。
みならず世界の食料の安定供給秩序を維持していく上で大
CGG社への最大の期待は、同社が北部の新たな集荷基
きな戦略性を持つといえます。
1,000
15
11
512
500
228
2006
11
10
337
335
2009
2010
124
2007
2008
2011
2012
2013
0
出所:レコフ
地となるイタキ港の港湾ターミナルの使用権益を保有して
▼ 担当者に聞く
■ CVC Asia IVにおける業務提携スキーム
JBIC-SMTB-CVC業務提携
(本邦企業海外展開支援フレームワーク)
産業ファイナンス部門
船舶航空・金融プロダクツ部
第2ユニット
(PEファンド担当)
調査役
小立 幸男
いる点です。従来、輸出は南部のサントス港が中心でしたが、
PE ファンドが売り手になるケースが増えてきていることに着
目し、従来のバイ・ サイド
(日本企業側)へのファイナンスに
加えてセル ・ サイド(ファンド側 )からの日本 企 業 の 海 外
JBIC
CVCグループ
● CVCグループによる、M&Aを目指す日本企業に対す
るファンドの投資先企業の全件紹介、投資先企業情
報の投資初期段階からの提供
● JBICや三井住友信託銀行との連携を通じたCVCグ
ループによるファンドの投資先企業と日本企業のビ
ジネス・マッチング
● 三井住友信託銀行による、ファンドに対する顧客企
業の紹介、ファイナンス・アレンジ等
M&A 支援の可能性を検討していました。CVC はこれまで
にアジア向け PE ファンドを3本立ち上げていましたが、自ら
梅田 出資は終わりましたが、本事業自体を支える港湾や鉄
道などの物流インフラの整備はブラジル国全体で進めてい
業務提携
(フレームワーク)
の目的
=日本企業による海外M&A支援
「JBIC は、近年の日本企業による海外 M&A において、
今後のインフラ整備でも JBIC に期待
三井住友信託銀行
る事業であり、これからが本番。この先、JBICには物流イン
フラを含む、公共インフラへの支援をさらに強化して欲しい
と思います。
岡田 ブラジルの穀物インフラ整備の発展に寄与すること
は、アジア向け食料の安定供給に繋がり、ひいては日本向け
の安定供給にも繋がります。但し、巨額の長期資金が必要と
なるため、官民共同で取り組む必要があり、政策金融機関で
ある JBICが期待される役割は大きいと考えております。
の投資先企業のイグジット
(IPO、売却等により投資回収を
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JBIC Today December 2014
JBIC Today December 2014
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わ が 社のグローバル戦 略
わが社の
グローバル戦略
JBICの関わり
ヤマモリ株式会社
(三重県桑名市)
2014年7月、JBIC は株式会社三菱東京 UFJ 銀行、株式会社
商工組合中央金庫との協調融資により、ヤマモリのタイ王国法人
YAMAMORI TRADING CO.,LTD.( 以下「YTC 」)との間で 1億
タイ・バーツ( JBIC 分 )の 貸 付 契 約を締 結した( 協 調 融 資 総 額は
約10億 円 相 当タイ・バーツ)。本 融 資は、ヤマモリがタイ子 会 社
YTCを通じて、タイ中部のラヨーン県において醤油の醸造・販売
事 業 を 行う YAMAMORI( THAILAND )CO.,LTD.( YTH )を
設立するために必要な資金を現地通貨建てで融資するものです。
日本の中堅・中小企業の海外事業活動を支援する「 海外展開支援
融資ファシリティ」の一環だ。
りは決して平 坦ではなく、多くの困 難やリスクと隣り合わせ
だったという。幾多の苦難を乗り越えて四半世紀。タイでの
経営基盤を整えたヤマモリは今、新たな市場環境を見据え
た事業展開を進めている。
タイ ラヨーン県工業エリア
醤油事業通じ、日本とタイの食文化交流を図る
ヤマモリ株式会社 三林 憲司
