1/16 2017年度 東北大学(理系) 数学解答・解説および配点予想 ここでは理系数学の満点を 300 点満点で考えています。学部学科によっては満点が異なる場合が ありますが、採点基準は共通であると考えられます。 1 配点予想 (50 点)【解答】 (1) 曲線 C は, y = x 2 − 4 ( x ≦ −2 または 2 ≦ x) − x 2 + 4 (−2 ≦ x ≦ 2) であり, l が点(-2,0)を通るから, 0 = −2a + b ∴ b = 2a 5点 また,曲線 y = − x2 + 4 において, yʹ = −2 x より, x = −2 における 接線の傾きは 4 であるから,グラフより, 0 < a < 4 5点 ゆえに,求める条件は, b = 2a かつ 0 < a < 4 …(答) 5点 (2) 上と同様にして, l が点(2,0)を通るとき, 0 = 2a + b ∴ b = −2a 5点 2 また,曲線 y = − x + 4 において, x = 2 における接線の傾きは − 4 である から,題意をみたす条件はグラフより, − 4 < a < 0 5点 ゆえに, b = −2a かつ − 4 < a < 0 さらに, l が曲線 y = − x2 + 4 に接し,接点の x 座標が − 2 < x < 2 の範囲にあればよいから, 3点 そのときの条件は,2 式を連立させて − x 2 + 4 = ax + b より, x2 + ax + b − 4 = 0 の判別式 D = a2 − 4(b − 4) = 0 ∴b = このときの重解は, x = − a2 +4 4 a a より, − 2 < − < 2 ∴ − 4 < a < 4 2 2 6点 6点 以上より,題意の条件をみたす実数 a , b の条件式は, b = 2a かつ 0 < a < 4 式を または, b = −2a かつ − 4 < a < 0 または, b = まとめて 3 点 a2 + 4 かつ − 4 < a < 4 4 であるから,求める軌跡は右図の太線 部分のようになる.(ただし,白丸は除く)…(答) 図に 7 点 2/16 1 【解説】 【解答】では,微分法を用いて接線の傾きを求めたので数学Ⅱを使ったが,次のような別解ならば ほぼ数学Ⅰの範囲の解法でもできる. (1)では, l と曲線 y = − x2 + 4 との交点のうち,点( − 2 ,0)と異なる点の x 座標が − x 2 + 4 = ax + b かつ b = 2a より, x2 + ax + 2(a − 2) = 0 となるから, ( x + 2)( x + a − 2) = 0 ∴ x = 2 − a これが − 2 < x < 2 の範囲にあれば題意をみたすから, − 2 < 2 − a < 2 を解いて, 0 < a < 4 を得る. (2)でも同様にして, b = −2a かつ − 4 < a < 0 が得られるだろう. その他に題意をみたす条件は, l と曲線 y = − x2 + 4 が接するときに限ることに気が付くと,あと は,実数 a , b がみたす条件式が出揃うから,点( a , b )の「軌跡」を図示するだけであるが, 軌跡といっても,得られた条件式をみたすグラフを ab 平面上に描くだけであり,領域ではない ので,数学Ⅰの範囲内で十分解けるだろう.直線 l の動きをイメージできるかどうかを問う問題 であるから,イメージさえできれば易しいが,計算だけで解こうとする人には方針が立たないか もしれない. 3/16 2 配点予想 (50 点) 【解答】 (1)取り出された 3 枚のカードに書かれた数が a, b, c のとき, (a, b, c) と 書くことにする. (ⅰ)A 君が 0 を取り出し B 君が 0 を取り出さない場合 A が( 0, 1, 2 )のとき B は( 1, 3, 5 ),( 2, 3, 4 )の 2 通りある. 5点 (ⅱ)B 君が 0 を取り出し A 君が 0 を取り出さない場合 5点 (ⅰ)と同様にして,2 通りある. (ⅲ)A 君も B 君も両方とも 0 を取り出す場合 A が( 0, 1, 2 )のとき B は( 0, 1, 2 )の 1 通りある. 5点 以上(ⅰ)~(ⅲ)より,求める確率は 2 + 2 +1 5 1 = = 20 × 20 80 6 C3 × 6C3 …(答) 5点 (2)0 が含まれていない場合の得点は,2 点以上 4 点以下であり, 0 が含まれている場合の得点は 3 点以上 9 点以下である. A の得点が整数でないのは 0 が含まれていない場合であり,( 1, 2, 4 ) ( 1, 2, 5 ),( 1, 3, 4 ),( 1, 4, 5 ),( 2, 3, 5 ),( 2, 4, 5 )のときである. 