早稲田大学 人間科学部 日本史 講評

早稲田大学 人間科学部 日本史 講評
出題形式
試験時間
特徴・その他
マーク式
60分
大問数5題、小問数42問、すべて選択問題で例年通り。内訳は正誤20問・語句選択18
問・年代配列4問。その中で2つ選ぶ形式が3問、該当なしの場合カをマークする形
式が8問あった。時代別では古代、中世、近世、近現代、全時代にまたがるテーマ史
の5題で、全時代から満遍なく出題されている。今年度は戦後史からは1問のみ。分
野別では、2015年度は政治史と社会経済史で8割だったが、2016度と今年度は政治史
と文化史で8割以上であった。第5問は例年史料問題だが、今年度は第2問・第3問
も史料問題であった。全体の難易度は標準~やや難。分量が多めなので試験時間60分
には気をつけよう。
〔大問別講評〕
番号
出題内容
コメント
難易度
Ⅰ
古代の対外関係
問1:ウ.南淵請安ではなく高向玄理。問2:やや難。カが正解。
ア.藤原宇合は717年の遣唐使の副使であり、随行者には玄昉・
吉備真備・阿倍仲麻呂らがいた。問3:ア.玄昉ではなく道鏡。イ.
三蹟ではなく三筆。エ.真言宗ではなく天台宗。オ.山門派では
なく寺門派。問4:イ.814年、ウ.802年なので9世紀の出来事。
問5:イ.道康親王(のちの文徳天皇)の説明。問6:ア.高句麗は
唐・新羅に滅ぼされた。イ.渤海は唐・新羅とは対抗関係。ウ.伝
聖徳太子撰。エ.硫黄ではなく毛皮・蜂蜜・朝鮮人参。問7:エ.
藤原明衡、オ.円珍の著作。問8:Ⅱ905年→Ⅰ985年→Ⅲ1053年。
標準
Ⅱ
今川仮名目録
<史料>
問1:イが正しい。今川仮名目録は今川氏親が制定し、子の義元
が条文を追加した。ア.小田原ではなく府中。ウ.武田信玄の説
明。エ.『塵芥集』の説明。オ.今川氏は守護であった。問2:エ.
御成敗式目の条文である。問3:イ.史料文に「理非を論ぜず、両
方共に死罪」とある。問4:やや難。エ.分国法という語句から類
推しよう。問5:ア.史料文の空欄3には「駿・遠」が入る。問6:
オ.室町幕府は私徳政は行わない。問7:やや難。ア.駿河には金
山があるので正しい。ウ.『今川仮名目録』を制定した今川氏親
の段階では駿河・遠江2ヶ国であり、三河は入っていない。
問8:やや難。Ⅱ1493年→Ⅰ1541年→Ⅲ1557年。
標準
Ⅲ
近世の都市と農村
<史料>
問1:やや難。ウ.大坂の北浜は商業経済の中心地帯で、米市場 やや難
や金相場会所があった。
『日本史史料集』(山川出版社)p.190に史
料が掲載されている。問2:イ.計数ではなく秤量。問3:やや難。
アが鴻池屋の説明。イ.奈良屋茂左衛門。ウ.淀屋辰五郎。エ.
紀伊国屋文左衛門。オ.住友家。問5:史料文の「出羽・陸奥」から
天明の飢饉と判断できる。
『日本史史料集』(山川出版社)p.199
に史料が掲載されている。問6:難問。南部藩は現在の岩手県に
所在したので、出羽国ではなく陸奥国である。問7:やや難。Ⅲ
家綱期の1657年→Ⅱ元禄期の1694年→Ⅰ寛政改革期の1790年。
問8:エ.『大学或問』は農業技術書ではなく、熊沢蕃山の経済
政策論を説いた書である。
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番号
出題内容
コメント
難易度
Ⅳ
近現代の学問・技術
問1:1856年に改称した蕃書調所(エ)は1862年にはさらに洋書
調書(オ)と改称する。問2:ア.同様にイギリス留学だが長州藩。
問3:ア.ミルン。イ.イタリア画家のフォンタネージ。エ.ロエス
レル。オ.フランスの法学者ボアソナード。問4・5:イギリス人
コンドルは旧岩崎邸(ア)・ニコライ堂(エ)・鹿鳴館(カ)を設計し
た。問6:ア.長岡半太郎、ウ.北里柴三郎、エ.高峰譲吉、オ.
大森房吉。問7:オ.和辻哲郎ではなく西田幾多郎。問9:ア.大
川周明ではなく北一輝。ウ.東京ではなく京都。エ.皇道派では
なく統制派。オ.陸軍ではなく海軍。問10:やや難。Ⅲ日本人で
3番目のノーベル賞受賞者→Ⅰ3番目→Ⅱ5番目。
標準
Ⅴ
古代~近代の宗教
<史料>
問2:イ・オ.平将門の乱と藤原純友の乱を合わせて承平・天慶の
乱という。問4:やや難。エ.史料Bに「天地災変」とあるので吉
事ではなく凶事である。問5:難問。ウ.黒住教ではなく大本教
の説明。問6:カが正解。「神仏分離」令である。問7:エ.幕末か
ら明治にかけての駐日イギリス公使。問8:エ.植村正久は横浜
で入信。消去法で解こう。
標準
〔総合コメント〕
全体の半分を正誤問題が占める。判別が難しいものがあった2015度に比べると、2016年度・今年度は
やや易化しているよう。例年、第5問は史料を用いた全時代にまたがるテーマ史で、「宗教」(今年度)、
「衣服の歴史」(2016度)、「民衆の厳しい生活状況」(2015年度)、「日本の食」(2014年度)、「女性の位置
づけや権利」(2013年度)、「外国人の目から見た日本」(2012年度)、「情報とメディアの歴史」(2011年度)
とテーマは多様性に富んでいる。全体的な難度はやや高めに設定されていたが、近年は難問も少なく
なり解きやすくなってきている。新傾向としては史料問題が多くなったことである。基本史料以外も、
史料集で確認していけば、発展的な学習となるだろう。
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