取締役専務執行役員
2015年 末 ASEAN 地 域では、経 済 共 同 体の発 足 が予
̶現地の文化を尊重し、独自の戦略で商圏を拡大
定されており、関 税の原 則 撤 廃や企 業の参 入 障 壁の引き
「タイ政府は『 世界の台所 』
として自国の食品や料理を海
下げなどによって、人口6億人の巨大な市場が出現しようと
外に普及させようという輸出振興策を打ち出しています。
これ
1889年創業のヤマモリ株式会社( 以下、ヤマモリ)は、国内シェア第8位の老舗醤油メーカーであり、
している。
また、
タイでは近年の安定的な経済成長を背景に
をサポートすべく、当社もレトルト食品の定番であるカレーに着
液体小袋製品やレトルトパウチ食品などの商品開発分野でも高い技術力を持つ中堅企業だ。
日本 食の人 気が高まり、日本 食レストランの総 数も今 年4月
目し、10年ほど前から現地生産したタイカレーを日本に輸出し
1988年には同業他社に先駆けてタイへ進出。現在では醤油ビジネスのパイオニアとして、業務・加工用を中心に
には 2 , 000店舗に達した。今後も日本食ブームによる醤油ビ
始めました。
また、
サイアムガーデンはタイフードメニューのアン
同国内シェアの約4割を占め、日本食ブームを供給面から支えている。2013年には、醤油の醸造・販売事業を行う
ジネスの一層の成長が期待される中、ヤマモリは、現地の好
テナショップとしての役割も担っています。ほかにも、今年で10
YAMAMORI( THAILAND )CO., LTD.( 以下「 YTH 」)
をタイ中部のラヨーン県に設立し、現地での
みに合わせた商品で独自の戦略を展開している。
回目となる名古屋でのタイフェスティバルも当社が主体となっ
更なるシェア拡大とともに、ASEAN諸国への商圏拡大を図っている。
こうした流れに乗り、ヤマモリはタイ国内での更なるシェア
て実行委員会を組織し、開催しているものです」
( 三林専務 )
拡大を図るとともに、タイをASEANの重要拠点と位置づけ、
食文化の日・タイ交流を促進することは、ヤマモリのビジネ
先取の精神から生まれた販売チャネル
と包装技術
周辺国へのビジネスを展開しようとしている。そのための新た
スのみならず、両国関係の強化にも貢献する。
「描かない夢
な製造・販売拠点となるのが YTHなのだ。
「ASEAN諸国に
は実現しない」
と考えるのがヤマモリの伝統。これからも日・タ
は、確かな品 質と適 正なコストで醤 油の製 造を行えるメー
イの食の架け橋となって、それぞれの食文化を伝えていくとと
国内の醤油メーカーは約1 , 500社。創業300 ∼400年の
カーが存在しません。そうした中で今後、当社が ASEANビ
もに、
“タイに強いヤマモリ”
の評価を盤石のものにしていこうと
企業も少なくない中で、創業125年目のヤマモリは伝統ある
ジネスを強化していくためには、タイ国内に確固たる拠点を
している。
醸 造 技 術を大 切に守りながら、常に一 歩 先の未 来を見 据
持つことが必要でした。その意味で、今回、JBICによる現地
え、技術革新や事業領域の拡大を図ってきた。
「この業界
通貨建ての融資によってタイでの事業展開を支援していた
では歴史の新しい当社が、普通の醤油を既存のチャネルで
だいたことには大変感謝しています」
( 三林専務 )
新しい価値を市場に提案しながら事業を拡大してきました。
社
名
ヤマモリ株式会社
創
業
1889年
( 明治22年)
たとえば、インスタントラーメンのスープが粉末だった時代に、
設
立
1951年
( 昭和26年)5月
初の液体スープの包装技術を開発したり、メーカーと小売り
金
4億3,500万円
資
本
事 業 内 容
醤油、
つゆ、
たれ、
およびレトルト
パウチ食品、
調理缶詰、
飲料等の製造・販売
本社所在地
〒511-8711 三重県 桑 名市
陽だまりの丘6 -103
工
本社・大山田工場、桑名工場、
松阪工場
場
■ ヤマモリ株式会社の商品
売る事は難しいので、新しい販 売 チャネルを開 拓したり、
【会社概要】
代 表 取 締役 社長 執行役 員 三林 憲忠