5点 このとき B の得点より大きくなるのは, A が( 1, 2, 4 )のとき,B は( 1, 2, 3 )の 1 通りある. A が( 1, 2, 5 )のとき,B は( 1, 2, 3 ),( 1, 2, 4 )の 2 通りある. A が( 1, 3, 4 )のとき,同様に B は 2 通りある. A が( 1, 4, 5 )のとき,B は( 0, 1, 2 ),( 1, 2, 3 ),( 1, 2, 4 ),( 1, 2, 5 ), ( 1, 3, 4 ),( 1, 3, 5 ),( 2, 3, 4 )の 7 通りある. A が( 2, 3, 5 )のとき,同様に B は 7 通りある. A が( 2, 4, 5 )のとき,B は( 0, 1, 2 ),( 1, 2, 3 ),( 1, 2, 4 ),( 1, 2, 5 ), ( 1, 3, 4 ),( 1, 3, 5 ),( 1, 4, 5 ),( 2, 3, 4 ),( 2, 3, 5 )の 9 通りある.5 点 よって A が B より得点が大きく,かつ A の得点が整数でない確率は 1+2+2+7+7+9 7 = 100 6 C3 × 6C3 …① 次に,A と B の得点が等しくなる場合を考える. ともに 2 点のときは,( 1, 2, 3 )の 1 通りある. ともに 3 点のときは,( 0, 1, 2 ),( 1, 3, 5 ),( 2, 3, 4 )より 3 × 3 = 9 通りある ともに 4 点のときは,( 0, 1, 3 ),( 3, 4, 5 ) より 2 × 2 = 4 通りある. ともに 5 点のときは,( 0, 1, 4 ),( 0, 2, 3 ) より 2 × 2 = 4 通りある. ともに 6 点のときは,( 0, 1, 5 ),( 0, 2, 4 ) より 2 × 2 = 4 通りある. ともに 7 点のときは,( 0, 2, 5 ),( 0, 3, 4 ) より 2 × 2 = 4 通りある. ともに 8 点のときは,( 0, 3, 5 ) の 1 通りある. ともに 9 点のときは,( 0, 4, 5 ) の 1 通りある. 5点 4/16 ともに 7 点のときは,( 1, 2, 4 ) の 1 通りある. 3 ともに 8 点のときは,( 1, 2, 5 ),( 1, 3, 4 ) より 2 × 2 = 4 通りある. 3 ともに 10 点のときは,( 1, 4, 5 ),( 2, 3, 5 ) より 2 × 2 = 4 通りある. 3 ともに 11 点のときは,( 2, 4, 5 ) の 1 通りある. 3 よって,A と B の得点が等しくなる確率は 1 + 9 + 4 + 4 + 4 + 4 +1 +1 +1 + 4 + 4 +1 38 = 400 6 C3 × 6C3 5点 だから,A と B の得点が等しくならないのは 1− 38 362 = 400 400 であり,A が B より得点が大きくなるのは,小さくなるときと等しく なるはずだから, 362 1 181 × = 400 2 400 以上より …② 5点 A が B より得点が大きいという条件のもとでの A の得点 が整数ではない条件つき確率は①②より 7 100 181 400 = 28 181 ・・・(答) 5点 5/16 2 【解説】 (1)のみ文系と理系の共通問題であり、行われているゲームの内容自体は難しくないが、丁寧に場合 分けし、もれなくダブりなく緻密に分析する力が問われている。(1)では3点の場合だけを考えれば よいが、(2)では「0 が含まれている場合」の得点は残りの2枚のカードの合計値から3点以上9点 以下に、 「0 が含まれていない場合」の得点は3枚の平均値から2点以上4点以下になることに注意 して調べていく必要がある。 (2)は文系と理系で若干内容が異なっていた。文系では「A君の得点が整数でなく、かつ、B君の得 点より大きい確率を求めよ」となっているのに対し、理系では「A君の得点がB君の得点より大き いときの、A君の得点が整数ではない確率を求めよ」となっている。この問題文から、「A君の得 点がB君の得点より大きいという条件のもとでの、A君の得点が整数ではない条件付き確率を求め よ」というように題意を正しく読み取れたかどうかがポイントである。それさえわかれば、あとは 丁寧に場合分けして調べていくだけだが、解答のように、A君がB君より得点が大きい確率とA君 がB君より得点が小さい確率は等しいというような確率の対称性の利用も考えたい。 