日本遺産ものがたり 年3月1日号 第1401号 平成 日本遺産構成文化財 偕楽園 第 話( 最 終 話 ) 教育遺産の未来 12 最 終 話 は、観 梅 の 季 節 を 迎 えている 日 本 遺 産 構 成 文 化 財・偕楽園の話題から始めたい。 一例としてサッカーを挙げてみたい。サッカーの国際試合 終了後、日本人サポーターが、自主的にゴミ拾いを行う光 い。江戸の学びは近代以後の西洋教育と融合し、その精神 闇雲に勉学するのではなく、適度に余暇を取らないと教 育は大成しない──斉昭は、こうした伝統的な儒学思想を 翌年、勉学の余暇の場として偕楽園を開園した。 あった儒学の教えに本源がある。儒学を基礎とした江戸の 日本人のマナーの良さ、礼節の心は、実は人格形成の学問で 景をニュースなどでご覧になった方は多いだろう。彼らの なかなか行動に移せない」といった場面はよくあるが、そ 決 意 の も と 創 設 し た の で あ る。 「 頭 で は 分 かって い る が、 サブタイトルを 「学ぶ心・礼節の本源」 としたゆえんである。 ることは、もっと認知されてよいように思う。ストーリーの 学びが、現在、国民性として無意識のうちに受継がれてい 本の教育遺産群」には、偕楽園のほか、学校以外の多様な この偕楽園の事例が示すように、江戸の学びは学校施設 だけでは語れないことは明らかである。そのため 「 近 世日 あった斉昭ならではの才覚と言える。 園 を一対 の 教 育 施 設 と 位 置 づ け た の も、 時 代 の 風 雲 児 で 私たちの先人が遺してくれた、有形・無形のかけがえの ない教育遺産。その未来は、現代に生きる私たちがどう伝 礼節の心なのである。 私たち一人一人の胸の中にある教育遺産、すなわち学ぶ心・ 魅力を物語る証が、これまで紹介してきた、水戸市・足利 「近世日本の教育遺産群」 のストーリーは、世界 こうした に誇るべき、さまざまな魅力が含まれている。そしてその 張とリラックス)という巧みな比喩を用い、弘道館・偕楽 構成文化財が含まれている。例えば、孔子の徳をたたえる えていくかにかかっている。私たちの将来の世代が、受継 のこ 【編集】 みとの魅力発信課 ☎029・232・9107 029・224・5188 [email protected] 水戸市 歴史文化財課 関口慶久 市・備前市・日田市の4市にまたがる教育遺産群であり、 あかし 儀式・釈奠 (栃木県足利市) 、学校経営を支えた田畑・井田 がれた遺産に親しむことで、誇りと愛着を抱いてくれるこ せいでん (岡山県備前市) 、私塾と共生した都市・豆田町 ( 大 分 県日 とを願ってやまない。 【発行】水戸市 ☎029・224・1111(代表) 〒310~8610 水戸市中央1~4~1 教育遺産のストーリーは過去の出来事だけにとどまらな せきてん していたことを物語っている。 田市)など。これらは江戸の学びが社会のすみずみに浸透 いっちょういっし の点、斉昭は有言実行の人であった。さらに 「一張一弛」(緊 行為は、世界の人々の心を揺さぶり感動を与えた。こうした 実践するため、弘道館・偕楽園という一大施設を、不断の 12 は私たちの日常生活に溶け込んでいる。 水戸藩第9代藩主の徳川斉昭は、教育力の強化を目指し、 天保 (1841) 年に勉学の場として弘道館を建て、その がたり」。最終話はまとめとして、教育遺産の魅力を振返ります。1年間ご愛読ありがとうございました。 日本遺産に認定された「近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節の本源―」の歴史的魅力を語る「日本遺産もの ―近世日本の教育遺産群― 広報みと 29 水戸市の人口 人口…271,070人(男132,947人、女138,123人) 世帯数…119,098世帯 -平成29年2月1日現在(平成27年国勢調査確定値基準)-
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