8
タイを拠点に ASEANへ商圏拡大
JBIC Today December 2014
醤油文化をタイへ、タイの食文化を日本へ
との間に専業の問屋がある時代に、新しいチャネルを開発す
実は、ヤマモリにはこうした事業展開を通じて実現したい
べく大手小売向けのプライベートブランドの開発に積極的に携
夢があるという。それは、
タイへの醤油の供給を通じて日本の
わってきました」。先達への想いを胸に三林専務はそう語る。
食文化を現地で広めるとともに、
タイの食文化を日本に広める
そうした先取の精神は海外事業でも貫かれた。1988年に
こと。そうした夢の象徴が、
日本でヒット商品となったレトルト食
タイに進出後、95年に販売拠点を、2004年に2つの製造拠点
品のタイカレーであり、名古屋市で展開する本格タイ料理レス
を設けて日本国内と同様の事業体制を確立した。その道の
トラン「サイアムガーデン」だ。
ヤマモリでは、
醤油を原料とする
「つゆ・たれ」
から
「釜めしの素」
「レトルト食品」
に至るまで幅広い製品群を取り扱っている。ヒット商品となった
「タイカレーグ
リーン」
は2009年から5年連続でモンドセレクションの金賞を獲得している。
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ける 水 事 業 展 開のための事 業 基 盤の獲 得 を 支 援
す る こ と に よ り 、両 社 の 水 事 業 に お け る 国 際 競
月 に 経 協 インフラ 戦 略 会 議 にて決
争 力 の 維 持 及 び 向 上 に 貢 献 す る も の で す 。ま た 、
定 さ れ た﹁ イ ン フ ラ シ ス テ ム 輸 出 戦 略 ﹂に お い
2013年
企 業 と の 協 働 やロ ーカ ル プ レ イ ヤ ーと の 連 携 支
て 、日 本 企 業 に よ る 海 外 M & A を 活 用 し た 海 外
※2014年7月8日
※20
※201
※2
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201
2
014年7月
4年7 8
4年7
8日
日国
国際協力銀行プレス
際協力
協力
協
力
力銀
銀行
行プレ
行プレス
プレス
プ
レ
レス
スリリース
ース
ス
上の市場の伸びが期待される中東・北アフリカに加え、さらに市
2000年代後半から、
日本政府がインフラ輸出を主導し、
ま
場規模が大きい中国、サウジアラビアなどにも強い会社です。
た、今後の世界の水市場の成長を念頭に、複数の商社は同
今回のディール成功の一番の要因は何ですか。
時期に専門部署を設けて取り組んできました。しかし、実際
日本企業とMHL、両者の戦略が合致したことです。日本企
に案件を獲得することは容易ではありませんでした。
業は MHLが長年に亘り実績を積み重ねてきた事業基盤を
水事業を含むインフラビジネスでは、EPC( 設計・調達・建
獲得できる一方で、MHLとしても、三菱商事が水に加え、電
設 )、O&M( 運営・管理 )、
ファイナンスの 3要素が重要となり
力など他のセクターでも世界的にビジネスを展開し、高度な
ます。日本企業の場合、電力事業では、この 3つが三位一体
経営、財務のノウハウを蓄積しているので、それらを活用する
となって海外でも戦える高い競争力を有していますが、水事
ことができます。また、三菱重工業は海外での大型海水淡水
業の場合、EPCでは上下水道分野をはじめとしてそれほど高
化プラントに強く、今後は中型分野にも進出する戦略である
い技術力は求められず価格勝負となるため、日本企業には
一方、MHLは中小規模の海水淡水化事業に強く、今後は大
厳しい戦いが強いられます。O&Mも日本では地方自治体が
型事業にも進出したいと考えています。さらに、三菱重工業
担っているので彼ら自身がリスクをとるには限界があり、ま
の高い技術力とMHLのコスト競争力によるシナジーも期待
た、水案件の規模は相対的に小さいのでファイナンスだけで
されます。
