自然の素晴らしさと大切さを実感した6日間 宮城県 仙台市立高森中学校

自然の素晴らしさと大切さを実感した6日間
宮城県 仙台市立高森中学校 須藤由子
夢のようなあっという間の6日間。初めての仲間と共に過ごした6日間でしたが、生徒の皆さ
んの順応性の高さに感動した6日間でもありました。手元に届いた日程表を見て、この旅行は
「エコ・オーストラリア発見」で学習した内容を、自分の目で確かめるための研修の旅なのだな
と再確認し、ケアンズに向けて出発しました。参加した生徒の皆さんは、環境についてどのよう
なことを発見したでしょうか。様々なことをどんどん吸収できるこの時期に、日本の生活環境と
は異なるオーストラリアに出かけて、環境について学ぶことができたのは、一生の宝物だと思い
ます。今回、自分の目で確かめたことや発見したことなどを、家族の方や学校の友達などにどん
どん発信し、また進んでエコ生活を実践して欲しいなと思っています。
以下、6日間の出来事を、「エコ・オーストラリア発見」と関連づけながら振り返ってみます。
8月23日(水):
成田を夜出発して、約7時間。あっという間にケアンズに到着しました。予想以上にあっとい
う間で、本当は近い所なんだなと感じました。そこから国内線で、グレートバリアリーフの真ん
中に位置するタウンズビルへ。市長さんの大歓迎を受けました。ユニークで立派な市庁舎でした
が、ヤシなどトロピカルな植栽と街路樹にびっくりしました。しかしタウンズビルは南緯19度。
北半球ではフィリピンのルソン島の北端と同じ緯度です。当然、気候はサバナ気候…。頭では分
かっていても、やはり現地に行ってみて、改めて「熱帯なんだ」と実感しました。
ガイド役のスーザンさん(昔の怖い先生のイメージがありました!)に引き連れられて、キャ
ッスルヒルズに登りタウンズビル市を鳥瞰しました。未知の土地を訪れた時、高い所から鳥瞰す
るというのは、その地域を知る上での基本です。地形や水系、タウンズビルの町の広がりなどタ
ウンズビルの概観を理解して、ここから過酷で過密なエコ・ツアーが開始されたのでした。まず
は、ルイサ・クリークへ。ここは、人工的に作られた湿地帯で、タウンズビルの公園管理課が定
期的に水質の調査をしています。私達も湿地帯の生態系を調べました。なかなか原始的な方法で、
湿地帯の水を網ですくって、製氷皿のようなものに入れて、水中の生物が示されているワークシ
ートと照らし合わせました。また湿地帯管理センターを訪問し、植林もしました。徹夜での移動
後、冬といっても灼熱の紫外線下での活動。正直言って大変でした。生徒の皆さんは、よく頑張
りました。そしてリーフHQ水族館へ。クーラーが効いていてやっと生き返りました。生きた珊
瑚やグレートバリアリーフの生物たちを間近に見ながら、しっかり説明していただきました。
「エコ・オーストラリア」のCD(以下エコCDと略します)とまるで同じ風景でした。水槽は
とてもユニークであり、シュノーケリングしている気分でした。長い1日(2日?)のスケジュ
ールを終え、やっとホテルへ。勇敢な男子生徒諸君は、プールで泳ぎ、その勇気に地元の方々か
ら賞賛されました…。(本人達の後日談では「非常に冷たかった」とのこと。同感!)