東北大では確率が頻出分野であり過去問研究をしっかり行ってほしいところだが、条件つき確率は 旧課程の過去問では出題されていないので、最近の各大学の入試問題の中から東北大と同レベルの 問題をセレクトして練習しておくとよいだろう。 6/16 3 配点予想 (50 点)【解答】 (1) 題意をみたす条件は,2 次方程式 ax2 + bx + c = 0 の 判別式 D = b2 − 4ac ≧ 0 かつ D が平方数であることだから, 5点 b = 3 のとき,( a , c )=(1,2),(2,1)の 2 組 4点 b = 4 のとき,( a , c )=(1,3),(3,1)の 2 組 4点 b = 5 のとき,( a , c )=(1,4),(4,1),(1,6),(6,1),(2,3), (3,2)の 6 組 b = 6 のとき,( a , c )=(1,5),(5,1),(2,4),(4,2)の 4 組 5点 5点 b = 7 のとき,( a , c )=(1,6),(6,1),(2,3),(3,2),(2,5), (5,2),(3,4),(4,3),(2,6),(6,2) の 10 組 以上,求める( a , b , c )の組の総数は 2+2+6+4+10=24 …(答) 5点 7点 (2) a = 1 のときは,2 次方程式 ax2 + bx + c = 0 が有理数解をもつとき, それらはいずれも整数解であるから, ( a , b , c )=(1,3,2),(1,4,3),(1,5,4),(1,5,6), (1,6,5),(1,7,6)の 6 組は条件をみたす. 3点 a ≠ 1 のときは,( a , b , c )=(6,5,1),(6,7,2)の 2 組を除く すべての組が条件をみたす. 5点 以上より,求める( a , b , c )の組の総数は 22 …(答) 7点 7/16 3 【解説】 2 次方程式 ax2 + bx + c = 0 が有理数解や整数解をもつ場合の数を数え上げる有名問題で,確率の 問題としては 2002 年度法政大学経済学部や 2007 年度九州大学理系学部などでも出題されてい る.どちらも養賢ゼミナール生は,冬期講習「確率を確立せよ」で演習しているので,数え上げ るしか方法がないことは分かっていただろう. いずれの問題も 1~5 の数字から無作為に取り出すか,さいころを 3 回投げて出た目を順に a ,b , c とする,のように,1~6 の数字から無作為に取り出すが,本問は 1~7 の異なる数字から取り 出すのでやや場合が多く,数え上げるのが大変だろう.とはいえ,2 次方程式 ax2 + bx + c = 0 が 有理数解をもつ条件は,判別式 D = b2 − 4ac ≧ 0 かつ D が平方数であることは,受験生ならば 覚えておくべき基本事項である. 8/16 4 配点予想 (50 点) 【解答】 (1) メネラウスの定理より, AD BC EF ⋅ ⋅ =1 DB CE FA s s + 3 EF ⋅ ⋅ =1 1 3 FA EF 3 = FA s( s + 3) ∴ s ( s + 3) AF = 2 AE s + 3s + 3 図中の文字や数値は比を表わす. したがって, AF = = AF の値を AE 求めて 10 点 AF s ( s + 3) 3 AB + s AC AE = 2 ⋅ AE s+3 s + 3s + 3 ( s 3AB + s AC s + 3s + 3 2 α = s 2 β = s2 ) 3s + 3s + 3 s2 + 3s + 3 …(答) α,βの値を 求めて 10 点 (2) BF の延長線と AC の交点を H とし, HF : FB = x : y とおくと, x が y 最大になるとき FG も最大になる.チェバの定理より, AD BE CH ⋅ ⋅ =1 DB EC HA s s CH ⋅ ⋅ =1 1 3 HA CH の値を HA CH 3 = 2 HA s 求めて 10 点 なので,メネラウスの定理より, BD AC HF ⋅ ⋅ =1 DA CH FB 1 s2 + 3 x ⋅ ⋅ =1 s 3 y s > 0 なので,相加平均・相乗平均の関係より, x 3s 3 3 = 2 = ≦ 3 y s +3 3 s+ 2 s⋅ s s = 3 2 x の値を y 求めて 10 点 9/16 よって,FG を最大とする s は, s = s= 3 …(答) 3 より, s s の値を 求めて 10 点 10/16 4 【解説】 (1)ベクトルの定番問題である.AF を 2 通りの式で表わし,AB ,AC の 1 次独立性から係数 α , β を求めるのが標準的であるが,メネラウスの定理を用いて比を求めると簡単に処理できる. (2) (1)を誘導として,FG の値を求めてもよいが,ここでは,FG が最大になるとき HF も最 大になることに着目し,比を計算することにより s の値を求めている.