は勝てません。つまり、水事業の場合は3つともハードルが高
JBICに期待されたのは何ですか。
く、日本企業が単独で入札に出ても事前資格審査すら通過
「アラブの春 」などに起因する投資先国の混乱・不安定さ
できないというケースもありました。
の中で、MHLは水事業を長期・安定的に取り組むためには、
そこで出てきた戦略が、実績のある海外パートナーと組む、
進出国政府との関係強化やリスクコントロールが重要と考え
もしくは買収することであり、各商社はこれまで、自国で事業
ていたものと思われます。今後MHLが更に事業エリアを拡大
展開するパートナーとの連携を進めてきました。その中で三
していくにあたり、政府系金融機関であるJBICが有する世界
菱商事と三菱重工業は、今後世界的規模で事業拡大してい
中のネットワーク、情報力、ポリティカルリスク抑制効果が期
くためには、自国に限らず広域的に展開しているパートナー
待されていると考えます。
と手を組むことが必要と考えてMHLを選んだわけです。
どのような思いで日本企業を支援していますか。
MHLとは、どんな会社ですか。
いずれは日本企業をヴェオリア、スエズと肩を並べるような
世界の水事業会社は、フランスのヴェオリア、スエズが 2大メ
企業へと育てあげたいと考えています。同時に、2大メジャー
ジャーで圧倒的な規模を持ち、3位以下が大きく離れて競合状態
も選択と集中を進めているので、世界的な事業再編の流れ
にあります。第2グループの一角を占めるのがMHLで、1958年の
をうまく捉えながら日本企業との連携を支援したいと思って
創業後、中東、北アフリカ、アジア地域に広域展開するとともに、
います。
EPC 、O&M 、コンセッション事業を行う総合水事業会社です。
世界の水市場は、2007年の 36兆円から2025年には87兆円
規模に成長すると予想されています。中でもボリュームゾーンであ
る上下水道分野は、2007年の32.5兆円から、2025年には74.3
工業下水、再利用水分野は今後急速に成長する分野として注目
インフラ・環境ファイナンス部門
電力・水事業部
第4ユニット長
されています。MHLはこの両分野に取り組んでおり、年間10%以
金森 久志
兆円に拡大。また、規模は小さいものの海水淡水化や工業用水・
※2014年7月8日
※
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01
14年7
4年7月
4
4年
年7
年
7 8日
日日
日本経済新聞
本経済
本
経済新
経済
経済 聞 朝刊
朝刊
■ 世界水ビジネス市場の地域別成長見通し
日本の商社による海外での水事業では、日本企業単独での展開に限界が見える中で、各国のローカル
パートナーとの連携をテコに水ビジネスの拡大を図る動きが主流になっている。本件もそうした事例の1つだが、
先行する事例では事業エリアが 1カ国に限定されているのに対して、本件では、出資先の総合水事業会社
今後の市場成長率
60
● 特に市場規模が大きく、
その成長が見込まれる国
(市場規模及び市場成長率が
世界トップ 15 に入る国)
40
30
アジアの多くの国で事業を展開している点が特徴的だ。日本政府がグローバルトップ企業を目指す日本企業
の海外展開支援に取り組む中、本件はわが国初の広域型総合水事業会社向けの出資として注目される。
20
10
0
2007
2025
中国:
サウジアラビア:
インド:
10.7%
15.7%
11.7%
西欧
南アジア
北米
中東・北アフリカ
中南米
中東欧
東アジア・太洋州
サブサハラ・アフリカ
出所:Global Water Market2008及び経済産業省試算、
(注)
1ドル =100円換算をもとに作成
JBIC Today December 2014
素材・部材供給
コンサル・建設・設計
上水
19.0兆円(6.6兆円) 19.8兆円(10.6兆円) 38.8兆円(17.2兆円)
業務分野
● 市場の高成長(年 5%以上)
が見込まれる地域
南アジア:
10.6%
中東・北アフリカ: 10.5%
80
50
Metito Holdings Limited(MHL )が、