8月24日(木):
超過酷なエコ・ツアー2日目…。とにかく、日差しがすごい!これで冬なのか、と思えるほど。
北国仙台に住んでいる者としては、絶え難い日差しでした。移動の途中、大きなスーパーマーケ
ットがありました。何とそこの駐車場には、巨大テントがはってありました…。生活の知恵だな
と感動していると、州立タウンズビル高校に到着。日本語が上手な代表生徒がいろいろお世話し
てくれました。この高校では、日本語が必修であり、11年生(日本の高校2年生)の時は、千
葉県の姉妹高校へ短期留学する人もいるそうです。この高校では、企業からも援助をもらってソ
ーラー発電や風力発電をしていました。環境だけでなく、理数系に力を入れているとのことでし
た。実際、環境の授業を受けました。前日、ゴミ箱をあさって教材を準備したそうです。教材は、
ペットボトルやビニールの袋、そしてオレンジの皮でした。なかなかユニークな先生であり、と
ても楽しく学習しました。その後、お茶の時間。タウンズビル高校の生徒さんの手作りのスコー
ンでお茶をいただき、お昼にはやはり手作りのキッシュと焼きたてのパンをいただきました。と
ても美味しかったのですが、約35人分も用意するのは大変だったろうなと感動しました。お昼
をご馳走になった教室は、調理室の隣の被服室だと思います。天井には大きなプロペラ型の扇風
機が設置されており、ゆったりと回っていました。「熱帯なんだ」と再確認しました。やっと一
息つくことができました。
その後、大変愛らしい小学生とともにフェリーでマグネティック島へ移動。結構待ち時間があ
りましたので、この小学生軍団を観察していました。おそろいのジャージと帽子がかわいらしか
ったです。ちょっとおしゃべりそうな児童に聞いたら、遠足にいった帰りとのこと。男子だけだ
ったのが不思議ですが…。マグネティック島到着。ここはタウンズビルの住宅地にもなっている
そうです。汚水を飲料にできるようにまで浄化し、ゴルフ場で活用している廃水再利用している
トリートメントセンターを見学しました。汚水のすごい臭いが忘れられません。そこまでして水
を再利用しているのは、水が貴重であるオーストラリアならではでしょう。エコCDの持続可能
な開発の「水資源の少ない農業大国のヒ・ミ・ツ」とも関連していますので、ぜひ、復習してく
ださい。そして、バンガローベイで宿泊。夕食前にちょっと時間があったので、近くの海辺へ。
ここでも勇敢な男子生徒諸君は、海中へ。一部の女子は、砂遊び。砂山を作り貝殻で「AJF
2006年」と明記。AJFのホームページにその写真が載っていますので、ぜひ、ご覧下さい。
夕食時は、ポールさんのお誕生日を皆でお祝いしました。食後、空を見上げると、満天の星空。
天の川が目の前に飛び込んできました。南十字星も発見しましたが、予想以上に「地味な」星座
でした。夜はだいぶ冷えました。動物の遠吠えも聞こえました。ここでもやはり、エコCDの
「ユニークな動植物、デリケートな自然」を見てもらい、復習してもらいたいです。
8月25日(金):
翌朝は鳥のさえずりというか大合唱で目覚めました。熱帯雨林の大自然の中にいるんだなとい
う実感がわいてきました。とにかく空気が澄んでいて美味しかった。野外活動そのもののような
朝食後、コアラを抱っこして、写真撮影。緊張していた人もいました。コアラの人権?を考え、
抱っこはできないと聞いていたのでちょっと意外でした。私が抱いたのはスクワット君。今回の
撮影では3匹目です(たくさんの人に抱かれるとコアラがぐずるので、途中で交代したのです)。
顔は非常に愛らしいのですが、なかなか、どうもでした…。そしてブッシュウォークへ。アボリ
ジニーの方から、自然と共生している生活の知恵について学びました。一番驚いたのは、石鹸の
木です。泡がぶくぶくと出てきたのにはびっくりしました。お話の内容は、エコCDの「自然・
伝統を楽しむエコツーリズム」の通りでした。復習の意味で再度見てね。
島を出発してフェリーで、タウンズビルへ。大変お世話になったスーザンさん達とお別れして、
バスで国道1号線を北上。次の訪問先のマンガリーフォールズへ出発しました。バスで移動する
途中、夕暮れになりました。まっすぐな道路と赤い大地、ダイナミックな夕暮れ、ここは大陸な
んだなと実感しました。途中、カンガルーにも出会いました。海から山へ。地図帳で確認して見
てください。タウンズビルからケアンズまでの国道1号線は、海岸線とグレートディバイデング
山脈を縫って走っています。
そしてやっとたどりついたマンガリーフォールズ。世界遺産に指定されているウールヌーラン
国立公園内に位置し、大自然に囲まれています。今年の7月は長雨続きで、マンガリーフォール
ズ内の樹木も大分流されたとのことでした。当日は、午後8時をまわっていたし、標高800m
ということで、とても寒く、夕食をとったウォーター・カフェは、凍えるようでした。日本の晩
秋といった感じでした…。そこでは、ナイトハイクをし、古代から生息している森シダや土ボタ
ルを見学しました。そして天の川。800mという高地でしかも周りには民家など無しの状態で
したので、星が本当に降ってくるようでした。当たり前ですが、プラネタリュウムよりも迫力満
点でした。
8月26日(土):
マンガリーフォールズで様々な体験活動に参加しました。この辺は、生徒の皆さんのレポート
に譲ることにします。とにかく、どんなことにも貪欲に挑戦している生徒の皆さんの姿は輝いて
いました。あの成田空港の会議室で見せた不安な表情をしている人は、一人もいませんでした!