チェバの定理,メネラ ウスの定理を使うだけで比は求まる.あとは相加平均・相乗平均の関係を使うだけだ. 【角田幸二】 11/16 5 配点予想 (50 点)【解答】 (1) 与式より, z z + αz + β z + γ = 0 …① であり, 3点 両辺の共役複素数をとると, z z + αz + β z + γ = 0 ∴ zz + α z + β z + γ = 0 …② よって①-②より, αz + β z − α z − β z + γ − γ = 0 ( ) ( 3点 ) ゆえに, α − β z − α − β z + γ − γ = 0 が成り立つ.(証明終) 1 点 (2) γ は負の実数であるから, γ = γ かつ γ < 0 より(1)の結果は, 3 点 (α − β ) z − (α − β ) z = 0 3点 (α − β ) z = (α − β ) z …③ となる. ここで β = α のとき, α = β も成り立つから,③はすべての z で成り立つ. 3 点 またこのとき(*)より, z z + β z + β z + γ = 0 となり, (z + β )(z + β ) = −γ + β β 2 2 = −γ + β ( > 0 ∵ − γ > 0 ) z+β z + β = −γ + β 2 となるから, z が表す点は 複素数平面上で − β が表す点を中心とする半径 − γ + β 2 の円を描く. 2 点 よって z は無数に存在するので,題意の条件をみたさない. β ≠ α のときは, α ≠ β と③より z α −β = 3点 z と変形できて, 述べて 3 点 α −β ⎛ z ⎞ z ⎟ となるから, は実数である. = ⎜⎜ ⎟ α −β α −β ⎝ α −β ⎠ z 3点 よって α , α , β , β が表す点をそれぞれ A , Aʹ , B , B ʹ とすると, 点 z は複素数平面上において, B A ʹ に平行で原点を通る直線 L を描く. また③より, α z − β z = α z − β z ∴ α z + β z = β z + α z …④ が成り立つ. このとき(*)より, z z + αz + β z + γ = 0 zz + α +α 2 z+ β +β 2 z +γ =0 3点 12/16 配点予想 zz + α+β 2 z+ β +α 2 z + γ = 0 (∵ ④より) ⎛ α+β ⎜z + ⎜ 2 ⎝ ⎞⎛ ⎟ ⎜z + α + β ⎟⎜ 2 ⎠⎝ ⎞ ⎛ ⎟ = −γ + ⎜ α + β ⎟ ⎜ 2 ⎠ ⎝ ⎞⎛ α + β ⎟⎜ ⎟⎜ 2 ⎠⎝ ⎞ ⎟ ⎟ ⎠ ⎛ α+β ⎜z + ⎜ 2 ⎝ ⎞⎛ ⎟ ⎜z + α + β ⎟⎜ 2 ⎠⎝ ⎞ ⎛ α +β ⎟ = −γ + ⎜ ⎟ ⎜ 2 ⎠ ⎝ ⎞⎛ α + β ⎟⎜ ⎟⎜ 2 ⎠⎝ ⎞ ⎟ ⎟ ⎠ α+β よって z + で− α+β 2 α +β 2 2 = −γ + = −γ + α+β 2 α +β 2 2 ( > 0 ∵ − γ > 0) α+β α+β 2 2 3点 2 となるから,点 z は複素数平面上 が表す点を中心とする半径 − γ + ここで複素数 複素数 − z+ 2 3点 α+β 2 2 の円 S を描く. 3 点 が表す点を C とすると,点 C は線分 BAʹ の中点で, が表す点を D とし,原点を O とすると OD = −OC より, 中心が点 D の円 S の半径は − γ + OC 2 > OC = OD をみたす. 述べて 5 点 よって円 S は原点を内部に含み,上で述べた直線 L と異なる 2 点で交 わるから,複素数 z がちょうど 2 個存在するので題意の条件をみたす. 述べて 3 点 逆にこのとき β ≠ α が成り立つから,求める必要十分条件は β ≠ α …(答) 3 点 13/16 5 【解説】 本問は複素数の問題であり,複素数平面上における図形を意識させないように作ってあるが, このような出題の仕方は,2004 年度および 2011 年度前期試験(いずれも第5問)に前例がある ので東北大らしい出題の仕方と言えよう. (1)はすぐに証明できるが,(2)は何となく式をイジクり回してみても求める条件は得られない. 