アラブ首長国連邦(UAE )
ドバイ首長国を拠点に、中東・北アフリカ・
■ 世界水ビジネス市場の事業分野別・業務分野別成長見通し
2025年…合計87兆円、2007年
()
内…合計36兆円
(兆円)
90
70
10
ニュースを 読 む
Metito Holdings Limited
に対 する出 資
海 外 展 開 支 援 出 資ファシリティの一環として、
日 本 企 業の海 外 水 事 業 会 社への出 資 参 画を 支 援
援 に 係 る﹁ 海 外 展 開 支 援 出 資 フ ァシ リ テ ィ﹂等
点 と す る M H L に 出 資 参 画 す る一方 、J B I C
略 に も 合 致 す る ものです 。
が M H L に 対 し て 種 類 株 式 に て 出 資 し 、同 社 の
J B I C は 今 後 も 、日 本 の 公 的 金 融 機 関 と し
て 、出 資 機 能 を 含 む 様 々 な 金 融 手 法 を 活 用 し 、日
の 活 用 推 進 が 謳 わ れ て い る と こ ろ 、本 件 は 同 戦
菱 商 事 ﹂︶及 び 三 菱 重 工 業 株 式 会 社︵ 以 下﹁ 三 菱
ィ﹂の 一環 と し て 、三 菱 商 事 株 式 会 社︵ 以 下﹁ 三
成 長 に 必 要 な 資 金 の調 達 を 支 援 す る ものです 。
本 件 は 、三 菱 商 事 及 び 三 菱 重 工 が 、総 合 水 事 業
株 式 会 社 国 際 協 力 銀 行︵J B I C 、総 裁 渡 辺
博 史 ︶は 、今 般 、
﹁ 海 外 展 開 支 援 出 資 フ ァシ リ テ 会 社 で あ る ア ラ ブ 首 長 国 連 邦 ド バ イ 首 長 国 を 拠
重 工 ﹂︶と と も に 、M e t i t o H o l d i n
ます 。
本 企 業の海 外 事 業 展 開 を 積 極 的 に支 援 していき
g s L i m i t e d︵ 以 下﹁ M H L ﹂︶ 及 び
M H L に 出 資 参 画 す る 事 は 、世 界 中 で 幅 広 い 事
プロジェク ト 遂 行 能 力 に 強 み を 有 し 、中 東・北
ア フ リ カ・ア ジ ア 地 域 で 高 い プ レ ゼ ン ス を 誇 る
業経験を有する三菱商事及び高い技術力と大型
M H L の 既 存 株 主 と の 間 で 、J B I C に よ る 最
案 件 の 豊 富 な 実 績 を 有 す る 三 菱 重 工 に とって 相
大 9 2 百 万 米 ドルの M H L の 種 類 株 式 取 得 に 関
す る 株 主 間 契 約 を 締 結 し ま し た 。本 契 約 に お い
互 補 完 性 が 高 く 、本 件 は 、両 社 に よ る 同 地 域 に お
て 、三 菱 商 事 及 び 三 菱 重 工 は 、M H L の 普 通 株 式
の 3 8 . 4 % を 取 得 します 。
5
わが 国 初の広 域 型
総 合 水 事 業 会 社 向け 出 資
【ニュースを読む】
日本の商社は海外での水事業に、どう取り組んでいますか。
事業分野
管理・運営サービス
合計
海水淡水化
1.0兆円(0.5兆円)
3.4兆円(0.7兆円)
4.4兆円(1.2兆円)
工業用水・工業下水
5.3兆円(2.2兆円)
0.4兆円(0.2兆円)
5.7兆円(2.4兆円)
再利用水
2.1兆円(0.1兆円)
ー
2.1兆円(0.1兆円)
下水
21.1兆円(7.5兆円)
合計
48.5兆円(16.9兆円) 38.0兆円(19.3兆円) 86.5兆円(36.2兆円)
14.4兆円(7.8兆円) 35.5兆円(15.3兆円)
■:ボリュームゾーン
( 市場の伸び 2倍以上、市場規模10兆円以上 )
■:成長ゾーン
( 市場の伸び 3倍以上 )
出所:Global Water Market2008及び経済産業省試算、
(注)
1ドル =100円換算をもとに作成
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