マンガリーフォールズにあったのですが、緑の葉っぱに赤い花が美しい木がありました。ポー
ルさんに聞くと、「アフリカンチューリップ」とのこと。外来種で困っていると言っていました。
そして良く見ると、ケアンズへ行く道にも、またケアンズ市内にもどこにもたくさんありました。
これが外来種の強さなんだなと改めてびっくりしました。
8月27日(日):
いよいよ憧れのグレートバリアリーフのクルージングへ。前日、ジャックさんこと福島さんか
ら、珊瑚の生態やグレートバリアリーフについての学習をしていたので、シュノーケリングしな
がらしっかり復習しました。当たり前ですが、必死になってもぐったグレートバリアリーフの海
中は、エコCDの水中の楽園の通りでした。ぜひ、エコCDを見てね。真っ青な海に、真っ白な
海岸。本当に宝石のようでした。ただ、私が最も感動したのは、昼食時、久しぶりに口にした
「魚」のエビでした…。ずっとハンバーガーの類が続いていたので、海の美しさそっちのけで、
エビと格闘しました…。ジューシィで、最高でした。
ここでとても印象に残ったのは、マンガリーフォールズの大屋さんやその他の日本人スタッフ、
そしてクルージングでお世話になったジャックさんこと福島さんなど、たくさんの若い日本人の
人々が、生き生きとオーストラリアで活躍していたことです。大屋さんは、永住権も取ったそう
です。福島さんは、ずっとサーフィンをしてきたけれど、日本国内では仕事がないので、オース
トラリアでがんばっているとのことでした。いずれにしても、自分の夢を果たすべく、外国で頑
張っている若者を見て、日本人の行動力も広がったものだとうれしくなりました。
8月28日(月):
最終日。帰りの飛行機の座席は、窓際でした。機上からグレートバリアリーフとお別れをしま
した。水中も美しいのですが、機上からの眺めも素晴らしいものでした。さすが世界遺産です。
あっという間の6日間でした。エコCDがご縁で、日本全国から集まった仲間達。みんな仲良く
活動できて、本当に良かったなとほっとしました。帰りの飛行機の中は、心なしかしんみりと
していました…。
以上、6日間の様子を書き出してみました。後半部分は、たぶん生徒さんの方がいろいろな感
想をもったことと思いますので、私のほうでは簡略に書きました。
今回参加できた生徒諸君のように若い時期に外国に行くことができて、しかも環境や現地の生
活などについて、現地の方々の話を通訳を通してではありますが、正確に詳しく話を聞けたのは、
本当に素晴らしい体験であったと思います。環境のことについてだけでなく、オーストラリアの
生活の一部を体験できたのですから!今回の旅行をきっかけとして、英語や環境のことはもちろ
ん、オーストラリアという国のことについても、どんどん学習を深めて欲しいと思います。国際
理解というと、すぐに英会話と考えやすいのですが、英語は手段です。やはり相手の国の文化や
生活などを理解することが大切です。もちろん日本のことも正しく理解していなければなりませ
んが…。オーストラリアのことをさらに詳しく学習するには、豪日交流基金のwebサイトを開い
て、そこの「オーストラリア発見」をクリックしてみてください。ここでは、オーストラリアの
基礎知識がしっかり学べます。ぜひ活用してください。
いずれにしても、大きな事故もなく、無事、本旅行が終了したことを喜ばしく思っております。
そして最後になりましたが、この有意義な旅行は、豪日交流基金の事務次長の堀田満代さん、
同行していろいろお世話していただいたロウ直子さん、そしてスタッフの皆さん、クィーンズラ
ンド州観光局のポールさん、現地のスーザンさんとそのスタッフの方々、現地でお世話いただい
た方々、また保護者の皆さんやクイズを紹介して下さった担当の先生、現地で野外活動を自ら率
先して行った新井先生、読売新聞や北海道新聞の記者の方々など、たくさんの方々の協力があり、
