コロナ放電地絡 ∼ Z1-Z2波形観測の進展∼ - FLUKE

コロナ放電地絡 ∼ Z 1 -Z 2波形観測の進展∼
新潟県支部 会員番号№135 吉 原 謙 次
LA 内蔵 PAS に取り替えてもコロナ
付 PAS で新設受電盤でもコロナ放電
放電現象が改善されない事業所、図1
現象がでた。図4を参照、A が Io 、B
及び図2を参照して下さい。Z 1− Z 2
が Vo 、Io が Vo よ り 位 相 が 遅 れ て い
波形観測に?マークがともりはじめた。
る。約15 MHz の高調波。これはあき
然し、同一工業団地内の比較的近い事
らかにもらい地絡現象と判断した。
業所に、同時刻に LA・VT 内蔵 DGR
図1 ㈱某 PAS 交換後
図2 同左の PAS 交換前
400 nS 6 Hz
図3 図1の時間軸 引き延ばし
このコロナ放電を引き延ばした
図4 近隣の DGR 付 PAS 事業所
Io と Vo
25000倍時間軸を延ばした 約15 MHz 位の波
高調波では配電変圧器の In ≪ Ic( n- 1)<…< Ic 2< Ic 1
Icn=Ic
( n- 1)+…+ Ic 2
Io が Vo より遅れている、これは配電線側のもの
つまり近所のコロナ放電が近隣自家用の引込ケー
ブルに吸いあがったものと推察される。
− 20 −
で捉えて動作すること
Ic1
In
PAS
Icn
PAS
はやや難しいことでは
ZCT
ケーブル
対地静電容量
Io=In+Icn+Ic1
シース
I
負荷
帰路大地抵抗
帰路大地抵抗
定電流源
配電変電所
他対地静電容量
ZCT
ないでしょうか。つま
り、絶縁不良でコロナ
放電が出ているのに停
電事故は防止出来ない。
帰路大地抵抗
図5 地絡時の等価回路
高調波における事故電流が大地を戻る経路の説明図
Z 1 -Z 2 波形観測の機能
が果たせないことにな
る。
コロナ放電電流は高調波で高イン
そこで、高調波のコロナ放電現象の
ピーダンスの電流源、対地静電容量が
扱いを慎重にして臨時の停電点検を
小さくとも流れやすい。従って近隣の
行って、原因を明らかにして、速やか
長い引込みケーブルを持っている事業
に対処することである。平成23年10月
所はコロナ放電地絡電流をもらいや
25日に某社の月次点検で、FLUKE 120
すいと思われる。幸い最近のGR及び
にて図6の様なコロナ放電現象を捉え
DGR はローパスフィルターを持って
て、停電点検を申し出て、LA の不良
いるので誤動作はしないが、電気機器
(5000 Vメガにて0MΩ)を発見、停電
の初期の絶縁不良を、コロナ放電現象
事故を防いだ。
図6
Z 1 -Z 2 波形観測による
コロナ放電電流波形
(Screen を Waveform
に変換)
そ の 時 CV ケ ー ブ ル 単 体 の 絶 縁 は
くする為、次の「こんな高圧絶縁監視
10 kV で は40 GΩ LA 不 良 に よ る コ ロ
は可能か」
(注1)を参照し、13ヶ年
ナ放電地絡と判断する。
実証済みの Z 1 -Z 2 波形観測の理解が
この結果を皆様に発表し、少しでも
必要です。数多くの会員がこの方法を
多くの人にこの方法を試してみて、ご
試して、数多くの DATA がでること
賛同を得られることを望みます。そし
によって本協会の一つの技術になるこ
て尚、新会員の為、ご賛同が得られ易
とを望みます。
以上
注1:2010年9月会報106号 P 13∼16に掲載。今回参考のために再掲載いたします。
− 21 −
こんな高圧絶縁監視は可能か
新潟県支部 会員番号№135 吉 原 謙 次
長年、30数件の自家用設備の保安管
回、これを発表し、すこしでも多くの
理をやってきて、現時点での絶縁状態
御賛同者に試行実行してもらい、より
をつかむ事がいかに大切か実感してい
多くのデータをまとめれば、1つの技
ます。つまり、停電時間を与えられて
術になる事を念じています。次にフィ
チェックする事は現在社会では難しく、
ルタークリップが隣の端子に触れない
DATA をもって説明すれば停電点検
様工夫した銅バー、取付位置の高い
も納得してくれます。図6はその動機
GR ボックス点検時のトラブル防止工
づけを説明したもの。雷、吹雪、塩分、
具(両手が開放される)の写真を示す。
環境による大気汚染等の塵埃で時々
刻々変化します。だから、出来るだけ
短いサイクルでチェックし、怪しい場
合はデジタルテスター、引込みケーブ
ルでの零相電流測定及びトリップコイ
ル切り離しで行うリレー試験の結果等
を併せて判断し、停電の許可をもらい
精密点検を行う。
第1柱の受電点は現在、Io が0 . 2 A 、
Vo が2か2 . 5%の整定でないと保護協
調がとれない時代になっている。自家
図1 FLUKE 取付具と様子
用の高圧機器の絶縁状況が簡単に手が
るに把握出来る事が重要である。第1
柱の PAS の ZCT と ZPD 検出値とその
波形に着目し、約10年間、30数件の需
要家をみてきた。1回の観測も欠かさ
ずやったことで自分なりの[カン]が
働くようになったと思っています。今
− 22 −
図2 Y 端子付
銅バー
図3
GR・DGR の
フィルタ−
フィルター効果を図4、5に示す。
図4 フィルタ−なし