与式 z z + αz + β z + γ = 0 …(*)は, z z があるので点 z がみたす図形は何となく円っぽいが,高校 の教科書や参考書に出てくる円の方程式は,ほとんどが z z + β z + β z + γ = 0 という形をしてお り,この式からならば z + β = −γ + β 2 の形に式変形して,円の中心と半径を読み取ること は容易だろう.ところが本問は α ≠ β であるから,いつもの式変形ができないのでフリーズした 受験生も多かったに違いない. また, β ≠ α という条件は(もちろん α ≠ β でもある), (α − β ) z = (α − β ) z …③の両辺を α − β および α − β で割って z α −β = z と変形するために必要な条件である.この形になれば, α −β z −0 が実数となるから,複素数 z が表す点を Z とすると, BAʹ が OZ と平行になるので, BAʹ が α −β 方向ベクトルで原点を通る直線の方程式と見ることができる.③式は z z がないので,おそらく 直線だろうと推測がつくが,教科書や参考書には 2 点を結ぶ線分の垂直二等分線の式ぐらいしか 出てこないので,大抵の受験生はあまり馴染みがないかもしれない. 右図において,外側の大きい円は,中心が原点で 半径が α (もちろん β でもよい)であり,4 点 A , Aʹ , B , B ʹ はいずれもこの円の周上を動く. β ≠ α であれば BAʹ ≠ 0 であるから直線 L が存在し, このとき必ず円 S と異なる 2 点で交わるので題意 の条件をみたす. 複素数平面に不慣れな現役生はもとより,十分に 演習を積んできた高卒生にとってもかなりの難問 であっただろう. 14/16 6 配点予想 (50 点)【解答】 (1) 部分積分法より, π I (a, b) = ∫ 2 0 e ax cos bx dx π ⎡ e ax ⎤2 =⎢ sin bx⎥ − ⎣ b ⎦0 π ∫ aπ = b 4点 π a e2 bπ = sin − b b 2 aπ e2 a ax e sin bx dx b 2 0 sin ⎡ e ax ⎤2 cos bx⎥ + ⎢− ⎣ b ⎦0 π ∫ 2 0 a ax e cos bx dx b aπ ae 2 a a2 bπ bπ − + cos − I (a, b) となるから, 2 2 b2 b 2 b2 aπ 4点 4点 aπ ⎛ a be 2 bπ ae 2 bπ a2 ⎞ ⎜1 + 2 ⎟ I (a, b) = 2 sin − 2 + cos 2 ⎜ ⎟ 2 2 b b b b ⎠ ⎝ aπ aπ b2 + a 2 1 bπ bπ −a + ae 2 cos I (a, b) = 2 be 2 sin 2 2 2 b b aπ 1 ゆえに, I (a, b) = 2 b + a2 bπ bπ b sin + a cos e 2 −a 2 2 …(答) 3点 (2) 積⇒和の公式より, π J (a, b, c) = ∫ 2 0 e ax sin bx sin cx dx π e ax {cos(b − c) x − cos(b + c) x } dx 2 2 0 = ∫ = 1 2 ∫ = 1 2 I (a, b − c) − I (a, b + c) …(答) π 2 0 e ax cos(b − c ) x dx − π ∫ 2 0 5点 e ax cos(b + c) x dx 5点 (3) 積⇒和の公式より, sin tx cos 4tx = 1 (sin 5tx − sin 3tx ) および sin 2tx cos 3tx = 1 (sin 5tx − sin tx ) 2 2 4点 となるから,辺々掛けて sin tx sin 2tx cos 3tx cos 4tx = 1 sin 2 5tx − sin 5tx sin tx − sin 5tx sin 3tx + sin 3tx sin tx 4 ( ) 3点 15/16 π よって, 8 π ∫ 2 0 配点予想 e x sin tx sin 2tx cos 3tx cos 4tx dx ( ) e x sin 2 5tx − sin 5tx sin tx − sin 5tx sin 3tx + sin 3tx sin tx dx =2 = 2 J (1, 5t , 5t ) − J (1, 5t , t ) − J (1, 5t , 3t ) + J (1, 3t , t ) = I (1, 0) − I (1,10t ) + I (1, 6t ) − I (1, 4t ) + I (1, 8t ) − I (1, 2t ) + I (1, 2t ) − I (1, 4t ) = I (1, 0) − I (1,10t ) + I (1, 6t ) − 2I (1, 4t ) + I (1, 8t ) ∫ 2 0 ここで(1)の結果より, I (1, 0) = π e2 2点 2点 1点 − 1 である. また, n を自然数として π 1 I (1, nt ) = n 2t 2 + 1 ntπ ntπ + cos e 2 −1 2 2 π 1 = nt sin n 2t 2 + 1 ⎛ ntπ ⎞ + α ⎟ −1 n 2t 2 + 1 e 2 sin ⎜ 2 ⎝ ⎠ π 1 ⎛ ntπ ⎞ となる. +α ⎟ − 2 2 e 2 sin ⎜ ⎝ 2 ⎠ n t +1 n 2t 2 + 1 nt 1 ただし, α は cosα = , sin α = をみたす. 2 2 2 2 n t +1 n t +1 1 = ⎛ ntπ ⎞ ここで, 0 ≦ sin ⎜ + α ⎟ ≦1 より, ⎝ 2 ⎠ n 2t 2 + 1 t →∞ t →∞ 1 π 4点 π 1 よって, lim lim = π 4点 1 ⎛ ntπ ⎞ e 2 sin ⎜ +α ⎟ ≦ e2 2 2 2 2 2 ⎝ ⎠ n t +1 n t +1 1 0≦ e 2 = 0 となるから,はさみうちの原理より, π ⎛ ntπ ⎞ + α ⎟ = 0 ゆえに, lim I (1, nt ) = 0 e 2 sin ⎜ t →∞ ⎝ 2 ⎠ n t +1 2 2 4点 以上より,求める極限は, π lim 8 t →∞ ∫ 2 0 π e x sin tx sin 2tx cos 3tx cos 4tx dx = I (1, 0) = e 2 − 1 …(答) 1点 16/16 6 【解説】 (1)では,部分積分法を用いない別解として,次のようなものがある. π I (a, b) = ∫ 2 0 e ax cos bx dx の被積分関数の cos を sin に変えた式を用意し,それぞれ微分すると )ʹ ( ( )ʹ eax cos bx = aeax cos bx − beax sin bx …① eax sin bx = aeax sin bx + beax cos bx …② ここで,①× a +②× b より, ( )ʹ ( )ʹ a eax cos bx + b eax sin bx = (a 2 + b2 )e ax cos bx となるから,両辺を区間[ 0 , a cos aπ e2 bπ bπ + b sin 2 2 よって, I (a, b) = 1 2 b + a2 π 2 ]で定積分して − a = (a 2 + b2 ) I (a, b) aπ b sin bπ bπ + a cos e 2 −a 2 2 が得られる. (2)では,積 sin bx sin cx の形だから当然,積⇒和の公式を使うことを思いつくべきである. sin α cos β = 1 {sin(α + β ) + sin(α − β ) } …(*) 2 cos α cos β = 1 {cos(α + β ) + cos(α − β ) } 2 sin α sin β = 1 {cos(α − β ) − cos(α + β ) } 2 (*)は,右のように sin の加法定理 sin(α + β ) = sin α cos β + cosα sin β を 2 つ並べて辺々加えたのち両辺を +) sin(α − β ) = sin α cos β − cosα sin β 2 で割ると得られる. sin(α + β ) + sin(α − β ) = 2sin α cos β 他の 2 式は,同様にして cos の加法定理から得られるので確認しておこう.これらの式は,暗記するので はなく,作り方を覚えておくことが大切だ. さらに極限を求めるところであるが, lim t →0 sin t sin t = 1 は常識としても, lim = 0 は知っている t → ∞ t t だろうか.後者は, 0 ≦ sin t ≦1 の両辺を t で割って,はさみうちの原理を用いて証明する方法 が有名であるが,知らないと試験時間内に思いつくものではない.めったに出てこないが,東北 大学を受験する人は,どんな細かい基本でもすべて吸収しておく必要があるようだ. 【総評】 今回は,近年出題が多い「整数問題」は出題されなかったが,「複素数平面」の抽象的な問題が 出題されており,第5問だけは難問である.第1問から第4問は比較的易しい問題であるから 確実に得点し,第6問は(2)までは確実に解けるようにしておくことが合格に必要な力だろう.
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