成功へと導くことができました。もちろん参加した生徒諸君の一人一人の努力もあったからだと
思います。全ての協力に感謝して欲しいと願っています。
そして、今回いただいた協力に報いるべく、わずか6日間でしたが、この6日間の貴重な体験
をベースにこれからの生活で、一人一人の人が様々な場面で、全力で頑張ることを期待しており
ます。頑張ってください。
P.S. 須藤先生のひ・と・り・ご・と
環境教育に力を入れている州立タウンズビル高校でのこと。
訪問途中でちょうどお昼時となりました。お昼の準備をしていただいている間に、何気なく校
舎と校舎の間の中庭を見ていました。生徒の皆さんは、広い庭で小グループごとに自由に、かつ
楽しそうにお弁当を食べていました。日差しは強いのですが、木陰は実に気持ちよく、外のラン
チタイムなんて素敵だなと思っていました。オーストラリアの人は、野外で食事をすることが大
好きだと本で読んだことがありますが、そういう文化なのだなと思いました。お弁当はサンドイ
ッチと飲み物、後、スナック菓子を食べている人もいました。校内でスナック菓子か!と思いま
したが、文化が違うので…。
ただ、楽しい雰囲気はいいのですが、たちまち周りはゴミだらけになりました。エコCDでも
触れられていますが「校内の最大の問題は、ゴミです」という箇所がありました。なぜ、ゴミが
大問題なのか不思議でしたが、今回その「謎」が解けました。なんと、昼食後の木陰は、お弁当
のラップやスナック菓子の袋などゴミでいっぱいでした。
するとボランティアの生徒が、大きな紙バサミでゴミを拾い始めました。他の人もすぐにゴミ
を拾うかなと思っていましたが、なんと、他の人は知らないふり…。ボランティアの生徒はわき
目も振らずゴミ拾い…、他の人はわき目も振らずおしゃべりに夢中…。自分の学校ならば、「何
やっているの!」と怒ってしまうのですが、当日はお客様の身でしたので、遠慮しました。最先
端のソーラ発電や風力発電の話を伺い、先生から楽しく環境を教えていただき、美味しいお昼を
ご馳走になったのに、一般生徒の環境意識はどうなっているのかと本当に怒りがこみ上げてきま
した。自分の学校がこのような状況であったならば「生徒会を中心にゴミ持ち帰りを呼びかけ
る」「昼掃除の徹底(全員で)」などを実行します。本校の ALT の話では、アメリカなどでは掃
除は生徒はやらないとのこと。日本の学校を訪問したことがあるアメリカ人の先生は「皆で掃除
をするのは、素晴らしい学校文化だ」と褒めていました!
環境教育では最終的には、行動に移せる生徒を育成することを目指しています。頭の中でいか
に「環境は守らなければ」と理解していても、自分自身が何も行動できないのでは、環境教育は
成立しているとはいいがたいものだと思います。私が見たのは、本当に偶然かもしれません。そ
の後、訪れた海岸などはゴミ一つなく大変美しく感動しました、さすが世界遺産だと!しかし、
自分たちの身の回りのことをしっかりできないようでは本当にまずいと思いました。私は環境教
育をする際、最も重要なのは生徒の心であると考え、実践してきました。自然への畏敬の念や感
謝の気持ちがなければ、「自然は大切だから守ろう」という白々しい言葉と表面的な行動にしか
ならないと思います。心が伴わない行動は、絵に描いた餅と同じだと思います。
実に楽しい6日間でしたが、この一瞬の光景が、やけに心に残ってしまいました。私が勤務し
ている高森中も環境教育には力を入れています。もちろん日々の掃除、雑草取りや落ち葉拾いも
全校で取り組み、心と体を鍛えてきました。そこで日本の文化である掃除に誇りをもちながら、
全校あげて、日々の清掃活動をさらに徹底せねばと、エプロンを締め直し、決意を新たにしたの
でありました!高森中の生徒諸君には迷惑かもしれませんが…。