図5 フィルタ−あり
突然の停電及び波及事故の兆候を掴む為、受電点の Io と Vo の波形観測
停電時間の確保
難しい
受電口GR・DGRの
入力信号Io、Vo
20mV、30mV(動作値)
メーカ情報
整定 0.2A、2.5%の場合
出来るだけ
高調波カット
ローパス
フィルター自作
回路図及び説明は図12に示す
Io; Z1-Z2 間
デジタルから
アナログ測定で
イメージを掴む
点検周期
サイクルの短縮
デジタルテスター横河7537
1回/月
Io、Voの波形とらえる
お客さまには都合が良い
FLUKE123を選定
*PCでDATA分析と集積
金をかけず
新規装置を附加しない
*PCとはパソコン
通常時のDATA
異常時のDATA
点検毎回時比較
当事業所個別波形
事故の兆候を掴む
約10ヶ年間、30ヶ所毎月のDATA集積
数値が増加傾向の時、注目
Vo; Y1-Z2 間
図6 本件の着想のチャート図
− 23 −
兆候を掴んだ例
GR 不 良 発 見 2 件、 こ れ は PAS 内 の
1.アレスター不良
ZCT 回路断線でデジタルテスターで
は普段と同じで発見できず、波形観測
で 発 見 し た。 残 念 な が ら そ の 時 の
FLUKE の DATA はない。
4.波形変化でも不良でない場合
普段、Y 軸は5 mV/d で観測してい
るが、オーバスケールで ━ ━ ━ と表
図7 Z 1・2 間電圧波形
示され。
MANUAL から AUTO に切り替えた図
普段0 . 5 mV が1 . 8 mV に変化
アレスターを双眼鏡で覗き不良発見
普段の5 mS/d
では ━ ━ ━ と
表示
2.引込みケーブル不良
60 mV フィルターなし
ヒゲパルス振幅300 mV
5倍に拡大
1 MHz の波形
AUTO に切り替え
図9 5 mS/d を1 mS/d に引延した
図8 Z 1・2 間ウェーブダイヤグラフに変換
フィルターありで普段0 . 5 mV が0 . 9∼2 . 4 mV に
変化。停電にてケーブル単体で10 kV メガにて0 . 3
∼0 . 5μΑのキックあり、5 kV メガでは200 GΩ 、
普段は MANUAL 、X 軸5∼10 mS/d で測定する
ヒゲパルスの一つ
数 MHz の波形
3.FLUKE の波形記録なしの不良
100000倍
に拡大
1991年製 DGR 不良、普段 Io;0 . 5∼
1 . 2 mV 、Vo;9∼12 mV が、Io は変化
なし、Vo は10 - 6 . 5 - 1 . 1 mV と3ヶ月
図10 5 mS/d を50 nS/d に引延した
間で変化 ZPD 不良と思い、トリップ
コイル切り離しでリレーテストの結果、
図9・10の如く、波形を描く様にす
不良と判明、PAS 、DGR 交換する。
る。この場合、雨の日が数日/月以上
ついでアレスター不良も発見。その他
あった後数ヶ月後には、元の状態に戻
− 24 −
る事が多い。3∼4事業所で経験して
停電して不良箇所をみつけ、補正工事
いる。しかし、なかには、高湿度の日、
をします。
部 品 代:1∼2千円
部品購入:ネット販売
コロナ放電がキュービクル内で発生し、
名刺のカラ箱
残余テスター棒
リークホーンで絶縁不良箇所を発見し
〃 クリップ
た所あり。
Kt-Lt は T-E より約60°
進相
次に、怪しい所ありと思った時、リ
P1
P2
1Wのトランス
レー試験器を所持していなかった場合、
100/6.3V
GR・DGR の動作確認をしなければな
らない。すぐ停電点検が出来ないので、
T
約150μF
Lt
E
Kt
図11 簡易型 DGR 動作確認器の回路図
トリップコイルを取り外し、簡易型リ
レー動作確認器で動作確認し、波及事
GR は先般会報、技術研修会その他
故だけは回避する。そうすれば後日、
で紹介しました。
Ⅰ Z1、Z2のフィルター
〈図1〉 Z1
1mH 2.4Ω
1μF
1μF
Z2
2.4ΩはLの内部抵抗
ω=2×π×50=314
FLUKE
1
jωc
1
減衰比 A= ―――――――
= ―――――――――
1
R+jωL+
R・jωC+1−ω2 CL
jωc
波)
jωCR
ω2 CL
減衰比A
波)
7.54×10-4
9.86×10-5
およそ1
100(2 倍 調 波)
1.51×10-3
3.9×10-5
〃
500(10 倍 調 波)
7.54×10-3
9.86×10-3
〃
1 K(20 倍 調 波)
1.51×10-2
3.9×10-2
〃
2 K(40 倍 調 波)
3.02×10-2
1.58×10-1
0.8635
5 K(100 倍 調 波)
7.54×10-2
0.986
共振で 0.3 倍位
Hz (各
〈表1〉
調
50(基
本
Ⅱ Y1、Z2のフィルター
〈図2〉 Y1
Z2
ZPD
10mH 24Ω
0.1μF
U
2μF
V
0.1μF
FLUKE
24ΩはLの内部抵抗
ZPD(光商工製)に接続する為
左図 フィルターのCは誤差を少なくする為0.1μFとする
W
0.001μF×3
Y1
Z2
従って減衰比はおよそ表1の20倍調波まで同じである。
40倍調波で0.83倍、大体良い結果と思われる。
図12 自作フィルターの回路図と説明
以上
− 25 −